金子哲夫の発言 (憲法調査会)

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○金子(哲)委員 社会民主党・市民連合の金子哲夫です。私は、憲法をめぐる現状と本調査会の今後の進め方について、十分間で意見を述べます。
 まず最初に私が申し上げたいことは、自明のことですけれども、法治国家日本にあって、憲法は最高法規であり、そうあるべきだということであります。しかし、今臨時国会における国会の審議の状況を見てみますと、そのことが本当に守られ、尊重されているのかと疑わざるを得ません。
 九月十一日に米国で発生した同時多発テロ以降、とりわけテロ関連三法案の国会提出以降の国会審議の中身、審議の進め方を見ますと、憲法はないがしろにされ、そして国会自身が守るべき、国家における民主主義そのものが踏みにじられていると言わざるを得ません。テロ対策という言葉によって一切をうやむやにするのではなく、憲法とのかかわりの中で冷静に論じなければならないと思います。
 とりわけ、この間の小泉首相の答弁は、平和主義をうたう憲法の枠を大きく逸脱したものと言わざるを得ません。
 この点で最初に取り上げなければならないのは、今百五十三臨時国会の冒頭に行われた小泉首相の所信表明演説です。その所信表明演説で、小泉首相は憲法前文を引用し、これをいわば小泉流に解釈して、世界人類の平和と自由を守るために、国際協調の精神のもとで、我が国としても全力を挙げてこの難局に立ち向かうとの決意を明らかにしています。
 しかし、憲法前文は小泉さん流の解釈を許してはおりません。憲法前文は、「われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。」そして、「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。」とうたっております。憲法前文が示す名誉ある地位を占める方法は、平和の維持であり、小泉流解釈に示す軍事的支援でないことは自明であります。
 また、小泉首相が十月五日の予算委員会において、憲法の前文と第九条にはすき間、あいまいな点があると発言され、時には常識的にとまで発言されております。
 日本国憲法の平和主義の背景には、かつての日本の無謀な戦争に対する反省があります。すなわち、この戦争によって、アジアの人々を初め国内外に多くの死傷者を生み出したこと、特に広島や長崎ではたった一発の原子爆弾によって一瞬のうちに多くの命が、とりわけ民衆の命が奪われてしまったことへの痛切な反省から、再び戦争はしない、再び過ちは繰り返さないとの反省と決意があるということであります。
 だからこそ憲法の前文があり、その精神のもとに各条があり、特に第九条があることは疑う余地がありません。そのことは、日本国憲法制定の際の、当時の国務大臣の答弁の中で強調されているとおりであります。決して憲法があいまいなのではないことを改めて強調したいと思います。小泉首相の常識によってではなく、まさに憲法に則して論議することこそが重要であることは言うまでもありません。
 テロ対策関連法案の論議との関連で指摘しておきたいことは、諸国民が日本に期待しているのはまさに平和的貢献であり、軍事的貢献ではないという事実です。
 私たち社民党は、衆議院においてテロ特措法が強行採決された直後の十月二十日に、アフガニスタン難民の実情を調査するため、調査団を派遣しました。この調査団の報告で特に私の印象に残ったことは、アフガニスタンの難民の人々から、広島、長崎の悲惨な体験をした日本がなぜ私たちのことをわかってくれないのですか、なぜ米軍の軍事行動を支援するのですかという厳しい問いかけがあったという事実です。広島に住み、平和を訴えてきた私にとって、この報告は大変衝撃的でした。広島、長崎で起きた悲惨な出来事を世界の人々は知っているのです。だからこそ、日本に対して、大きな平和貢献の期待を持っているということでもあります。
 また、憲法からの逸脱という点でさらに挙げなければならないのは、同じく予算委員会で、小泉首相は、法律的な一貫性、明確性を問われれば、答弁に窮すると答弁されていることです。ここでも、憲法との関係をあいまいにした答弁に終始しております。御承知のように、憲法第九十九条には、憲法尊重擁護の義務が明確に規定されております。今国会の小泉首相の一連の憲法にかかわる発言は、まさにこの憲法第九十九条に違反する行為であるとも言わざるを得ません。
 こうした一連の小泉首相の憲法にかかわる発言こそ、この憲法調査会でしっかりと論議することが求められているのではないでしょうか。
 次に、今国会における審議の状況についてですが、本当にこれでよいのかという思いを抱かざるを得ません。本格的な論議をと言いつつも、とにかく法案成立をという政府の意向が強調され、国会の審議権が全く軽視された国会であったと言ってもよいでしょう。
 また、トマホーク発射は戦闘行為ではないや、自衛隊は戦力、すなわち戦う力であるなどの一連の政府答弁も極めて御都合主義であり、これまでの国会議論の蓄積を無視するものであり、国会をないがしろにするものと言っても過言でないと思います。私は、このような状況が続けば、国会がみずから民主主義を破壊することになってしまうという危惧を持っております。
 また、自衛隊派遣の国会承認案件においても、政府は詳細な内容を伏せたまま提案を国会に行っており、これではシビリアンコントロールも有名無実であり、戦時のさなかにあっては法は停止するというさまそのものであります。
 日本国憲法の三大原則の一つである平和主義を本当に貫くためにも、かつて歩んだ戦争の道への反省をいま一度思い起こさなければなりません。私は、そのことが、今日、憲法を論議する出発点であると思っております。
 このように考えてみますと、これからの本調査会が行うべき作業は、日本国憲法が、現実の政治、経済、社会の中でどのように実践され、守られているのか、また、国民生活とのかかわりの中でどのように生かされているのかをしっかりと調査し、憲法を国民全体共有な価値とさせることであると思っております。本調査会の今後の調査がその方向で進むことを要望して、私の発言を終わります。

発言情報

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発言者: 金子哲夫

speaker_id: 14880

日付: 2001-12-06

院: 衆議院

会議名: 憲法調査会