国民生活・経済に関する調査会

2002-04-10 参議院 全75発言

⚠️ 発言のコピー・転載時は出典元URL(kokkai.ndl.go.jpおよびkokkai-data.com)を必ず残してください。改変・出典削除は禁止です。 詳細は利用規約をご確認ください。

会議録情報#0
平成十四年四月十日(水曜日)
   午後一時開会
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    理 事
                魚住 汎英君
                鶴保 庸介君
                内藤 正光君
                日笠 勝之君
                西山登紀子君
                島袋 宗康君
    委 員
                太田 豊秋君
                加治屋義人君
                小斉平敏文君
                山東 昭子君
                鈴木 政二君
                伊達 忠一君
                中島 啓雄君
                藤井 基之君
                松山 政司君
                朝日 俊弘君
                榛葉賀津也君
                辻  泰弘君
                本田 良一君
                松 あきら君
                畑野 君枝君
                森 ゆうこ君
                山本 正和君
   事務局側
       第二特別調査室
       長        村松  帝君
   参考人
       株式会社ウェブ
       ハット・コミュ
       ニケーションズ
       代表取締役社長
       立教大学大学院
       ビジネスデザイ
       ン研究科兼任講
       師        高柳 寛樹君
       シンクタンク・
       ソフィアバンク
       代表
       多摩大学大学院
       教授       田坂 広志君
       一橋大学イノベ
       ーション研究セ
       ンター教授    米倉誠一郎君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○国民生活・経済に関する調査
 (「真に豊かな社会の構築」のうち、公的規制
 の緩和及び起業促進に当たっての課題について
 )

    ─────────────
   〔理事内藤正光君会長席に着く〕
この発言だけを見る →
内藤正光#1
○理事(内藤正光君) ただいまから国民生活・経済に関する調査会を開会いたします。
 本日は、勝木会長が所要のため、調査会に出席できないとのことでございますので、あらかじめ委託を受けまして、私、内藤正光が会長の職務を行います。よろしくお願いいたします。拍手
 国民生活・経済に関する調査を議題とし、「真に豊かな社会の構築」のうち、公的規制の緩和及び起業促進に当たっての課題について参考人から意見を聴取いたします。
 本日は、お手元に配付の参考人名簿のとおり、株式会社ウェブハット・コミュニケーションズ代表取締役社長・立教大学大学院ビジネスデザイン研究科兼任講師高柳寛樹君、シンクタンク・ソフィアバンク代表・多摩大学大学院教授田坂広志君及び一橋大学イノベーション研究センター教授米倉誠一郎君に御出席いただき、御意見を承ることといたします。
 この際、一言ごあいさつを申し上げます。
 参考人の皆様におかれましては、御多用のところ本調査会に御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
 本日は、本調査会が現在調査を進めております「真に豊かな社会の構築」のうち、公的規制の緩和及び起業促進に当たっての課題について忌憚のない御意見をお聞かせいただき、調査の参考にさせていただきたいと存じます。どうぞよろしくお願いをいたします。
 議事の進め方でございますが、まず高柳参考人、田坂参考人、米倉参考人の順にお一人二十分程度で御意見をお述べいただきました後、二時間半程度、午後四時三十分までの間、各委員からの質疑にお答えいただく方法で進めてまいりたいと存じます。
 この質疑につきましては、あらかじめ質疑者を定めず、自由に質疑を行いたいと存じます。
 また、時間が限られておりますので、質疑、答弁とも簡潔に行っていただくようお願いいたします。
 なお、参考人からの意見陳述、各委員からの質疑及びこれに対する答弁とも着席のままで結構でございます。
 それでは、高柳参考人からお願いをいたします。
この発言だけを見る →
高柳寛樹#2
○参考人(高柳寛樹君) ただいま御紹介にあずかりましたウェブハット・コミュニケーションズの高柳と申します。本日はよろしくお願いいたします。(OHP映写)
 スクリーンにも映っておりますけれども、こちらのお手元の紙の方もごらんいただいて、同じものですので、お聞きいただければと思います。
 私は、いわゆる二十代の経営者ということで、しかもITベンチャーの経営者ということで、実務、実際の現状はどうなのかというところを中心にお話をさせていただければと思います。本日の題目が「若い起業家と起業風土 自らの経験を中心に」というところでお話をさせていただきます。
 それでは、まず一ページ目、ごらんください。
 まず、私どもの会社の概要なんですが、一九九九年の九月に設立しております。今年の秋で四期目に入ります。従業員が十二名程度、これは非常勤の従業員も含みます。ですので、ベンチャーといっても小さい方のサイズのベンチャー、零細企業ということになってくると思います。
 事業内容は、これもちょっと横文字で恐縮ですが、ASPの企画開発並びに事業化というのを行っています。このASPというのは、インターネット上のサーバーにソフトウエアを乗っけまして、いろんなところからいろんな人がインターネット経由でそのソフトを共有して使うことができるというようなシステムです。例えば、例で挙げますと、今、私どもがやっているのがアルバイトのシフト管理。昭和六十年以降から急激に準社員雇用というのが増えておりまして、その人材を管理するのがいろいろな企業で中心的な課題になっております。それにこたえるべくASPを開発してそれを今事業化をして売っているというところです。
 次のページに参ります。
 まず、会社の沿革をざっと九九年の九月からお話ししたいと思います。
 資本金は一千万円で、株式会社として創業しています。当時、ITバブルの最後の方でしたが、ベンチャーキャピタルから出資を受けようと思えば幾らでも、幾らでもというか、一億、二億ぐらいであればすぐに集めることができたんですが、私はこれを断っております。それで、自己資金であえて起業しております。この辺りも後で中心的な争点になると思います。
 二〇〇〇年の一月に、パートナー的な役員ですが、COO、最高執行責任者としてある大企業から一人呼びました。これは私の大学時代の同期でもありますので友達という感じですね、友達を呼んだという形になっています。
 最初の一年半ですが、資本金一千万というのははっきり言ってすぐになくなってしまいますので、これは何とかしなきゃいけないと。元々、先ほど申し上げました、アイデアをASP化して事業化していくというのがメーンのやりたかったことなんですが、最初、給料を払わなきゃいけない、じゃ何をしようかというところで、大手企業がいろんなインターネットのシステムを開発する際に外注しますが、その下請をとにかく営業で取ってこなしてまいりました。本来ですと、ベンチャーキャピタルから出資を受けていればこの部分はやらずに、すぐに自分たちがやりたい開発に入れるんですが、あえてこの下請というのを一年半ぐらいやりました。
 当時はまだ仕事が、下請も一杯ありましたので、二〇〇〇年の八月の決算は、一期目は黒字になっております。この黒字、余ったお金あるいはためたお金をフルに使って、二期目から自分たちのやりたかったASPの事業あるいはそのASPの開発というところにお金を落とし始めます。
 今までの受託開発、社員が十二名しかいません。エンジニアがこのうち六名から七名ですが、その社員でやりたいことをやっていくと二つのことは並行してできないんですね。ですから、自分たちがやりたかったASPというものを開発するに当たって、今までの受託開発を一切やめます。この時点で収益はゼロになります。ですから、今、ためたお金あるいは銀行からの借入れで回していかなきゃいけないということになってきます。繰り返しますが、ベンチャーキャピタルから最初から出資を受けていればここの苦労はしなくて本来はいいわけですね。
 二〇〇一年の八月、ちょうど去年ですが、ASPが完成しまして、その事業化というものを行ってまいりました。当然、非常に魅力的なものあるいはいいものができてきますと、会社を買収したいという大手の要望ですとか、あるいは事業を売却しましょうとか、あるいは資本を入れさせてくださいと、様々なお話が参ります。私自身、そういったお話にすべてCEOである私が答えることができるかというと、何分そういうふうにもまいりませんので、昨年の十一月に財務担当役員としてCFOを招いております。これは経験者を招くというふうに括弧で書いてありますが、ここにある意味、経験者を招くということが、後でちょっと争点にしますけれども、重要な一つの問題となってきます。
 この時点で第三者割当てを一回行っておりまして、資本金がちょこっとですけれども増えています。これを念頭に置いて次のページを話したいと思います。
 次は、私の個人の略歴になりますが、一九七六年の六月、東京の板橋に生まれています。現在二十五歳です。今年の六月で二十六になります。立教大学の社会学部社会学科というところで、元々ジャーナリズムをやりたくてそこに入っていました。私自身、エンジニアではありませんので、そこで初めて、大学に入ってインターネットと触れ合って、ああ何かこれは面白そうだなということで、卒論でインターネットを取り扱って書いたりしていました。
 そこの興味が、どんどん興味がわいてきまして、大学二年ぐらいのときからですか、九七年ごろからITビジネスごっこを始めています。これは要するに株式会社、有限会社にしないで、自分が個人事業主となって、その辺にたけた連中を集めてビジネスっぽいことをやり始めたということですね。このころ、やり始めてくるとなかなか、当時はまだインターネットのことに詳しいグループあるいは人材がいないもので、意外と大手の企業さんからお仕事をもらえたりとかいうことがありました。
 私が一番力を入れたのが、このときにいろんなIT業界の方々と人脈を作っていくということを専念しまして、人の人脈を広げていったということです。このとき同時に、稼ぐこと、ひいては売上げを立てるということの難しさを体験しています。
 何でここを強調したいかというと、多くのインターネットベンチャーがどっとなくなりましたけれども、去年、おととし辺りなくなりましたが、ほとんど売上げが立ってないんですね。つまり、いいものを作るというプロポーザルを出してベンチャーキャピタルやいろんなところからお金を集めてくる、それで資本金は何億、何十億になるんですけれども、売上げが立たないんですね。実際、売るところに関しては全く、お金を入れているベンチャーキャピタルもあるいは本人、その会社当事者も、ほとんど力を注いでいない、できないというのが現状でした。
 ですから、私があえてベンチャーキャピタルからお金を入れずに、自分たちで売っていく方法を探って一年半嫌な下請をやったというのはそういうところで、とにかく売上げを上げること、ここを、商売というのはそれが基本ですから、そこを会社全体として身に付けようというのが先ほどの投資を受けなかった理由でもあります。
 話は九九年の四月ごろに飛びますけれども、そのまま私は大学院に進みました。元々社会学という領域の中でインターネットのテクノロジーとビジネスの分野をやっておりましたので、そういったことをやって、さらに、アカデミズムとビジネス両方においていろんな方々と知り合っていくと。そして九九年の九月、これは大学院の修士課程の一年のときですが、今までやっていたITビジネスごっこを株式会社ウェブハット・コミュニケーションズとして創業しております。
 それでは次のページです。私がここで申し上げられることの一つとして、大学院のときに起業している、大学という組織の中にいながら起業していますので、大学と学生、あるいは大学と起業、学生と起業という関係で次のスクリーンでお話しさせていただきたいと思います。幾つかエピソードを挙げます。
 最初のエピソードですが、これはある大学の教授から私が言われた言葉です。ビジネスをやっているときに言われた言葉です。高柳君、研究者は清く貧しく生きなさいと。これは、含蓄のある言葉かというと実はそうでもなくて、大学の中で、学問をやるところでビジネスをやるとは何事だとこのとき怒られたんですね。つまり私は、大学で身に付けている専門、ある一定の専門性のある知識を使ってビジネスをして、また現場に出ていろんな人から話を聞いたり、ビジネスを通して得た経験を論文に還元したりしていたんですね。それに関してこういうことを言われました。
 これは、私一人だけではなくて、多くの若い、大学院にいながら起業している経営者ですとか人たち、仲間は同じようなことをどこでも言われています。私は私立の文系の大学でしたけれども、国立の理工学系の大学でも言われている人たちがいます。
 この辺り、比較ということで、学内における起業、特にビジネスに関しての起業、日本とアメリカはどういうふうに違うのかなというのが私の今の考えていることでもあり、実際、アメリカの法人の役員もやっておりますので見てきていますが、かなり違う部分があります。この辺りは割愛させていただきますが、そういう比較をしていくことは重要だろうと思っています。
 そういうことを考えておりますので、学問の中から起業した、成功した起業家というところにもいろいろコンタクトを取っています。
 今は東証二部に上がっていますが、理研ビタミンの前の社長で曽根博さんという方がいらっしゃいます。彼は農学博士でありまして、研究者から起業家になって会社を二部上場まで持っていった方ですが、すべて否定して掛かれ、非常識でいろと彼から言われたんですね。大学というのはある一定のレールの上で物事を進めていくので、そういうふうに大学の先生が言うのはしようがないと、それを否定してあなたが頑張っていかなきゃいけないんだよというふうに言われたのが印象的です。
