青柳俊の発言 (厚生労働委員会)
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○青柳参考人 まず初めに、この場で、今委員長からお話がありましたように、忌憚のない意見を述べる、そういう機会をいただきましたことを、委員長並びに委員の皆様方にお礼を申し上げたいと思います。
日本医師会は、平成九年来、医療構造改革の提案を機会あるごとに公表してまいりました。と同時に、節目節目でさらにその内容を進化させ、あるいは成熟化を続けてまいりました。
一方、昨年十一月の末に政府・与党が医療改革大綱をまとめられました。私どもは、この内容については、一〇〇%ではないにしても、非常に高く評価させていただきました。
その後、十二月の予算編成を前にして、制度改革の提案が明らかになってまいりました。しかし、本来的な制度改革の視点がどこか隅に追いやられた内容でございます。特に、平成十四年度あるいは十五年度の財源収支をどうするかという、そこに焦点が当てられた提案内容だった、私はそのように考えております。結果として、国民の負担、つまり保険料負担あるいは窓口負担、それをどう求めるかというところに集約された提案内容であった、実を言うと私はそのように考えております。
このような経過を踏まえまして、本日は、改正法案に関連して三つ焦点を当てて意見を述べさせていただきたいと思います。
まず第一点は、老人保健法の一部改正法案でございます。
今回の法案の中では、自己負担の完全定率化と、さらに自己負担限度額の引き上げという二つの項目が載せられております。
特に私どもが危惧しますのは、外来、つまり入院外において、現在、自己負担の定額制というものを採用している診療所。このケースといいますか、こういう例の場合に、実を言いますと、現在三千四百円の月額上限がありますけれども、法律改正によって、一般的な高齢者は月額一万二千円に上昇するわけであります。特に、この中でも、在宅で療養を続けられている方にとっては非常に大きな問題が起こるんじゃないかなと私は思います。介護保険制度との並びでもおわかりいただけますけれども、医療保険で一割負担、介護保険で一割負担、特に長期療養されている方々は、医療サービスと同時に介護サービスを受けている方が非常に多うございます。ここら辺が一つは大きな問題になるんだろうと思います。
お手元の資料の中に具体的な例を一、二御紹介をさせていただいております。第一例につきましては、資料一に、こういうケースの場合には現在の自己負担が約二・二倍になります。あるいは、資料二には、もう少し医療ニーズの高い方々に対しての医療保険給付というのは自己負担が約三・五倍になります。これにプラスして、介護保険サービスに対する一割の負担というものが課せられるということでございます。
資料三をごらんいただきたいと思います。
これは、総務省統計局が発表した平成十二年度の家計調査年報でございます。世帯主が六十歳以上の高齢者世帯のうち、半数以上、五六・二%が無職世帯となっております。これらの世帯におきまして、消費支出が可処分所得を平均で月額三万六千円ほど上回っているということもこの報告の中に見られます。つまり、こういう方々は、預貯金を取り崩しながらカバーして生活しているということが実態なんだろうと私は思います。
高齢者の方々、これは一般の方々に比べてリスクは非常に高い、病気になる率が高い。さらに、その病気も長期化するわけであります。したがいまして、一年を通じて負担しなければならない金額というのは相当の金額になるということも御理解いただきたいと思います。したがいまして、今回の法案の中で、これをどう、高齢者にとって温かい施策として実現するためにはというふうに考えますと、やはり先生方のお知恵を拝借する必要があるんだろう、私はそのように思っております。
もう一つ、高齢者の自己負担については問題がございます。これは、現在と違いまして、負担額の上限を超えた場合には、あらかじめ負担をして後で請求して還付を受ける、そういう仕組みが実を言うと今回の法律の中で想定されるわけであります。我々といいますか、現役世代の方々ならいざ知らず、非常に複雑な還付請求が待っているわけであります。高齢者の方々、代理人等々を活用するということもあると思いますけれども、果たしてすべての方々が還付を受けに保険者に向かうか。その流れは非常に低いんじゃないかな、私はそう危惧を実を言うといたしております。
