田坂広志の発言 (国民生活・経済に関する調査会)

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○参考人(田坂広志君) 大変大きなテーマを投げ掛けていただきましたので、山東先生に、私の観点から一、二点お答えいたしますと、日本が本当の一流国になっていくためにやるべきことは多々あるかと思うんですが、一つ私、申し上げたいのが、教育の問題はもうすぐに出てくるテーマですが、初等教育、大学教育は、もちろん後でまたいろいろ議論があると思いますのでこれは後回しにしまして、非常に気になるのは日本における知の在り方。知というのは知識、知恵の知ですが、知の在り方が少し偏っていないだろうかと。
 これは、日本というのは東洋の国ですから、知行合一という言葉が昔からあるはずなんですが、いろんな知識を論じる方と現実に責任を持って行動する方とが分離している例が非常に多いように思います。例えば、先ほどから話題になっているベンチャービジネスも、アメリカのスタンフォード大学では盛んに、教授がベンチャーの社長をやったり学生が社長をやったりしてどんどんアントレプレナー人材が生まれると言っているんですが、日本では大学発ベンチャーと大騒ぎしている割には、大学の先生で現実の、例えば民間企業での製造の現場なり、例えば実際のマーケットでの現状なりを身体的に理解されている方はほとんどいらっしゃらない。むしろ、学問上、勉強をしてこられた方はたくさんいらっしゃるんですが、そこが私は非常に気になります。
 例えば、日本での新しい大学発ベンチャーを生み出すのであれば、アメリカにもよく見られるように、大学の先生でももう会社をどんどん経営したり、そこで失敗して経験されることもよろしいかと思います。
 そういう意味で、知の現場、例えば経営学を教える現場にいらっしゃる方と経営そのものを現実になさっている方とが人的に交流する、経験的にもその両方をやっていけるような仕組みを作らないと、日本という国はどうもその知と行ですね、知行が分離している傾向が非常に強い。
 これは、アメリカのシンクタンクを一つ例に取っても、先生の御指摘のとおりで、アメリカには非常に優れた政策シンクタンクがある。日本にはなぜ民間の政策シンクタンクが生まれてこないのかというのは、いろいろな理由があると思いますが、一つは、アメリカの政策シンクタンクというのは大統領が替わると一緒に入閣するぐらいの動きをされるわけですね。今回、竹中平蔵大臣というのが生まれましたが、過去にも何人かそういう知の領域から現実の行政に、政治に、政策に責任を持たれる立場に動かれる方はいらっしゃるんですけれども、やはりアメリカに比べると、こういう現実の政策に責任を持って、単なる評論ではなくてきちっとした意思決定をしていくような経験を積んで、そして政策の現場に戻る、また、政策の現場で非常に深く見識を深めてまたその現実に戻っていくというような人材の行き来が非常に弱い。
 非常に抽象的な言い方になってしまったかもしれませんが、私がこの日本という国の人材戦略を考えるときに一つ気になるのは、アメリカの方がよほどその知と行、知行の合一ということが行われているように見えます。日本という国はいつの間にか専門化、分業化が進んでしまって、私、考える人、あなたは実行する人、私、評論する人、あなたは責任を取って意思決定する人という分離がやや強く生まれ過ぎているのではないかと、あえてその一点を申し上げたいと思いますが。

発言情報

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発言者: 田坂広志

speaker_id: 11465

日付: 2002-04-10

院: 参議院

会議名: 国民生活・経済に関する調査会