加藤秀夫の発言 (経済産業委員会)

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○加藤参考人 東京都民銀行の加藤でございます。本日は、このような発言の機会を与えていただきまして、まことにありがとうございます。
 私は、現在、スモールビジネスローンという、中小・小規模企業さん向けの融資商品を取り扱っている部署、専門部署なんですが、そちらに属しておりまして今業務についているという状況でございます。ちなみに、SBとはスモールビジネスということで、中小・小規模企業さんという意味でございます。
 ここで、まず、東京都民銀行を紹介させていただきたいと思います。
 当行は、昭和二十六年設立された東京で唯一の地方銀行でございまして、設立当時は、戦後の不況期におきまして中小企業の金融難の時代であった。そういう環境の中で、都内の中小企業さんの金融難を緩和するために、東京都、また経済界、また都内の企業さんの賛同を得て設立された銀行ということです。したがって、当行の経営理念としては、中小企業と個人のためにという経営理念を挙げて現在でも営業しているということでございます。そういう経営理念を持った銀行ですので、現在でも融資先の九九%は中小・小規模企業さん及び個人の方という状況になっています。
 本日、このような機会を与えていただいたのは、多分、スモールビジネスローンという当行が取り扱っている商品が多少話題になっているからかなというふうに私は思っているんですが、この商品の開発の背景と、この商品を通じて見た中小企業さんの状況というのをちょっとお話しさせていただきたいと思います。
 この商品は、九七年、九八年当時、当時は、大手の銀行さんや大手の証券会社さんが破綻して非常に金融不安が高まった時期でありました。そういった中で、中小企業さん、当行のお客様もそうなんですが、非常に資金調達に厳しい状況にありまして、中小企業専門銀行として東京都民銀行がそういう方々のために何かできるんじゃないか、何かお役に立てることができるんじゃないかということで考えた商品なんですが、これは、銀行側からしますと、東京都民銀行の存在意義の再確認という意味もありました。
 まず、何をしたらいいかということを考えまして、都内の中小・小規模企業さんにアンケートとかインタビューとかニーズ調査をしたわけなんですが、その中で、現在の金融機関に対してどのような不満を、満たされないニーズというんですかね、お持ちですかということをお聞きしました。その結果、金融機関に対する不満というのは、大きく三つの点を挙げられました。
 一つが、まず、金融機関に対して融資を申し込んだ場合に、諾否の回答が非常に遅いという不満がございました。
 どうしても金融機関の場合、一般に審査をする場合に、お申し込みいただいてから一週間、二週間、案件によってはもっとかかる場合もあるのですが、中小企業の経営者の皆様は、そんな時間は待てないよというニーズでございました。
 そういう場合どうなさっているのですかというお話を聞きましたらば、社長さんの個人の資金を会社の方に用立てしたり、知人や親戚から借りたり、また、最悪の事態なんですが、支払いを先に延ばしてもらったりしていると。当時は騒がれたのですが、対応が早いということで、先ほどもちょっとお話が出ていましたけれども、ノンバンクから調達してその場をしのいでいる。ただ、やはり本音は、ふだんおつき合いしている金融機関から借りたい、やはりスピード感をもっとアップしてほしいという御要望がございました。
 第二点が、第二点の不満ですね、満たされないニーズですけれども、これは、金融機関に融資を申し込む際に提出する書類が非常に多い。これは我々も実感するのですが、一般に、審査するためには数期分の決算書とか試算表ですとか資金繰り表だとか、忙しい中でそういうのを一個一個つくってお持ちして時間がかかってしまう。そういうのは面倒で、面倒というのですかね、お手元にある資料ならよろしいのですが、新たにつくらなきゃいけないというのは非常に煩わしいのですという声がございました。
 三つ目が、融資の際に第三者の保証人をつけてほしいということを金融機関からよく言われると。保証というのは借り入れと同じ重さがあるのでしょうけれども、それを例えばほかの方に頼むというのは非常に精神的に負担ですよというお答えがございました。その辺が中小企業、小規模の企業の皆さんのニーズだということを我々把握しまして、結局、審査のスピードをアップして、必要書類を簡素化して、第三者の保証をなくせばお客様のニーズにこたえられるんじゃないかということでスモールビジネスローンという商品をつくったのです。
 この商品の特徴は、翌日に回答します、決算書は一期分でいいです、第三者保証は要りません、当然無担保、担保は要りませんという商品を考えたわけなんですが、ただ、これは銀行側からしますと、今までにない審査システムを確立しなきゃいけないということで、非常に当時は、業界では驚きの目で見ていただいたというような状況です。