 じゃ、何でそういうふうに大学というのはそういうところなのかなというふうに考えていくと、東大の名誉教授でいらっしゃる教育学の佐伯先生という方が、意外なこと、予想外のことを受け入れられないんだよねというふうに私に言いました。正に、自分が当時大学院の学生でありながら起業したときに、ああ、本当にそうだなというものを経験しております。結果、今の日本の若い起業家、あるいは大学の中から起業しようとしたときに、目的達成型のスタティックな静的な考え方をしてしまうと。かなり異端を排除する力というのが働いているな、異端は駄目だと、ある一定のレールに乗っていないといけないと。これが、結果として創造性の欠如になってしまって、ベンチャーがいまいち元気のない現状になっているんじゃないかなというふうに感じています。
 最後に、状況というところで書きましたが、まじめに夢を抱く人は異端になってしまって、さらに、ちょっと成功してヒーローになると、ヒーローを称賛しない、出るくいは打つ社会ですけれども、ヒーローを称賛しない社会と。これはやはり物事を起こそうとしたときにモチベーションの低下を招いてしまうと。これは何も大学だけの話ではなくて、やはり小中高校の教育の中においても非常に大事なことなんじゃないかなと思っています。
 次に、ちょっと象徴的な数字があったのでちょっと引用します。
 OECDの去年出たサイエンス・アンド・テクノロジー・イン・ザ・パブリック・アイというレポートですけれども、これは結構有名なレポートですが、最初のものが、上から二番目に日本があります。この表は、諸問題における関心度を示す指数、問題意識ですね。左から、新しい科学技術とか、イノベーションとテクノロジーとか、環境汚染とかありますが、見ていただくと日本の数字が一番関心度が低いです、物事に対する。次のページに行きます。次は、市民の科学分野における知識という表ですが、日本は下から二番目にいます。そのまま次に行きます。科学と技術に対する注目度という表です。OECD十四国中、日本は最下位です。次、四枚目に行きます。科学と技術に対する一般的な考え方、これも日本が一番低い、最下位にいます。やっと日本が上から三番目に来るものあるんですね。それは何かというと、見てみますと、基礎科学研究に対する国家予算がかなり付いていると。にもかかわらず、その問題意識が非常に低かったり興味が低かったりすると。
 これはある一定の矛盾が存在するんじゃないかなと思いまして、この表を見たときに、私が大学の中で体験した、先ほどしゃべらせていただいた経験がわき出てきたというか、これが一つ問題の一端なのかなと思いました。
 最後のページになるんですが、幾つか、三点ほど、今までお話しさせていただいたことをまとめさせていただきます。
 まず、若い経営者ですね、二十代の経営者、私の場合二十代の経営者ですが、が考えなくてはいけないことは何かなと。まず一つに、資本あるいは資本金ではなくて売上げを、イコール、虚ではなく実をというふうに書きましたが、先ほど申し上げたとおり、私の知人でもおりましたが、こういうビジネスモデルがあります、こういう技術があります、それに対して物すごいお金が集まると。ただ、そのベンチャー企業はつぶれてしまう。どうしてかというと、だれも売ることを考えていない、あるいはうまく売れないんですね。そこの売上げを立てる、商売の基本ですけれども、ここが一番今の日本のベンチャー企業に欠けているところなんではないかと思っています。
 もう一つは、自らの人脈で実のあるブレーンの組織を構築していかなきゃいけないんじゃないかなと思っています。私も、今私一人でできることというのは小さいですので、役員としていろいろ、先ほどCFOを呼んだと申しましたが、彼は経験者でありまして、ずっと大手の証券会社あるいはアメリカの証券会社で、MアンドAとか事業売却あるいはIPOをやっておりました。自分でも日本でITベンチャーを立ち上げて、実際数十億で売却したりとかということで、売上げを上げることもできると。そういう経験のあるブレーンを外から自分の人脈で呼んでくるというのが一番大切なのではないかなと思っています。
 これが、経験のないブレーンが集まると大変なことになります。言いたいことだけ言って売らないという構造が生じてきてしまいます。そうすると、最終的には、社長、あんたが悪いんだからあんたが責任取りなさいといって会社が一杯つぶれていってしまう。やはり、ブレーンを集めたりお金を入れてもらうのであれば、少なくとも売れる人たち、売上げを立てられる構造を作っていかないといけないのだなと思います。
 もう一つは、誠意ある失敗とそれを許容する社会づくりをしましょうということを思います。これは、やはり若い起業家は必ず失敗すると思います。私もこれから多分失敗するんだろうなと思っています。ただ、一度失敗すると、例えば借金を一杯抱えて新たに事業が起こせないとか、いろいろな社会の風潮、慣習上事業が起こせないとか、意外と日本はリスタートが難しい国だなというふうに感じています。ただこれも、合理的に考えれば、失敗を多く積めば積むほど失敗しなくなるわけですから、そういったところを理解した、例えば銀行の融資の制度でもそうですね、そういったところに具体的には落とし込んでいって、そういう誠意ある失敗であれば許容できるような構造づくりができるといいなというふうに思っています。
 これもエピソードになりますが、私が先ほど二期目にお金がちょっと融資を受けないと数か月難しいなというときに銀行に相談したんですけれども、二十五歳の私が相談に行くと、支店長が、担保はとまず言うんですね。それでは話にならないなとほかのところからお金を集めましたけれども、全くそういう意味では地元の銀行が、あるいは都市銀の支店がそういう意味で機能していないと。ベンチャー育成とはいいながらも、末端の部分でなかなか機能していかないというような現実があると思います。
 二番目ですが、これからの社会に期待することと。構造の改革と当事者の意識改革というのが必要じゃないかなと思っています。
 大学に関して言いますと、先ほど申し上げたとおり、大学の役割というものをもうちょっと考えていかないといけないんじゃないかなと思います。
 もう一つは、教育という部分ですね。大学を含めた教育と、それからアントレプレナーシップという部分を考えていく必要があると思います。何かまじめにやろうとすると、友達が白けるとかその程度であれば問題ないと思いますけれども、私の場合、教員ですね、自分の上にいる指導されている教員に白けられてしまいましたので、これは右も左も行けないわけですね、その構造の中では。少なくともそういったところをうまく何らかの形で国立大学も私立大学も構造化できないかなと。
 これもある人の言葉ですが、素人が玄人の世界をかいま見る楽しさを体験させてあげたいというのがあります。これは小中高大、全部そうです。日本の大学はインターンが物すごく少ないですね。小中高に関しては、ほとんど学校内での学問だけで回っていると思います。そうではなくて、もうちょっと社会を、素人が玄人の世界をかいま見る楽しさを、私も元々それから始まりました。いろんな人と会って、ああ、あの人すごいな、あの人、格好いいな、ああいう考え方すごいな、そういうところから起業に至っています。そういった経験をさせてあげられるような構造を作った方がいいんじゃないかと。例えば学校の、中学校の先生から社会人経験のある人を多く採用するとか、あるいは外から人を呼んでくるとか、そういったところで十分だと思うんですね、最初は。そういったことをやることによってその部分も変わってくるのかなと思います。
 それから最後に、もう時間も来ていますので最後になりますが、インキュベーターの役割ですね。
 企業、若い企業を育てようとかあるいはベンチャー企業を育てようという人たち、制度であったり国であったり自治体であったり銀行であったりベンチャーキャピタルであったりすると思うんですが、まず、やはり我々が中にいて感じることは、本質的なビジネスモデル、つまり、何度も繰り返しておりますけれども、売上げを上げられるような構造あるいはそのサポートをしてあげられるその能力をインキュベーターの方が持っていないといけないんじゃないかなと。ただお金を集めてくる、あるいはただ技術がいいからそこにお金を落とすとか、そういう判断であればそんなに難しいことじゃないと思うんですね。それを売るというところ、ここが一番重要であって、難しいところなんではないかと。そこをサポートしてあげられる構造が必要だと思います。
 それからもう一つ、センスを育てると書きましたが、やはり経営は私はある一定のセンスが必要だなと思っています。そういった部分を育てられるような構造があるといいと。
 最後に、これ一番重要だと思うんですが、過保護は禁物だと思います。何でもかんでもやってあげちゃったら、これは絶対に裏目に出る可能性があると思います。例えば、先ほど言いましたが、最初に私はなぜ投資を受けなかったかというと、必要なお金は自分で集めたかったから投資を受けなかったんですね。やはり余り過保護にしちゃうと何にもやらなくなってしまう、何にも考えなくなってしまうということが生じてきて、私もそういうベンチャーを一杯見てきましたので、過保護は禁物であると。
 ただ、じゃ、今の現状でいいかというとそうでもないので、適正な支援、これは難しいですけれども、かなり議論をしていく中でこの適正な支援というところを構築していくのがこのインキュベーターの仕事なんではないかと思います。
 具体例で、ある民間のインキュベーション施設の例なんですけれども、間貸しだけをしているんですね、オフィスの。自由に電話を引いて自由にインターネットを引いて、いろんなベンチャーが集まっていますし、そこの本部にはいろんな経験のある先輩の起業家の方たちが一杯いて、ただ、お金を入れたりとか、ああしろこうしろということは一切言わない。間貸しだけをしているんですね。例えば、そういったことをやれば、必要になれば隣の部屋にいるあの人に会いに行こうとか、あるいはこういう人にアプローチしたいんですけれどもどうしたらいいですか、こう聞きに行けるわけですね。そういうソフトなインキュベートというのも非常に重要なんではないかなと思っております。
 少々、二、三分長くなってしまいましたが、以上で私のプレゼンテーションを終わらせていただきます。
この発言だけを見る →
内藤正光#3
○理事(内藤正光君) ありがとうございました。
 次に、田坂参考人にお願いいたします。
この発言だけを見る →
田坂広志#4
○参考人(田坂広志君) 田坂でございます。よろしくお願いいたします。
 お手元に「産業インキュベーションのビジョンと戦略」という資料がございますので、それをごらんいただければと思いますが、時間も限られていますので、要旨については、実はこの本の論文がお手元に別途配られております。配っていただいております。「この国を良くするために、今やるべきこと」と、この本はしばらく前に出版したものですが、竹中平蔵大臣、現大臣、それから中谷巌さん、そしてこちらにいらっしゃる米倉誠一郎教授、あと伊藤元重さん、大田弘子さんなど、アカデミアのメンバーで集まって、この国をよくするためにどういう政策的な手を打つべきか、それぞれの立場で論じたものです。
 私自身、この中で一つの章を割いて産業インキュベーションということを申し上げていますので、今日はいただいた時間の範囲でこの産業インキュベーションのビジョンと戦略についてお話し申し上げたいと思います。
 お手元の資料の説明に入る前に、私自身のバックグラウンドを一言御説明申し上げておきますが、民間のシンクタンク、日本総合研究所というところに一九九〇年、この設立に参画いたしまして、十年間、シンクタンクのビジネスをやってまいりました。ただ、シンクタンクというよりも、むしろドゥータンクだと自負してやってまいりました。シンク、調査、分析、予測、評価、提言というデスクワークだけやっていても世の中余り大きくは変わることはないだろうと、むしろ新しい事業を生み出していけるようなドゥータンクになっていこうという考えの下に、一九九〇年から十年間、新しいインキュベーションの動きを作ってまいりました。
 今日は、インキュベーションというのが一つのテーマになると思いますので、もう少し申し上げますと、手法というものは従来なかった手法を取り入れております。シリコンバレーなりアメリカでも余り取られていない手法ですが、異業種連合という方法を使った新しい新事業開発というのを十二年前、現在から見れば十二年前に始めたわけです。十年間に二十個のコンソーシアム、異業種連合を作りまして、その中で新しいベンチャービジネスなども生み出してまいりました。
 異業種が集まって新しい新事業開発を行う、どうしてこんなことを考えたかというと、もう十年以上前から民間企業の中で共通の認識があります。分かりやすく申し上げれば、自社一社では新事業が生み出せないと、どれほど優れた企業でも自社一社ではなかなかもう新事業が生み出せない時代になっております。その理由についてはまた数分後にお話し申し上げますが、その辺りを深く感じたこともありまして、異業種が集まって新しい仕組みを作ろうということで、ベンチャーなどを作ってきたわけです。
 幾つか御紹介申し上げますが、やはり十二年前に作ったベンチャー、ISVジャパンというベンチャーがありますが、これは当時の通産省から十二億円の補助金をいただいて実証実験などをやって立ち上げてきたベンチャーですが、汚染した土壌、今、実は日本全国いろんな工場がありますが、大変恐縮ながらほとんどの工場には土壌の汚染があります。これは、今まだ暗黒大陸のようになっておりまして、最近また新聞で少し取り上げられるようになっておりますが、これはもうますます大きな問題になってくる、そんな状況にあるんですが、この汚染した土壌をクリーンアップする技術をアメリカから導入して、日本で通産省の補助金をいただいてベンチャーの立ち上げをやりました。これは、おかげさまで現在もう事業として軌道に乗りつつあります。
 それから、二番目に立ち上げたベンチャーがFESCO、ファースト・エナジー・サービス・カンパニーという会社を立ち上げました。これは省エネのサービスをやるベンチャーですが、これも異業種十二社が集まって事業化を検討し、最終的には八社が集まってベンチャーを立ち上げました。分かりやすく言えば老朽化したビルの省エネ対策をするベンチャーなんですが、それぞれに個別の省エネ技術は持っているんです。ただ、単品で売りに行っても売れない状況がずっと続いてきました。何をやる必要があったかといえば、老朽化したビルのオーナーの方にトータルソリューション、どういう技術を組み合わせれば省エネが最も適切に進められるかという、一種の省エネ診断のようなものをやらない限りマーケットのニーズは動かないという判断から、それぞれ個別の商品は持っている企業でしたが、みんなで集まって協力してトータル診断というものを、コンサルティングを最初にやるという形でベンチャーを始めたわけです。これもおかげさまで随分売上げが伸びてまいりまして、何年か前にはニュービジネス大賞環境賞をいただいております。
