田坂広志の発言 (国民生活・経済に関する調査会)
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○参考人(田坂広志君) 御指摘の問題は、やはり日本の地方自治の最も大切な、重要な部分を御指摘になられているので、非常に簡単な答えは申し上げられないんですが、少なくともまずインキュベーションという、新しい新事業を起こすという一点で見ると、今日申し上げたようなやはり工夫が必要ではなかろうかと。
先ほど、最初に申し上げたように、アメリカのシリコンバレーを表面的に見てきて、インキュベーターみたいな施設を作って、それで新しい産業が生まれる、事業が生まれるというお考えはやや安易に過ぎるだろうと。多くの場合、サイエンスパークとかテクノパークという形で、一説によれば全国八十以上の構想が動いているそうですが、現実に行われることは、上物行政、あとちょっとした補助金かベンチャーキャピタルかよく分からないような資金の準備がされるようなことで新しい事業が生まれるという、やや安易なとらえ方はもう卒業されるべき時期だと思います。
よく企業誘致ということも、やはり施設を造ってどうぞと言ってみても、先ほどのビジネスエコシステムがその地域になければ、長い目で見て新しい地域産業が生まれることはないんだと。したがって、今日申し上げた産業インキュベーション若しくはビジネスエコシステムを育てるという考え方は、それぞれの地域においても全く同じテーマを申し上げたいと思っています。
私自身、このテーマではいろんな地方自治体にお招きいただきまして、そういうサイエンスパーク、テクノパークなどを運営している方々に同じことを申し上げています。
そのときのポイントというのは何か。あえて申し上げれば、まず企業誘致とかあれこれおっしゃる前に二つのことをしっかりなさるべき。一つが、情報のセンターになられるべきだと思います。この情報のセンターというのは何かというと、地域は元々やはり東京に比べれば地方にありますので不利です。ただそのときに、情報のレベルでいえば、かなり今ネットとかメディア、ブロードバンド等普及してきていますので、分かりやすく言えばおもしろいビジョンとかアイデアとか場、ネットの上での場を作ると、それなりに消費者、生活者更には企業、集まってくれる可能性はあります。
したがって、この関連で問われるのは、よくあるんですけれども、地方の個人の方が運営しているインターネットのサイトに物すごくアクセスが増えるというようなことは結構あることで、当然どこにいるかは余り関係ない。そこで語られているビジョンとかコンセプト、その場の面白さ、そこに集まる人々たちの持つ知恵の豊かさ、こういうもので実は企業や人は集まってきますので、それが決定打だとは申し上げるつもりはありませんが、地方の立場で、やはり先ほど申し上げたことと同じことなんですが、お金を準備し施設を準備して、企業来てくださいとか地域の産業生まれないかと考える前に、実はインキュベーションの本質というのは、繰り返しになりますが、どのような新しいビジョンを示し得るか、戦略を提案できるか、それがいろいろな企業にとって魅力的に見えるかという知恵の勝負の時代に入っています。時代はもうよく御存じのようにナレッジキャピタリズム、知識資本主義と呼ばれる時代ですので、単に資本があるだけでは事業は生まれてこない。やはり地域にどのようにしてその知恵というものを結集していくか。これは別に東京にいらっしゃる方の知恵も、そのやり方によっては集まっていただくことは十分にできます。
したがって、最初に申し上げたいのは、情報のセンター、正確に言えば知識と知恵のセンターにどうやってなっていくかというところからスタートされることが結果として王道になられるだろうと思っています。
その上で、もう一点申し上げれば、その知恵というものを提供し、魅力的なビジョンを語り、人々がそこにまず情報のレベルで集まってくるという場づくりはやはり人間がコアです。したがって、その地域における人材育成というのはその地域ごとの大学なり教育施設がたくさんおありかと思いますので、そこでその地域にとどまって新しい動きを作るような若い人材をどう育てていかれるかという人材育成論にやはり必然的に戻ってまいります。
余り決定的な解決策というのはない段階ですが、私は少なくともその情報のセンターになるということ、そしてその地域にやはり愛着を持ってそこで日本全体にいろんなメッセージを発信し、いろんな人々の知恵と関心を集めていけるような、やはり知恵を持った人材というんでしょうか、そういう方を育てることが遠回りのようで一番近道だろうと考えておりますが。