 従来の担保主義とか書類主義から脱却して、新たな審査手法を確立しなきゃいけないという状況に我々も追い込まれまして、どうしたらいいかということでいろいろ悩みまして考えついたのが、キャッシュフローや経営者の方のビジョン、その辺をよくお聞きすれば御融資できるんじゃないかということで今スモールビジネスローンの運営をしておるわけなんですが、これは新しい審査手法を、まだ十分じゃないのですけれども確立していこうということで、今調整している状況でございます。
 実際に、ここで、スモールビジネスローンを申し込んだお客様の例を御紹介しますと、例えば広告企業の方なんですが、これは通常頻繁に起こる状況だと思うんですが、例えば、毎月売り先さんから二十日に入金があるのに、先方さんの事務処理の都合で締めが二、三日ずれてしまって翌月になってしまうという場合に、例えば二十五日には皆さんのお給料を払わなきゃいけない。そういう場合に、銀行に申し込んでもスピード差がないものでなかなか難しいということで、当行のこのスモールビジネスローンをお申し込みいただいて、お借りいただいてその場をしのいでいただいた。一カ月間だけ御融資させていただいて翌月に御返済したという状況もありました。
 また、最近、支払い条件の変更とかそういうのも影響しているのでしょうが、これは電気工事の会社だったのですが、今までは、工事を請け負って出来高払いで現金で入金されていたのですが、お取引先さんの方で結局、現金の支払いから手形の支払いに変えてくれないかという要請がありまして、長年の取引で力関係もあったのでしょうが、断り切れず手形でいただいた。
 手形でいただいても支払いに充てることはなかなか難しいわけで、金融機関に申し込みましたら、資金化するには、新規の割引手形をやるにはやはり一週間ぐらいかかりますよということを言われて、そこら辺が対応できなかったということで当行にお申し込みいただいた。当行は担保をとりませんから、その手形があるなら結構ですよということで御融資をさせていただいて、手形の期日に御返済いただいたという状況でございます。
 また、これは衣料品の小売業のお客様なんですが、よく季節物の商品というのがあると思うのですが、それを今までは手形で支払って買っていた。現金で買ってくれればもっと割り引きますよというお話があった。借り入れの金利と割引率を計算したら借り入れた方が得なんですということで、うちのスモールビジネスローンを御利用いただいて、その後順調に、当然毎年同じようなパターンらしいので売り上げは確定しているわけなんですが、売り上げにおいて三カ月後に返済していただいたという状況があります。これは前向きな資金ということで、非常に我々もお役に立ったなというふうには思っています。
 このスモールビジネスローンなんですが、そうはいっても、まだ我々も試行錯誤の状況で今運営しているのですが、取り扱いの数字を申し上げますと、九八年の十一月から始めまして約三年過ぎたのですが、申込件数は延べで二万一千社に上っております。そのうち融資できたのは、我々のスキルの問題もあるのですが、延べ七千五百社の方に融資させていただきました。
 御利用先の業種的な割合を見ますと、サービス業の方が四三%、卸、小売、飲食業の方が二七%、建設業の方が一三%、メーカーですね、製造業の方が一一%という状況になっています。サービス業の方が四割以上ということで非常に大きなウエートを占めているのですが、その中でも広告関連ですとかコンピューターソフトとか建築設計等の割合が高くなっているような状況です。
 これはどういうことかと我々も考えたのですが、これはSOHOの、本当にスモールビジネス、ホームビジネスの方が多いという東京の地区性かなというふうには我々は考えております。つまり、こういう本当に小規模の企業の皆さんというのは、例えば電話一本で契約をなさっちゃうわけですね、発注とか受注を。今までの銀行ですと、契約書はありますかとか何か見積書はありますかとか、そういうお話になってなかなか対応できなかった業種ではないかということで、そういう方々に対しては、我々はある程度役に立ったなというふうには思っています。
 次に、このスモールビジネスローンを通じて見た中小企業さん、小規模企業さんの現状について、ちょっとお話しさせていただきたいと思います。
 中小・小規模企業の皆さんに総じて言えることは、会社イコール経営者の方というのが総じて言えるのではないか。経営者の方がどのように考えていらっしゃるかとか、手腕とかその人柄とか、そこら辺が非常にウエートが大きいなというのは、我々常々話していて思います。
