今泉昭の発言 (本会議)
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○今泉昭君 私は、民主党・新緑風会を代表して、ただいま行われました財務大臣の財政演説に対し、総理並びに関係大臣に質問をいたします。
小泉内閣が誕生してからもう半年が経過しようとしております。この間、我が国は、小泉内閣が掲げた構造改革五つの目標、すなわち、「努力が報われ、再挑戦できる社会」、「民間と地方の知恵が活力と豊さを生み出す社会」、「人をいたわり、安全で安心に暮らせる社会」、「美しい環境に囲まれ、快適に過ごせる社会」、「子供たちの夢と希望をはぐくむ社会」という美辞麗句の看板とは裏腹に、国民生活の基盤とも言うべき経済活動は低下の一途をたどり、毎日五十件以上の企業が倒産し、経済活動を支えてきた勤労者の方々は三百五十七万人もが仕事を失い、生きる望みを失った人は一日に百人近くもが自殺をするという状況に追い込まれております。このような状況について、総理は一体どう考えておられるのか、お聞かせください。
小泉総理は、さきの通常国会の所信表明演説において、恐れず、ひるまず、とらわれずという姿勢を貫き、改革を進めていくことを表明されました。しかし、六カ月を経過した今日、総理が具体的に改革に手をつけたという行動は全く見えてまいりません。内閣府が現時点で実施したと説明するのは皆、見直し検討開始とか、調査を開始とかというものばかりであり、何もやっていないも同然ではないですか。総理は、骨太の方針と改革工程表と改革プログラムを誇らしげに示しておられますが、まるで絵にかいたもちとも言うべきものであります。
今国会は、雇用国会とも構造改革国会とも言われて国民は注目してまいりました。ところが、今、国会に提出された改革関連法案は金融絡みの少数の法案のみにすぎません。所信表明演説に示された経済、財政、行政、社会、政治の各分野にわたる構造改革を断行するという意気込みは一体どうなったんでしょうか、御説明ください。
小泉総理は、改革には常に痛みが伴う、国民の皆さんにも改革のためには痛みを分かち合い、我慢をしてほしいということを口にされております。このため、金融界の改革に際しては、多額の不良債権を処理するため、多くの中小企業の倒産や多数の失業者が出るのを当然のごとく見過ごしています。さらに、今国会に提出された銀行の株式保有に関する法案や金融再生法改正案等は、国民の負担によって銀行を救済できるという銀行救済法で、国民の痛みを顧みない法案ではないでしょうか。一体だれのための構造改革ですか、総理の見解をお示しください。
次に、補正予算について、財務大臣にお伺いいたします。
今回の補正予算の柱は一体何ですか。財政赤字の中にあって、当初、補正予算の組み立てに消極的であったと言われる財務大臣が、あえてこの時期に補正予算を国会に提出されるには確たる理由があるはずであります。景気の悪化は前々からわかっていたことですから、景気対策を軸として出されるならば、今国会冒頭にも出し、早急に景気対策を打つべきでした。税収の動向が不確かだということは理由になりません。
補正予算の中身を見てみると、景気対策と見られる雇用・中小企業対策と構造改革に関係のある対策が盛り込まれてはおります。この時期に何にねらいを置いた補正予算なのか、御説明ください。
本年度の当初予算は、我が国経済が一・七%実質経済成長という見込みの上で組み込まれたはずであります。しかし、ITバブルの崩壊に始まる諸環境の激変により、今日ではマイナス成長が当然のこととされており、政府も本日マイナス〇・九%に下方修正をしたと伺っております。名目は三年続きのマイナス成長となっていますが、来年度の経済成長もよほどのことがない限りマイナス成長となるのではないかと危惧されております。
ITバブルの崩壊に続き、米国の同時多発テロによる世界経済への打撃、狂牛病による国内各産業への被害を考えると、よほど思い切った景気対策を実施しない限り、我が国経済はこれまでに経験したことのない落ち込みを覚悟しなければなりません。財務大臣、一体この危機にどのような対策を打とうと考えているのか。補正予算だけでは論外でございます。今後の対策と経済の見通しをお聞かせ願いたいと思います。
小泉総理は、公約である国債三十兆円の枠にこだわっていると聞き及びます。経済は社会の変化に大きな影響を受けます。そのため、状況の変化を見きわめ、柔軟に政策対応が求められます。先見性と柔軟性のない政治は自壊いたします。三十兆円の公約にこだわり、国民に大きな苦しみを与えてはなりません。
塩川大臣、あなたは、ここが我慢のしどころ、もう少し頑張れば春風が吹いてくると十一月七日の記者会見で述べられたそうですね。それと同じような言葉を私は思い出します。それは一九九七年でしたか、時の橋本内閣が五つの構造改革を看板に緊縮予算を断行し、景気が急速に下降したとき、時の経済企画庁長官、現小泉内閣で大臣をされていますが、何度もしつこいくらい言われた言葉であります。桜が咲くころには必ず景気は回復します、我慢ですと言い続けられたことです。私は、当時と実に状況がよく似ていると思います。
