林直諒の発言 (厚生労働委員会)

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○参考人(林直諒君) 私は、本会議にお招きいただきました東京女子医科大学病院長の林直諒と申します。
 当病院心臓血圧研究所循環器小児外科における医療事故について、関係各位には昨年より多大の御迷惑をお掛けしておりましたところ、今般、当院の関係者が逮捕される事態に至りました。このような不祥事を引き起こしたことについて、関係各位と患者様並びに御遺族様の皆様方に対して、改めて心よりおわび申し上げます。
 それでは、資料でございますが、まずブルーの方には詳しい資料がとじ込まれておりますが、その中には調査委員会、当大学における死亡原因調査委員会報告などが組み込まれております。それから、別紙になっております方は、本日お話しいたします目次が書かれております。これに沿ってお話しさせていただきたいと存じます。
 まず、「事件のあらまし」でございますが、東京女子医科大学病院附属心臓血圧研究所、以下、心研と申しますが、における手術の結果、平成十三年三月五日に当時十二歳の少女が死亡した医療事故につき、本年二月より社会保障審議会医療分科会において安全管理体制などについて審議されておりますが、今般、執刀医外一名が逮捕され、執刀医を含む四名が業務上過失致死などの容疑により検察庁に送検されるに至りました。
 高度の医療を提供することなどを任務とする病院としての社会的責任を痛感して、深く反省しております。
 二番目の、事件の概要でございますが、ごく簡単にお話しさせていただきます。
 本医療事故の詳細については、既に資料に添付してございますが、死亡調査報告書に記載しておるとおりでございますが、本件医療事故の問題点としては次の諸点が挙げられます。
 一、本件は、人工心肺装置の操作中に発生しました。人工心肺装置は、医学上の知識だけではなく、機械の専門的な知識が要求され、専門の臨床工学技士は手術に立ち会っておりませんでした。本件手術が行われた循環器小児外科においては、臨床工学技士不在の手術が行われておりました。
 二番目の問題ですが、医療体制、すなわち内科と外科の連携という面でも問題がありました。心研では、手術直前まで内科の医師が診察し、術後直ちに内科が担当するということが通常でありました。
 三番目は、執刀医は、人工心肺装置の操作ミスがあった事実及び重篤な脳障害の可能性については何らの説明もしておりませんでした。その上、カルテなどを改ざんしました。
 四、本件医療事故は、医師の人工心肺装置の操作及びトラブルが起こった場合の対処方法に関する知識不足がその直接の原因と考えられますが、この点は、医師本人の自己研さんの不足もさることながら、循環器小児外科の研修体制に不備があったと言わざるを得ません。医師に患者及びその家族との信頼関係を築く努力が不足していたことも明らかとなりました。特に、患者様ないしその御家族様への事前説明の不足、その上、手術中発生した事実を正直に告げていなかったこと、さらには、その事実を隠ぺいすることすら行われていたことも明らかとなり、それは調査委員会報告書にも記載されております。
 三番目は、従来の安全管理体制でございます。
 本件医療事故発生前の当院における安全管理体制は、資料の、お手元の資料を配りました一に書かれております。このうち、安全管理委員会は全学又は各部署における事故防止対策の妥当性を審議し、安全管理委員長は医療事故防止システム全機関の状況把握と諸活動の監督に当たるとされ、院内事故防止対策委員会は、インシデント・アクシデント・レポートによる全学的リスクの情報の早期把握に努め、全学的に取り組むべきリスクの原因・状況分析を行い、防止策を提案することとされておりました。
 しかしながら、医療事故防止を目的とした安全管理委員会とは別に、重大事故対応、この資料一の左側の下に書いてございますが、重大事故対応、医事紛争を担当する組織が存在し、重大事故が発生した場合に、安全管理委員長には報告されないままこれに対処する特別の委員会が設置されているというのが通常でありました。その結果、医療事故に関する情報は安全管理委員長には集約されず、全学的な事故防止対策を確立するには至っておりませんでした。
 また、インシデント・アクシデント・レポートには各部署の部門安全管理委員の署名が必要とされていたため、レポートが部門安全管理委員のところで停滞し、院内で発生したインシデント・アクシデントが効率的に安全管理委員長に報告されず、全学的なリスク情報の収集が不十分となり、効果的な事故防止の検討ができておりませんでした。
 次に、四番目、新しい安全管理体制ですが、これはお手元の資料二をごらんいただきたいと思います。一番大きな変化は、図の右側に書かれております医療安全対策室の設置でございます。そして、すべての事故は医療安全管理委員会に報告されることになっております。
 各組織上の説明をさせていただきます。
 今度の安全管理体制は、各委員会の整理統合などを行い、インシデント・アクシデント情報の収集、分析、医療事故防止の対策について、病院全体を網羅したシステムの下で安全管理を行うための組織を整備いたしました。
 それで、このうち医療安全管理委員会は、委員長は病院長が務め、副院長のうち一名をゼネラルリスクマネージャーと定め、さらに同人を本委員会の副委員長に指名いたしております。本委員会は、病院全体の安全管理を統括する役割を担うものであります。院内事故防止対策委員会のほか、感染対策委員会、防災対策委員会からの報告も受け、全学又は各部門における事故防止対策の妥当性を審議いたします。重大事故も含めてすべての情報を医療安全管理委員長に報告すべきものとして情報を集約させることといたしました。
