近藤剛の発言 (憲法調査会)

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○近藤剛君 ありがとうございます。自由民主党の近藤剛でございます。私からは、国民主権、特にその行使の在り方につき、所見を述べさせていただきます。
 我が国におきましては、国民主権は主として国政選挙、すなわち衆参両院議員選挙に参加することによって行使されます。この代議制民主主義が有効に機能するためには、政治上の言論と結社の自由が確保されること、そしてその投票価値の平等が保障され、主権者の意思が公平に国政に反映させる仕組みが確保されることが絶対に必要な条件であります。特に投票価値の平等は、主権者たる国民にとりまして常に保障されるべき基本的権利であるべきであります。憲法十四条におきましては、すべて国民は法の下に平等であることが保障をされております。住む地域によりまして、あるいは投票をする場所によりまして、日本国民の一票に格差があってはならぬことは当然であります。
 しかるに、我が国におきましては、いまだにこの主権者たる国民に保障されるべき基本的権利が確保されていないのが実情であります。すなわち、選挙区によりまして一票の格差が大きく異なる状況が依然として続いているのであります。
 具体的に申し上げますと、参議院におきましては、議員当たりの人口を都道府県別に見てみますと、東京では約百五十万人、鳥取県では約三十万人とほぼ五倍にも達する格差があるわけであります。衆議院におきましても、神奈川七区では約六十万人、島根三区では約二十三万人と二・五倍を超える格差が存在をしております。そして、格差が二倍を超える選挙区が何と九十五もあるのであります。これでは、憲法十四条に言います法の下の平等が実現されているとは到底言えないのであります。
 このような票の格差が現実の国政に大きなゆがみをもたらしてきたことは、残念ながら否定できません。特に、都市部のサラリーマン層の声が十分に国政に反映されているとは言い難い状況にあります。誤解を恐れずに申し上げれば、政策分野によりましては、少数の代表者による多数に対する支配と言われる状況すら見られるのであります。
 国民一般に政治に対する白けた雰囲気が充満をしております。選挙に対する関心の低下、あるいは無党派層の増加の傾向が見られるのも恐らくそのような状況が影響しているのではないかと思われます。
 このような状況を招いた背景には二つの原因があろうかと思います。まず第一が、言うまでもなく国会の不作為であります。第二が、そのような国会の不作為を許す結果となった最高裁判所の違憲審査に対する消極的な姿勢であります。
 違憲審査権を定めた憲法八十一条にもかかわらず、我が国の最高裁の違憲審査に対する姿勢には一貫して消極的なものがありました。そして、憲法によって付与されておりますこの重要な機能を積極的に果たそうとする気概が一向に感じられないのであります。このことによりまして、我が国の国政上多くのエネルギーと時間が憲法解釈に費やされてきた事実があります。憲法九条にかかわる解釈論争はその典型的なものであろうかと思います。その結果は、内閣法制局が実態面で最高裁の役割を果たすがごとき事態を招いていることは、先ほど江田委員から指摘されたとおりであります。
 一票の格差の問題につきましても、差別を受けたと考える有権者からこれまで何度も裁判が提起をされております。しかし、衆議院議員定数配分については、平成十一年の判決で二・三〇九倍は合憲、参議院につきましては平成十二年の判決で四・九八倍は合憲とされたのであります。しかし、その数字の根拠は不明確であります。そして、その判断は国民の納得を得られたものとは到底言い難いのであります。
 海外に目を転じてみますと、米国は日本と同様に付随的違憲審査制を取る国であります。しかしながら、米国の最高裁判所の違憲審査に対する姿勢と運用は我が国と違います。極めて積極的であり、能動的であります。一九六三年には一人一票の原則を明確に打ち出しております。そして、六九年には各選挙区間の人口の格差、すなわち一票の格差は六%でも違憲との判決を下しております。八三年の判決では、わずか〇・七%の格差でさえも違憲とされたのであります。
 法の下の平等が民主主義の基本であって、投票価値の平等が常に保障されるべき国民の絶対的権利であると考えるのであれば、米国最高裁の判断の方がより普遍的であり、理解することも容易であろうかと思います。
 我が国の政治の現実から判断をいたしまして、将来にわたりまして、国会自身に、最高裁の合憲判断を、判決を大きく超えて、ある意味で既得権益の放棄につながります一人一票に向けた選挙区画定作業を自ら実行する勇気を期待することは、残念ながら悲観的にならざるを得ません。である以上、代議制民主主義下におきますあるべき国民主権を実現するための残された選択肢は、最高裁が姿勢を大きく変えるのでない限り、極めて限定的なものでしかありません。その一つは、投票価値、平等を憲法上明記をすること。もう一つは、大陸欧州に見られます憲法裁判所の設置なども視野に入れた大胆な司法改革の推進であろうかと思います。
 以上の論点につきまして、今後更に掘り下げた議論が当調査会の残された調査期間内になされることを期待をいたしまして、私の発言を終わります。

発言情報

speech_id: 115414184X00420020410_026

発言者: 近藤剛

speaker_id: 17234

日付: 2002-04-10

院: 参議院

会議名: 憲法調査会