高木勇三の発言 (内閣委員会)
⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。
詳細は利用規約をご確認ください。
○参考人(高木勇三君) ただいま御紹介いただきました高木でございます。着席したままでお話しさせていただきますが、このような場は初めてでありまして緊張しておりますので、よろしくお願いいたします。
さて、私、公認会計士でございまして、道路関係について必ずしも学問的に考察しているような者ではございません。私の専門は会計であり監査でありまして、会計といいますのは経済事象を金銭的数値に置き換えまして表現するものでありますし、また監査というのは外部に対しての言明、これに対して保証を与えるという性格のものでありますが、この十年ほどパブリックの世界の会計及び監査につきましていろいろ考察しております。その関係で、政策評価ですとか民営化についてなどもいろいろ考えておりまして、本日、そのような立場にある者の発言ということで御理解いただきたいというふうに思います。
これから申し上げますこと、少々、いろいろ御慎重に御検討いただきたいということを申し上げますが、私、個人的には、どちらかと申しますと、行財政改革に対して大いなる賛意を送る者でございます。私も一九六〇年代に思春期を過ごしたものですので、あの期間の民間の爆発的なエネルギー、これによって社会の変化がもたらされたというところを見ておりまして、当時のいろいろな現象及び社会に関しまして非常に賛意を持って見ておったということでございまして、自由主義経済社会を強く支持しておるような立場の者でございますけれども、政府部門の見直し、民営化、基本的にそういった意味で賛成するものではありますけれども、社会資本ですとか社会的共通資本、これ宇沢先生の言い方でございますけれども、そういった範疇の民営化ということに関しましては慎重なる検討が必要ではないかというふうに考えております。
お手元の方に配付されておりますかと思いますが、一枚のレジュメのところに、社会資本、制度資本のところの代表的なものを記させていただいておりますけれども、このところをごらんいただいてもお分かりのように、現在、完全に民間ベースでやられているというふうな範疇のものもかなり多くの法律的な制約が掛かっておるというところが御理解いただけるのではないかなというように思っております。
それで、これらについての共通的な特徴というようなところを改めて申し上げておきたいと思うんですが、不完全な競争市場において行われる事業であるか、あるいは外部経済が非常に重視され単純に交換取引と呼ばれるようなとらえ方ができない部分が含まれている事業であるという点です。
先ほど、民間で行われている事業に関しても種々の制約が課せられているというふうに申し上げたのは、正に今申し上げたような不完全競争市場における事業、あるいは外部経済が重視されている事業ということが自由というように言えるわけですが、道路公団の民営化に関しましても、道路公団の事業といいますのは、後で述べますけれども、不完全競争市場におけるやはり事業でありますし、外部経済が重視される事業というふうに言えますので、やはり種々の制約を御検討いただくことが適切なのではないかというふうなことをまず最初に申し述べておきたいと思います。
さて、今回の民営化の基本的考え方、改めて確認の意味で述べておきたいと思いますが、昨年の十二月の特殊法人等整理合理化計画、あちらのところで民営化ということにつきましての考え方が述べられておりますが、事業の採算性が高いこと、これを前提とされまして、かつ国の関与の必要性が乏しい法人、あるいは企業的経営による方が事業をより効率的に継続実施できる法人、さらに、あるいは民間でも同種の事業の実施が可能な法人、このいずれかに該当するものというように基本的考え方として示されておりますとともに、民営化の形としまして非常に幅広く考えられておるのが今回の特殊法人等整理合理化計画の大きな特徴というふうに考えております。すなわち、特殊会社、民間法人化された特殊法人・認可法人、地方共同法人、こういったものまで含んで民営化というものが考えられていると。
私は、このような幅広の形の民営化が考えられたというのは誠に適切な対応方針であったというふうにとらえておるところでございますけれども、欧米の言うところの民営化とは異なるという点はやはり確認しておく必要があるかというふうに思っております。