 ですから、担保がないからといってお断りするのではなくて、その方が二年後、三年後どういうふうにこの事業を持っていきたいのかとか、五年後にはこういう状況にしたいとかというお話をしますと、やはり夢を語られる方が結構多いのですね。そういう方々の事業に対する熱意とか頑張る姿勢というのは、やはり金融機関側もある程度積極的に工夫をしながらこたえていかなければいけないのではないかというふうに、我々の部隊はそう思っております。
 ただ、そうはいっても、中小・小規模企業さんにも問題は確かにあるわけです。
 以下、四点ほどちょっと挙げますと、経営者の方のオーナーシップの欠如というのですかね、失礼な言い方かもしれませんが、どうしても経営者の方は、小規模になりますと営業の方に重点を置かれる傾向がございます。ですから、いろいろお話しさせていただいても、決算書一期分しか我々は見ませんから、決算書を見ながらこうやってお話しするのですけれども、大ざっぱな数字だけつかんでいただければいいのですけれども、そこもわからないと。経理の方に聞いてくれとか税理士さんに聞いてくれ、自分は営業しかやらないんだよと言われちゃいますと、我々もちょっと対処のしようがなくなっちゃうので、いや、ここら辺は覚えておいてくださいということは申し上げるときがあります。
 また、本当に小規模になりますと、資金の流れが非常に不透明ということですかね。例えば、これは小売店さんが多いのですが、売り上げがあって、一回帳簿を通していただければいいのですが、帳簿を通さないでそのまま支払いに充てちゃって、その日はこれだけ残ったというようなお客さんも結構いらっしゃるのですけれども、そうすると、その日の残高しかわからなくて、どういう動きをなさっているのかというのがよくわからないもので、我々も、では今後こういうふうになさった方がよろしいんじゃないですかということでお願いをしている状況です。
 また、こういう金融難の状況ですから、自分の企業が幾ら足りないかというのがよくわからない。わかっているのでしょうけれども、なるべく多く借りたいというお客様が結構多いです。本当は、例えば今月は三百万しか要らないのに、五百万欲しいんですよと言う。よく聞くと、三百万で大丈夫じゃないですかと言うと、先がわからないからと言うわけですね。多く借りることはいいのですが、やはり返済しなきゃいけないという、そういう返済負担とか金利負担を考えますと、我々はどうしてもやはり、これだけ借りて、お返しになったらまたお借り入れすればよろしいんじゃないですかと。銀行からいうと収益性にはデメリットかもしれませんけれども、お客様からしますと、その金利負担とか、余計な資金を借りないで、また借りればいいということを我々はお願いしている状況でございます。
 また、先ほどとちょっと関連するんですが、資金管理ができていないというのが、まず四番目に挙げられると思います。
 というのは、自分の手元資金が余りないのにもかかわらず大きな契約をとろうとする傾向があるわけですね。そうすると、その前に、完成して回収する前に支払いが当然発生するわけなんですが、大きな契約になると、やはり中小企業の皆さんは、いやあ、とれたとれたというんでお見えになるんですが、ちょっと待ってください、その前に支払いどうなりますかということで、では、この支払いの資金調達はどうしましょうかという話で、結構そういうケースが多いです。その辺はいろいろお話をさせていただいて対処している次第です。
 このような状況を踏まえて、金融機関と中小・小規模企業さんの関係は今後どうあるべきかということは、個人的に思うんですが、まず、金融機関においても既存の担保主義とか書類主義の審査から脱却して、新たな評価、新たな審査基準というのをつくっていかなきゃいけないんじゃないか、これはもう時代の趨勢じゃないかと我々は思っています。そうはいっても、組織を変えるというのはなかなか難しいんですが、今やっと挑戦してから三年たったんですが、今でも徐々に変えている状況なんですが、これからも続けていきたい。
 一方、中小企業さんから小規模企業さんについては、経営者としての役割というんですか、そこら辺を果たすことが求められているんじゃないか。つまり、バランスのよい経営をしながら、金融機関とは、飾ることなく何でも相談できる、何でも報告できる一つのパートナーとしての役割、金融機関はパートナーとしての役割を果たすべきではないかというふうには思っています。
 現在、銀行に対してはいろいろ批判的な雰囲気が充満しているんですが、このような中でも新しいビジネスモデルを構築して、中小企業それから小規模企業さんと新たな連携を深めようとしている銀行もあるということもちょっと御承知おきいただきたいと思います。
 私の意見陳述はこれで終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 加藤秀夫

speaker_id: 7007

日付: 2002-03-15

院: 衆議院

会議名: 経済産業委員会