 それから、三番目に立ち上げたベンチャーがエンバイオテック・ラボラトリーズと、これはやはり環境ビジネスに近い分野ですが、環境ホルモンなどを分析する技術、こういうものを日本で今普及しようということで活動しておりまして、このベンチャーもその発祥は、異業種が集まったいろいろな環境ビジネスの検討、特にバイオテクノロジーを使って環境問題を解決できないだろうかという検討からスタートしたベンチャーです。これもおかげさまで昨年、中小企業長官賞をいただきました。さらに、その直後に東京都のベンチャー大賞をいただいております。
 特に賞をいただくことがベンチャーの目的ではありませんが、ちょっと脱線いたしますが、これからの時代のベンチャーというのは社会にどう貢献していくかということもかなり重要な眼目になってくるだろうと。単に収益を上げ、IPOに一刻も早く到達することがベンチャーの本来の目的ではないだろうと。実際、今、ビットバレー、渋谷の周辺のベンチャーの若い方々とお話しておりましても、決してIPOだ、お金を稼ぎたいというお気持ちの方は必ずしも多くはありません。むしろ、やはり自分たちのビジネスを通じて社会に貢献したい、環境問題を解決したいとかエネルギー問題を解決したいというような志を持った若いベンチャーの方々が今、日本にはたくさんいらっしゃいます。そういう意味では、新しい基準でのベンチャーの評価、そして育成ということも時代のテーマだろうと思っております。
 ちょっと自己紹介が長くなりましたが、私自身は実は、先ほどの高柳さんのおっしゃったことと関連すれば、ある意味で新しいタイプの日本型のインキュベーターを目指して十数年活動してきた人間でございます。そのことを申し上げた上で、お手元の資料二ページ目にお入りいただければと思いますが。
 まず最初に、なぜ新しい産業が生まれてこないのか。これほど長く不況が続き、経済的な低迷が続いておりますから、官民どこもやはり新しい産業が生まれてこないだろうかと考えております。にもかかわらず、なぜ生まれてこないのか。これにはいろんな原因がありますが、今日一つ申し上げたいのは、これから生まれてくるべき新しい産業というのは従来の産業とは全く性質を異にした産業であるということを御理解いただければと思います。
 例えば、今、識者にアンケートでも取られると必ず出てくる、新産業待望論の中で出てくるものですが、情報産業、それから高齢化社会であるがゆえにシニア産業、そして少子化時代だから教育産業が大切だ、やはり地球環境問題が大きな問題だから環境産業が大切だと。こういう産業ビジョンというのはよく語られるんですが、これらの産業というのは実はこれまで日本の政府が戦後育ててきた産業とは根本的に違ったタイプの産業です。
 私は、戦後の通産省を始めとする政府の産業育成に対する貢献については高く評価するものでございますが、これまでの産業というのは、実は企業の側がどのような商品を、製品を開発するかという、これをシーズと呼んでおりますが、どういうシーズを世の中に提供するかという観点から分類された産業です。例えば鉄鋼業とか石油業とか電力業、繊維業、食品業、住宅業と、いずれもどのような製品を世の中に提供するかという観点から分類された産業です。これは、今も株式欄などをごらんになられるとこの分類が目に付きます。そして、現在は、経済産業省の廊下を歩かれても、それぞれの部署の名前は比較的このシーズ分類になられている行政の体系になっております。
 ところが、今申し上げた新しい産業、生まれてくることが期待される産業というのは、例えば情報産業においていえば、人々が情報を手軽に入手し、また手軽に世の中に自分たちの声や意見を伝えたいという、そういうニーズに対してこたえる産業として今生まれようとしております。シニア産業については、幸せな老後を過ごしたいという根本的なニーズにおこたえしようという産業です。教育産業は、豊かな心の子供を育てたい。環境産業は、快適な環境で過ごしたい。いずれも生活者の根本的なニーズにどうこたえ得るかという観点から期待されている産業です。これらの産業というのは、先ほどの産業、これをシーズ型産業と呼べば、その逆のニーズ型産業とでも呼ぶべき新しい産業であることは明らかだと思います。
 したがって、今何が求められているか。従来、縦にずっとシーズ型産業ということで、どのような製品を供給するかということで分類されてきた産業を横断する形、横に切る形でこのニーズ型産業というのが生まれてこなければならない、その時代を迎えているんだと、このことが本日一番申し上げたいことの一つでございます。これは、そのまま政府の産業育成政策のとらえ方を根本から改める必要があるということです。
 例えば、経済産業省においては、今から申し上げることは決して批判的なことでもございません。私自身も経済産業省の産業構造審議会の新成長部会の委員も務めております。政府の立場からの政策立案もやっている立場ですので、決して批判という意味ではございませんが、従来の国の政策というのは、どちらかというとシーズ型産業をどうしたら育成できるかという観点で施されてきた政策でございます。むしろ、これから必要なのは、ニーズ型産業を育てるための新しい政策パラダイムが求められております。では、どのような政策パラダイムかと申しますと、先ほどの話です。異業種を集めて、顧客なり消費者、生活者のニーズにこたえるビジネスが生み出せるかということが今問われています。
 例えば、先ほどのシニア産業というものを例に取ってみますと、シニア産業の一つの典型が、恐らくはシニアコミュニティーと呼ばれるようなものが今期待されているだろうと思います。これは、そのコミュニティーにおいて、高齢者の方々が幸せな老後を過ごせるコミュニティー、例えばこういうものがニーズとして明確にありますが、これを実現しようと思えば、もう簡単に想像していただけますとおり、地域を開発するディベロッパー、そしてそこに例えばシニアマンションを造るゼネコンさん、さらにはその中にバリアフリーの家具を入れる必要もあるでしょう。人材派遣も介護という観点から必要かもしれません。健康食品、それからさらには生涯教育のようなもの、それ以外に紙おむつのような雑貨まで必要かもしれません。
 いずれにしても、このシニア産業、シニアビジネスというものを立ち上げるためには、今申し上げたようないろいろな異業種が横に結び付いてこの生活者のニーズにトータルにこたえていくという仕組みができなければ需要の喚起ができません。単品だけ売りに行って、紙おむついかがですか、若しくはバリアフリーの家具どうですかだけでは産業は生まれてこない構造をしていると、そのことが一番申し上げたいことです。
 そして、もしそのことを御理解いただけるならば、これからの国の政策も、従来の個別のシーズ型産業、シーズ型の企業を支援するという考え方を超えて、いかに異業種を集めて生活者のニーズにトータルにこたえられるパッケージ商品とかトータルサービス、そういうものを育てられるかということがテーマになってきます。先ほど御紹介申し上げました、私どもが育ててまいりました三つのベンチャーも、実はこのニーズにこたえるタイプの異業種連合によるベンチャー育成だということを申し上げておきたいと思います。
 今申し上げたことが、実は私自身が十数年やってまいりました日本型インキュベーションと呼ばれるものです。これは、必ずしもアメリカ、シリコンバレーで行われているインキュベーションと同じものではありません。私は正直、信念に懸けて申し上げますが、やはり日本には日本独自の社会的風土、歴史的経緯がございます。この中で生まれてくるべきインキュベーションのスタイル、戦略というものは、やはり日本的な条件を考慮したものであるべきだろうと考えて、このようなやり方をしてまいりました。
 さて、そのことを申し上げた上で、まだ数分時間がありますので、一、二点申し上げますが、今、高柳さんもその分野にいらっしゃると思いますが、ITベンチャー、またネットベンチャーと呼ばれるこのビジネスをどう見るか、この一点を申し上げておきたいと思います。
 世の中、バブルが崩壊した、もうネットベンチャー、ITベンチャーは終わりだというような議論もたまに見受けられますが、私は実はこのネットビジネス、ITビジネスと呼ばれるものには非常に重要な歴史的な使命があると思っております。それはどういうことかというと、インターネットの世界でのビジネスというものをじっと見ていると、先ほどから申し上げたことを非常に見事に体現したビジネスが生まれてきております。
 ちょっと御専門の方がいらっしゃるかどうか分かりませんが、ちょっと専門用語になって恐縮ですが、例えばネットビジネスでよく使われるポータルサイトというところがあります。これは、インターネットのサイト、そこにアクセスして、そこでどういう情報が提供されているかを見ると、実は個別の企業の商品を売ろうとするサイトよりもニーズにこたえていろいろな商品とかサービスが並んでいるようなサイトが非常に多いです。これは、例えば自動車を売っているような、例えばカービューとかオートバイテルというようなサイトへ行かれますと分かりますが、従来のカーディーラーのようなものを超えて、カーライフを楽しみたいという方にいろんな情報を提供する、もちろん自動車も販売しますが、中古車の紹介もする、カーアクセサリー、カーナビ、さらには保険だローンだまでトータルに提供するような、そういうビジネスが実はネットビジネスの中で多々生まれております。
 これは何が起こっているかと申し上げれば、元々ビジネスの最も消費者、生活者中心の姿というのは、一つのニーズに対して関連する商品とサービスが手軽に簡単に届けられるという構図が一番理想であったのですが、これまでは残念ながらそれをやろうとすると非常にコストが掛かったんです。ところが、インターネット革命によって、このお客様にそういう情報を提供するコスト、情報伝達コストというのが、一つの学説によれば千分の一に下がったと言われております。この千分の一以下が実際にどれくらいかは別として、かなり大幅に下がったことが背景にあって、多くのネットベンチャーというのは、顧客のニーズに関連する商品とサービスを取りそろえて届ける、そういう新しいビジネスに向かっております。これがアメリカで言われてきたニューミドルマンという新しいビジネスです。
 これは、オールドミドルマン、すなわち過去の中間業者というのは生産者の方を向いていた。生産者の商品を販売代理をするというのが古いタイプの、オールドミドルマン、中間業者だったわけです。ところが、ネットビジネスの中で生まれているのはニューミドルマン、これは逆を向いております。消費者、顧客の方を向いて、その方々が望まれるニーズに関連する商品とサービスをすべて取りそろえて提供する。これは古いタイプのミドルマン、オールドミドルマンのやってきた販売代理ではなく、その全く逆、購買代理という新しいビジネスモデルをひっ提げてこのマーケットに今やってこようとしているわけです。
 確かにいろんな歴史的な経緯から、日本ではネットベンチャー、かなり苦戦をしておりますが、少し長期的な視点で見れば、このITビジネス、ネットビジネスというものは、こういう顧客中心、生活者中心のビジネスを育てていくという観点からは、やはり政策的にも支援をしていくべきだろうと考えております。分かりやすく言えば、このネットベンチャー、ITベンチャーというのは産業構造の転換、先ほど申し上げたシーズ型産業という縦のものを横に貫いてニーズ型産業を生み出していくというようなある種の触媒的な機能を持っているんだということを申し上げたいと思います。
 その上で、産業インキュベーションという政策パラダイムについてもう一言申し上げたいと思います。
 産業インキュベーションという言葉はビジネスインキュベーションという言葉よりも大きなビジョンとして申し上げております。ただ、不思議なもので、現在の世の中のマーケットというのは、情報化が進めば進むほど、不思議なことですが、心理的性質が非常に強まっています。そして、なぜかマーケットが動くときというのは小さく仕掛けたときではない、大きなビジョンを掲げて仕掛けた方が動きやすいという時代になっていることは事実です。これは民間企業においては共通の認識になっています。
 したがって、今求められているのは、個別のビジネスアイデアが百、千と出ることだけではない。やはり新しい産業ビジョンというものを、あえて申し上げますが、言霊力、言葉にやはり大きな力、影響力を持ってそれが語られることが今マーケットで求められているんだろうと思います。そういう意味で、あえて産業インキュベーション、仕掛けるべきは新しい産業のインキュベーションであるということが十二年前からの私の主張でございますが、その眼目は五つございます。
 一つは、先ほど申し上げたシーズ型産業からニーズ型産業への転換、そして二番目が政府主導から民間主導への転換、そして業界団体、同業種が集まった団体からむしろ異業種が連合するという方向への転換、大企業中心からベンチャー企業中心への転換、間接金融から直接金融への転換という、この五つの視点の転換を行いながら、新しい産業育成のビジョンを国も民間も今掲げるべき時代になっていると考えております。
 そのことをもう少し別な角度から申し上げたいと思います。
 アメリカでのインキュベーション、これはシリコンバレーを中心にかなり新しいベンチャーが次々と生まれるということはもうよく知られていることです。そして、日本の多くの自治体がこのアメリカのシリコンバレーでベンチャーが生まれてくる姿を見て、日本にもシリコンバレーを作りたいと思って積極的にいろんな活動をしてこられました。
 ところが、先ほどやはり高柳さんのお話の中にありましたように、日本でこういう形で作られたインキュベーターがなかなか新しいベンチャーを生み出せないということがずっと続いております。その理由というのは非常に明確な理由があります。アメリカのシリコンバレーでいろんなベンチャーの育成が起こる、それを米国型インキュベーションと呼びますと、これを学んですぐに日本で同じことをやろうとするわけです。ところが、それがうまくいかないんです。どういうことかというと、アメリカのインキュベーションを見ていると五つの要素というふうに考えられています。
 一つがまず優秀なアントレプレナー、起業家を見付ける。彼が持っている新しいビジネスプランなりビジネスモデルを評価する。そして三番目に、このモデルが良ければ、そこにベンチャーキャピタルなどを紹介して投資をする。さらに、オフィスとラボを安く貸す、貸与、レンタルするということですね。そして、ビジネスコンサルテーション、いろいろな法務や財務などのアドバイスをする。この五つをやると、新しいベンチャーが、ベンチャーの卵がふ化する、インキュベーション、生まれてくると言われているわけです。
