柳時悦の発言 (憲法調査会公聴会)

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○公述人(柳時悦君) 皆さん、おはようございます。柳時悦と申します。私は、日本生まれ、日本育ちの在日韓国人二世でございます。
 今日、このような場所で私に意見陳述させていただく機会を与えていただいたことを、まず最初に御礼申し上げます。
 一番最初に私が主張したいことは、日本には日本国憲法という立派な憲法があり、そこでは基本的人権が尊重されるようにうたわれております。また、日本は国際人権規約にも加入し、国連難民条約も批准し、そして最近では差別撤廃条約も批准しました。しかし、これらの差別を反対するすべてのものも、外国人に対しては外国籍であるということを理由に、正当に、差別が行われているという状況にまず最初に不満を述べるものでございます。
 さて、現在、私と同じような特別永住者は日本に約五十一万人居住しているわけでございますが、その在日が存在する理由については、皆さんも御存じかと思いますが、それは日本の植民地支配と戦争遂行政策によるものでございます。つまり、徴用や自由募集、官あっせん、徴兵といったようなことによって炭鉱、鉱山、建設現場にと労務動員されたわけでございます。あるいは、軍属として連行されたものでございます。
 一九四五年、終戦の時点におきまして約二百万人の在日がいましたが、百五十万人は祖国へと帰還しました。そして、五十万人が残ったわけでございまして、それが現在の特別永住者となっているわけでございます。このことが、私が主張したい、一般外国人とは違った処遇を私たちには与えるべきではないかという主張の根拠なわけでございます。
 一九四五年、終戦から一九五二年のサンフランシスコ講和条約発効までの間、私たちは、時には日本人として、時には外国人として、その場の都合によって取り扱われてまいりました。しかし、サンフランシスコ講和条約発効後、日本が独立した以降、私たちは完全に外国人として日本国憲法に言う国民の享有する諸権利からすべて排除されたわけでございます。
 国籍の回復は在日にとっては植民地侵略被害の回復とはならず、新たな迫害の歴史の始まりであったわけでございます。これ以降、私たちは、差別との闘い、いや、侮べつとの闘いでございました。
 どのような闘いがあったかを多少紹介させていただきます。
 居住権の問題、就職差別の問題、それは民間企業とか公務員とかでございます。それから、社会保障、福祉の差別の分野、そして国籍条項という大きな壁の問題でございます。
 具体例を挙げますと、日立就職差別事件、司法修習生採用事件、国公立大学教授任用問題、国公立小中高教員採用、教諭か常勤講師かという問題、国民健康保険加入問題、公団・公営住宅入居問題、国民年金問題、児童手当問題、電電公社職員受験拒否問題、公務員の国籍条項、東京都管理職受験拒否問題、その他、一般的には昔の話ではありますが、生命保険の加入だとかクレジット販売、銀行の融資、指紋押捺、こんな問題を闘ってまいりました。
 これに対して、日本の行政の対応はどんなものでありましたでしょうか。私たちの差別を放置し、むしろ正当化する姿勢でございました。そして、その正当化の論拠というのは当然の法理というものでございます。この当然の法理が私たちの差別をシステム化したのでございます。
 当然の法理とは、公の意思形成に参画し、あるいは公権力の行使に関するものは外国人は駄目だと。そして、将来、それに対する、それに就く可能性のあるものも駄目だということでございました。
 四百万人という安定した職場から在日は完全に排除されてきました。これは、在日を圧迫し、排除か同化をさせるという姿勢が歴然としたものだと思います。在日そのものを存在からなくそうというもの、それは、極端な言い方をすれば、抹殺と同じ意味ではないでしょうか。
 そして、これらを支える日本人の意識について述べたいと思います。
 日本人は単一民族主義というものを持っておりまして、それが排外的ナショナリズムへと結び付き、元々、植民地時代の侮べつ意識があったものが相まって、差別が平気な状態になっておるわけでございます。また、違う角度から見ますと、経済繁栄による一国繁栄主義的な傾向により、自分さえ良ければよいという傾向が強く、外国人に対する問題など軽視してしまう状態があるわけでございます。
 私たちは、これらの状況との闘いの中で現在はどのような状況にありますかと申しますと、一九七九年国際人権規約加入、あるいは一九八一年の国連難民条約の批准により、多くの差別は改善されたことは事実です。これは、国籍条項が居住条項へと変わったことによるものです。しかし、これは在日の努力に対しての答えではなく、日本の国際的要因によりこれを改善したという、非常に私たちからすれば残念な状況でございます。
