村上忠行の発言 (厚生労働委員会)

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○村上参考人 連合副事務局長の村上でございます。
 お手元に私どもの資料が二つ届いておるかと思います。御参照をいただければと思います。
 今回の健保法等の改正法案は、単なる患者、国民への大幅負担増による当面の財政対策でしかないと思っております。連合は、抜本改革が実施されないままでの今改正には絶対に反対であることをまず申し述べておきたいと思います。
 九七年九月の大幅負担増は、二〇〇〇年度に医療・医療保険制度の抜本改革を行うことを前提に先行実施されたものでありました。当時の与党三党は、「抜本改革の実施は平成十二年度を目途とするが、可能なものからできる限り速やかに実施する。」ことを国民に公約したのでありました。
 連合は、医療制度の抜本改革に向けた審議会等へ積極的に参画し、保険料を支払う側、医療を受ける患者の立場からその実現を強く求めてまいりました。
 しかし、九七年から今日まで行われてきましたことは、改革先送り、国民への負担増であります。国民医療費が膨脹し、財政赤字が拡大した責任は、抜本改革を先送りし、小手先の財政つじつま合わせに終始してきた政府・与党にあると思っている次第でございます。今回の法改正はこのツケを国民に転嫁するものでしかなく、到底容認できるものではありません。
 国民、患者への負担増は、景気の低迷をさらに長期化するばかりか、社会保障制度への信頼という点からも大きな問題があると思っております。
 九七年の負担増は、景気低迷に拍車をかけた要因の一つとされています。現在、完全失業率は五・二%、デフレ経済のもとで、国民は雇用と生活、将来不安を高めています。今、このような大幅負担増は行うべきではありません。
 また、社会保障制度への信頼という点からも大きな問題があります。そもそも医療保険制度とは、労働者など被保険者が病気などのリスクを支え合う短期保険として出発しています。その被保険者の医療費の増加で保険財政が赤字なら、負担増はやむを得ないかもしれません。しかし、昨今の保険財政赤字は、老人医療費拠出金などの増加によるものであります。保険者が支払う全拠出金が、保険料収入の四割を超えるに至っています。
 今回の三割負担や大幅な保険料アップなどの負担増は、拠出金を賄うために行うものであり、一体だれのための保険かという不満が高まっております。老人医療を支えることを否定しているのではなく、支え方の仕組みに合理性、納得性が失われていると思っております。このことが、医療保険制度に対する不信の大きな要因となっています。
 加えて、政管健保における違法な脱退、医療事故、医療費の不正請求など、さまざまな問題が山積しています。問題点の解決や抜本的な制度改革を先送りし、負担増を繰り返すのであれば、いよいよ社会保障制度全体の空洞化を招くことになります。
 次に、今回の改正法案に対して幾つか御意見を申し上げます。
 第一は、自己負担額を二割から三割へ引き上げることについてであります。
 政府は、三割負担は公平であると述べています。公平な負担とは、自己負担だけではなく保険料負担とのトータルで考えるべきであります。負担だけ公平というのはおかしな論理であります。そもそも自己負担が三割というのは、保険制度と言えるのでしょうか。私どもは疑問を持っておる次第でございます。
 連合は、三割負担が若人の薬剤一部負担金の廃止と引きかえであるのなら、薬剤費負担は残すべきであると考えております。薬剤に係るコスト意識の喚起、薬剤使用の適正化の効果があらわれていた制度を廃止する理由が全くわかりません。若人の薬剤費負担金の廃止によって生じる財源確保として三割引き上げがあるのなら、本末転倒だと考えております。
 また、一九八四年に定率一割が導入されてから、二割への引き上げには十三年を要しています。わずか五年で三割に引き上げるとすれば、制度への不信が強まることは間違いありません。三割負担は行うべきではなく、撤回すべきと考えております。
 厚生労働大臣は、大きな病気になるほど負担は軽くなる、自己負担については上限のついた三割が一つの限界であると述べました。これは、高額療養費制度の自己負担限度額を今後も引き上げないという前提でしか成り立ちません。しかし今後、限度額を引き上げれば、実効負担率は大きく変化します。大臣の説明は全く納得ができないのであります。