 ところが、実際にこれを日本でやろうとすると、自治体の方々は残念ながらこの中の四番目の部分にどうしても力が入ってしまう。オフィスやラボを安く、箱物行政という言葉がしばしば使われますが、そういうものはかなりしっかり作られるんですが、ほかの部分についてはなかなか手が回りません。そのことが実は日本でインキュベーションが進まない理由です。多少のベンチャーキャピタル的なお金は準備する、同時に箱物、入居できるオフィスやラボも準備するけれども、ベンチャーは生まれてこない。これがなぜ起こるのかということを今深く考えてみるべきかと思います。
 この理由は、別な言葉で言えば、日本ではシリコンバレーに存在するある大切なものが存在していない、若しくは存在しても非常にプアであるということが原因です。一言で申し上げれば、ビジネスエコシステムです。
 これはアメリカのシリコンバレー、スタンフォード大学などでよく使われる言葉ですが、ビジネスの生態系、今申し上げた五つのファクターの周辺にもっといろいろな深みのある仕組みが存在しています。これは、シリコンバレーにおいてはビジネス生態系ということで、もう長くこれが形成されているんです。
 どういうことかというと、お手元資料四ページ目にお入りいただければと思いますが、日本と米国の違い、先ほどの五つに合わせて申し上げますが、日本と米国では起業家の人材の層の厚みが圧倒的に違います。よく御存じのように、アメリカではハーバードだスタンフォードだを出るような優秀な学生がベンチャーを起こして社長になろうと考えられる、そういう文化があります。また、アジアから移民してこられた方々も、そのシリコンバレーのCEOの四〇%はアジア系移民と言われるような仕組みがあります。これは、海外からも優秀な起業家、人材も受け入れているということです。これに対して日本では、どうしても優秀な学生の方はいまだに大企業志向、寄らば大樹という傾向があります。また、大企業の中では、そこで新しい事業を取り組ませていただけるかといえば、長きにわたって、厳しい表現ですが、囲い込み、飼い殺しとでも呼ばざるを得ないような状況の中に置かれてしまう傾向がありました。
 二番目の、ビジネスモデル、ビジネスプランという意味でも、米国はかなり戦略的にビジネスモデル、プランを立てる文化があります。日本の場合には、比較的まだアイデアビジネスのような段階を超えていないということがあります。
 三番目は、ベンチャーキャピタルの問題ですが、アメリカではリスクキャピタル、まだ非常にリスクの大きい段階でのキャピタル機能が存在しています。いわゆるエンジェルと呼ばれるような、過去において功成り名遂げたアントレプレナーが自分のポケットマネーのような感覚で数億円を投資するというようなこともアメリカでは行われます。ただ、日本ではリスクキャピタルと呼ばれるハイリスクの段階での投資をしてくれる企業は少ない。むしろ、IPOが目の前に見えてきたときに、寄ってたかって投資させてくださいというようなベンチャーキャピタルが日本では非常に多いというのが現実かと思います。
 四番目ですが、コンサルテーション、コンサルティングという意味でも、日本ではベンチャーに対する知恵を提供する機能は弱いです。シリコンバレーでは、電話を一本掛けると、もう日本でもよく知られているような功成り名遂げたベンチャービジネスの成功者、アントレプレナーの先輩たちがいろんな知恵をかしてくれる、そんな場が存在していますが、日本の場合には、コンサルタント一つでも、比較的、机の上で学問してきてコンサルティングをやられる方も比較的多い。どうしても、ベンチャーを成功させた体験からくる知恵を提供できるようなコンサルタントが少ないという面もあります。
 そして、インフラの部分で言えば、この部分だけは、日本は箱物は大変しっかりしていますけれども、実はオフィスとかラボが安く使えるだけではベンチャーは立ち上がってこない。例えば、シリコンバレーでベンチャーが立ち上がる一つの理由というのは、分業というのがマーケットでしっかり行われています。例えば、ファブレス企業というのがございますが、製造の部分は自分たちでやらずにほかの企業にやってもらう、そういう形でベンチャーを立ち上げる企業がありますけれども、ファブレス企業が存在するということは、ファブリケーション、製造だけを専門にやる企業が一方にあるということです。こういうマーケットの中での分業という仕組みが日本ではまだ十分にない。これもまたインフラという意味では弱い部分です。
 いずれにしましても、今申し上げたことに対する解決策を見出していくこと、その中で日本には日本的なビジネス生態系を可及的速やかに育てていくことが日本での新しい産業育成のためには極めて重要なテーマになっていると思います。
 そのための打ち手は何通りもあろうかと思いますが、本日最初に申し上げた私自身の経験に即して一つの方向、あくまで幾つかあり得る中の一つの方向を申し上げますが、日本でビジネス生態系を育てるためにはやはり異業種企業が集まってベンチャーを支援するような仕組みが必要だろうと思っています。
 最後に、その観点から五つの発想転換を申し上げて締めくくりとさせていただきますが、お手元資料、五ページ目。
 日本ではアントレプレナーの人材が少ない。これは、やはり長期にわたって、大学を出て若い方がベンチャーにチャレンジするような文化を応援していかなければならないと思いますが、現時点でもう一つ打つべき手は、大企業の中に囲い込まれている人材がベンチャーに取り組めるような仕組み、これを私はイントラプレナー、社内起業家と呼んでおりますが、大企業が支援してその社内から起業家を輩出していくような取組が必要かと考えております。
 先ほど申し上げた三つのベンチャーは比較的大きな企業、日本総合研究所という企業の中で社員として働いていた方々が社長として今立派にベンチャーの社長を務めております。こういうささやかな事例ではありますが、そういう流れもこれから必要になってくるだろうと、これが一点です。
 二点目は、ビジネスプランというものはこれからは複合的なビジネスモデルが必要になります。私自身、コンビニエンスストアの企業の社外役員も務めておりますが、今コンビニエンスストアで新しいEコマース、電子商取引の場になってくると言われますが、それを本当に実現しようと思えば、単にコンビニの店頭での商品を提供するというモデルだけではビジネスは生まれません。当然、これはデリバリーそれから決済、様々なビジネスモデルが組み合わさらない限り新しいサービスが生まれてきません。そういう意味では、これから複合的なビジネスモデルの開発をやるような場というものをどう作るか、これも異業種連合ということの一つの眼目ではありますが、大きなテーマかと思います。
 それから、ベンチャーキャピタルについては、日本ではIPO直前に寄ってたかって投資するというキャピタルは十分にあるような気がいたしますが、むしろリスク段階からのリスクキャピタル的な機能、さらにはむしろ後半の、まだ公開していないけれども未公開株を交換するような場というものもまた重要。そして、やはり融資という形での資金の提供も当然日本では健全な形で育つ必要があります。あくまでベンチャーキャピタルという狭い意味での機能にとどまらず、必要な段階で必要な形で資金が得られるキャピタルネットワークというものがこれから求められるだろうと思っております。
 四番目は、ビジネスコンサルテーションということに関連してですが、これからのインキュベーターがベンチャーの方に提供すべきは、法務、財務の知識はもちろんですけれども、アライアンスコーディネーション、戦略的提携の支援、今ベンチャーの方が求められているのは、いろいろな異業種企業の顧客チャンネル、時には大企業の顧客チャンネルなどを使って自社の商品を売ってもらいたいというニーズもあります。こういう方向でベンチャーの方がいろんな異業種企業と連携していけるようなアライアンス・サポート・コーディネーションのような機能がこれからのインキュベーターには求められてくるだろうと思っております。
 そして最後に、レンタルオフィス・ラボというようなテーマももっと広がりを見せております。今ベンチャーでなかなか立ち上がりが苦しい企業がすっと立ち上がっていくときに、一つの例としてメディアが取り上げるというときがあります。最近私、あるテレビ番組のお手伝いなどをしているんですが、テレビ番組であるベンチャーの商品を紹介してあげるだけで電話が殺到する、いろんな企業からの提携の申込みなどがあるということもあります。そういう意味では、これからはネットの時代、そしてメディアの時代です。これからのインキュベーターというのは、このネットワーク、メディアをうまく使って、ベンチャーがほかの企業とうまく結び付く場を提供できるか、さらには消費者、生活者にその優れた商品をお知らせすることをお手伝いできるか、そんなことも新しいインキュベーターの役割になってくるだろうと考えております。
 手短に申し上げましたが、日本型インキュベーションということを改めて申し上げたいと思います。この言葉は産業インキュベーションという言葉と同義語と思っていただいて結構です。日本という国においては、単にシリコンバレー、アメリカの猿まねをするのではなく、日本の風土に合わせた新しいインキュベーションの戦略というものを考えていく必要がある。大きな産業ビジョンを掲げながら、一方で、先ほど申し上げた五つの発想転換をする。単なるアメリカの機能のまねではなく、日本的な新しいベンチャー支援の仕組みが生まれてくるだろうと考えております。
 私自身のささやかな取組ではございますが、皆様方の今後の検討の御参考にしていただければと考え、あえてこれまでの経験を御報告申し上げました。
 私の御説明、以上でございます。
この発言だけを見る →
内藤正光#5
○理事(内藤正光君) ありがとうございました。
 次に、米倉参考人にお願いいたします。
この発言だけを見る →
米倉誠一郎#6
○参考人(米倉誠一郎君) こんにちは。一橋大学の米倉です。
 私が言いたいことは二つで、新しい産業支援、ベンチャー支援は国家戦略の一つに位置付けるべきだということと、それはシステム対応ですからかなり精緻なシステムとして考える、アドホックな対応はできないというこの二つです。
 多くのところはちょっと話が長い田坂参考人とほとんど一緒なんですが、最後の部分は大きく違いまして、日本型という前に、我々はもっと謙虚にアメリカで起こっているシステムワイズなロジックを学ぶべきだと。それをやれば必然的に日本型になるんで、あえて今ここで日本型というと結局進歩を妨げるというふうに私は思います。
 なぜベンチャー支援が国家戦略かというのが私のレジュメの一番始めに書いてありますが、一つは、グローバルなコンペティションの、要するに、グローバルな競争をやっていると大企業が雇用創出力を必然的に失っていく、ですから雇用を作るという必然性が出てくる、それは大企業以外からしか生まれないというロジックがあります。これは後で説明します。
 もう一つは、新しいビジネスフロンティアはかつてに比べて物すごく不確実性が高い。今、田坂さんが言われたように、ニーズオリエンテッドですからニーズは非常に変わります。どこに何があるかも分からない、テクノロジーもどうなるか分からない、そういう中で起業するんですから不確実性が高いと。これにはある種特殊なシステムが必要であると。
 二つ目が、これが、今日是非皆さんにお考えいただきたいのは、ベンチャービジネス支援というのは小さな企業を創出することではない、五年から十年の間にグローバルな百社に入るような大企業を創出するということが基本的な眼目なんですね。そこでは、特に国会議員の皆さんにお願いしたいのは、ベンチャー支援策と中小企業支援、それを混同されないことだと思うんですね。
 私の参考資料の一番最後に追加資料が付いておりますが、これは二月二十六日の世界ランキング企業です。一番上の左側がニューヨーク・ストック・エクスチェンジ。これの時価総額で見ますと、GEがトップに入って、二位がエクソン、三位がウォルマートとなっていますが、同じくナスダックの方では、マイクロソフト、インテル、シスコ・システムズ、オラクル、デル・コンピュータと、この十年から二十年の間にできた企業がこれだけいますが、ここを見ていただければ分かりますように、ナスダックではこの十年から二十年の間に出た企業がグローバルな全世界の百社に入る企業をこれだけ輩出していると。
 それに比べて、日本を見ていただきますと、NTTドコモに始まりまして最後のセブン—イレブン。NTTドコモはグローバルランキングでまだ二十六位なんですね。ところが、我々で、日本で数少ないベンチャーと言われるソニーと本田はやっぱり九十一位と百十七位に入っていますから、そういう点では日本にも短期間に成長したすばらしい企業がいるんですが、重要なポイントは、このナスダック、右の上のマイクロソフト、インテル、シスコ、オラクル、デル、アムジェン、アプライド・マテリアルのような企業を短期間に作り上げて、国際競争力のある国あるいは企業を育て上げるということがベンチャーの基本的な眼目である、小さな企業をぽつぽつ育てることではないということを是非御理解いただきたい。
 次のポイントは、なぜグローバルコンペティションが出てくると大企業が雇用創出力を失うかというと、競争が世界規模になるんではなくて、一番重要なところは、競争に必要な経営資源、人、物、金、情報が世界規模で調達されなければならない。これがグローバルコンペティションの原則です。そうすると、人、物、金、情報の中で一番重要なのはお金ですが、資金が世界規模で供給されると、資金が世界規模で供給された場合にどういう状況が起こるかといいますと、その資金を有効活用するためのグローバルなスタンダード、これは日本語なんですが、それが必要になってくると。残念ながら、世界国際経営機関とかいうのはありませんから、国際標準を決定する機関はないので、実質的にスタンダードを取るという意味ではデファクトスタンダードなんですが、それを取ったのは今のところアメリカ型の経営であると。アメリカ型の経営の何が取ったのかというと、株主を非常に重要視する経営スタイルというのが今世界のグローバルなコンペティションをやっている企業の基準にもうなりつつあると。
 なぜそういうことが起こるのかといいますと、例えば、ソニーという会社は、約四六%を外国人が持っています。ところが、全株主数に占める外国人の比率は九%です。九%ということは、わずか九%の人間が半分近い株を持っている。そうすると、この人たちの正体というのは機関投資家なんですね。機関投資家というのはどういう人たちかといいますと、決してジョージ・ソロスやウォーレン・バフェットという人たちではなくて、実は我々なんですね。我々というのは、普通に勤めていた人間が、退職金、それをまた、老後の年金をもらうために積み立てているお金を世界じゅうで最も効率的な企業に投資していく、これが機関投資家の本当の姿です。
