増田稔の発言 (憲法調査会)

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○参考人(増田稔君) それでは、御指摘のありました三件の判決につきまして、客観的な概要を私の方から御説明させていただきます。
 まず一件目でございます。全逓東京中郵事件判決について御説明させていただきます。
 この事件は、被告人らが全逓信労働組合の役員として東京中央郵便局の職員に対して勤務時間内に行われる職場集会に参加するよう説得しまして、現に三十八名の職員を職場から離脱させたとして郵便法違反の罪、具体的には郵便物の取り扱いをしない等の罪の教唆犯として起訴された事件でございます。
 この事件につきまして、最高裁判所は、争議行為が労働組合法一条一項の目的を達成するためのものであり、暴力の行使その他不当性を伴わないときは正当な争議行為として刑事制裁の対象とはならないが、そうでない場合には郵便法の罰則が適用され、これを教唆した者は共犯になるという、こういう判断をしております。
 続きまして都教組事件でございます。
 この事件は、都教組の幹部でありました被告人らが公立学校の教職員たる組合員に対しまして勤務評定実施に反対する一斉休暇闘争の指令を配布しまして、闘争への参加を呼びかけた行為が地方公務員法上禁止されている争議行為のあおり行為に当たるとして起訴された事件でございます。
 この事件につきまして、最高裁判所は、地方公務員法を文字どおりに解することは労働基本権を保障した憲法の趣旨に反するので、処罰の対象になるものは争議行為及びあおり行為の違法性が強いものに限られるとしまして、この事件について無罪判決を言い渡しております。
 続きまして、全農林警職法事件の判決について御説明いたします。
 この事件は、全農林労組の幹部でありました被告人らが内閣の警職法改正法案の衆議院提出に反対する運動の一環といたしまして正午出勤行動の指令を出しまして、また職場大会において職員に対し争議行動をあおったとして起訴された事件でございます。
 この事件につきまして、最高裁判所は、公務員の地位の特殊性と職務の公共性を根拠といたしまして、公務員の労働基本権に対し、必要やむを得ない限度の制限を加えることは十分合理的な理由があると言うべきであるとした上で、財政民主主義の観点から、公務員の勤務条件の決定に関して、政府が国会から適法な委任を受けていない事項について公務員の争議行為は的外れであること、公務員の争議行為には市場の抑制力がないこと、労働基本権の制限に対して、人事院を初めとする適切な代償措置が講じられていることから、国家公務員法による争議行為及びそのあおり行為等の禁止は憲法二十八条に違反せず、また争議行為及びあおり行為のうち違法性が強いもののみを処罰の対象とする不明確な解釈は憲法三十一条に違反する疑いがあるといたしまして、従前の判例を変更して被告人らを有罪としたものであります。
 以上、長くなりましたが、三件の判決について御説明させていただきました。

発言情報

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発言者: 増田稔

speaker_id: 5186

日付: 2001-11-21

院: 参議院

会議名: 憲法調査会