 従来、安全管理の総責任者が不明確であり、その結果、病院全体の組織を見渡す見地からの安全管理が不十分となっていた点を改め、本委員会の副委員長であるゼネラルリスクマネージャーが安全管理の総責任者であることを明確にいたしました。
 本委員会は、平成十四年三月八日に第一回目の委員会が開催され、六月末までに計六回開催されております。
 次に、医療安全対策室ですが、これは専任の職員を有する常設の機関として置きました。言わば医療安全管理委員会や院内事故防止対策委員会の事務局と位置付けられるものであります。医療安全対策室は、副院長が室長を務め、専任の看護師一名及び専任の事務職員二名のほか、兼任ではありますが、医師や薬剤師なども置くことといたしました。
 医療安全管理委員会特別部会、これは図にはございませんが、重大事故が発生した場合には、医療安全管理委員会の委員長である病院長の命令により、病院長指名のメンバー、外部委員及び当該診療科の部長で構成する特別部会を設置し、速やかな事故対応を行うことといたしました。事案によっては事故調査委員会を発足させ、徹底的な事故原因の調査及び再発防止を提言するものといたしました。
 次に、院内事故防止対策委員会。全学又は各部門における事故対策の妥当性を審議するための委員会であり、月一回、委員会を開催し、医療安全管理委員長から依頼された案件の審議、検討を行うとともに、各部門リスクマネージャー部会から報告される対策案についての妥当性を審議、承認し、その結果を医療安全管理委員会に報告するものといたしました。
 次に、アクシデント・インシデントの流れですけれども、資料三をごらんいただければと思います。
 この医療安全対策室が中心となりまして、ここですべてのアクシデント・インシデント報告書だけではなく、クレーム・事故報告書などすべて一括してここに集約し、そして医療安全管理委員会に持っていって検討するという形になりました。そして、今までは各部の責任者のサインをして上に上げていた報告書は、少しでもおかしいと思った場合は、個人で直接この医療安全対策室に上げることといたしました。
 次に、心研の問題点とその改善。特に、心研においては、本件医療事故を起こしたことを真摯に反省し、医療事故防止に全力を挙げております。
 心研は、本件医療事故当時、附属する独立した研究所とされていましたが、所定の手続を経てこれを変更し、病院内の一部門といたしました。特にこれは独立した組織という意識が強く、また、他の診療科においても心研を特別視する意識がなかったとは言えません。このような背景事情が、本件医療事故における前述した各種問題点を生み出したことも否定できません。
 そこで、現在、心研では、本件医療事故の反省から、患者及び家族との強固な信頼関係の形成を目指し、安全かつ高度な医療を提供すべく改善策を実施しております。
 そして現在、人工心肺装置の更新、新たに人工心肺マニュアルを作成し、高度に熟練した体外循環技士を育成し、手術の際にはこれら専門の技士に任せることとし、医師と技士との協力体制をすることといたしております。
 次に、基本理念でございます。
 今までインフォームド・コンセント、カルテ開示など臨時部長会を何度も開いてまいりましたが、全学的行事として、七月九日、死亡原因調査委員会委員長より事件経過報告、院長より今後の取組について、また、NPO法人ささえあい医療人権センター理事長辻本好子氏の「患者の立場からの医療安全」をテーマに講演会を行いました。ここには職員約二千人以上が集まりました。そこでは、徹底した過去の清算と新しい病院の建設をテーマとすることといたしました。
 まず、過去の清算といたしましては、医療安全管理外部評価委員会の設置をいたしております。これは四月十八日、第一回目の委員会が開催されております。この答申を受けまして、答申内容の実現に邁進する所存であります。
 二番目は、懲戒委員会の開催を、六月二十七日に、第一回を行っております。管理責任者についても適正な処分をすべく鋭意検討することとなっております。
 現在までの改善について、安全管理については、報告制度、講演会、部長会、医長会の活性化などに努めてまいりました。また、カルテ改ざんなどを防ぐため麻酔記録自動装置を手術場に設置いたしました。来年度には外来部門ではすべて電子カルテの導入を決定しております。
 今後の課題としては、一番大切なことは、全員が患者様主体の医療をすることであり、今や医療は人間の理解なしにはあり得ないことだと思っております。
 今後の課題ですけれども、まず第一に検討している課題としましては、病院長に専念する者を病院長職に充てるべく検討しております。第二に、センター方式及び大学の機構上の問題がありまして、この改革も進めていく予定でございます。それから、第三者による運営諮問委員会などの設置も検討すべきものと考えております。
 以上でございますが、最後に、本件医療事故は安全管理体制の欠陥、不備に起因し、しかも、御家族に対し事実を明らかにせず、むしろカルテなどの改ざんにより事実を隠ぺいするなど、医療に携わる者として絶対にあってはならない行為を行ったものであります。その結果、前途ある患者様の死亡という重大な結果を招きました。患者様及びその御遺族様に対して多大な御迷惑をお掛けしたことを深くおわび申し上げるとともに、患者様の御冥福を心からお祈りいたします。
 また、医療に対する不信感も増大させ、国民の皆様方には多大な御迷惑をお掛けしたことも真摯に反省し、社会的責任を痛感しております。改めて今後抜本的な改革、改善を実行し、名実ともに安全で高度な医療を提供する病院として生まれ変わっていく所存でございます。
 以上でございます。

発言情報

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発言者: 林直諒

speaker_id: 34246

日付: 2002-07-11

院: 参議院

会議名: 厚生労働委員会