 そうすると、我々もう既に残念ながら年金が破綻していますから、近いうちに四〇一kプランに移行していくわけですが、私が一生懸命積み立てている年金をどう有効的に活用していただけるかというのが全国民のこれ真剣なる希望になるわけですね。そうすると、そういう人たちのエージェントとなっている機関投資家は、やっぱり世界で一番株主を大事にしてくれるところに投資をしていく。これを集めないと実はキャピタル界の大企業は資本調達ができなくなっているという構造をお話ししたいんですね。
 そうすると、例えばソニーのような会社が、うちは従業員が一番で株主は二の次ですよと言うと、株の半分が売られてしまう。ソニーの株は暴落する。トヨタ自動車も二〇%、松下も三〇%、既に外国人が持っている。こういう巨大企業は、次のページに行きますが、残された選択というのは非常に限られてくる。
 それは、皆さんがよく御存じのジャック・ウェルチが提唱しているような選択と集中、資本効率を最も上げる分野に選択的あるいは集中的に資本投下をしていくビジネスを展開する。そのプロセスでリエンジニアリング、リストラクチャリングとかキャッシュフロー経営に努めていくというのが、実は非常に世界的な大企業の取らざるを得ない方針になってくる。そうすると、皆さん御存じのようにジャック・ウェルチはすばらしい経営者です。GEもすばらしい会社ですが、あそこから、あそこの利益の五〇%は既にGEキャピタルというノンバンクから来ているわけですね。ということは、GEが新しい産業を創造する、新しい事業分野を新たに開拓するという可能性はほとんどないです。
 同じようにいえば、松下とか日立とかNECが全く不確実な分野に、しかも二十年も掛かるような、リターンを生むのに二十年も掛かるような分野に出ていくということは構造的にできにくくなっている。むしろ、事業分野を絞り込んで、人を絞り込んで、キャッシュフローを高めて利益率を上げていくという方向に行きますから、もし日本経済が良くなるとどういうことが起こるかというと、雇用なき回復が起こると思います。経済が良くなるけれども雇用は生まれてこない。それを一体じゃどういう企業が雇用を作っていくのか。
 その一つはサービス産業、これは大きいと思いますが、サービス産業だけではいずれ飽和するのは間違いないですから、今、田坂さんがおっしゃったような新しい産業を作らざるを得ない。新しい産業が今どういうところにいるかといいますと、次のページにありますように、技術が物すごく不確実でマーケットニーズもほとんど不確実なところにいる。
 例えば、コンピューターでも技術的には三か月に一回変わってしまうとか、皆さん、先ほど田坂さんが最後に、あるいは高柳さんがおっしゃったように、IT、インターネット、非常に重要ですが、インターネットのスタンダードアイゼーションというんですか、標準化はまだ全然できていないんですね。我々、多分二十一世紀はインターネット家電を使うだろう。しかし、そのインターネット家電であるテレビの裏側が一体何につながっているんだ。光ファイバーなのか、あるいはデジタルで空から降ってくるのか、あるいはもう電線に直接つなぐのか、あるいはADSLが進化していって電話線の上でまだ行くのか、その技術すらも決まっていないんですね。
 それから、マーケットニーズでも、一九九三年に産業構造審議会そのほか、通産省が立派なものを出しましたが、一九九三年の中でインターネットのイの字もないですね。ノーマークでした。もちろんその中にはコーヒーチェーン店も古本屋も、更に言えば千九百八十円のフリース屋さんも伸びる産業とは書いていなかった。でも、現実に伸びているのはスターバックスコーヒーであり、ブックオフという古本屋であり、ユニクロという洋服屋さんなんですね。
 これは、ニーズというのはほとんど予測不可能である。人がどこへ行くのか、これを探り当てていく、あるいはテクノロジーも一体次に何が来るのか、これを探り当てるという努力は、技術がいいから伸びるんじゃないんですね。
 皆さん御存じのように、私もマッキントッシュというのを使っていますが、多分マッキントッシュはウィンドウズの百万倍賢かったと思います。でも、デファクトを取ったのはウィンドウズなんですね。技術がいいからデファクトを取れるとは限らない。NHKのプロのカメラマンはほとんど皆さんベータを使っています。でも、実質的に標準を取ったのはVHSです。
 市場を席巻する、あるいは国際競争力のある企業になるというのは、テクノロジーがいいからとは限らない。ということは、そこを何とかビジネスにしていくという力が必要なんですね。そのことを、言いたいことはこういうことなんです、事前に予測することはほとんど不可能である。
 事前に予測することが不可能であるならば、次は何が必要なのか。ここが次に、六ページに書いてあるように、数を打つということが非常に重要なんです。要するに、たくさんのトライアル・アンド・エラーを重ねるということが新しい産業を掘り当てる唯一の道だというふうに理解していただくことが重要で、シリコンバレーというのは場所の名前ではなくて、不確実性の中で数を打つということをシステムにした、システムの名前だというのが私の長年の主張であります。
 国会議員の皆さんが宝くじをお買いになるかどうかは知らないんですが、宝くじを買ったことがある方、おられますか。──おお、いいですね。じゃ、ついでにお聞きしたいんですが、この中で一億五千万円当たった方というのはおられますか。──これはどんな広いところでやってもそうなんですが、宝くじを買った方というのはたくさんおられるんですが、めったに三億円当たったという方に、僕は一度もまだお目に掛かっていませんから、本当に会わないんですね。
 人はなぜこんな不確実な行為をするのか、これが非常に重要なポイントなんですが、あの宝くじが一本三百万円だったらば絶対にこういうことは起こらないんですね。あれが一本三百円であるということが非常に重要。同じ三百円であっても、当たりくじが、一等賞金が一万五千円でもこういうことは起こらないんですね。あれが一億五千万円あるいは三億円という一等賞金にしているから、この不確実な中でも試行錯誤が起こるわけです。
 重要なポイントは次なんですが、いかにローエントリーリスク、リスクを物すごく低くしてあげてリターンを高くするかということを、そういうゲームを作ってやると参加者が物すごく増えると。
 そのローエントリーリスクなんですが、ここでの問題は、日本の教育で一番間違っているのは、非常に早い段階からベンチャーキャピタルはリスクマネーだと教えることなんですね。
 起業家にとってみれば、一番のリスクマネーは銀行融資です。銀行からお金を借りて返さなくていい人というのは非常に限られていますから、多くの我々一般ピープルは、銀行からお金を借りたら絶対に返さなければいけない。返せない場合は担保を取られ、抵当を取られ、まあ身ぐるみはがれる。先ほど言いましたように、非常に不確実性の高いところで事業を起こすときに、銀行融資というのはあり得ない選択なんですね、リスクが高過ぎて。ということは、間接金融はあり得ない。直接金融以外あり得ないということです。
 その中でもベンチャーキャピタルというものが最もローリスク。要するに、日本のベンチャーキャピタルには個人保証を取ったりするのがいますが、基本的にはそのビジネスのアイデア、モデル、そして人、物、金、情報、すべてを注ぎ込んでそれを物にするというのがベンチャーキャピタルですから、基本的にはリターン、保証金とか担保は取らないと。そうすると、エントリーリスクは低いんですね。起業家にとってベンチャーキャピタルが付いたということは、非常にローリスクマネーをいただいたと。
 もう一方で、簡便な公開市場。これが先ほど右の上にありましたナスダックという、とても透明性が高くて、流通量が多くて、上場基準が緩い。これは、上場基準が甘いということではなくて、緩いということは、前歴、要するに過去の経験を大きく問わないということなんですね。こういうしっかりした市場を作ってやると、例えばネットスケープのように千倍とか、そういうリターンが生まれることがあると。
 私の後輩である三木谷くんも、一時、千二百倍という株価が付きましたが、千倍というのはどういうお金かといいますと、百万円投資すると十億円になるというお金です。これはもう想像のように、物すごく大きなリターンですね。
 こういうものを作ってあげると参加者が増えると。問題は、この参加者の質で実は国の競争力が決まると。おれは勉強も嫌いだし、一発ベンチャーで当てるぞと言っているようなビットバレーお兄ちゃんたちが参加していると、実は日本の国の競争力がこの辺で決まると。
 しかし、先ほど来出ているスタンフォードとかMITとかハーバードで、こいつはできると。例えばサン・マイクロシステムズのビル・ジョイという人は、二十四歳、大学院生、バークレーの大学院生のときに、ほとんどの同僚、先生、後輩がこの人はもうこのままバークレーのコンピューターサイエンスの教授になるんだと思い込んでいたぐらい優秀な人間が、一万ドルでサーバーを作るっておもしろいねと言って、このゲームに参加してくるんですね。そうすると、国の競争力はここで決まると。いかにこのゲームに競争力を増やしていくか、それが多分今話題になっている大学発のベンチャーをどうやって作るかということだと思います。
 この取組がやっぱりアメリカは非常に早くて、次のページにありますように、一九四六年、アメリカ発の本格的なベンチャーキャピタル、アメリカン・リサーチ・アンド・ディベロプメントのラルフ・フランダースという人が、アメリカのビジネス、アメリカの雇用、アメリカの国民の繁栄は、自由な企業体制の下で新しい企業が続々と生まれてくることで保証されると。将来にわたって既存大企業の成長だけに依存することはできない。新しい力、エネルギー、才能を求める新しいアイデアのために、莫大な機関投資家資金の一部を投資するための仕組みを作らなければならないと。これは昭和二十一年、一九四六年という早い段階から、この種の仕組みを作らないとアメリカはあり得ないと。このアメリカという文字を日本に変えていただいても全く同じことが言える、これはもう明らかだと思うんですね。
 先ほど言いましたように、ベンチャー支援の五つの前提というのは、まずお金がなければ話は始まりませんから、豊富な資金。
 豊富な資金は一体何なのかといいますと、これは先ほど言いましたように機関投資家の一部なんですね。要するに、機関投資家資金というのは我々の年金。例えば、皆さんもそうですが、我々国家公務員あるいは地方公務員の全年金の残高、あるいは要するに運用している資金、ばらつきがありますけれども、大体四十兆ぐらいあるんですね。それに普通の民間企業の資金を合わせると、百五十兆とか二百兆ぐらい。そういうお金が実は日本の中にも機関投資家資金としてあるんですね。それの一〇%でも新しい産業に向かう仕組みを作ると、二十兆の規模が常に新しい企業、この試行錯誤に回るというシステムができると。
 それをアメリカの場合は、一九七九年、八〇年のERISA法、エンプロイーズ・リタイアメント・インカム・セキュリティー・アクトの改正をして、それを自由にしたと。是非この辺の改正を、もう既に実は起こっているんですが、もっと大きな声で、年金基金あるいは機関投資家の資金を新しい産業に向けましょうと。そのためのいろんなインセンティブを国が作るというのは非常に重要だと思います。
 ハイリターンも、一九八二年にナショナル・マーケット・システムというコンピューターを非常に整備してナスダック市場を良くしたために、物すごい量の資金量、しかも日本みたく百万円とかそんな単位ではなくて、一万円とか五千円から投資ができるような仕組みを作ったと。
 同じように、リスク分散型組織であるベンチャーキャピタルの組織を整備して、二重課税を避けるような半ゾーン型の組合型のシステムを整備したと。ここには、いわゆるゼネラルパートナーであるベンチャーキャピタリストに物すごい大きなインセンティブを与えています。
 同じように、そこに向かうためにはある種の優遇が必要ですから、優遇。まず、例えば今言ったリミテッドパートナーシップであるベンチャーキャピタルの出資組合には法人税を掛けないと。法人税を掛けない代わりに、キャピタルゲインが生じたときだけに税金を掛けますよという、二重課税を回避してそういう組織を作りやすくする。あるいは、先ほど田坂さんがおっしゃったように、非常に初期の危険なときにポケットマネーで一千万とか新しい産業を起こすために投資した人には、それが破綻した場合には所得控除をしてやるというエンジェル税制とかですね、これらが重要で。
 五つ目はチャプターイレブン。チャプターイレブンは本当はベンチャーには余り必要ないんですが、基本的なことは先ほどの宝くじと同じで、全員が当たるわけがないと、失敗の方が多いという前提ですね。失敗をいかにうまく傷を少なくさせるか。日本の場合は、失敗、要するに倒産が物すごく重いために、倒産に至らないために非常に高利貸しに走ったり粉飾決済をしたり、いろんなことをやって傷を深めるんですね。チャプターイレブンは、早い段階で手を挙げさせて、ちょっと今の状況は難しいと、一回そこで損切りをして、その同じ人間がまた経営再建に当たれるとか、いろんな失敗を非常にポジティブにする法律をやったと。
 もう一つ、今、日本でも話題になっていますが、大学、大学が非常に重要な役割を果たすと。これも一九八〇年のバーチ・バイとボブ・ドール、この二人の上院議員が、フェデラルで使っているお金、要するに連邦資金で研究したものに対してはそれを何とか市場に還元しようじゃないかと。出てきたアイデアが大学や研究所という非営利組織に特許権を持たせる、その特許を販売してもいい。それがTLO、テクノロジー・ライセンシング・オフィスだと思います。このことをシステム化したおかげで非常に大学の中でもビジネスに直結しようという雰囲気が出てきましたし、TLOもプロが育っています。
 日本の場合は非常に問題なのは、いいアイデアを文部省とか経産省は時々持ってくるんですが、アイデアだけで人を付けないんですね。どういうことが起こるかというと、これをやりなさいと。それを研究者がやる。研究者がやると、研究者は本当は研究しなきゃいけないのに、研究の時間を割いてこういう書類を作ったりする。