欧米におきまして民営化と言いますと、端的に申しましてオーナーシップが官から民に移るということというふうに言われておりますので、欧米における議論を考えますときにはそのような前提を大きく置いて考えることが適当と言えるわけですけれども、整理合理化計画のところでは、先ほど申し上げたような幅広な形になっておると。この辺が、私は今後考えていくに当たりましての一つの留意点であろうというふうに思っております。
さて、一般論は以上といたしまして、道路公団に関しまして具体的に言及させていただきたいと思います。
道路関係四公団につきましては、見直しが強く主張され、結果として今回の、昨年十二月の方針、民営化というふうなところになったというふうに理解しておりますが、見直しがではなぜ主張されたのかというようなことにつきまして私なりに振り返ってまとめさせていただきましたけれども、一昨年十二月の行財政改革のいろんな議論、以前より特殊法人問題というのはかなり強く言われておりまして、道路公団はその筆頭に挙げられてきたと、このことが一つの大きな理由というふうに言えるかと思うんですが、以前に道路公団についていろいろ取り上げられていた観点といいますのは、天下りの問題ですとかあるいはファミリー企業の問題ですとか、こういったところが大きな論点というふうに言えるのではないかというふうに私とらえておりますが、一昨年ぐらいから昨年に掛けまして非常に大きな問題というようなことで言われておりましたのは、巨額なる債務の償還可能性に対する危惧からであったのではないかというふうに私とらえておるところでございます。
私、御高承のように、昨年の十月末から十一月に掛けまして国土交通省において設置されました研究会、正式名称高速自動車国道の整備のあり方検討委員会、ジャーナリズムなどでは諸井委員会というような言い方もされておりますが、そこにおいて、参加させていただきましていろいろ具体的に数値を検討させていただきましたが、確かに財政的観点に立ちますとき、現在の状況は、私の言い方からすればかなり危機的な状況にあるのではないかというように思っておるところでございます。
財政損益状態が最も良好なのは日本道路公団と言えるわけでございますけれども、その日本道路公団においてさえ、よく言われる数値ではありますけれども、収入が約二億ちょっと、維持費が四兆円、これ減価償却費を除きます。それから金利が、これ平成十二年度で〇・八兆円ですね。維持費、先ほど四兆円と申し上げましたけれども、〇・四兆円の間違いでございます。
それで、その結果、業務関係のキャッシュフローとしましては〇・九兆円というところでございますけれども、長期債務が日本道路公団二十七兆ございます。それから、償還主義で考えますと資本金もこれも償還対象というふうに考えられるべきでございますけれども、資本金が約二兆円ございます。したがいまして、二十九兆円の償還を先ほどの営業状況の中で、キャッシュフローの中で考えていかなければならないという状況にあるということでございます。
国土交通省の方で当時試算されたいろいろな資料を拝見いたしましたけれども、交通需要の増減がゼロ、金利水準が五年内に五%まで上昇という仮定の下に、国費投入ゼロ、新規着工ゼロという前提でこの債務の償還について考えますと、三十年を少々超えたところでようやく全額の償還が可能になるというところでございますし、四公団合計で考えますと五十年は掛かるという計算になります。この五十年といいますのは私の方で試算した数値でございます。
先ほど交通需要の増減ゼロというふうに申しましたけれども、しかしながら、我が国の経済社会を考えてみますと、交通需要はむしろ減少するリスクが高いのではないかというふうに私個人的に考えております。それはもうGDPの成長力が、かつてのバブル経済崩壊前までのような成長力が望めないというところがまず大きくございますけれども、人口減少、少子高齢化、それからさらに、今現在経済構造の変革というものが強く叫ばれておりますし、私もその必要はあるというように考えておりますが、それらを考えますと、交通需要の減少に関しましてはかなりのリスクがあると考えざるを得ないのではないかというふうに思っております。
