森田朗の発言 (憲法調査会地方自治に関する調査小委員会)
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○森田参考人 お答えいたします。
いずれも簡単にはお答えできないので、難しい問題かと思いますけれども、第一点目の、これから財政事情が厳しくなる中で、分権改革推進会議としてどのようなモデルないしビジョンを示しているのかという御質問かと思いますけれども、現在まだ、ある意味でいいますと、具体的なモデルを模索しているというのが正直なところではないかと思います。
ただ、昨年の十二月に出しました「中間論点整理」におきましては、いわゆるサステーナブルな、持続可能な形での自治体のあり方というものをきちっと考えていくべきであろうと。これまでは、少なくとも国からの財政移転を前提にして、右肩上がりの形でのビジョンを描き、それをより発展していくという形での自治体像というものを一つのモデルにしていたとしますと、そういう形でのモデルというのはかきにくくなってくるのではないか。
具体的にどういうものがサステーナブルな自治体の姿かということについては、この具体化はこれからの課題だと思いますけれども、現在におきましては、それをどういう形で詰めていくのか、それには少なくともそれぞれの自治体の判断でそうしたビジョンが描けるような制度をつくっていくというのが必要であり、そのための改革に取り組んでいるというのが現状であろう、かように思います。必ずしも直接のお答えになっていないかと思いますけれども、以上でございます。
二番目の法体系の問題につきましては、これは御指摘のとおりだと思います。私自身が、これは憲法上の問題としては指摘できるかどうかわかりませんけれども、少なくとも現在の法制度のもとにおきましては、地方自治体は、国のつくった法律、さらに言いますと政令にも従わなければならない、その範囲内で自主的な立法権を持つというところでございますけれども、国の法律がどこまで細かく規定するかということについては別にルールも何もございませんので、かなり詳細な形で法律が規定している場合には、実質的に地方のいわゆる自主的な立法の余地が非常に縮小してしまう、これはおっしゃるとおりかと思います。
しかしながら、この問題点は、地方分権推進委員会の最終報告の最後の、残された論点のたしか六項目めでも指摘されているところだと思いますけれども、それではどういう形でその法律の規律密度というものをコントロールしていくのか。
これは憲法上なかなか難しいところで、解釈の問題としては九十二条の地方自治の本旨にかかわるあの部分かと思いますけれども、具体的にどういう形で、どのような制度でもってそれがコントロールできるかというのは、これは大変難しい問題ではないかと思います。基本的には、私自身は、国会の方で、法律をおつくりになるところでそれを、ここから先は地方の問題である、ここから先は基本的には国の決めることである、そうした自主的なコントロールをされるというのが一番現実的ではないかな、かように考えております。
三番目は、合併をした場合に、特に中山間地域におきまして、いわゆる都道府県がその事務を肩がわりするということも含めて、合併の問題をどう考えるかという御質問の趣旨だと思いますけれども、これは、私自身は合併を推進するという立場を一応とっておりますけれども、現実の問題といたしましては、二つの価値のいわばトレードオフの問題だと思います。
一つは、できるだけ多くの事務を自分たちで行っていく。それが一つの自治であるし、これはヨーロッパ自治憲章の補完性の原理を正直に読めばそういうことになろうかと思いますけれども、その場合には、やはり行財政能力を強化しなければいけない、そして合併が必要であるということになろうかと思います。しかしながら、現実にそれが無理だとしますと、いわば現在の市町村でできることだけをして、それ以外のことについてはもはや担い切れないので、より広域的な団体にそれをゆだねるべきではないか。これも、自治憲章の補完性の原理からそういう解釈が出るというのが、これまた分権推進委員会の最終報告に示された非常に示唆的な提言であろうかと思いますけれども、これのどちらを選ぶのか。いわば身の丈に応じた形で仕事だけをするのか、あるいは、よりいろいろな仕事をするために規模を拡大するのか、そこは一つの価値判断の問題ではないかと思います。
我が国のこれまでのあり方、そして市町村のお考え、そして住民の方の意向を考えた場合、私は、やはり規模を拡大するという方が適しているのではないかと考えている、そういうことでございます。
四番目のコミュニティーの問題。これは先ほども申し上げましたように大変難しい問題でございまして、形式的な反論といたしましては、現在一番大きな政令指定都市が横浜市で三百四十万人口がございますけれども、そこで実際に住民自治ということが全く行われていないのかどうか、ニュージーランドに匹敵する人口規模のところでは住民自治はないのかというと、決してそうではないと思います。
そういう意味でいいますと、行政サービスの単位、最終的な政策決定の単位がいかにあるかということと、個々具体的な政策の実現をどうやっていくかということについては、後者に関しては、住民参加の余地を工夫する可能性はかなりあるのではないかと思っております。これにつきましては、今回の合併特例法でも、いわゆる旧町村の単位で地域審議会というようなものを置いて、それなりに地域で完結的なことについてはそこの自治にゆだねるという方法も示唆しております。具体的にそれをどういう形で実現していくかは、それこそそれぞれの地域がお考えになることではないかと思っておりますけれども。
御指摘のとおり、これは簡単には両立しがたいところだと思いますけれども、まだまだその工夫の余地がある。また、住民参加が困難だから、では合併しなくて今のままいけるかというと、決してそうではないわけでございまして、そこのところは、答えにはなりませんけれども、いろいろな可能性の中から検討して、それぞれにふさわしい形を選ぶのが望ましいのではないか、かように考えております。
以上でございます。