伊藤英成の発言 (本会議)

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○伊藤英成君 私は、民主党・無所属クラブを代表して、ただいま議題となりました、いわゆる有事法制関連三法案について質問をいたします。(拍手)
 私は、今、この場に立ちまして、本日午前中、この壇上でプローディ欧州委員会委員長が演説をされ、中東・パレスチナ問題に関連いたしまして、軍事的行動は恒久的解決にならないと強調されていたことを、今、印象深く思い出します。(拍手)
 私は、有事法制を議論しようとするとき、日本の姿勢として、そもそも憲法の基本原則である平和主義や国際協調主義に基づく外交、予防外交を積極的に展開し、できる限り紛争を未然に防止し、アジアの近隣諸国との信頼関係を構築するなど、しっかりとした外交を展開していくことが大前提であることをまず冒頭申し上げ、質問に入りたいと思います。(拍手)
 さて、民主党は、一九九八年の結党大会で、「シビリアン・コントロールや基本的人権を侵害しないことを原則としながら、有事・危機に際して超法規的措置をとることのないよう関連法制の整備を早急に進める。」と決定して以来、翌九九年には安全保障基本政策を策定し、「緊急事態において、日本に対する武力攻撃などに効果的に対処できるようその活動の根拠を与えるとともに、」「このような緊急事態においても自衛隊などの活動が、シビリアン・コントロールの下にあり、国民に対する必要以上の権利制限とならないよう、国民の権利、とりわけ憲法上認められた基本的人権・表現の自由等を保障すること」、こういうことに重点を置いて、積極的に検討を重ねてきました。
 有事法制の本質は、一時的にではあれ、時の政府に国民の権利の制約をゆだねる側面があるということです。そのため、政府の権限拡大を認めるには、国民の信頼に足り得る政府であることが不可欠です。
 しかし、今、小泉総理への支持率は大きく低下しています。身内の国会議員や、この法制の中心となるべき防衛庁や外務省においてもさまざまな疑惑が喧伝され、とどまるところを知りません。国民生活に重大な影響を及ぼす法案が、疑惑を指摘されている議員や役所の主導で審議されるのでは、国民の理解が得られません。
 失われた国民の信頼の回復についてどうなさるのか、有事法制整備に向け、小泉総理、川口外務大臣及び中谷防衛庁長官から、基本的な認識をお伺いいたします。
 次に、政府案について具体的に伺います。
 政府案は、外部からの武力攻撃に対抗するために、自衛隊の行動の円滑化を優先する法整備となっており、国民の安全や保護のための法制、国際人道法や米軍支援に関する法制などの重要事項については、単に言葉として挙げているのみで、事実上先送りです。政府案では二年以内を目標に整備となっていますが、むしろ、こちらの方こそ重要であるはずであります。
 また、現代社会で最も蓋然性が高いと思われるテロやゲリラや不審船への対処、大規模災害等への対応についても、すっぽりと抜け落ちております。
 小泉総理は、折に触れ、備えあれば憂いなしと言っておられますが、この法案では、基本的人権に関する備えなくして憂いありとの疑念を持たざるを得ません。(拍手)
 こうなったのは、連立与党間の政局絡みのさや当て、包括法を主張する小泉総理と冷戦思考の国防族との確執、防衛庁と警察庁の縄張り争いのせいと言われております。
 国民生活に重大な影響を及ぼす法案が、政権内部の御都合主義によってゆがめられたとしたら、これほど国民にとって危険な話はありません。国民の安全のためにそもそも何が必要なのか、改めて検討し直す必要があると考えますが、総理の考えを伺いたい。
 次に、武力攻撃事態の定義について伺います。
 政府案では、対象を、武力攻撃のおそれのある事態と、事態が緊迫し、武力攻撃が予測されるに至った事態としていますが、その区別が不明確です。予測される事態まで対象とすると、時の政府に都合のいい、主観的、恣意的な運用となる余地が生じてきます。また、周辺事態でも武力攻撃事態になり得るとしたら、周辺事態法との関係はどうなるのですか。このような難解な定義では、かえって現場で混乱をもたらすのではないでしょうか。明確な判断基準とすべきだと考えますが、総理の御所見を伺いたい。
 次に、民主的統制の観点から伺います。
 政府案では、国会の関与や見直し規定、政府の暴走を阻止する仕組み等が極めて不十分です。武力攻撃事態では、通常の手続をとるいとまがない可能性が生じることは否定しません。しかし、不用意に手続の省略を認めると、行政府の専横によって、民主主義そのものが危殆に瀕する事態もあり得ます。
 武力攻撃事態に対処するには、自衛隊の活動を含む諸態様を実施する行政府と、その基本方針を定める立法府が、共同して当該事態に対処するのだという決意のもと、必要な情報開示を受けた国会や国民が、自衛隊を含む行政各部の行動や人権制約を伴う公権力の行使をしっかりと監視していくべきであります。