 第二は、総報酬制導入、政管健保保険料引き上げについてであります。
 連合は、総報酬制に関しましては、年間総収入での格差是正という観点からは反対ではありませんが、今回は、保険料引き上げだけを目的としており、到底納得はできないのであります。
 そして、政管健保の保険料率は、総報酬制で現行の七・五%を八・二%に引き上げるとしている。これは約一割アップと、過去にない大変大幅な引き上げになるわけであります。保険料を支払う勤労者の生活が厳しい状況に置かれている中、到底納得できるものではなく、最も取りやすいところから取ろうとしているとしか思えません。負担増の前に、政管健保の一般医療給付費への国庫補助一三%を本則の一六・四%に戻すべきであります。
 第三は、高齢者医療についてであります。
 私どもは、老人医療費のみの抑制策ではなく、医療費の総額抑制策を導入すべきであると主張してまいりました。ところが、昨年九月の厚生労働省試案で、老人医療費の伸び率管理制度の導入が盛り込まれました。その後、具体的な内容が提示されるものと思っておりましたが、伸び率管理制度は政府・与党の医療制度改革大綱において後退し、今改正案では単なる指針での助言という全く骨抜きとなってしまいました。政府提案の老人医療費の抑制策は一体どうなったのでしょうか。
 現行の老人保健制度を存続させた上での部分改正は、単なる改革の先送りでしかありません。老人保健制度の抜本改革が実現するまでは、小手先の改正など行うべきではないと考えております。改正案を撤回し、早急に、若人の五倍かかる老人医療費を欧米諸国並みの三倍程度に引き下げる具体策の実行と、新たな高齢者医療制度を創設すべきと考えております。
 第四は、高額療養費制度における自己負担限度額の引き上げについてであります。
 高額療養費制度は、二〇〇〇年秋の臨時国会で社会保険の原則を崩す制度改革が行われました。今回、限度額をさらに引き上げようとしております。実効負担率は、高額療養費の自己負担限度額の上限設定などによりましてどうにでも変化をいたします。上位所得者一%条項を廃止し本来の姿に戻し、限度額の改定は、政令ではなく法律で規定することを強く求めます。
 第五に、附則について述べたいと思います。
 政府は、抜本改革の内容は法の附則に盛り込んだと説明しています。しかし、実効性の担保が大臣の決意だけで実現できるとは思えません。附則の実効性が担保されないことは、九八年の国保法等の改正時の附則を政府みずからほごにしたことで実証済みであると思います。
 さらに、この附則には医療提供体制の重要な改革課題が触れられていません。別途、厚生労働省が示した医療提供体制の改革スケジュールを見ますと、各課題の実施時期、実行スケジュール、完成時期が不明確であったり、時間がかかり過ぎていたり、我々からは抜本改革がいつ実現するのか全くわからないわけであります。
 せめて、国民に約束してきた医療・医療保険制度の抜本改革の実現と負担増とをセットで示すのが、政府・与党の責任であるのではないのでしょうか。
 国民が長期不況に苦しむ中にあって、経済状況を悪化させるような大幅負担増を行うべきではありません。最近発表されましたメディアの調査によりますと、大多数の国民が健保法改正に反対しております。政府が今行うべきことは、雇用対策の強化、医療保険制度を初めとする社会保障制度への信頼を確実なものとし、国民の生活不安を解消することであると思います。
 連合は、改正法案の内容が明らかになってから、全国で、安心の医療制度への抜本改革を求め、負担増に反対する街頭宣伝行動や署名活動を展開してまいりました。署名は七百八十八万名を集約し、衆参両議長に提出したところであります。
 私たちの声をぜひとも受けとめていただき、負担増ありきの健保法等の改正法案を廃案とし、医療・医療保険制度の抜本改革の断行を重ねて要望いたしまして、私の意見陳述を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 村上忠行

speaker_id: 14754

日付: 2002-06-11

院: 衆議院

会議名: 厚生労働委員会