八木秀次の発言 (憲法調査会政治の基本機構のあり方に関する調査小委員会)

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○八木参考人 一番目の御質問ですが、普遍性と土着性ということでありますけれども、これは、明治憲法が土着性というところにこだわったのは確かなんですけれども、しかし、普遍性も忘れていないわけですね。ですから、国柄というものをどう表現するのかということです。あるいは、その普遍的なものを日本流にどう表現するのかということによって、普遍性と土着性というのが、ある場合には普遍性であり、ある場合には土着性というふうに分かれてくると思うんです。
 例えが適切かどうかわかりませんけれども、植物も、外来の植物を別の土地に植えると枯れる場合があるわけです。やはりその植物の育った土壌というものをよく吟味する必要がある。これは、西洋の法制度だったりするんですね。これを日本に移してきた場合に、果たしてそれがそのまま根づくものなのか。そのときに、根づくようにいろいろと工夫をその植物に加えてやる、こういうようなことが必要だと思うんです。ここのところが土着性を重視するということにつながっていくと思うんです。しかし、戦後の議論は、とかく横のものを縦にするという、それで来ているんですね。
 ついでですから申し上げますけれども、明治憲法の起草者の金子堅太郎が当時の法学教育を批判しているんですね。当時は、法学教育というと、イギリス法学かドイツ法学かフランス法学か。今の私立大学の前身になっているものは大抵そういう外国法学を教えている法律学校です。金子は、外国法学はあるけれども、日本にないのは日本法学だ、日本法学こそ今後は必要なんだということを言うんですね。そこで、日本法律学校というものをつくるんです。これが現在の日大の法学部なんです。日本法学という名称が日大法学部の研究紀要であるんですけれども、あれは日本大学法学部の略ではなくて、金子の打ち出した日本法学というものを掲げたという点をここで申し添えさせていただきます。
 次ですが、二番目、国民主権の問題であります。
 通常、学校教育の理解ですと、明治憲法が天皇主権で、そこから日本国憲法の国民主権に移ったんだ、こういう理解ですね。しかし、明治憲法下において天皇主権ということが言われていたのは、ごくわずかの学者を除いて、天皇主権ということはほとんど述べられておりません。特定の数人の学者が天皇主権ということを述べていたわけで、通説的な見解としては、国家法人説、言いかえますと国家主権、国家主権説の立場に立っているわけであります。したがって、明治憲法が天皇主権という理解自体が、ある立場に立った理解であるというふうに私はとらえております。この辺、明治憲法と日本国憲法とをあえて対比させる、そういうのが背景にあるのかなという気がしております。
 それから、憲法三原則という言い方ですが、基本原則という言い方ですが、これは必ずしも三つに限る必要はないと思うのです。かつて、鳩山内閣のときに憲法改正が持ち上がったときに、護憲派がこれだけは絶対譲れないものとして三原則ということを言ったものが教科書に載り始めたということでありまして、戦後の「あたらしい憲法のはなし」の中には、例えば象徴天皇制度や議会制民主主義やそういったことも基本原則の中に入っております。ですから、憲法学者によっては五原則とか六原則とかというふうに言っておりますので、三原則という表現にとらわれる必要はないということも申し添えておきます。
 三番目、教育基本法と教育勅語との関係ですが、これは、戦後の一年三カ月間は教育基本法と教育勅語が並立していた時期があります。といいますのが、教育基本法の起草者たちは教育勅語を否定しておりません。教育勅語を道徳の理念として想定しながら、それで足りない部分を、すなわち新憲法との関係で足りない部分を教育基本法でうたったわけです。
 したがって、本来は、戦後教育は教育基本法と教育勅語の両輪でスタートしたわけです。しかしながら、一年三カ月後に、GHQの圧力によって国会で排除決議、失効確認決議が行われまして、葬り去られたということであります。それ以降、戦後の教育は、教育勅語にかわる道徳教育の理念を失っております。私は、その辺のところに今日の教育の混迷、荒廃の原因の一つがあるのではないかなというふうに考えているわけです。
 道徳教育なくして、個人の尊厳、個人の尊重ということをやたらと言うという、教育基本法そのものはそれほど問題はありませんけれども、本来は教育勅語との補完関係であったということでありますから、教育基本法を再考する上では、本来教育基本法に盛り込まれなかったものがあるんだということを確認して、それを今後は盛り込む必要があるのではないかという、そこまでその議論を持っていく必要があるのではないかと思っております。
 以上でございます。

発言情報

speech_id: 115404190X00520020704_017

発言者: 八木秀次

speaker_id: 12834

日付: 2002-07-04

院: 衆議院

会議名: 憲法調査会政治の基本機構のあり方に関する調査小委員会