遠山敦子の発言 (文教科学委員会)

⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。 詳細は利用規約をご確認ください。

○国務大臣(遠山敦子君) 第百五十四回国会におきまして各般の課題を御審議いただくに当たり、私の所信を申し上げます。
 我が国の社会経済情勢は、かつてなく厳しい状況の中にあり、あらゆる分野で二十一世紀を見通した抜本的な改革が求められております。今後、我が国が真に豊かで成熟した国として発展し、世界の平和と繁栄に貢献していくためには、国家百年の計に立ち、人材・教育・文化大国と科学技術創造立国を目指した改革を進めることが極めて重要です。
 私は、教育、科学技術・学術、文化、スポーツの振興を未来への先行投資と位置付け、施策の一層の充実を図り、国民の大きな期待にこたえていくことが、今、文部科学省に課せられた使命であると考えております。
 このような認識の下、以下のような事項についての施策を総合的に展開してまいります。
 我が国が明るい未来を力強く切り開いていく、その担い手は、正しく人であります。日本人としての誇りと自覚を持ち、新たなる国づくりを担うことのできる、創造性や豊かな人間性に富んだ人材を育成することによってこそ、初めて我が国は二十一世紀に活力ある国家として発展し、世界に貢献していくことが可能となります。このため、私は、人材・教育・文化大国の実現が我が国の存立基盤の構築にとって極めて重要な課題であるとの認識に立って、初等中等教育の充実や大学の構造改革を始めとする教育改革に取り組むとともに、文化やスポーツの振興を通じ、心豊かで活力ある社会の構築に努力してまいります。
 教育は国の根幹であり、一国の将来は教育に掛かっていると言っても過言ではありません。新しい世紀を迎えた今日、世界の多くの国々が真剣に教育改革に取り組んでいるのは、正にこのような認識によるものであると思います。
 我が国ではこれまで、二十一世紀教育新生プランに基づき、学校が良くなる、教育が変わることが実感できるような教育改革を実現するため、必要な法改正等を行うとともに、各般の施策を講じてまいりました。これにより、それぞれの地域、学校等において様々な取組が展開されてきておりますが、引き続きその推進に努めてまいります。
 また、昨秋、教育振興基本計画の策定と教育基本法の在り方について中央教育審議会に諮問したところですが、今後、教育の目指すべき姿とその実現のための施策や新しい時代にふさわしい教育基本法の在り方について、国民的な議論を一層深めてまいります。
 国民の学校教育への信頼にこたえ、教育改革を推進していくためには、子供たちの確かな学力の育成と心の教育の充実が極めて重要です。
 本年四月からは、全国の小・中学校において新学習指導要領が全面実施となります。確かな学力の向上のためには、少人数授業や習熟度別指導などきめ細かな指導により、基礎・基本や自ら学び考える力を身に着けさせるとともに、発展的な学習により一人一人の個性等に応じて子供の力をより伸ばすこと、学ぶことの楽しさを体験させ学習意欲を高めること、また、学びの機会を充実し学ぶ習慣を身に着けさせることが大切です。あわせて、確かな学力の向上のための特色ある学校づくりの推進が必要となります。こうした観点に立って、本年一月に「学びのすすめ」と題するアピールを公表し、新学習指導要領のねらいとする確かな学力の向上のための取組を学校等にお願いいたしました。
 各学校や教育委員会においては、それぞれの学校段階の特性や学校・地域の実態を踏まえ、創意工夫を生かした取組を進めていただきたいと考えております。文部科学省としても、そのような取組を積極的に支援する観点から、新しい教職員定数改善計画を着実に推進するとともに、発展的な学習への支援や総合的な学習の充実、学力向上フロンティア事業や学校いきいきプランの活用を始め、読書活動の推進、教育の情報化等の各般の施策に取り組んでまいります。
