勝村久司の発言 (厚生労働委員会)
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○勝村参考人 どうも本日は、私ども市民の立場からの意見陳述の機会をいただきまして、ありがとうございます。
私の方からは、医療保険の値上げ、患者負担の値上げの前に、医療費の中身が余りに不明瞭であるということと、もう一点は、実はこの医療保険制度と医療事故、医療不信との問題点は密接に関連しているんだということをお話しさせていただきたいと思います。
私は、十年ほど前に、陣痛促進剤の被害で一人目の子どもを亡くしました。それで、医療裁判を起こしました。三年前に大阪高裁で勝訴確定しましたが、そこに至る中には、カルテが改ざんされていた、裁判の中で主治医が事務が勝手にやったんだという言いわけをしましたが、カルテは改ざんされていたし、レセプトは、当時、厚生省の指導で患者本人に見せることはできないということで見せてもらうことができなかった。
全く、カルテもレセプトも、正しい情報がない中で裁判を闘わざるを得なかった、そういう状況の中で薬害、医療被害が繰り返されてきた。かつ、その中で医療費ばかりは患者の負担も含めどんどん増大してきた。そこをどう変えていくかというのが本当の意味での、医療保険に仕組まれた日本の医療保険制度、医療の改革ではないかと思っているわけです。
私たちは、陣痛促進剤で被害を受けたのでその問題にも取り組みましたけれども、その中で多くの薬害や医療被害の市民団体と知り合うようになりまして、みんなが共通に思ったことは、それぞれの薬害、医療被害の根底にあるのは、やはり医療費、お金の問題だ。つまり、医療の単価の問題だということで、みんなでレセプト開示、レセプトが当時開示されませんでしたから、レセプトが開示される運動をしよう。そういう意味で、多くの薬害、医療被害の市民団体のリーダーたちが横のつながりとしてつくったのが、この医療情報の公開・開示を求める市民の会というグループです。
したがって、私たちの会は、結成されたのは七年ほど前ですが、すぐにレセプト開示というものを、当時、厚生省の指導で、患者には一切見せてはいけない、見せられていなかったレセプト開示を求めて運動を始めました。
なぜレセプトが大事なのかということを、二点、お話しさせていただきたいと思います。
まず一点目は、架空請求を防ぐという意味があります。これは、非常に軽視されようという世論がつくられつつありますが、私たちの実感では非常にたくさんの架空請求が存在しています。一時、数年前、国会でも三割が架空請求じゃないか、十兆円近くが架空請求じゃないかという議論もあったようですけれども、そのときに、やはりだれもわからない、架空請求がどれぐらいか、本当にそんな医療を受けていないのに医療を受けたかのように請求されているものがどれだけかというのは、医療を受けた本人が見ないとわからないわけなんです。ところが、その医療を受けた本人にレセプトが見ることができないんですから、本当の実態はだれもわからないから、一切何のデータもないと思います。
ただ、例えば、つい最近の事例では、一つの開業の歯科医ですけれども、八カ月間で三億円を超える架空請求があったんじゃないかということで、監査に入った。一つの開業医です。国保だけで三億円を超えている。そういうふうなこともわかってきたということがあります。その一つの開業医の例で、それはたまたまのことなのかというと、これまで、数は少ないですけれども、毎年、厚生行政が入っている架空請求の指導の一覧などがようやく厚労省のホームページで載ってきていますけれども、そういうのを見ていると、普通の市民感覚で言えば、一体どれだけの架空請求というのがされているのかとやはり思わざるを得ないような状況があると思います。
そういう部分が、不必要な部分が非常に使われているかどうかということを放置したまま、お金が足りないんだ、支払ってくれということに普通の消費者感覚として納得がいくだろうか。その点を、ぜひ、まず考えていただきたいというのが、一点目です。
二点目、なぜレセプト開示が大事なのかの二点目ですが、レセプトには医療のそれぞれの単価が記されています。病院でもらった領収書、請求書には、詳しいものでも検査料幾ら、投薬量幾ら、処置料幾らということで、小計、すなわち合計しか書かれていませんが、レセプトにはすべて、検査だったら正式名称と数量と単価、薬剤に関しても、何という薬か正式名称があって、それを幾ら使ったから単価が幾らだから幾らということが全部書かれているわけです。そういう単価を知ることは、カルテ開示ではできなくて、レセプトにしか書いていないわけです。
単価を知るということがなぜ大事かといったら、その単価が実は医療の価値観を決めているからです。経済社会では単価というのはまさに価値であって、医療機関からすると、単価のない、つまり価値のないものは施そうとはしないわけです。
例えば陣痛促進剤の例を考えてみても、枚方市民病院の裁判の経過からわかることは、なぜ陣痛促進剤を必要がないのに全員に使っていたかというと、その方がもうかるからだと。つまり、それをしなければ赤字になる、赤字になってしまって病院が経営できなくなる。つまり、患者にとって何がいいかという観点だけで医療を行っていくと、病院は赤字になってしまう。それはなぜかというと、単価がおかしいからです。だから、国民が必要とする、国民がこれに価値があるという医療行為に対して単価がついていない。全然関係ない、国民がこんな医療嫌だと思っていることにすごい単価がついている。だから、不本意な医療というのがその中で起こってしまう。不本意な医療のきわみが医療事故だと僕は考えています。