 そのために是非こういう、国の政策で一番重要なのは、大学支援の場合はいいアイデアに対してプロフェッショナルを付けていただくということが大事だと思います。それはアドミニストレーターの拡充です。例えば、ここにあります白川英樹氏、ノーベル化学賞学者ですが、彼は、日本の大学と欧米の大学、そんなに差はないと、研究レベルに。一番の差は何かというと、欧米の大学では大体一人に対して一人のアドミニストレーターあるいは補助者が付くと。日本の場合は八人の研究者に対して一人しか付かない。その非生産性ですね。要するに、効率の悪さがやっぱり研究者の研究レベルを下げている。
 ですから、大学の中身を、先生たちの競争心を高めるのも重要ですが、システムを拡充していく。実はこれが雇用を生むと。要するに、教育産業に投資をするということは一番今重要なことです。
 我が愛すべき文部科学省はすばらしいアイデアを思い付きまして、この四月から我々の初等教育の三割を削減するという、一体どこから出てきたかと思うぐらいすばらしいアイデアを言ってくれたんですが、今、日本が考えるべきことは、みんなが百点取れるように三割を削減するのではなくて、今の教育内容を要するに倍にしても、今までの労力の半分で子供たちが覚えられるイノベーションをどうやって作るかということなんですね。それは一学級に担任が一人なんてあり得ない。一学級に担任が七人とか十人付く。大学も先生に対して補助者が付く。要するに、教育の生産性を上げるということなんです。これは物すごい雇用を生むのでありまして、言いにくい話ですが、北海道とかだれも通らない道路を造るよりもはるかに重要な公共政策だと思います。
 十ページは、これはベンチャーキャピタルのシミュレーションなんですが、要するに、ベンチャーキャピタルは、六年とか八年の間に十倍の価値あるいは二十倍の価値を生まない限りは投資はしないということなんですね。それが分かっていると、何が重要かというと、販拡期とか上場準備期、売上げが何十倍も立っていくときに一番必要な人材は経営者だということですね。
 次のことに書いてありますように、シリコンバレーの創業者の七割は六年から八年後のIPOあるいは企業売却の時点で社長を辞めています。辞めるという理由は、自分はチーフサイエンティストになりまして、基本的にはプロのCEO、経営者が入ってくる。私の知っているテクノロジーベンチャーは社長が交代する確率は九二%、八%しか残らないんですね。なぜかといいますと、先ほど言いましたように、ベンチャー企業を支援するというのは、五年から十年の間にグローバルトップ、世界ランキング百に入る企業を作るということですから、百に入る企業を作るためには、それは大学の先生とかエンジニアが企業を経営できるわけがないわけですね、何万人規模の経営を作るわけですから。そうすると、それはプロだと。プロの経営者というのは二つの道から来る。一つは大企業からの人材流入であり、もう一つはビジネススクールの拡充であります。
 最後に言いたいことは、今までお話を見て分かるように、アメリカの大体コアコンセプトが固まるのが八〇年代です。それが花開くのが九〇年代の半ばですから、十五年ぐらい掛かると。ということは、日本も今からこれに本気で取り組んで、多分、今から早くて五年後あるいは十年後に花が開くということですから、是非今から真剣な取り組みをすると。
 もう一つは、今ばらばらと幾つものものがたくさん出ていますが、それを統合化するということが政策的には非常に重要だと思います。
 たくさん出ているベンチャー支援策を中小企業育成あるいは雇用問題とは切り離して、五年から十年以内に国際的な企業を数十社生み出すというターゲットにすると。年金改革とか直接金融、これもすべてそのために必要な手段。あるいは上場・公開市場の整備もそのリターンを大きくするという意味だと。それから、大企業のリストラ、ワークシェアリングを支援するなんてもうとんでもない話だと。ワークシェアリングとかいう後向きな話じゃなくて、リストラ、リエンジニアリングをやって企業競争力を高めている企業にインセンティブがわくように。むしろ、リストラされた人間が、リストラをとどめるんではなくて、リストラされた人間にセーフティーネットを作ると。彼らが次のところに移転するような教育制度にお金を払う。あるいは大学発ベンチャーも、基本的には大学発ベンチャーをやって、それを最終的に大企業にしていく、そのための支援の一環だと。
 こんなことを、点在している力をやっぱり一つのものにしていかないと、日本の第二次世界大戦のように戦線拡大して敗退するというパターンですから、幾つか新産業を作る、新企業を作るということに焦点を絞って、点在するものを一点に集中していくというような本格的な対応が必要だと思います。
 もう一つ言えば、多分、ITはなくても人間は生きていけると思います。生きていけないのは、環境と食糧とそれからエネルギー。この三つの重点分野に是非資金を徹底的に投入して、そこからいろんなトライアル・アンド・エラーが出てくるということが重要だと思います。例えば、すばらしいアイデアだった地域振興券に日本国は七千七百億円使ったわけですが、あれだけのお金を新エネルギー開発あるいは環境開発に、例えば九大、筑波あるいは東大に集中的に資源配分をしていれば、多分日本の研究状況は変わったと思います。
 同じように、今回非常に面白いと思ったのは、政府の役割の中で、直接のあれはないんですが、購買というのは非常に重要で、公用車をハイブリッドカーにする、このおかげで三百台が七千台になったと。七千台になりますと一車種当たりの単価が下がりますから、より普及すると。
 これと同じように、例えば、小中学校は昼間しか使わないので、小中学校は光発電にすると。そういう国家プロジェクトをやって、そのうちの一定量を中小企業あるいはベンチャー企業から購買すると。これは三つのいいことがあると思います。全国の小中学校を改装するわけですから公共需要が発生します。これは景気回復に役立つと。二つ目は、太陽光パネルが大量発注されるので安くなりますので、民生利用が進む可能性がある。三つ目がもっと重要なんですが、多分、中国、インド、そういうところの人口過大国から大量の観察屋が来ると。日本型の新しいシステムはどういう形で運営されているのかと。この分野で実はデファクトを取っていくということが日本の新企業の、あるいは新産業育成の非常に重要なポイントだと思います。そういうところに我々の貴重な税金が向けられることを祈っております。
 以上です。
この発言だけを見る →
内藤正光#7
○理事(内藤正光君) ありがとうございました。
 以上で参考人の意見陳述は終わりました。
 これより参考人に対する質疑を行います。
 質疑は午後四時三十分までをめどとさせていただきます。
 なお、時間が限られておりますので、質疑者お一人当たりの発言時間及び各参考人の答弁ともに、それぞれ三分程度までにおまとめいただきますようお願いいたします。質疑を希望される委員は、挙手をもってお知らせくださるようお願いいたします。また、質疑は会長の指名を待って行うようお願いをいたします。
 それでは、質疑を希望される方は挙手をお願いいたします。
この発言だけを見る →
山東昭子#8
○山東昭子君 いいお話を本日はありがとうございました。
 諸外国を歩いておりますと、日本は、かなり優秀な国だと自負している割には、国家戦略というものが全くと言っていいぐらいない国だというふうに変な意味で感心をいたしております。民間のシンクタンクはたくさんあるんでございますけれども、どうもそれぞれ違う道を歩いているというような感じで、今まで、ある意味では官僚主導型であったために何か別のシステムを作ることが困難であった、あるいは何かそういうものが必要なかったというようなことがあるんでしょうか。
 しかし、二十一世紀、本当に世界の中で日本が生き残っていくためには、防衛、外交、教育あるいは福祉、経済はもちろんでございますけれども、あらゆる分野で、全く官僚あるいは政治家、そういうものとは別の観点でそうした、いろんな専門家が集まってきちんとそうした長期的なものを作っていく、作り上げていく、それがやっぱり国民の求めている、日本がどういう国になっていくのか、あるいはならなければいけないのか、そのために国民はどういう行動をしていくのか、そういうことが明確に打ち出せる、そういうものを何か国民は求めているんじゃないかなと思っております。
 そのためには、私は思い切って、例えば経済の上でも、もう本当に世界的なマーケットの中で、腕のいいファンドマネジャーが国家予算の中から十兆円、二十兆円、思い切って投入してやれば、本当に日本にとってプラスになるんではないかなと、経済の面でも。そんなことを考えているんでございますけれども、総合的なそうしたものというものをそれぞれの参考人の方々、どんなふうにお思いか、お聞かせ願いたいと思います。
この発言だけを見る →
高柳寛樹#9
○参考人(高柳寛樹君) 私が答えるのがいいかどうかあれなんですが、まず、やはり私なんかがやっていて思うのが意識の改革と、先ほどの中でも書いたんですけれども、そういったところからのものも重要なんではないかなと思っています。
 例えば、教育の問題が米倉先生も挙がっていらっしゃいましたけれども、教育の問題というのはそれは極めて重要だなと思っています。私は、実は母校、中学校、高校なんかに呼ばれてしゃべったりとか、あるいは今でも中学の先生方と話をする機会が多いんですが、いろんな理由から多いんですが、やはり彼らが感じていることと私が思っていることの温度差というのは物すごくありますね。いや、こうこうこうだからこうでしょうという話をすると、ああ、そうだねと、それは理解されるんですけれども、やはり肌で感じられていないので、なかなかいろんな、アントレプレナーを育てるとか教育の生産性を上げるという面で、言われているほど実態が伴っていないという部分をもうちょっと何とか力を入れてやっていけないのかなというふうには思っています。
この発言だけを見る →
田坂広志#10
○参考人(田坂広志君) 大変大きなテーマを投げ掛けていただきましたので、山東先生に、私の観点から一、二点お答えいたしますと、日本が本当の一流国になっていくためにやるべきことは多々あるかと思うんですが、一つ私、申し上げたいのが、教育の問題はもうすぐに出てくるテーマですが、初等教育、大学教育は、もちろん後でまたいろいろ議論があると思いますのでこれは後回しにしまして、非常に気になるのは日本における知の在り方。知というのは知識、知恵の知ですが、知の在り方が少し偏っていないだろうかと。
 これは、日本というのは東洋の国ですから、知行合一という言葉が昔からあるはずなんですが、いろんな知識を論じる方と現実に責任を持って行動する方とが分離している例が非常に多いように思います。例えば、先ほどから話題になっているベンチャービジネスも、アメリカのスタンフォード大学では盛んに、教授がベンチャーの社長をやったり学生が社長をやったりしてどんどんアントレプレナー人材が生まれると言っているんですが、日本では大学発ベンチャーと大騒ぎしている割には、大学の先生で現実の、例えば民間企業での製造の現場なり、例えば実際のマーケットでの現状なりを身体的に理解されている方はほとんどいらっしゃらない。むしろ、学問上、勉強をしてこられた方はたくさんいらっしゃるんですが、そこが私は非常に気になります。
 例えば、日本での新しい大学発ベンチャーを生み出すのであれば、アメリカにもよく見られるように、大学の先生でももう会社をどんどん経営したり、そこで失敗して経験されることもよろしいかと思います。
 そういう意味で、知の現場、例えば経営学を教える現場にいらっしゃる方と経営そのものを現実になさっている方とが人的に交流する、経験的にもその両方をやっていけるような仕組みを作らないと、日本という国はどうもその知と行ですね、知行が分離している傾向が非常に強い。
 これは、アメリカのシンクタンクを一つ例に取っても、先生の御指摘のとおりで、アメリカには非常に優れた政策シンクタンクがある。日本にはなぜ民間の政策シンクタンクが生まれてこないのかというのは、いろいろな理由があると思いますが、一つは、アメリカの政策シンクタンクというのは大統領が替わると一緒に入閣するぐらいの動きをされるわけですね。今回、竹中平蔵大臣というのが生まれましたが、過去にも何人かそういう知の領域から現実の行政に、政治に、政策に責任を持たれる立場に動かれる方はいらっしゃるんですけれども、やはりアメリカに比べると、こういう現実の政策に責任を持って、単なる評論ではなくてきちっとした意思決定をしていくような経験を積んで、そして政策の現場に戻る、また、政策の現場で非常に深く見識を深めてまたその現実に戻っていくというような人材の行き来が非常に弱い。
 非常に抽象的な言い方になってしまったかもしれませんが、私がこの日本という国の人材戦略を考えるときに一つ気になるのは、アメリカの方がよほどその知と行、知行の合一ということが行われているように見えます。日本という国はいつの間にか専門化、分業化が進んでしまって、私、考える人、あなたは実行する人、私、評論する人、あなたは責任を取って意思決定する人という分離がやや強く生まれ過ぎているのではないかと、あえてその一点を申し上げたいと思いますが。
この発言だけを見る →
米倉誠一郎#11
○参考人(米倉誠一郎君) 私も、日本に国家戦略を作る機関がなかったかというとそんなことはなくて、多分、通産省とか彼らが代替していたと思うんですね。今、それがキャッチアップ型から本当に政策に密着した形で必要になってくるので、やっぱり各政党がきちっとした政策シンクタンクを持つということが重要だと思います。
 それは、アメリカの共和党がある種の幾つかの政策シンクタンクを持っていて、民主党が違うものを持っていると。それが必要なんですが、今、僕も珍しく田坂参考人と意見が一致しましたが、人材流動は非常に重要だと思います。
 例えば、我が母校であるハーバード大学は、今、ラリー・サマーズが帰ってきました。ラリー・サマーズが帰ってきて、物すごいリーダーシップで今、ハーバードを正に二十一世紀、もうワンランクアップするということでいろんなことをやっていますが、この種の、彼は経済学でも神童と言われた人間で、ハーバードでも三十幾つのときにもうプロフェッサーになった人間ですが、この種の人間がやっぱり財務長官をやって、そしてまた要するにプレジデントとして母校に戻ってきて采配を振るうと。こういうような人材がやっぱり流動して、彼らが一つの明確なポリシーを持ってどちらかの政権にきちっとくみしていると、こういうような政策シンクタンクと学者たちの集団、この人材移動。
 今起こっている経済諮問会議も、あれは本来であれば首相直結というよりもずっといろんな段階、早い段階から各党が持っていて、シャドーキャビネットの中でこれができ上がったらすぐにでもこういう政策を出せるというパターンを作っていなければいけないものだと思いますので、そういう政策シンクタンクをこれから本気で作っていくということが重要ですし、それはただ単純に自民党あるいは民主党あるいはそういう共産党の子飼いであるだけではなくて、やっぱり知識がそこに大量に流入して、同じ意見を最も持っている人間であればそこに自由に入ってきて自由な意見陳述をしていくと。