 次に、子供たちの豊かな人間性の育成を目指し、心の教育の一層の充実を図ってまいります。子供たちに、善悪の判断や社会のルールを守るなどの基本的な規範意識を身に着けさせるとともに、他者を思いやる心をはぐくみ、主体的に判断できる力を備えさせることは、子供たち個人の人生にとって不可欠であるばかりでなく、秩序ある心豊かな社会の実現のためにも重要であると考えます。このため、心に響く道徳教育の充実に努めるとともに、ボランティア活動など社会奉仕体験活動、自然体験活動等の豊かな体験活動の推進、家庭や地域の教育力の活性化、完全学校週五日制の実施に向けた子供たちの様々な活動機会や場の拡大などに取り組んでまいります。
 また、スクールカウンセラーの配置の拡充など子供たちの問題行動等への適切な対応を図ります。さらに、青少年の健全育成のための施策や、心のケアなど健康教育の一層の推進、厳しい就職状況を踏まえた進路指導の強化、幼児教育や障害のある児童生徒に対する教育の充実を図ってまいります。
 教育の成否は教師に掛かっております。このため、教員免許制度の改善や十年経験者研修制度を創設するための法改正を始め、養成、採用、研修を通じた教員の資質向上を図るとともに、優秀な教員に対する表彰制度についての調査研究を推進します。一方、適格性等に問題がある教員については、分限処分や懲戒処分、教員以外の職への転職措置等を厳正に適用するよう、各教育委員会に対し強く求めてまいります。
 また、保護者や地域住民の信頼にこたえ、地域に開かれた特色ある学校づくりを推進するため、学校における自己評価システムの確立や小・中学校の設置基準の明確化等を行うとともに、学校の取組を支え、地域に根差した教育行政が展開されるよう、教育委員会の一層の活性化を図ります。さらに、学校の安全管理の徹底等に努めてまいります。
 今後の我が国経済社会の発展を図るとともに人材・教育・文化大国と科学技術創造立国を実現するには、知の創造と継承の拠点である大学の役割が極めて重要であります。
 既に一九九〇年代以降、各大学において大学改革への努力が着実に進められてきておりますが、その流れを更に加速し、我が国の大学が、それぞれの特徴を生かしつつ、教育や研究等の上で、より活力に富み国際競争力のあるものになることが強く求められています。そのような前提に立って、昨年、大学の構造改革なくして日本の発展と再生はないとの認識の下、「大学の構造改革の方針」を明らかにいたしました。このうち、国立大学の法人化については、専門家の会議における検討結果を待って速やかに対応するとともに、国立大学の再編・統合については、各国立大学における検討状況を踏まえつつ対応を進めてまいります。また、第三者評価により国公私を通じた世界的教育研究拠点の形成を支援してまいります。
 さらに、この方針でお示しした施策にとどまらず、これまで講じてきた様々な大学改革のための方策を引き続き推進するとともに、各大学の自律的な取組を支援しつつ、教育研究基盤の整備や教育機能の充実、法科大学院についての検討、育英奨学事業など学生への支援、私学助成の充実等の様々な課題にも、積極的に取り組んでまいります。
 人々が生涯にわたり自己実現を図っていくためには、生涯のあらゆる時期に学習機会を選択して学ぶことができ、その学習の成果が適切に評価される生涯学習社会の構築が重要です。このため、生涯学習の環境整備や大学・専修学校等における社会人のキャリアアップのための教育を推進します。また、男女共同参画社会の形成、環境教育や人権教育の充実に努めます。
 文化は、人々に感動や生きる喜びをもたらし、人生を豊かにする上で大きな力となるものです。昨年成立させていただいた文化芸術振興基本法等を踏まえ、文化を大切にする社会の実現に努めてまいります。このため、新たに文化芸術創造プランを推進し、世界トップレベルの文化芸術の創造、世界に羽ばたく新進芸術家の養成や子供の文化芸術体験活動の充実を図ります。また、国民が文化ボランティアなどにより自ら積極的に文化芸術活動に参加し、文化芸術を創造することのできる環境の整備や、地域における文化芸術の振興、伝統文化の継承・発展や文化財の保存・活用、国語施策の推進等に取り組みます。著作権制度については、情報通信技術の発達や国際的動向を踏まえつつ、その改善を進めてまいります。
 明るく豊かで活力に満ちた社会を形成するため、国民のだれもが身近にスポーツに親しむとともに、競技者がスポーツに打ち込むことのできる環境を整備するべく、スポーツ振興基本計画に基づき、生涯スポーツ社会の実現や我が国の国際競技力の向上、学校の体育・スポーツ活動の充実に努めます。
