山内功の発言 (本会議)
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○山内功君 山内功でございます。
ただいま趣旨説明がありました個人情報保護等関連法案につきまして、民主党・無所属クラブを代表して、質問をさせていただきます。(拍手)
最初に、個人情報保護法案について質問します。
本法案は、昨年、みずからの買春疑惑を報じられ、支持率も地に落ちていた森内閣のもとで法制化されたもので、襲いかかる報道に対抗しようとしたのか、メディア規制という毒が盛られました。
一方、小泉総理は、巧みなメディア戦術で、本年一月までは高い内閣支持率を維持してきました。メディアに配慮して、法案には慎重姿勢と言われてきました。
そんな中で、法案推進への総理の心変わりは、田中外相を更迭したこと、経済危機が深まるばかりで一向に成果が上げられないこと、自民党議員や閣僚、高級官僚の不祥事が相次いで発覚していることにより、メディアの政権批判が一気に高まってきていること、ここに原因があるのではないかと受けとめているのですが、今述べた認識について、総理に反論があれば伺いたいと思います。(拍手)
言うまでもなく、憲法二十一条に定められた表現の自由は、その重要性にかんがみ、憲法が定める基本的人権の体系の中でも優越的地位を占めています。また、国民の知る権利に奉仕する報道の自由は、民主社会の基盤でもあり、根幹でもあります。
本法案の最大の問題点は、この表現の自由、報道の自由が窒息死するかもしれないということです。それは、一つには、法案第二章の基本原則が国民すべてに適用されるからであります。
例えば、ある記者が政治家の汚職事件を取材していたとします。汚職は、本人が公表するわけがない。当然、内部告発を受けたり、事情を知る第三者から情報収集を積み重ねます。その際、「個人情報は、適法かつ適正な方法で取得されなければならない。」という基本原則が適用されます。これもあいまいな概念ですが、後にこの政治家が訴えて裁判になった際、適法かつ適正な取得が争点となり、いつ、だれが、だれから、どのような形で取得したのかを明らかにするよう求められる可能性が出てきます。
すると、取材活動にとって生命線とも言える取材源の秘匿が脅かされる。取材源が明かされるのではないかと考えるだけで、事情を知る第三者が情報提供、内部告発をちゅうちょすることは、間違いありません。これは、情報提供者の側の萎縮です。
また、同じ汚職事件の取材で、「本人が適切に関与し得るよう配慮されなければならない。」という基本原則が適用される場合はどうでしょうか。
自分への取材が進行していることを察知した政治家は、この原則を根拠に、これまでに取得した情報を開示せよと記者に迫る可能性があります。開示すれば取材源の秘匿が脅かされますから、記者は拒否します。また、訴訟に発展しかねない。記者も人間ですから、そんな繰り返しのうちに、次第に取材活動が萎縮していく懸念がある。これは、報道機関の側の萎縮です。
本法案の法制化に際し、基本原則適用によって生じるこのような具体的支障についてどのような検討をされたのか、総理の見解を伺います。
本法案が、悪徳政治家及び権力者保護法とか巨悪スキャンダル発覚防止法などとやゆされるのは、以上申し上げたように、取材、報道活動に萎縮をもたらし、疑惑のある政治家や高級官僚にとっては、都合のいいことこの上ないからであります。
総理は、先ほど、基本原則は努力義務だから問題ない、表現の自由を制約するつもりは毛頭ないと説明しました。しかし、百歩譲って、立法者の意図がそのとおりだとしても、法律がひとり歩きする場合もあります。だからこそ、欧州主要国では、メディアの特殊性、重要性を踏まえて、個人情報保護の原則をも適用除外としているのであります。米国でも、メディアにおける個人情報保護の法制は存在しません。
以上から、私は、報道の自由、表現の自由にかかわる行為については基本原則を適用すべきではない。報道機関は、個人情報保護について、一層真摯に自主的取り組みを進めていただきたい、そして、これからも勇気を持って巨悪を、疑惑を暴いてほしい。このように考えますが、総理の見解を求めます。(拍手)
関連してお伺いします。さすがに、法案では、第五章の義務規定の適用除外として、報道などの四分野を挙げています。
条文では、報道分野については、放送機関、新聞社その他の報道機関、そして、報道の用に供する目的である場合にだけ義務規定を適用除外するとしています。では、出版社が発行する雑誌、写真週刊誌、テレビのワイドショー、ノンフィクション、小説、映画、美術、音楽、漫画、あるいはインターネット上のホームページ等、これらの表現手段は適用除外になるのか。なるとすれば、なぜ条文に明記しないのか。