だから、そういうものをなくしていくためには、単価を健全にしていかなきゃいけない、医療の価値である医療の単価を健全にしていかなければいけない。そのためには医療の単価を国民のニーズ、当たり前のこういう医療はうれしいですよというものに合わせていかなきゃいけない。そのためには、国民に単価をまず知らせないと、国民はその議論に入っていくことができないわけです。レセプトは見ることができなかったですから、国民は一切、どんな単価で、つまり、どんな価値観で医療がされているのかを知るすべがないわけです。
本当なら、夜間のお産でも多くの人が付き添ってくれて、非常に心温まるお産ができた、こういうのは本当にありがたい、たくさんのお金を支払いたい。ところが、そういうものに一切価値がつけられていない、単価がつけられていない。そういうお産をしている病院は赤字になってつぶれてしまう。陣痛促進剤をたくさん使って平日の昼間に無理やり誘導して、かつお産の時間も減らして、そうすると、子宮口はやわらかくなっていないから会陰切開としてはさみで切って、そういう、切れば切るほど、薬を使えば使うほどもうかる、そういう価値観になっていることが薬漬け、検査漬けの根源だということ。さらに、事故が起こって集中治療になってしまうと、ますますその病院に収入が入っていく。
そういう背景の中で、どれだけ現場のお医者さんたちに良心的になってくれと言っても、良心的になれば病院がつぶれるというジレンマの中での、もうぎりぎりの医療が日本で行われている。
そのために、その解決策は、まず、国民が単価を知っていくべきだ、そのためにレセプト開示が大事だということを訴えてきました。五年前にようやくレセプト開示が実現したんですが、それが、私たちの運動や、被害者としての運動で実現したんですが、ところが、まだ国民に全然レセプト開示が浸透していません。その理由は何かといったら、社会保険庁のつくったレセプト開示のマニュアルに問題があるからです。
それはどういうマニュアルになっているかというと、レセプトを開示するか否かは、お医者さん、医師の確認をする、医師が開示しない、そのレセプトは開示しないでくれと言ったものに関しては開示をしないということになっていますから、本当に患者にとって必要なレセプトが開示されない状況があって、開示が進んでいません。その理由は、レセプトを開示すると病名を知って、がんだとかの場合だと患者が不安がるからだというようなことが言われています。
しかし、それは全く論理としておかしいです。病名を知って患者が不安がるかもしれないということであれば、やはりすべての患者に、だから見せませんという方が納得いきます。ほとんどの人には見せるけれどもがんの人にだけは見せませんということが、本当にその人のケアになるんでしょうか。開示請求をした人の話です。開示請求をした人、見たいと言った人で、あなたにだけは見せられませんということが、その人のためになることでしょうか。ますます不安になるに違いありません。
つまり、見たいと言う人にはいかにきちんと見せていくか、そこが人間相手の仕事をしている、人として一番大事なところであって、一切見せないのではないんだったら、もう逆にすべての人に見せる、見せていくときにどう告知していくかを研さんしていく。それはそうでしかないのに、見せたくないものは見せないという状況が続いていることが一つの問題です。
また、社会保険庁のマニュアルでは、遺族の場合はもう本人が亡くなっていますから告知の問題はないと言いながら、レセプトを開示した後に、レセプト開示しましたよとこそっと伝えたりしている。
こういうふうな問題が、個人情報保護の観点から問題があるのじゃないかということを、例えば神奈川県の大磯町の個人情報保護審査会なども指摘していますが、自治体や健保組合、保険者である国保とかは、そういうふうなものをすることがなぜか怖いというようなことを言っていると。一体何が怖いのかということを考えます。
健康保険組合、保険者が赤字になっている理由は、僕はそもそも保険者に責任があるのではないかと思っています。厚労省などは、別に医師に確認しなくてもレセプトを被保険者に開示してもらっても法律上差し支えないですよと言っていますが、なぜかそれをようしない。もっときちんと、レセプト開示を請求したら普通にしていくようにしていってほしいというふうに思います。
では、最後に二点、極めて国が簡単にできることを二つお願いしたいと思います。
今言いました、まず保険者のレセプト開示のマニュアルですが、社会保険庁のレセプト開示マニュアルで、そういう意味ではレセプト開示を拒否する大義名分は一切ありませんから、レセプト開示は請求があれば速やかに、医師に確認をしたり、開示した後医師に連絡したりというようなことはせずに、速やかに被保険者のためにレセプトを開示してほしい。
もう一点は、まず国立病院の窓口でレセプト相当の詳しい明細書を見せていってほしい。このように明細を知っていることが、単価を知っていくことが、架空請求を防ぎ、医療の価値観を健全にしていく。そういうこともない中で、明細を一切見せようとしない中で、負担増ばかり強いるということに消費者は納得できるわけがないということをぜひわかっていただきたいということのお願いをしておきたいと思います。
どうもありがとうございました。(拍手)