 現在、それでも私たちはまだ、マンションを借りるとき必ず断られます。警察に何か言ったとき本名を言うと、外国人だということで外登証を一々提出を求められます。出自を隠さなければならない状況がまだございます。名前を、日本名を使いながら生きなければならない。そして、子供たちは将来の職業選択の自由がございません。大変狭い範囲でしかございません。
 私たちは、基本的人権の確立と住民としての認知のために何をすればいいかという問題が最近になって絞られてきました。それは、地方参政権の問題、それを獲得すること。そして、公務員就任権の国籍条項、当然の法理、これを撤廃してもらうことが私たちの的を絞った闘いとなってきました。これらが改善されると、より困難な問題、つまり意識上の差別についても効果的な影響が出ると確信しております。
 幸い、最近になって、最高裁の判決、九五年、地方参政権における最高裁の判決がございました。それによりますと、外国人に地方参政権があってもそれは憲法違反ではない、立法の問題だというふうに指摘されております。是非とも皆様の対処をお願いする次第でございます。
 そしてもう一つ、公務員就任の問題におきましては、都庁国籍差別・任用差別撤廃訴訟において、東京高裁で、当然の法理の無原則的な適用に歯止めが掛かりました。公務員採用の国籍条項が地方公共団体の裁量の範囲として撤廃されることと憲法上の保障が及ぶ範囲として撤廃されることでは隔絶した違いがあります。憲法上差別が許されない一線が示された今後の影響は、大変大きなものがあると思っております。是非とも立法の場できちっとした対処をしていただければと思います。
 そのほかにも細かいことを言えば、戦後補償問題。戦傷病者戦没者遺族等援護法、これが国籍をもって、国籍条項によって排除されてきました。これを受けられない問題、これも解決していただきたいと思います。また、国民年金。一九八二年に国民年金法の改正時に、つまり外国人も入れるようになったときの経過措置の不備のため、老齢年金、障害年金に差別が残っています。在日のお年寄りたち、若い人に面倒を見てもらえる人はまだましですが、そういう人でない人たちの生活の困窮さを思い浮かべていただきたいと思います。
 以上からしまして、日本社会は、今まで在日側からの国籍差別に対する抗議を受けた範囲で、やむを得ない場合にのみこれを最小限是正するという姿勢でございました。これを改めてもらいたいと思います。
 私たちは今まで司法によってしか救われてこなかったのでございます。今日、政治主導で積極的に在日韓国・朝鮮人、また外国人を日本社会に受け入れ、基本的人権を守り、ともに生きる住民として認知する政策を整備してもらいたいのでございます。さっき述べた二つの判決に対して、政治によって政策化していただきたいのでございます。
 基本的人権、職業選択の自由、幸福追求の権利、平等原則が結果として実現されるためには地方参政権が必要でございます。しかし、地方参政権の意義はそれにとどまるものではありません。マイノリティーに対しても人権を尊重し、生活者としての住民、市民を尊重し、互いに異なった者同士が他方を排除し若しくは吸収するのではなく、互いを必要とし必要とされる共生社会を築き上げるという理念や価値観を尊重すべきではないでしょうか。それが二十一世紀の価値観だと確信しております。
 現在、世界では、民族、宗教、地球環境問題、貿易摩擦、その他様々の次元で相異なった人たちが非人間的な争いを展開しています。こういった争いを解決する道は、相異なる人たちがともに同じ社会を形成し、排除したり抹殺したり同化するのではなく、ともに相手を必要とし必要とされるような共生社会の実現、こういった理念の普及しかこの問題を解決する道はないと思います。
 最後に、歴史的経緯を持った在日に対して、日本人か外国人かというような処置とは違った処遇を是非ともお願いしたいと思います。
 しかし、それは一般外国人に対しても必ずいい影響があると信じています。九二年のときに私たちの指紋押捺が撤廃が実現したとき、それから約七、八年たった九九年には一般外国人にも指紋押捺が廃止されたのでございます。このようにして、在日に対するきちっとした政策は在日以外の一般外国人にも必ずいい影響があると信じております。
 皆様の御協力をお願い申し上げまして、私の陳述を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。

発言情報

speech_id: 115414187X00220020515_006

発言者: 柳時悦

speaker_id: 7202

日付: 2002-05-15

院: 参議院

会議名: 憲法調査会公聴会