野村光司の発言 (国会等の移転に関する特別委員会)

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○野村参考人 野村でございます。
 肩書を見ますと行政評論家と書いてありまして、恐縮しております。十年前に、湾岸戦争のときに軍事評論家というのが出てきて、えっ、そんなのいるのという感じがしたと思いますけれども、確かに行政評論というのは余りないんじゃないかと思います。
 というのは、一昔前までは、私も会社にいましたけれども、御当局の批判をいたしますと、天から黒雲がおりてきまして、そういう人はどこかに行っちゃうんですね。消えてなくなる。存在できなかったんですね、普通。
 それが、きょうは国会で行政評論家というのを認めていただいて、自由に言える。評論家ですから、どこの組織にもどこの地域にも限定されないで、私自身の良心と理性に基づいて理想的なことを申し述べさせていただきます。
 実現性というのは怪しいのですけれども、ここの委員会のやっておられる首都移転というのも実現性はかなり困難でございますので、その点で同じかと思いますけれども、私も昔の友達に会うと、あなたが言っていた官僚批判、随分実現してきたねと言われますから、ここで国会移転及び国政改革の理想を述べても、あるいは実現するかもしれない、こういうふうに思っております。
 そういうわけで、私も、官僚の行政指導、法律に基づかない行政指導には従いませんけれども、法律ができますれば従いたいと思いますので、今、国会等移転法ができて、それが移転を目指すということであれば、これには従わなくちゃならぬと思います。
 ただ、ここには、四条でしたか、国政の改革をも一緒に考えるということがございまして、その点のことがどうも少なくて、どんどんもう済んだような形で移転先が報告されておるという状況ですけれども、その前に大戦争があるわけですね。
 それで、私は考えるんですけれども、ブッシュ大統領は、今度の九月十一日に、これは根源をたたく戦争だ、こうおっしゃったのですけれども、これは、敵をどれにするかと。イスラム世界全体をやるか、そうじゃないですね。タリバン全体をやるか、そうかなと。実際、今、アルカイダですか、あるいはオサマ・ビンラディンですか、そこに絞ってやるわけですね。ですから、私どもも、我々の戦力、我々というか移転の方の戦力を考えまして、それから抵抗する戦力との関係をはかって、ある程度戦線を整理しなくちゃいけないだろう、こういうふうに思うわけです。
 それで、私は、先ほど申し上げましたように、国政そのものは、もちろん批判しておりますし、そこの一極集中ということをずっと批判してきておりまして、それはここにちょっと書いておきました。
 申しおくれましたけれども、皆様のお手元には私のレジュメがずらずらとたくさん六ページにわたってあります。レジュメですので、意味がはかりかねるところは御想像願いまして、御参照いただくこととしまして、私は、ここでは補足的に申し上げたいと思います。
 そういうわけで、対象を絞った場合、この東京全体二千万人、これは、二千万人といいましても、トップにおられる方も甚だ口が達者で、おっかない方ですけれども、それを含めまして随分とたくさんの人がおるわけですね。この人たちに、私の周りに聞いても、ほとんど、もうこれはさたやみになった、こう思っているぐらいですから、これは、移転を図るには大変な精力が要る。およそ首都の移転を考えるというのは、革命にも相当する大きな政治変革のエネルギーが国民的になくちゃだめだ、こう思います。
 京都から鎌倉幕府をつくった、関東に出てきたわけですけれども、それも大変な、古代を中世に変える変革でしたね、それは百何年かで戻りましたけれども。それからまた、徳川幕府ができる。これで軍政の首都ができるわけです。ところが、これは本当は大したあれじゃないんですね。そこに、二ページ目の終わりにも書いてありますけれども、皇居は京都に残しておりまして、経済の中心は大阪に大体ありまして、結構、各藩に自治を残しておるんですね。ですから、江戸に持ってきたのは、政治の、補足的なというか、旗本的な、補完的な兵力を持ってきているという感じで、大して移っていないですね。
 本当に移ったのは明治維新のときですね。明治維新では、今までの各藩体制を、廃藩置県という形で政治を全部持ってきた。各藩の自治を否定して、全部持ってくるということをしましたね。経済についても、殖産振興、殖産興業ということで、もう政府が叱咤激励して、経済をみんな指導してきたわけですね。それから、もちろん、もう一つ、軍事で、国民皆兵ということで、藩兵はみんな、藩の武士はやめて全部中央に持ってくるということにしたわけですね。
 ですから、私どもが考える一極集中、つまり、地域の移転より前に、権力の集中を考えるといった場合、やはり、この明治の体制を考え直すんだということではないかと思います。
 そうした場合に、それはもちろん、新憲法で、今の廃藩置県というのを、はっきりと地方自治の確立ということできておりまして、殖産興業というのは、これは各人の経済意思に基づいて商売を自由にやりなさいという営業自由の原則ですか、自由主義経済ということがちゃんと憲法にもあるわけでして、もちろん、軍事につきましては、これを完全に軍備を撤廃すると。今非常な曲芸的な解釈が行われておりますけれども、この趣旨は軍備の撤廃ですね。
