2001-10-13
衆議院
小澤隆一
国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動等に関する特別委員会
小澤隆一の発言 (国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動等に関する特別委員会)
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○小澤参考人 静岡大学で憲法学を担当しております小澤です。
私は、日本国憲法の原理に照らしてみて、今回の三法案には看過できない問題点が多く含まれていると思います。いずれも重要な点ですので、ぜひとも慎重な審議を求めます。
まず、特別措置法案について五点指摘をさせていただきます。
第一は、集団的自衛権の行使に当たるのではないかという点です。
私は、一九九九年四月七日の本院のガイドライン特別委員会において参考人として出席し、周辺事態法等について意見を述べました。その際、同法での日本の対処が集団的自衛権の行使に当たるのではないかという点を指摘しましたが、今回の法案は同じ問題点がより一層浮き彫りになったと思います。
十月八日以降の軍事行動を、米英は国連憲章五十一条に基づく個別的及び集団的自衛権の行使と説明しています。この行動が自衛権行使についての国際社会の合意に照らして妥当なものかは疑問の余地があります。しかし、それはともかく、両国が自衛権行使として安保理に報告したのはこれは事実です。小泉首相もこのことを了解しているようです。
ならば、今回の法案における外国の軍隊等への自衛隊の協力は、戦闘に直接参加しなくても集団的自衛権の行使に当たります。現に、NATOは、今回の事態を条約の五条事態と認定し、加盟国は補給、空港、港湾等の使用許可などを内容とする支援を行うとしています。法案では、自衛隊が外国の領域にまで出ていって補給、輸送等の支援や戦闘員の捜索救助活動を行うのですから、NATO諸国よりも踏み込んだ支援を行うことになります。これはもはや集団的自衛権の行使にほかならず、憲法上これを行使できないとしてきた政府の見解と矛盾いたします。
第二は、武力の行使の概念についてです。
法案は、対応措置は「武力による威嚇又は武力の行使に当たるものであってはならない。」としています。しかし、憲法第九条一項に言う武力の行使は、もともと、正式な戦争ではない事実上の武力行使を含めて放棄する、そのために盛り込まれた言葉であって、禁止の対象を戦闘行為に狭く限定する趣旨のものではありません。輸送や補給などの後方支援も、支援の対象が武力行使である以上、それも含めて憲法第九条一項の禁止しているものと解釈すべきです。
法案の対応措置のうち、少なくとも協力支援活動、捜索救助活動は、九条一項によって武力行使として禁止されていると思われます。
第三は、戦闘地域との区分についてです。
法案は、これらの活動を戦闘行為が行われていない地域で実施するとしていますが、テロ攻撃を絡めた軍事行動の場合は、どこがいつ戦闘地域になるか、とりわけ定かではありません。戦闘行為が行われている地域とそうでない地域の区別は極めて困難を伴うと思われ、事実上区別がなくなる危険性を持っております。
第四は、武器の使用であります。
法案では、自衛隊が携行する武器の範囲が限定されておらず、武器使用の要件が、自衛隊員だけではなく、自己の管理のもとに入った者の生命、身体の防護にまで拡大されています。
小泉首相は、さきの答弁で、この規定の趣旨を、幅広い場面で自衛隊員以外の者と活動することを想定されるためとしています。これは、共同して活動する米軍等の防護までをも含み得るような表現であり、自衛隊が米軍とともに事実上の戦闘行動にかかわるという疑念がぬぐえません。
第五は、国会への事後報告についてです。
法案は、対応措置の基本計画の決定と変更、その内容について、事前に国会に諮ることなく、事後報告でよいこととなっています。周辺事態法の場合は国会の事前承認を原則としていたわけですから、これとの均衡を失していますし、何よりも、議会制民主主義を軽視しているとのそしりを免れません。ただし、この点が改められても、既に述べた四点の問題点が治癒されるものでもありません。
次に、自衛隊法改正案についてです。
改正法案は、自衛隊が治安出動下令以前の情報収集活動、在日米軍と自衛隊の施設等に対する警護活動の規定を新設し、自衛隊が活動できる要件を大幅に緩和しております。
また、これらの活動に際して武器使用が可能とされていますが、これらは、使用の要件、使用する武器の種類などが過度に広範かつ不明瞭です。これは、国民の基本的人権を不当に制限するおそれが大きいものであります。
また、今回の改正では、防衛秘密の漏えい罪を新設し、それに対して、国家公務員法上の処罰規定よりも格段に重い刑事罰を科しています。これは、憲法九条を規定して軍事的価値の優先を否定した日本国憲法のもとでは、なし得ないことであるというふうに考えます。
テロは、いかなる意味においても正当化できません。ただし、その根絶のためには、国連憲章と国際法に基づく容疑者の特定、逮捕、裁判による厳正な処罰を通じた国際的な包囲が必要です。
現に、一九八八年に起きたイギリス上空でのパンナム機の爆破事件、このときの容疑者とされた人間は、国連を中心とした国際社会の経済制裁による粘り強い圧力と当事国の交渉の結果、リビアから引き渡されて、オランダのハーグに置かれた特別の裁判所で裁判にかけられております。
国際社会は、このようにしてテロに対して毅然と、そして粘り強く法の裁きを行っているのであります。今回の事態も、こうした国際社会の努力の成果を踏まえて対処、解決されるべきだと思います。
テロに対して報復の武力攻撃を勝手にしかけることは、テロ活動を国際的に追い詰める、その正当性を傷つけ、さらなるテロの誘発をもたらす危険な行為です。
また、今回、報復攻撃の対象地域になっているアフガニスタンでは、攻撃を避けようと大量の難民が発生、増大し、生命の危機に瀕しております。先ほどその点は、中村参考人が具体的な現地の状況に即してお話しいただいたと思います。
難民の生活で一番悲惨な目に遭うのは、女性、子供、老人など弱い人々です。こうした難民の救援とその増大を抑える国際的な努力に積極的、主体的にかかわることこそ日本の使命であると思われます。
日本国憲法は、専制と隷従、圧迫と偏狭が地上から除去されることを求めて、全世界の国民がひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有することを確認しております。その上に立って定められた九条と前文の間には、すき間はありません。すき間は、テロも報復戦争もノーだという国民の心と政治との間に、また、絶対的な貧困と圧倒的な恐怖による絶望のふちでテロリズムに心を寄せてしまう民衆と、国際社会のリーダーシップの間にあると思われます。このすき間を埋めることこそ、そして、それに全力を注ぐことこそ我が国のなすべきことだと思います。
このことを貴院に求めて、私の陳述を終わらせていただきます。
どうも御清聴ありがとうございました。(拍手)