平野貞夫の発言 (憲法調査会)
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○平野貞夫君 国会改革連絡会の平野でございます。
約一年間にわたる国民主権と国の機構というテーマの調査を総括して、二つの問題を申し上げたいと思います。
一つは、国民主権の根源は憲法制定権であり、これを機能させる制度を整備していないことは近代立憲国家とは言えないという問題でございます。
御承知のとおり、憲法前文は、「主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。」と規定しております。また、九十六条では改正権、すなわち制定権と言ってよいと思いますが、それは国民の承認、制度として国民投票による過半数の賛成を必要とするということを規定しております。
具体的な国民主権の行使としての参政権、国民の代表者として選ばれて構成する国会、選ばれた人が構成する国会、それから発生する内閣や行政権のあらゆる機能は、この国民の憲法制定権によって発生するものであります。したがって、この憲法制定権が活動、機能する制度が整備されてこそ具体的な国民主権が健全に機能するものだと思います。
ところが、日本国憲法が施行されて五十四年目になりますが、当初は占領軍の方針で、独立後は極端な改憲論と教条的護憲論の衝突で、国民投票制度を中心とする憲法制定権を発動させる制度が整備されていないことは誠に遺憾なことであります。これは、厳格な意味で日本は憲法体系が確立していない、整備されていないということでありますし、憲法に基づく政治、すなわち立憲政治が行われていないとも言えることでございます。早急に、国民投票制度を中心とする憲法改正の諸手続制度を整備する必要があると思います。
現在、与野党の中に、憲法改正について合意ができてから整備すればよいとの意見や、あるいは改憲を阻止するため改正手続制度の整備をしない、行うべきでないという意見があります。これらはいずれも憲法を冒涜する発想であります。憲法をどうするかという根本問題は、国会に決定権はございません。国民主権という限り、なれ合い、感情論、政治的思惑をやめていただきたい。憲法制定権の発動を整備することを放棄して国民主権を論じることは、自己矛盾であり自己撞着であると私は思います。
冷戦終局後、日本の自立が盛んに論じられております。真の日本の自立は、国民のこの憲法制定権を機能させることを整備してこそ初めて可能だと思います。
第二に、最近、特に憲法調査会設置後、政府・与党の憲法運用には極めて国民主権を機能させる憲法の条文や原理に反するものが続出していることを具体的に指摘したいと思います。
何度もここで申し上げたんですが、まず第一に、小渕内閣が総辞職した、そして森政権に替わる憲法七十条の運用は、明らかに七十条を拡大解釈あるいは直接規定されていないものでございます。政治家の判断というより、私は内閣法制局や官邸の官僚たちの憲法観を疑うものでございますが、明らかにあれは、その後の問題から、展開からいいましても憲法に反した行為であったと。したがって森政権の正統性が疑われた。こういうことがやっぱりあってはいけないと思います。
それから、小渕、失礼しました、小泉首相になって、首相公選に関する私的諮問機関というのを作られました。私的とはいえ公の立場でああいう機関を作るということは、そもそも憲法を私は無視したものだと思います。内閣法を改正すればともかく、現段階では内閣に憲法発議権はありません。それが、議院内閣制の根本にかかわる問題を総理という立場で研究しようということ。勉強したければ人にないしょに学者を呼んで勉強すればいいのでございます。この調査会か審査会かは知りませんが、に東京大学の学長たるものがなったことは、私は見識を疑います。ここはやはり、憲法というものの大事さを小泉さんはよく理解してほしいと思います。
それから、これも何度も申し上げましたが、熊本地裁のハンセン病判決の控訴断念、これにかかわる政府談話というのは、これは司法権を無視したものでございます。憲法を無視して自分だけのパフォーマンスに使うなんということは、憲法政治を本当に私は冒涜した行為だと思います。
それから、昨年、百五十三回国会での自衛隊海外派遣法の問題でございます。当時、私は自由党で、反対いたしましたのですが、憲法上の自衛隊の位置付けをせずして、なし崩しで自衛隊を海外に派遣するということは極めて危険なことでございます。ああいうやり方というのは、私はやはり憲法政治に反する政治運営だと思います。
それから、百五十回国会での参議院における公職選挙法改正、強行改正のこのやり方は、政党政治の本質を崩壊させたものでございます。
憲法調査会ができて、どうして政府・与党はこんなに憲法を無視した行動をやるでしょうか。私は、積極的な憲法改正論者でございますが、現在のそういった政府・与党の体制で憲法改正は行うべきでないという意見を持っております。憲法の本当の本質、民主主義というものをよく政府・与党の方は理解していただきたいと思います。
最後に申し上げたいことは、日本人には二つ憲法を持っているということでございます。現在の日本国憲法とともに心の中にある日本人の憲法は、なれ合い、なし崩し、何でもありという憲法の原理でございます。この日本の、日本人の心の中にある、これは与党だけじゃございません、私どもまあ持っておると思いますが、ここのところをやっぱり本当に直してこそ、私は本当の日本国での憲法政治ができるものだと確信しております。
大変失礼なことを申し上げました。
以上でございます。