さらに、列挙されているのは機関あるいは団体ですが、フリーランスのライターや個人の小説家、評論家、あるいは、さまざまな表現活動を行う個人は適用除外になるのか。なるとすれば、なぜ条文に明記しないのか。
さらに、報道目的の定義は何か。報道目的であるかどうか、あるいは非報道目的であるかどうかは、だれが判断するのか。最終的に主務大臣が判断するのであれば、メディア規制を目指す与党の影響を受けて、判断基準が変わらないのか。以上の点について、総理の明確な答弁を求めます。
次に、第二の問題点について質問いたします。
法案では、個人情報取扱事業者に対し、管轄の主務大臣が、懲役、罰金という罰則を背景にして、報告の徴収、助言、勧告または命令という形で監督を行います。かなり強力な民間への介入です。そして、主務大臣といえば与党です。
自民党の皆さん、胸に手を当てて思い出してください。内閣支持率が低迷するたびに、報道がけしからぬ、番組をチェックしろ、メディア規制立法が必要だと、今まで大騒ぎをしてきたではありませんか。そのような体質の与党議員が主務大臣になるわけです。
民主党が政権をとればそんな恣意的な介入は絶対にあり得ませんが、いずれにせよ、報道だけでなくあらゆる分野で、個人情報の保護を名目にした官、与党による恣意的な介入、規制が強まるおそれがあると言わざるを得ません。
なぜ、欧州のように中立な第三者機関をつくって監督を任せようとはしなかったのか、総理の答弁を求めます。
第三の問題点について質問します。
高度情報化が急速に進展し、大量の個人情報が瞬時に世界を駆けめぐる現在、個人情報の保護は重要な課題となっています。私どもも、個人情報保護のための法制化自体は必要だと考えます。
ところが、本法案は、事業者の立場に配慮し過ぎて、国民の個人情報の保護という立場が弱くなっています。端的な例が、自己情報コントロール権が明確に位置づけられていないということです。プライバシーとは、かつて、一人でほっておいてもらう権利でしたが、高度情報化社会では、それにとどまらず、個人情報の収集、管理、利用、流通などの各段階において情報主体が能動的に関与することが必要となっています。
しかし、法案には、この自己情報コントロール権について、権利として明記されていません。例えば、開示、訂正にしても、例外となる業務の適正な実施に著しい支障を及ぼす場合とは何か、全くあいまいであり、拡大解釈されれば開示、訂正が骨抜きになる可能性もあります。これらの点についての総理の見解を伺います。
次に、行政機関の保有する個人情報保護法案について質問します。
そもそも、日本における個人情報保護の論議は、直接的には、平成十一年、住民基本台帳法改正案の審議の過程で出てきたものです。行政機関が大量に保有する個人情報の流出や不正利用があれば大変な事態になります。
しかるに、今回の行政機関についての法案では、第一に、民間事業者の義務規定違反については刑事罰があるのに、行政は違反しても刑事罰がなく、その危険性からして、行政に甘過ぎるのではないか。第二に、地方自治体の条例でも、差別につながるセンシティブ情報の収集制限を盛り込んでいるところがあるのに、なぜ法案では盛り込まれなかったのか。
ほかにも多数、問題点はございますけれども、ここでは、以上二点について総理の答弁を求めます。
最後に、総理に申し上げます。
総理にじかに手紙を出し、個人情報保護法案の廃案を訴えた作家の城山三郎さんは、この法律によって、官報と建前情報ばかりがあふれる暗い時代が幕をあけようとしている、言論、表現の自由というのは、生きるということと同じくらい大切なんだということをみんなが理解すべきだと訴えております。総理、城山さんのこの指摘にどうお答えになりますか。
総理、言ってみれば、あなたはメディアによって生まれた総理大臣だと思います。そのあなたが、メディアを、表現の自由を真綿で絞め殺すような法案の成立に突き進むのは、ブラックジョークというには余りにも重過ぎる、痛烈な歴史の皮肉としか言いようがないのであります。(拍手)
折しも、人権擁護法案の審議も昨日から参議院で始まりました。だれもが賛成する人権擁護や個人情報保護という名のもとでメディアが規制される。このことで、今、日本という国が何を失おうとしているのか、総理にはいま一度冷静に考え直していただきたい。私は、人権や個人情報保護と表現、報道の自由が両立する道をこそ追求していくべきだと考えます。
総理、今からでも遅くはありません。少なくとも個人情報保護法案は撤回し、これまで申し上げました諸点を踏まえて抜本的につくり直し、提出し直すべきだということを最後に強く申し上げ、私の質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