 そのような見地から政府案を見ますと、心もとない限りであります。例えば、自衛隊が必要な国会承認を受けて防衛出動をした場合であっても、一定の期間が経過した後に、新たな視点から活動の是非をチェックするようなシステムも必要ではないでしょうか。また、対処基本方針の廃止等には国会の議決による廃止規定を設けるべきであり、その際、事の是非を判断するためには情報開示規定が必要だと考えますが、これらの諸点について、総理及び防衛庁長官から御答弁をいただきたい。
 次に、地方公共団体、指定公共機関等について伺います。
 地方公共団体は、住民保護のための必要な措置を実施する責務を負わされることになります。内閣総理大臣と地方公共団体の長との関係では、総合調整が整わない場合は、別に法律の定める事項について指示をし、従わない場合は代執行ができるようですが、具体的にはどのような場合を想定しているのか、片山総務大臣から明らかにしていただきたい。
 また、責務の一端を担うとされる指定公共機関とは、別に政令で定めることとされていますが、そもそもどういうものなのか。対象となる業種程度は、きちんと法律で規定すべきだと思います。対象には民放や各種マスコミも含まれるのでしょうか。これら指定公共機関にあっては、どのような活動制限か、指導をだれが、どのような権限で行使するのか、片山総務大臣から明らかにしていただきたい。
 さらに、国民等に及ぼす影響が最小となるための警報の発令、避難の指示、被災者の救助、消防等に関する措置について、具体的にどのような枠組みを構築していくのか、全くわかりません。国の省庁間、地方公共団体等をまたいだ相互連絡、物資配給、警報、避難誘導、消防等を行うための法制は、実際どのように考えられておられるのか。総理及び総務大臣の御所見を伺いたい。
 次に、法案では、国民の協力の名のもとに、強制的に徴用されるのではないかとの不安の声も聞かれます。また、物資の収用等や業務従事命令及び違反者への処分については、専ら自衛隊による任務遂行という都合から不服申し立てができないようですが、こうむった不利益はどのように解消できるのでしょうか。総理及び防衛庁長官からお答えいただきたい。
 さらに、この法案には、武力攻撃事態において国民の権利が侵害、制限されたときの申し立て、補償、賠償などに関する規定、具体的手続など、裁判所による事後の司法審査についての言及がありません。特別な定めが必要だと思いますが、既存の法的枠組みで十分という認識なのでしょうか。総理から御所見を伺います。
 次に、米軍の行動に関する法律が検討されながら、最終的には先送りされてしまいました。米軍が行動する場合、どのようなシステムで調整されるのか、日本有事のための支援であっても、米軍の行動についての定めがなければ、国民は不安に思います。周辺事態における後方支援活動等や集団的自衛権との関係等、極めて重要な課題の解決も迫られています。
 法案にある対処措置においては、米軍への物品、施設、役務の提供その他の措置が明記されていながら、武力攻撃事態における米軍との物品役務相互提供協定の整備については述べられていませんし、武力攻撃事態に米軍による権利侵害などがあった場合の裁判管轄権、適用法令の選択等の規定もありません。総理及び川口外務大臣から、米軍にかかわるこれらの問題について、具体的にお答えをいただきたい。
 最後に、最も重要な基本的人権の尊重について伺います。
 人権に関する基本理念は、平時、有事を問わず守られるべきであります。武力攻撃事態における公権力の発動においては、人権侵害に至る危険性が高いことを想起すべきです。だからこそ、あらかじめ政府が守るべき基本理念を定め、それを最大限尊重する努力義務を定めることが重要だと考えます。
 例えば、いかなる事態にあっても、思想、良心、信仰の自由といった内心の自由は絶対不可侵であること。その他の精神的自由権に対する制約がなされる場合は、より重大な人権を守るための必要最小限の範囲にとどめなければならないこと。特に表現の自由については、原則として事前に制約してはならず、例外的に事前抑制が可能な場合も、その内容を問題にする制約は許されないこと。経済的自由権に対してやむを得ず特別の制限を課すには、その損失等を補償しなければならないこと。難民の迅速な受け入れ等や捕虜、戦傷病者の保護等を定めるジュネーブ条約関連法制を早急に整備することなどが重要でしょう。
 以上のような観点からの具体的な規定を置くつもりはないのか、また、どのようにして国民の基本的人権を担保していくつもりなのか、小泉総理からお伺いをして、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

発言情報

speech_id: 115405254X02920020426_041

発言者: 伊藤英成

speaker_id: 6600

日付: 2002-04-26

院: 衆議院

会議名: 本会議