 ですから、この憲法に従えば権力の分散は十分にできる。全部分散してから、残った機能で初めて移転を考えていただきたいということが私どもの願いですね。
 要するに、引っ越しをする前には要らないものは処分して、身軽になってから引っ越しましょうということです。ですから、レジュメには不用品と書いていますけれども、不用品じゃないですね。貴重な地方の権力を、あるいは企業者の営業の自由を奪い取って、全部中央の官僚体制のところへ持ってきたというところに原因があるので、それはもう憲法がその直し方を教えているわけですから、そのとおりやっていただければいいということでございます。
 それで、本論ですが、憲法は、言うまでもなく、官僚については全くの、官僚というのはほとんど東京に住んでおりますね。ところが議員の方々は、地方を根拠にして、時々国会が開かれればこっちへ来るという形のものだと思いますから、もし官僚政治であれば、すべての政治の決定、権力は、官僚の頭から、東京から流れて、議会は、これは承認をいただくだけの形で、それで国民を支配するということで、全部もう国民は東京に伺いを立てなくちゃ事は済まない形になっていったわけですね。
 これは、憲法の言うとおり、国権の最高機関、唯一の立法機関として国会がなっていただければ、それはもう、権力の中心が、まず国民から、国民の、有権者の意見を聞いて、それを国会議員が国会へ来てまとめる、自分で政策を立て、法案をつくりということをしていただければ、ずっとその権力の重心が各地方へ回るわけですから、それをしていただきたいと思います。
 それからもう一つは、地方自治ですね。地方自治につきましては、ここにちょっと挙げておきましたけれども、五ページにございますが、地方自治は、明治二十一年に市町村制という法律ができまして、そのときに、同時に市町村制理由という告諭みたいなものを出しているんですけれども、そこでは、政府の事務を地方に分任し、人民をこれに参与させ、もって政府の煩雑を省きと、政府が邪魔なものは、やりたくないものは地方におろす、あわせて人民の本分を尽くさせると。これは天皇政府に協力することだと思いますが。だけれども、政府は政治の大綱を握り、方針を授け、国家統御の実を挙ぐ、こう言っておりまして、これは、最近はちょっと地方分権が進みましたけれども、ここ数年前までは、地方の方も官僚も、みんなこの形で来たと思うんですね。
 そうじゃない。それを「地方自治の本旨に基づいて、」と憲法に設けました。憲法に設けたというのは、地方自治というのは法律でもっても曲げられないということで憲法に書いてあるんですね。ですから、地方自治の本旨に基づき法律でもってと書いても、その法律は、地方自治を曲げた法律は違憲、無効だと思います。ですから、まず地方自治の概念を国会ではっきりさせなくちゃいけない、憲法の概念をですね。
 その前に、今の現行法を見ますと、地方自治法でも、「地方自治の本旨に基づいて、」と書いて、それは何も説明なしに繰り返している。施行令を見ましても、「地方自治の本旨に基づいて、」と繰り返している。つまり、全然あいまいにしたままほっておく、あいまいにして、地方も中央も同じことをやるということでは、当然中央官庁の方が強いですから、それはもうみんな中央官庁の支配に服さざるを得ない、自治はなくなるということですね。この地方自治を確立しなくちゃいけないというふうに思います。
 これは、決して地方の独立ということではなくて、もともと、国かもしれませんけれども、憲法制定権力者である国民が被制定権力として国会をつくり、内閣をつくり、裁判所をつくると同様に地方自治体をつくったわけですから、これは憲法でつくられたものであって、国会でも直せないわけです。それを尊重していただきたいわけですね。
 そうした場合には、今地方自治法で書いてあります、例えば、これはいろいろ細かく言えば議論がありましょうけれども、これは自治法の二条の三項にいろいろずらずらと、公園をつくるとか病院を建てるとか、ずっと書いてありますけれども、これを完全に地方のものにして、自治というのは中央から干渉を受けないのだということで、それを原則にしていただきたい。
 そうした場合に、国家は何をするかというのは、EUなんかでも言っております。EUは、EUと各国との関係を、EUは各国のサブシディアリティーに徹するというプリンシプル・オブ・サブシディアリティーというのを出しております。そういう形で、本来全部地方の権限でやるけれども、中央は情報を差し上げるという形にしていただきたいと思います。
 いろいろたくさんありますけれども、時間がたちますので、もう一つだけ申し上げたいと思います。
 まず、憲法の規定ですね。一つの地方自治体に関係することを法律で決める場合には、それぞれその地方自治体の住民投票を要するというのがございますので、これは沖縄の関係でも余り守られていませんけれども、もう一度この趣旨を考えて、もし東京から地方のどこかへ移されるというときには、東京の住民投票と行き先の住民投票とをしていただきたいと思います。
 たくさん話したいことはございますけれども、時間が過ぎているかもしれません。ありがとうございました。(拍手)

発言情報

speech_id: 115304298X00320011025_014

発言者: 野村光司

speaker_id: 7114

日付: 2001-10-25

院: 衆議院

会議名: 国会等の移転に関する特別委員会