そういたしますと、その部分、本来、保険給付という形で保険者が給付しなければならない部分は、保険者の不労所得、こう言うと非常に私としては言葉じりが問題だと思いますけれども、利益になるという流れが一部に出てくる可能性があるわけであります。ここら辺もぜひ先生方に十分御検討いただきたいな、そのように考えております。
第二点目、これは健康保険法の一部改正の問題でございます。幾つか申し上げたいと思いますけれども、時間制約がございますので、この中で一点だけ申し上げたいと思います。
私どもは、従来から、国あるいは社会保険庁の保険者としてのマネジメントの責任を果たしなさい、その上で保険料あるいは自己負担の割合をどうするかという議論をしてくださいという主張を続けてまいりました。しかし、どうも議論経過を見ますと、そこら辺がきちっと整理されないままに三割負担という導入が決まったように私は伺っております。私どもとしては、保険者の責任を果たすことが優先である。これが、国を含めて、国民に対して、やはり自分たちも痛みを感じているんだという姿勢を非常に強調できることなんではないでしょうか、私はそのように思っております。
もう一つは、社会経済が非常に不安定な状況の中で、一般の方、国民の方々は、健康に対する不安、病気になったときに対する不安ということを非常に強く現在感じていると思います。したがいまして、私どもとしては、むしろ経済社会情勢が不安定なときにこそ、社会保障のシステムをより高いレベルに構築するという考え方というのは重要じゃないかなと思っております。
そういう意味でいいますと、先進ヨーロッパ諸国は、むしろ保険料政策あるいは税金政策ということで社会保障あるいは医療保障を賄って、自己負担をできるだけ少なくするという方向にあると私どもは見ておりますけれども、むしろ現在の日本の考え方というのは逆でございます。これは国民の方々の不安を解消する何物でもない、そのように私どもは考えるわけであります。
したがいまして、国民の方々のコンセンサスを得る前に、やはりしなければならないことがたくさんあるんだろう、そういうことを一つ強調しておきたいと思います。
もう一つは、制度改正に関連して、診療報酬改定の問題がございます。この中で、余りたくさんは申し上げません、しかし私どもは、患者さんの負担をできるだけ軽減するという目的で、日本医師会、診療報酬改定マイナス二・七%と、大幅な引き下げをのみました。しかし、これが実際どう推移するのか、どういう動向になるのか、そこら辺に非常に危機感を持っております。私どもは今、大規模な調査を続行中でございます。これによっては提案をさせていただく機会があるんだろうと思っております。
もう一つは、診療報酬改定の中で、外国の不確かなデータをもとに導入された手術要件に関する基準というのがございます。これについても、私どもは、地域医療を崩壊させる以外の何物でもないということで、この問題についても非常に危機感を持って対応したい、そのように考えております。
最後になりました。余りネガティブなことだけを申し上げるわけにいきません。
今回、法案の附則の中で取り上げられました幾つかの抜本改革に向けた取り組み、これについては、私どもも全く共通認識を持っております。しかし、過去、私どもは非常に苦い経験を持っております。つまり、文章化されたものがいつ実現されるのか、どういう道筋で具体化されるのか、これは、過去数年間、私どもとしては非常に期待した部分でございますけれども、今回は、過去を振り返らず、前向きにということで、ぜひこの道筋なり方向性を、自民党を含めて政府関係者が決定していただきたい。
その中で、一つだけ最後に申し上げたいと思います。
一部の議論の中で、医療を弱肉強食型の市場原理体制に導こうという考え方、つまり、すべての分野においてアメリカンスタンダードがベストという考えのもとで議論や提案が、ごく一部でございますけれども、学者や企業経営者から発せられております。しかし、ここにおられる国民の代表である議員さんが、やはり方向性を間違わないで今後の医療制度改革を進めていただきたい、これを最後に申し述べまして、私の意見陳述を終わりたいと思います。
どうもありがとうございました。(拍手)