山口わか子の発言 (本会議)

⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。 詳細は利用規約をご確認ください。

○山口わか子君 私は、社会民主党・市民連合を代表し、いわゆるテロ対策を初めとする三法案に対して、反対する立場から討論を行います。(拍手)
 まず冒頭に申し上げたいのは、この法案が、戦後日本が営々と築いてきた平和への努力を根本から覆そうとする重大な法案であるにもかかわらず、たった五日間の審議しかなされていないということです。それも、まず自衛隊派遣ありきであったことに強い危惧を覚えます。小泉総理がAPECへ出席するためのはなむけとして拙速に法案成立が図られたのであれば、国会と国民の軽視そのもので、政府の見識を疑わざるを得ません。(拍手)
 しかも、集団的自衛権行使や武力行使についてのこれまでの政府答弁と法案との関係については、あいまいなままです。小泉総理の答弁も、時には冷笑さえ浮かべ、はぐらかし、時には高圧的で、その態度からは、真摯さ、誠実さをみじんも感じることができません。こうした指導者のもとで、今、国の方針の大転換が図られようとしているのは、まことに残念です。
 もとより、今回のテロが残虐卑劣な行為であり、私たちがテロ根絶のために立ち上がらなければならないことは言うまでもありません。しかし、自衛隊を派遣してアメリカの軍事行動を支援するということは、テロを根絶するどころか、新たな憎しみを生み出すのに加担することになるのです。
 次に、この法案は、憲法や従来の法律体系と余りにも乖離し、これまでの政府解釈とも整合性がなく、これらをもまさに踏みにじるものであることです。
 周辺事態法では、周辺とは地理的概念ではないものの、自衛隊派遣の範囲はインド洋までは含まれないとされています。また、日米安保条約では、台湾以北であり、自衛隊法では、自衛隊の任務は国内に限定されています。ところが、この特別措置法での小泉総理の答弁によると、テロはどこで起きるかわからないので地域は無限定だというのです。
 今回のテロに限った対策法であるとしつつ、自衛隊の派遣は地球上どの地域であっても可能と強弁されるに至っては、何をかいわんや、総理自身、事の重大性についての御認識が余りにもなさ過ぎます。
 しかも、テロ対策法案は、時限を区切った特別立法でありながら、実は延長規定が盛り込まれており、一般法と全く変わりないものです。自衛隊を恒常的に、総理の言葉をかりるなら、無限定に、いわば世界の果てまでも派遣できるなどという法案は、無謀きわまりないもので、断じて認めるわけにはまいりません。(拍手)
 さらには、法案の内容です。
 テロ対策特別措置法案第二条では、対応措置を実施する地域は、「現に戦闘が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる」地域で、公海上や外国の領域だとされています。ところが、第三条では、捜索救助活動として、「戦闘行為によって遭難した戦闘参加者について、その捜索又は救助を行う」となっています。
 要するに、対象は戦闘参加者なのです。委員会の審議を通じても、このことについて政府から納得のいく説明はなされていません。
 また、第二条と第十一条の武器使用の関係もはっきりしません。安全な地域に派遣するのに、なぜ武器使用の規定が必要なのでしょうか。しかも、第十一条では、自己の管理下に入った者の生命または身体の防護のための武器使用まで容認しており、明らかに、これまでの武器使用容認の範囲を超えるものです。
 総理は、武力の行使はしないし、武力行使に至ることもないと答弁されています。総理が心底そう信じておられるのなら、御認識の甘さに愕然といたします。武力の行使どころか、集団的自衛権の行使にまで至る危険性をはらんでいる条文であり、総理の答弁は、国民を欺き、愚弄するものです。
 そして、見逃すことができないのは、テロ対策というどさくさに紛れて、自衛隊法第七十八条の治安出動以外に自衛隊による警護出動を認め、その際の武器使用をも容認するという、自衛隊法の改正が提案されていることです。
 この改正は、治安出動における厳格な規制を大幅に緩め、平時に国民を戒厳令下に置くようなもので、国民の基本的人権を大きく侵害しかねない内容となっています。
 さらに許せないのは、防衛秘密の新設です。守秘義務の対象者を業務にかかわる民間業者などにも拡大し、また、罰則も強化されており、これは、廃案となった国家秘密法案と同様、表現の自由に重大なかかわりを持つものです。テロ対策とは直接関係のないこの条項をなぜ意図的に加えるのか、こそくとも言えるやり方に憤りさえ覚えます。
 自衛隊法の一部改正案は、即刻撤回すべきです。(拍手)
 そして、海上保安庁法の一部を改正する法律案にも重大な疑義があります。
 停船命令後の武器使用で相手が死傷しても構わないという乱暴きわまりない内容で、正当防衛の範囲を大きく逸脱したものであり、もちろん、容認することはできません。(発言する者あり)
 静かに聞いてください。
 以上、反対の理由を述べてまいりました。
 小泉総理、あなたが特攻隊員に涙し、不戦を誓った結果がこの自衛隊の派遣なのですか。改めてここで、今回のテロ根絶のために、軍事的手段をとるべきではない、人間の安全保障という立場からの人道支援をすべきであることを強く訴えます。
 最後に、参考人として御出席をいただいた、アフガニスタンで医療支援、水源確保支援を懸命に続けておられる中村医師の揺るぎない信念に、私は深く心を打たれました。ここに、メッセージの一部を紹介します。
 武力報復は、憎しみを沈着させ、さらに根深い報復を生み出します。報復協力者日本もまた、かつてなく危機にさらされるでしょう。テロの防止は、暴力ではなく、命の大切さを人々の心に訴えることによってのみ力を持つことができると信じます。平和の維持には、戦争よりも勇気と忍耐が要ります。
 以上、テロ対策を初めとする三法案に強く反対し、私の討論を終わります。(拍手)

発言情報

speech_id: 115305254X00720011018_021

発言者: 山口わか子

speaker_id: 12387

日付: 2001-10-18

院: 衆議院

会議名: 本会議