ですから、早くも二次補正の声が与党内から上がっているではないですか。十五カ月予算の声も聞いております。二次補正は絶対にやらないと断言されますか、お考え方をお聞かせください。
次に、雇用対策についてお伺いいたします。
九月の失業は五・三%となり、史上最悪を記録いたしました。十二世帯に一世帯の割合で失業者が存在することになります。失業統計のとり方にはいろいろありますが、内閣府が二月に発表した統計では、仕事が見つからないから求職活動をやめた人を含めると何と一〇・四%の失業率となり、失業者は七百万人を上回ります。六軒に一軒の割で失業者が存在することになります。
五・三%の失業率はIT不況の影響が含まれていますが、米国の同時多発テロの影響、狂牛病による影響はまだ含まれておりません。さらに、これから始まるであろう小泉内閣の不良債権処理による雇用への影響は全く含まれていないわけですから、十月以降の失業率はさらに悪化することが当然視されております。このような事態は、まさに緊急事態だと思いますが、どう受けとめられておられますか。もし大変な緊急事態であるとお考えなら、補正予算に盛り込まれた過去七回の雇用対策と何ら変わることのない内容でこの事態を解決できると考えておられるのでしょうか、お聞かせ願いたい。
小泉内閣は、前任の森内閣の諸方針を継承されたと聞きます。前の森内閣は、IT基本法を成立させ、我が国を五年以内に世界のIT先進国にすると意気込んでおられました。IT先進国を目指すことは私も大賛成であります。
しかし、森内閣のIT先進国への政策には大きな落とし穴がありました。IT革命というのは、高度に技術が発達した国と低生産、低賃金国とを何の障壁もなく結びつけることです。国際化の流れはこれを一層促進します。このため、我が国の富と雇用の受け皿であったすぐれた製造業は、三十分の一と言われる低賃金国である中国やベトナムに流れ、空洞化が急速に進展しました。電機産業は二一・六%、自動車産業は二八・二%が海外生産となり、雇用の場は大きく失うことになっているのです。米国の例を見て、先進国の製造業が発展途上国に移るのは経済の発展過程と言われる人もいますが、しかし、資源、エネルギーのない我が国が製造業を無視できるはずがございません。
IT戦略と製造業の組み合わせを怠ったことが今日の構造的雇用減少になっていると思いますが、総理の御見解をお聞かせください。
次に、雇用対策について、具体的問題を厚生労働大臣にお聞きいたしたいと思います。
補正予算において、雇用対策費として五千五百億円が計上されております。この中身は、新たな緊急地域雇用創出特別交付金と称し、三年三カ月で三千五百億円の予算を計上しております。この制度は、一九九九年六月に出された緊急雇用対策の焼き直しで、何ら新しいものではありません。しかも、前の緊急地域雇用特別交付金制度が二〇〇二年の三月三十一日に期限切れになるので、その延長ともいうべきもので、新しく雇用が創造されるとは到底考えられません。また、雇用期間が最長六カ月に限定され、しかも実際に雇用されている人の多くは失業者以外の人が多いとさえ言われ、ばらまき的要素が強いと言われております。
この際、緊急地域雇用特別交付金は抜本的改革が必要と思われますが、いかがでございましょう。
次に、ワークシェアリングについてお伺いいたします。
これまで我が国は、景気変動による雇用の調整を、新規雇用の削減、時間外労働の削減、パート・季節工の減少、さらには一時帰休等を中心に、企業内労使の話し合いを軸に行ってまいりました。しかし、国際化による基幹産業の海外展開、産業構造の激変による大量の人員削減に直面し、これまでの企業内努力にも限界が見えてきたことは御承知のとおりであります。
そのため、新しい雇用調整のあり方として、ワークシェアリングの必要性は、第一次石油ショック以来常に話題になりながら、一向に具体化されませんでした。肝心の労使双方がちゅうちょしてきたことも事実であります。しかし、今日の雇用危機に直面し、労使双方の態度も大きく変化し、前向きに転じてきたと言われています。この時期に政府が積極的に両者の仲介をとり、ワークシェアリング制度の実現を目指すべきと考えますが、大臣の御見解をお聞かせ願いたいと思います。
次に、失業やリストラ等により年収が大幅に減少し、住宅ローン返済等が困難となっている勤労者への施策についてお伺いいたします。
今回、政府は、政府系金融機関の住宅ローン返済特例措置の拡充を盛り込んだようですが、私は、銀行等の民間住宅ローンについても、その貸し手が政府系機関の住宅ローン返済特例措置に準じた措置を講じた場合には、国がそれに伴う利差補給金等をすべきではないかと考えます。また、元本据置期間中の上限金利五%については、直近の基準金利を考慮して三%に引き下げることが適当ではないでしょうか。さらに、借入時期等の個々の条件によっては返済額の引き下げ効果が薄い場合もないとは言えないので、月々の返済額の上限を収入の五分の一程度に抑える措置を新たに設けてはいかがでしょうか。