 かなり本当に政策を論じる団体としての政策シンクタンクが日本にきちっと生まれてくる必要性は、私も非常に強く感じております。
この発言だけを見る →
島袋宗康#12
○島袋宗康君 私は、国会連絡会の島袋宗康でございます。
 今日は三名の先生方、大変貴重な御意見を承りましてありがとうございます。
 まず、米倉参考人の方からお伺いします。
 米倉参考人は、週刊東洋経済二〇〇一年三月十日号で、「IT革命の進展によって、公共事業等のネット調達や効率的な社会運営がオープンかつフェアに行われるようになれば、日本の高コスト体質は大きく改善される。」と述べておられます。そして、その高コストの一例として成田空港を挙げておられます。つまり、「成田空港は、さまざまな規制や天下り事業団あるいは公共投資の仕組みによって世界でも極めて高コストな国際空港である。」と述べておられます。
 そこでお伺いしたいんですけれども、もし米倉参考人が成田空港の高コスト構造を改善する立場に立たれましたらどのようなことをまずなさいますか、お教えいただきたいと思います。
 それから、田坂参考人にお伺いします。
 我が国の自治体や民間企業がこの米国型インキュベーションの手法の五つの要素を表面的にまねてもベンチャービジネスがなかなか育たない。我が国においては、日本固有の歴史的、社会的諸条件を考慮しつつ、日本独自の方法、ビジネス生態系の形成を促しつつ、ベンチャービジネスの創発を促すという日本型インキュベーションの手法を生み出さなければならない。そして、日本型インキュベーションの手法のポイントは異業種連合を結成することであると先ほども話されておりました。この論を展開されておりますけれども、最後に民間主導ということを強調されて、政府が新しい産業を育成してくれるという幻想を捨てなければならないと結んでおられます。
 誠にごもっともなことで同感いたしますけれども、一方では、政府の役割は一体何なのかという疑問が生じてまいりますが、田坂参考人はその辺のところについてお考えがあればお聞かせ願いたいと思います。
 次に、高柳先生にお願いします。
 放送番組を文化資産としてとらえる考え方が法制度的側面でも事業者や市民の意識の面でもまだ成熟していない日本とアメリカの違いを指摘されております。そして、そこには著作権などの諸権利を始めとする非常に複雑な問題や日本のドネーション文化の税制の違いなどを始め、かなり奥深い問題があると言っておられますけれども、アメリカ流でない日本型のベンチャー育成の在り方に対する高柳先生の御意見を承りたいと思います。
 よろしくお願いします。
この発言だけを見る →
米倉誠一郎#13
○参考人(米倉誠一郎君) 私はゼネコンじゃないんで何とも言えないんですが、多分、いろいろな意味で民営化あるいは競争入札、そういうものをやっていくと。既得権を持った団体に一切の管理を任せるということをしないで、毎年毎年競争入札をしていくというような形で、最も安くて最も実績のあるサービスを提供した者に事業が行くというような仕組みを取り入れると。そのときにも、実績を重視するんではなくてパフォーマンスを重視する。実績主義をやりますと必ず固定化しますので、新規参入が入るように実績ではなくてパフォーマンスを要求して、そのパフォーマンスに対して結果を、責任を取っていくと。事前チェックから事後チェック、そういうようなシステムを導入すると。
 もう一つ大きな方法論として面白いのは、羽田を国際空港化するということを前提に、二つの空港が競争するというような状況も成田空港を活性化するには非常に有効な手段ではないかと思います。
この発言だけを見る →
田坂広志#14
○参考人(田坂広志君) 御質問をいただきましたことについてまず申し上げたいのが、政府が産業を育成してくれるという幻想を持つべきではないということは、必ずしも政府に対して失礼なことを申し上げた意味ではございません。私自身、政府と一緒にいろいろな取組をしてまいりました。例えば、九六年の段階で日本でインターネット革命とEコマースの革命がやってきたときに、電子商取引実証推進協議会というものを当時の通産省と御一緒に民間の立場で作り、その運営委員を務めたりしております。
 そのプロセスで非常に感じたことを率直に申し上げますが、国としては新しい電子商取引の事業を育てるべきだということでいろいろな政策的な手を打たれます。そして、その政策的な手というのは、多くの場合、最後に補助金という形になります。こういう手を打たれることそのものは決して間違っているわけではないんですが、民間の側に、何か国がそうやってお金を出してくれて、例えば研究開発でも助けてもらえるというような甘えが生まれてくると、結果として、先ほど高柳さんがおっしゃったんでしょうか、過保護の形になってきまして、民間の側にいるとよくそれが見えてきます。民間は本当に自力で、自己責任において新しい事業を立ち上げようという気持ちがむしろ少しうせてしまう、黙っていても国から補助金が何百億といただけるということになると、逆に民間の、本当のぎりぎりの退路を断って自分たちで事業を起こすという、そういうスピリットが失われてしまっているような気がします。
 これは長く護送船団方式というような言葉で、例えば金融業界などについても言われたことで、実際に国としては非常に善意、前向きな気持ちでなさっている施策が、結果として民間の自立心を妨げている例は残念ながら多々ある。このことに対して、まず民間に対して私が物を申し上げたかったのは、余り国にこうしてもらいたい、ああしてくれればと考える前に、まず自ら、自分たちで新しいビジネスを立ち上げるんだというしっかりとした考え方を持つべきだと。そのことが実は論文のタイトルに掲げた理由でございます。
 その上で、では国は何をなすべきかについては、率直に申し上げますが、今、大きな時代の流れの中で、小さな政府、大きな政府という議論があります。これはどちらがいいかというのはまたいろんな政策論の議論なんですが、あえて申し上げたいことは、ここでいう大きな政府と言うときの大きなというのは、もちろん職員の数というような意味合いもあろうかとは思いますが、それも含めて、究極、予算規模の大きさというような意味において使われてくる言葉と思います。私は、これからの時代に政府の役割は、大きい政府であるか小さい政府であるかということよりももっと大切なことがある、それは、率直に申し上げますが、賢い政府であるべきだと。
 どういうことかと申しますと、国民に対していろんなお金を使っていろんな施策を打つこともまたもちろん必要ではありますが、きちっとした知恵を提供できる、示せる。例えば国家のビジョン、戦略、市場に対する新しいやはり考え方、こういうものをやはり深く理解されて、いろんなメッセージを発信されるということが非常に重要になってきていると思います。むしろ、そこのところの検討はおろそかにして予算だけばんと付けるという形の政治の在り方が、今の国をややいびつにしてしまったんではないか。先ほどの山東先生の御指摘にもあったように、やはり国は、そして政党の方々も、政策立案能力、それ以上に国家のビジョンをきちっと語る、しかも説得力と魅力を持って語るような力を付けられるべきではなかろうかと。
 むしろ、民間は民間の自助努力でお金も組織も人材も頑張ってやっていくと思いますが、やはり国の持つ言霊力というのがあります。かつて通産省を始め政府というのは、そこで掲げたビジョンが民間の産業を大きく鼓舞した時代はありました。今、国において失われているのは、先ほどちょっと申し上げましたが、言霊力、語られるビジョンとか政策がやはり民間の、そして一般の生活者の心を打つような、そういう政策なりビジョンを語られる力がどうしても衰えてしまっている。これは恐らくは、政党ごとに申し上げればシンクタンクという議論もあろうかと思います。それから、かつて日本の中央官庁は、日本でも最高のシンクタンクと言われた時代があります。
 この辺りを、もう一度原点を見詰め直されて、国は本来国民に対して提供すべきは予算である前に知恵であると、更に申し上げれば志であると。この辺りをやはり改めて政府に、国にお願い申し上げたいと思います。
この発言だけを見る →
高柳寛樹#15
○参考人(高柳寛樹君) 先ほどの御質問ですが、一番私がこの文書の中で強調したかったのが、六ページの一番左下になりますが、この放送博物館というか、放送番組、動画を、いろんな権利の複雑なものを乗り越えて保存していくというベンチャーというか、そういう組織を作るに当たりいろんな問題が出てくるんですが、一番重要なのが、アメリカと比較して分かったのが、官民学が重層的か否かというところだと思うんですね。
 ある、私が加盟している学会であった出来事なんですが、産業からの人、それから大学側、学問側からの人が来て、学生のインターンだとか、あるいは今後両方協力してある一つの目的を達成しましょうよという話合いの中で、結局そのシンポジウム自体は決裂に終わるんですね。どういうことかというと、産業は産業の方の主張をして、学問、大学、アカデミックな方はアカデミックの主張をして終わってしまうというようなこと。ですから、一つの目的を挙げたときに、産学とそれから官が目的合理的に動かないという気が非常に日本の場合しています。目的を達成するためにはそこの産官学というふうにあえてセクションを切ると、それぞれがある一定の権限を越えても協力していかないといけないというふうに思うんですね。
 この放送のアーカイブ、放送の博物館を作るという意味においても、アメリカは非常にすんなりいっている。例えば、どういうことかというと、著作権の問題があるんですが、大学に関してあるいは研究機関に関しては著作権がフリーになる部分が一部あります。その部分に関しては、じゃ大学がやりましょうと。じゃ、どこがお金を集めるのというと、じゃ民間がやりましょう。そうすると、その民間が集めたお金をそこに投下した場合にどうするのとなったときに、今度は官が出てきて、じゃ、そこは免税しましょうと言ってくるんですね。それでドネーション文化がうまく回っていくんですけれども。そういった協力関係というのがアメリカを見ていると、この例でいうと非常にダイナミックに、動的に思えるんですが、日本を見ていると極めてスタティックですね、静的に思えると。そういった部分を、横ですね、横のつながりを強くできないものかなというのが思っています。それがひいては、最終的にベンチャーというか、このベンチャーというのはアントレプレナーですね、起業家の育成あるいは起業を促進する一つのかぎになってくると思っています。
この発言だけを見る →
加治屋義人#16
○加治屋義人君 参考人のこの資料等もよく読ませていただいて、先ほど講演もいただいて思いますのが、非常に分かりやすく易しくお話ししていただいているのがよく分かるんですけれども、ただアメリカと日本を、日本が非常に後れていることもよく理解ができました。日本とアメリカの言葉が出てくるとすぐ私は中央と地方という、置き換える、そういう思いにすぐ立つんですけれども、二十一世紀、この地方分権あるいは地方の時代づくり、進めるわけですけれども、やはり今、地方が本当に求めているのは、今日御講演いただいたこの新しい企業、ビジネスづくり、地方が求めている最大のものだと、そういうふうに思っているんですけれども。
 私は南の、最南端、鹿児島に住んでいるものですから、自分のところを想像してみますときに、情報に非常に乏しい、あるいは経済面でも非常にハンディがあると。また資源に乏しいというんでしょうか、農林水産業、第一次産業が中心だ。そういう、例えば道路にしても鉄道にしても社会資本が大変地方というのは後れている。もう一つ、残念なことに、私は、県民性、地方の県民性というのもあるのかなと思っているんですが、私が、自分がそうであるようにのんきな性格、そういう中から経済人がなかなか育ってこないと。
 こういうもろもろのことを考えたときに、この、最初申し上げた地方の企業、ビジネス、新しいものを作っていく、そういうものの促進をするための何か知恵を教えていただければ大変有り難いなと、心強いなと思ったものですから、質問させていただいたところであります。
この発言だけを見る →
内藤正光#17
○理事(内藤正光君) どなたにお尋ねでしょうか。
この発言だけを見る →
加治屋義人#18
○加治屋義人君 できれば三人、簡単で結構ですから、示唆だけ与えていただければ結構です。
この発言だけを見る →
米倉誠一郎#19
○参考人(米倉誠一郎君) 非常にこれ難しい問題だと思うんですが、私はちょっと発想を切り替えた方がいいと思うんですね。地方もすべて都会のようになるという発想をやめて、日本はカリフォルニア州しかないわけですから、もしカリフォルニア州に五十二人の知事がいたら我々は笑うと思うんですね、何考えているんだろうと。ということは、日本はやっぱり道州制みたいにもう少し広域な行政範囲で考えざるを得ないと。そうしないとペイしないんですね。
 やっぱり日本は一種、高度成長期の中に幻想を抱かしまして、すべてみんな同じようになるんだと。地方都市もみんな画一的な開発をした結果が、何の魅力もない都市がたくさん生まれてしまったと。やっぱり広域行政で、道州制みたいな割合の中で、九州エリアだったらばやっぱりどこか一個強いコア、これは福岡を物すごく強くしていくと。そこが物すごいから、そこが、一千万人とは言いませんが、それぐらいの規模の、巨大化して集中して、非常にアジアに対しても魅力のある都市になってくれば、その周りはいろんな形で生き残れるんですね。やっぱりクオリティーライフを提供できるとか、リゾートとして生きるとか。ですから、我々は資源を満遍なくばらまくことによって非常に魅力のない都市を大量に作ってしまったので、東京対その他になってしまったと。
 じゃ、東京対その他をどういうふうに解決するかというと、東京対五十二ではないんですね。多分、東京を幾つかのコア、五つぐらいのコアに分散して、その周りはその周りで生きていくというような発想をせざるを得ないと。そういうことが鹿児島県民の同意を得られるかどうかは別ですが、ある種そういう形で展開しない限り、資源は有効ですし、日本が生きていく産業活力も五十二に分けることはできないので、ちょっと違った発想をする必要があるんではないかなと。
 県民性について言えば、余り日本は道州制とか言うと、いやもう山形県と富山県は仲が悪くてとか、アメリカじゃなくて、イギリスじゃなくて、フランスとドイツって僕は知る限り最も仲の悪い国だと思うんですが、あそこがユーロっていう物すごい大胆な取組に参加しているということから考えれば、やっぱり日本国内で起こっているチャレンジというのは余りにもひ弱だと思います。そんな県民性云々の前に、我々はもっと大きなチャレンジ、あるいは今回のワールドカップを契機に日韓共通貨幣を発行するとか、そういう大きなチャレンジをすることによって、日本の小異を捨ててもっとグローバルなプレーヤーになっていくということを考える必要があるような気がいたします。