それからまた、金利水準、先ほど五年内に五%というところを申し上げましたけれども、これ以上に上昇することも十分考えられるわけでございます。今の金利水準はいろんな考え方の中で決定されておりますけれども、五%まで上昇、近い将来上昇するというのは可能性としましては低い可能性ではないですし、先ほど申しましたように数十年という単位の中では更に上昇することも考えられます。
このような道路公団の状況というものは、通常の企業体で考えますと、アンコントローラブルと申しますか、もう極めて危機的な状況にあるというふうに言えまして、こういった組織をマネジメントするに当たって何を考えるべきかというようなことをアドバイスするとしますと、とにもかくにも、一刻もこの巨額債務の状態を減じて脱することではないかというふうなアドバイスをせざるを得ませんです。今の状況というのは、債務が債務を呼びまして雪だるま式に膨れ上がっていく状態になりかねない状況でございます。
住宅ローンをお考えいただければと思うんですけれども、今の住宅ローンも、約、収入の五倍という範囲まで貸しておりますけれども、これ低金利だから成り立つところでありまして、金融界では、これが金利上昇しますと、債務者の方は金利だけの返済で元本の返済に至らない状態に至ってしまう可能性が高いというふうに読んでおりますけれども、それと同じようなことが起きる可能性が道路公団関係についてはあるということでございます。
もうそうなってしまいますと、かつての国鉄清算事業団のような、結果的に債務の国民負担というふうな事態も、なりかねませんですし、今の財政状態、国家財政状態を考えますと、十兆円単位の債務の増加より財政運営の困難さをもたらすというふうに申しますので、このような観点に立って考えることが必要ではないかというようなことを改めて感じた次第でございますし、そのように考えますと、経営方針の抜本的な転換と言えるわけでございますので、そのような抜本的な転換という観点から、今回の民営化、フレッシュスタートというものをとらえることが適当ではないかというふうに感じておるところでございます。
しかしながら、高速道路事業、これはやはり、先ほど申しましたけれども、いろいろ制約を課すことが適当と言える事業というふうに私考えております。民間化されるということは、純粋な意味で民間化されるということは永遠に有料化ということになりますけれども、次のような問題が指摘されます。
独占に近い不完全競争市場というようなことから、道路料金についての問題、災害復旧についての問題、維持補修についての問題などが指摘されます。それから、使用について所有主の判断によって左右されるという事態も考えられております。それからまた、路線の敷設に関しまして、外部経済は無視されがちでありますし、新規の敷設は土地収用の問題を考えなければならないというわけでございます。
道路はインフラの最たるものというふうに考えられておりますし、高速道路もそれに準ずるものというふうに考えるわけでございます。公会計の国際的な世界でもインフラ資産の筆頭に挙げられておりますので、単純な民営化というのはやはり私も感覚的に戸惑いを覚えるというところでございます。
ということで、留意点としまして、今後の民営化に関しましての留意点ということで幾つか申し上げましたけれども、採算性という観点、本四はもうかなりの採算性マイナスでございますので、これは十分慎重に考える必要があるだろうと。それから、先ほど申しました国の関与、それから所有権の問題、これも慎重に議論する必要があるだろうと。それから、先ほど申しました債務弁済を第一に考えた運営方針を取られるということが強く望まれるのではないかと。IPOという、株式公開という話がございますけれども、これは債務弁済を遅延化、困難化させる要因というふうに思いますので、慎重にやはり検討する必要があると思っております。それから、巨額の借換え資金の調達原資、これについての考慮、それから法人税、固定資産税の納付義務が発生することについての考慮、それから最後に、弾力的なマネジメントを可能とするようなフレキシブルな議論、こういったことが今後必要であろうというふうに思っております。
なお、検討委員会におきましては、国民が納得する、質、量の両方の観点から見たときの十分なる議論が期待されると思いますし、そのような方々で構成されることが強く望まれるところでありまして、以上をもちまして私の話を終わりにさせていただきます。