昨今、親のリストラ等によりまして、高校の学費を支払うことができなくなった、大学進学を断念するといった生徒もふえてきております。政府は、不運にもこのような状況に陥った若者たちに、やる気があれば学校に行くことができるのだという強いメッセージを発すべきだと思います。現行の授業料免除措置、助成措置、奨学金制度を大幅に拡充する必要はありませんでしょうか。この点についても答弁をいただきたいと思います。
次に、中小企業政策を中心にお尋ねいたします。
厳しい不況は、中小企業の経営者、従業員や家族の生活に打撃を与えています。まずは、喫緊の課題である中小企業金融政策を充実させるべきであります。金融機関は、大企業向けの不良債権処理を棚上げし、自己資本比率維持のために中小企業に対する貸し渋り、貸しはがしを行っているという指摘が聞こえてまいります。
民主党は、地域金融円滑化法案を前国会で提出いたしました。地域金融円滑化評価委員会が金融機関に資料の提出を求め、金融機関が地域金融の円滑化にどのような寄与をしているかを公表するものであります。この法律は、貸し渋り、貸しはがしを是正し、金融機関が地元の中小企業に積極的な融資を行う有益な存在になるための環境をつくることができると確信しております。
私たちは、借り手ばかりではなく、貸し手の責任を明確にし、事業者がむやみに貸し渋りに遭わないためのセーフティーネットを確立すること、担保至上主義を廃止し、個人保証の要らない事業者ローンを実現すること、直接金融市場を整備するとともに、ベンチャー支援税制を強化することなども提言をしております。
今般の補正予算を見ますと、旧来の政策を踏襲しているだけの印象を受けます。これでは、中小企業の本格的な業績回復は期待できません。民主党が主張しているような斬新な政策を盛り込むべきと考えますが、総理の御見解をいただきたいと思います。
中小企業政策、産業政策を進めるに当たっては、ものづくり産業の振興に重点を置くべきだと考えます。
昨年作成されたものづくり基盤技術基本計画を着実に実行することは当然のことでありますが、そもそも、日本政府にはものづくり産業に関する戦略が欠落しているのではないかと苦言を呈したいと思います。
政府は、骨太の方針で五百三十万人の雇用創出を打ち出していますが、これはサービス業のみを想定しているものであり、製造業、ものづくりをおろそかにしては国の屋台骨を揺るがしかねません。
小泉内閣は、将来の日本経済を展望するに当たって、ものづくり産業をいかに位置づけているのか。為替政策、通商政策なども含めて、ものづくり産業を育てていくための戦略をお持ちなのでしょうか。今般の補正予算においてはどのような具体策を講じていくつもりなのか。以上の点について、総理より明らかにしていただきたいと思います。
今、ITバブルの崩壊が叫ばれていますが、ITだけを育てようとするのではなく、経済の根幹にある製造業にITをどう応用していくかという発想を持つべきではないでしょうか。すなわち、伝統的な産業とITを融合させる切り口が必要ではないかと考えます。この点についても御答弁をいただきたいと思います。
最後に、一言申し上げたいと思います。
二十一世紀に入り、早くも十一カ月を経過しようとしております。新しい二十一世紀に、人々は新しい希望とバラ色の未来を期待していたはずでございます。しかし、現実は、グローバル化という大波と厳しい不況、雇用不安に直面することになりました。そして、米国における同時多発テロを契機に、我々が住むアジアが戦渦の地として巻き込まれることになりました。
アジアには、世界人口の六割近くの人が生活をしております。そしてサミュエル・ハンチントン博士の分類によれば、八つの世界文明のうち七つの文明が入り込むという複雑な地域であることはよく知られていることであります。したがって、この地域の平和と安全は世界の平和と安定につながると言われています。この地域で唯一の先進国である日本は、安定した国力と平和外交を軸に、この地域の発展と安定に貢献していかなければならないと考えております。そのためには、国内においては国民生活の安定、外に向けては信頼される外交が何よりも必要なはずであります。
しかし、日本の顔となるべき今日の我が国外交は、外務省の混乱により、いたずらにテレビのワイドショーの材料にされるだけで、諸外国からの失笑を買うだけでございます。
小泉総理、あなたが常に口にされる聖域なき改革を断行されるならば、まず外務省の改革こそが必要ではないかということを申し添えまして、私の質問を終わらせていただきます。(拍手)
〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇、拍手〕