この発言だけを見る →
田坂広志#20
○参考人(田坂広志君) 御指摘の問題は、やはり日本の地方自治の最も大切な、重要な部分を御指摘になられているので、非常に簡単な答えは申し上げられないんですが、少なくともまずインキュベーションという、新しい新事業を起こすという一点で見ると、今日申し上げたようなやはり工夫が必要ではなかろうかと。
 先ほど、最初に申し上げたように、アメリカのシリコンバレーを表面的に見てきて、インキュベーターみたいな施設を作って、それで新しい産業が生まれる、事業が生まれるというお考えはやや安易に過ぎるだろうと。多くの場合、サイエンスパークとかテクノパークという形で、一説によれば全国八十以上の構想が動いているそうですが、現実に行われることは、上物行政、あとちょっとした補助金かベンチャーキャピタルかよく分からないような資金の準備がされるようなことで新しい事業が生まれるという、やや安易なとらえ方はもう卒業されるべき時期だと思います。
 よく企業誘致ということも、やはり施設を造ってどうぞと言ってみても、先ほどのビジネスエコシステムがその地域になければ、長い目で見て新しい地域産業が生まれることはないんだと。したがって、今日申し上げた産業インキュベーション若しくはビジネスエコシステムを育てるという考え方は、それぞれの地域においても全く同じテーマを申し上げたいと思っています。
 私自身、このテーマではいろんな地方自治体にお招きいただきまして、そういうサイエンスパーク、テクノパークなどを運営している方々に同じことを申し上げています。
 そのときのポイントというのは何か。あえて申し上げれば、まず企業誘致とかあれこれおっしゃる前に二つのことをしっかりなさるべき。一つが、情報のセンターになられるべきだと思います。この情報のセンターというのは何かというと、地域は元々やはり東京に比べれば地方にありますので不利です。ただそのときに、情報のレベルでいえば、かなり今ネットとかメディア、ブロードバンド等普及してきていますので、分かりやすく言えばおもしろいビジョンとかアイデアとか場、ネットの上での場を作ると、それなりに消費者、生活者更には企業、集まってくれる可能性はあります。
 したがって、この関連で問われるのは、よくあるんですけれども、地方の個人の方が運営しているインターネットのサイトに物すごくアクセスが増えるというようなことは結構あることで、当然どこにいるかは余り関係ない。そこで語られているビジョンとかコンセプト、その場の面白さ、そこに集まる人々たちの持つ知恵の豊かさ、こういうもので実は企業や人は集まってきますので、それが決定打だとは申し上げるつもりはありませんが、地方の立場で、やはり先ほど申し上げたことと同じことなんですが、お金を準備し施設を準備して、企業来てくださいとか地域の産業生まれないかと考える前に、実はインキュベーションの本質というのは、繰り返しになりますが、どのような新しいビジョンを示し得るか、戦略を提案できるか、それがいろいろな企業にとって魅力的に見えるかという知恵の勝負の時代に入っています。時代はもうよく御存じのようにナレッジキャピタリズム、知識資本主義と呼ばれる時代ですので、単に資本があるだけでは事業は生まれてこない。やはり地域にどのようにしてその知恵というものを結集していくか。これは別に東京にいらっしゃる方の知恵も、そのやり方によっては集まっていただくことは十分にできます。
 したがって、最初に申し上げたいのは、情報のセンター、正確に言えば知識と知恵のセンターにどうやってなっていくかというところからスタートされることが結果として王道になられるだろうと思っています。
 その上で、もう一点申し上げれば、その知恵というものを提供し、魅力的なビジョンを語り、人々がそこにまず情報のレベルで集まってくるという場づくりはやはり人間がコアです。したがって、その地域における人材育成というのはその地域ごとの大学なり教育施設がたくさんおありかと思いますので、そこでその地域にとどまって新しい動きを作るような若い人材をどう育てていかれるかという人材育成論にやはり必然的に戻ってまいります。
 余り決定的な解決策というのはない段階ですが、私は少なくともその情報のセンターになるということ、そしてその地域にやはり愛着を持ってそこで日本全体にいろんなメッセージを発信し、いろんな人々の知恵と関心を集めていけるような、やはり知恵を持った人材というんでしょうか、そういう方を育てることが遠回りのようで一番近道だろうと考えておりますが。
この発言だけを見る →
高柳寛樹#21
○参考人(高柳寛樹君) 正に田坂さんが今おっしゃったとおりでして、実は私どもの会社もエンジニアリングの力が一番重要な会社なんですが、今、福岡にいる個人と、それから仙台にある会社に発注をして共同開発なんかを行っております。
 これはどういうことかというと、その地域は、ネットはもう言い尽くされたことなんですが、場所は関係ありませんので、地域も関係なくなってくるんですね。そうすると、私たちは何で、じゃ仙台と福岡にお願いしているかというと、仙台にある会社が優秀なんですね。福岡にいる人が優秀なんです。それによっていろんな仕事が、私どもからの発注だけじゃなくていろんなところから大手の仕事も受けていますし、やっていらっしゃると。その福岡の個人というのはここのところで、福岡で今度起業をする、会社化してベンチャーを起こしてやっていくんですね。
 やはり人材というところをいかにその地域で作っていくかというのは物すごく重要だと思いますし、東京のいわゆるベンチャーが集積しているところで仕事をしていても、全く地域関係なくそういったことが進んでいく。発注なり一緒のパートナーシップを組んでやっていくということはあり得ると思うんですね。
 あと一つは、福岡で起業するその方が言っていたのは、ちょっと情報が少ないというのはやはり言っていました。やはり東京で起業するよりもハンディが多いと。別に東京に遠いとか商業圏が違うとかそういうことではなくて、情報が少ないというのはやはり彼らが起業する際に身にしみて感じていることのようです。
この発言だけを見る →
辻泰弘#22
○辻泰弘君 民主党の辻泰弘でございます。
 まず、お三方に共通してお聞きしたいことでございますが、それぞれ起業、実業、またそれらに対する研究に従事されてきたわけですけれども、その過程で、起業、業を起こす場合の妨げとなっている規制というものを感じられたことがあるのか。すなわち、それぞれの方々から見られて、緩和すべきあるいは改革すべき規制というのは何か、このことについてお伺いしたいのが第一点。
 それから第二点は、二つ目は米倉参考人にお伺いしたいんですけれども、先生のお話の中で、間接金融の方がリスクが高くて直接金融の方がいいんだということで御指摘がありました。なるほどと思うんですが、直接金融をしからばどのような形で充実、拡大させていくのかと。日本の場合、ストックオプションの税制とかあると思うんですが、現実に、日本の場合のベンチャーの育成に、ストックオプションだとかあるいはエンジェル税制というのが効果を持っているのかどうかということをお聞きしたいことが一点。
 それからもう一つは、年金資金の運用といいますか、そのベンチャーへの流入ということを御指摘があったと思うんですが、その意味するところは、日本に当てはめると、公的年金の積立金をそういうリスクがあるかもしれない分野につぎ込んでいくということになるかと思うんですが、現在は特殊法人を通じて、信託を通じて株も運用できるということになっているわけですけれども、その間に間接的にしたいわけですが、直接的にそういう部分にも入っていくべきだと、こういうことになる、御主張になるのかということを、そのことをお聞きしたいと思います。
この発言だけを見る →
内藤正光#23
○理事(内藤正光君) 一つ目の質問はどなたに。
この発言だけを見る →
辻泰弘#24
○辻泰弘君 お三方共通でございます。
この発言だけを見る →
内藤正光#25
○理事(内藤正光君) では、まず一つ目の質問はお三方共通ということで、高柳参考人の方からお願いをいたします。
この発言だけを見る →
高柳寛樹#26
○参考人(高柳寛樹君) 規制という面で緩和してほしいというふうに思った規制ですね、公的な規制というのは直接的にはこれといって今申し上げることはないんですが、ただ、非常に泥臭い話で大変恐縮なんですけれども、昨年、融資を受けた際に個人保証をしますよね、基本的に。幾らその銀行の支店長なり本部の人にビジネスモデルの説明をしてこうなんだこうなんだと言っても、だれも理解してくれないわけで、そのときに当然個人保証も押して借りるわけですけれども、ああいった部分というのが極めて我々にとっては障害になってくるのかなと思います。
 どうやって解消していくかというと、やはりビジネスを理解してくれる方々が身近にいるかどうかという問題なのかなと思います。例えば、ベンチャーキャピタルなんかですと結構理解をしてくださるところありますけれども、なかなかそれでも本質的な理解をしてくれる方というのはごく限られています。ベンチャーキャピタルというのは限られているなと思うので、そういった部分を何とか改革していくということが重要なのかなと思います。
 私の感じでしかないんですけれども。
この発言だけを見る →
田坂広志#27
○参考人(田坂広志君) 税制等についてはもう言われている部分多々あると思いますし、恐らく米倉さんの方からもいろんなまた深い見識を語られるかと思いますので、あえて貴重な機会ですので、私がいつも思っている、日本では思い切ったこの規制と呼ぶか仕組みを変えられてはいかがかと思うことを申し上げます。
 私はアメリカのシンクタンクに何年かいたんですけれども、バテル記念研究所と呼ばれるところですが、世界的に有名な業績でいえば例のゼロックスを開発したような研究所で、世界で今一万名ぐらい研究員がいて、四研究所があります。これは民間のシンクタンクなんですが、御存じの方がいらっしゃると思いますが、実はアメリカの国立研究所を現在三つ運営しております。これは、私自身も初めて着任したときには驚きだったんですが、分かりやすく言えば、日本の民間のシンクタンクが例えば日本原子力研究所を運営しているようなそういう仕組みです。
 これはアメリカではもう昔からやられていることで、国立研究所はすべて民間が運営をするというやり方で何年かに一度公開でビットが行われまして、分かりやすく言えば、社名を出すのはあれかもしれませんけれども、日本原子力研究所については民間のA社、B社、C社が応札してきたと。いろんな審査をした結果、これから五年間はこのA社に運営を委託しようと。五年間なら五年間たったときに見直しをして、パフォーマンスを評価して、また公開でほかの今度はB社が勝つということもある、また継続で勝つこともある。幸い、バテルの記念研究所というところはもうずっとパシフィック・ノースウェスト国立研究所と呼ばれるところをもう何十年にわたって運営を継続している、毎回ちゃんと審査を受けていますが、というようなことが行われております。
 これは規制と呼ぶべきか何か分かりませんが、思い切って日本の国立機関というものを民間に運営をゆだねるということを私はなさるべきだと思います。
 といいますのは、なぜ日本の技術の国際競争力が弱いか。いろんな理由があります。
 よく短絡的に考えるのは、日本でもノーベル賞が出せる人間を育てようとなさるんですが、それはもちろんやられてもいいですけれども、競馬に例えて言えば大穴を当てるようなことを議論されているんで、むしろそうではなく、むしろテクノロジーマネジメントの水準を高めることをなさるべきです。
 今、国立研究所を一つ見ても、大変失礼な表現かもしれませんが、やはり予算の使い方一つでも効率性は欠く、出てきた成果についてのきちっとした評価が甘い、客観性が弱い。こういう中で、どうしても国立研究所のマネジメントをなさる方々というのは、余りマネジメントの専門の方ではない。むしろ、素人と言ってもいいような方々がなさっているわけです。
 アメリカのようにドラスティックに民間企業に、もちろん守秘義務契約等物すごい厳しいものがありますので、これもやろうと思えばできます。ドキュメンテーションもきちっとした体系があります。セキュリティーチェックなど、私ももう銃を構えたガードマンに何度チェックされたかというようなことをやっていますけれども、そういうことはきちっとできますので、民間にきちっとゆだねて、民間のテクノロジーマネジメント能力を国の技術開発の根幹の部分に使われるような仕組みを作られるべきかと思います。これはもちろん、また十年の計で効果が現れるようなことではありますが、今のままでは、どれほどノーベル賞級の学者を増やそうとか研究費を増やしてみても、効率的に使われない。
 むしろ、アメリカのように、テクノロジーマネジメントで私が非常に感心したのは、非常に高名な学者がその研究所に移るといううわさを聞いて、あの学者はすごい、もう功成り名遂げた方だから、これは是非来ていただいたらいいんじゃないかと人事に話をしたら、そのバテルで、あっさり言われたのが、審査をしたと。彼は採用しないと。どうしてですかと。いや、彼はもう過去すばらしい業績を上げたけれども、今もう下り坂だと。うちの研究所で雇っても、もうこれから大した成果は出ないだろうと。なかなかに厳しいですけれども、そういう形で人件費一つでもきっちり審査して使っていく。優秀な若い可能性のある人に投入していく。お金の使い道も、やはり優れた技術開発をしたところにはどんどん投入していくけれども、そうでないところはきちっと縮小していくという、このめり張りの利いたマネジメントというのは、もちろん民間企業でもまだまだ甘いんですけれども、国に至ってはほとんどノーチェックという感じが私はしています。
 ですから、思い切って、民間にも頑張れという意味も込めて、民間が国立研究所を運営するということは決して荒唐無稽な発想ではありません。アメリカではもう何十年にわたってそれがなされ、それこそがアメリカの国立研究所なり国の科学技術関係の予算の効率的な活用につながっているんだと。このことを、せっかくの機会をいただきましたので、規制緩和という、ちょっとテーマはずれますが、一度先生方に御検討いただければと思います。
この発言だけを見る →
内藤正光#28
○理事(内藤正光君) ありがとうございます。
 質問は三点ほどあったかと思いますが、米倉参考人、まとめてお願いいたします。
この発言だけを見る →
米倉誠一郎#29
○参考人(米倉誠一郎君) まとめてですか。
この発言だけを見る →
← 戻る