 また、五月三十一日から、日韓共催による二〇〇二年ワールドカップサッカー大会が開催されます。これは、アジアで初めての大会であり、世界じゅうから大きな注目と期待を集めているものであり、是非とも成功させなければなりません。政府を挙げて、その準備に万全を期してまいります。
 続きまして、科学技術創造立国の実現についてであります。
 科学技術は、日本経済の成長を支え、希望ある未来を切り開く原動力です。知の世紀と言われる二十一世紀において、高い科学技術水準は国力の枢要な源泉であり、我が国の将来の盛衰を決するかぎとなるものでもあります。
 このような認識の下、文部科学省としては、国の科学技術関係予算の六割強を所管し、政府における研究開発の中核を担う立場にあることを踏まえつつ、科学技術創造立国の実現に向け、精力的に取り組んでまいります。
 昨年の三月には、第二期科学技術基本計画が閣議決定されました。本基本計画の柱は、基礎研究の推進や国家的・社会的課題に対応した研究開発への優先的資源配分などの科学技術の戦略的重点化と、優れた成果の創出・活用のための科学技術システムの改革です。
 文部科学省としては、この基本計画の方針を踏まえながら、科学技術及び学術の振興のため、創造性に富んだ世界最高水準の成果を生み出すための研究と開発を総合的に推進してまいります。
 昨年、名古屋大学の野依教授がノーベル化学賞を受賞されました。一昨年に引き続き二年連続で日本人がノーベル賞を受賞し、我が国の基礎研究が世界から高く評価されたことは、大変喜ばしいことであります。
 研究者の自由な発想に基づく基礎研究は、あらゆる分野の基盤となる重要なものであり、その成果は、新たな知を切り開くとともに、社会発展の基礎となるものであります。このため、大学等における基礎研究費の充実を図るほか、大学共同利用機関等を中心とした天文学、加速器科学等の先端的・独創的研究を着実に推進してまいります。
 また、我が国が直面する国家的・社会的課題を解決し、経済や産業の活性化による経済発展を達成していくためには、重点分野への積極的、戦略的な投資を行うことが重要です。知的資産の増大や経済的・社会的効果への寄与が特に大きい、ライフサイエンス、情報通信、環境、ナノテクノロジー・材料等の重点分野の研究開発を積極的に推進するとともに、その成果の社会還元を図ってまいります。具体的には、たんぱく質の解析研究における激しい国際競争をリードし、その成果を新しい薬の開発に活用していくためのタンパク3000プロジェクトへの着手や、産学官の研究活動をより効率的に行うためのナノテクノロジー総合支援プロジェクトの創設などに取り組んでまいります。
 我が国の科学技術活動を高度化し、その成果の社会における活用を一層促進するためには、科学技術システムの改革を行うことが重要です。競争的な研究開発環境の醸成を目指して、科学研究費補助金を始めとする競争的資金の改革と拡充、研究開発に係る評価システムの充実を図ります。大学発のイノベーション創出を促進し、大学における創造的な研究成果を広く社会に役立てていくための産学官連携の抜本的強化、研究開発能力の拠点づくりを目指した知的クラスター創成事業など地域における科学技術の振興についても強力に進めます。また、国立大学等施設緊急整備五か年計画の着実な推進を始めとする大学などの研究施設の重点的整備にも努めてまいります。
 さらに、科学技術の進歩を支える優れた研究者・技術者の養成・確保に努めるとともに、広く国民に科学技術に関する理解を深めていただくために、科学技術・理科大好きプラン等を通じた科学技術・理科教育の充実、昨年開館した日本科学未来館の活用などを図ってまいります。なお、生命倫理などの課題についても、適切に対応してまいります。
 安心・安全で、質の高い国民生活を実現していくためには、国の存立にとって基盤的な分野における研究開発についても、積極的に推進していくことが必要です。
 宇宙開発については、昨年八月のHⅡAロケット試験機一号機に続き、去る二月四日に試験機二号機を打ち上げました。これにより、人工衛星の打ち上げを確実に実施するための技術基盤を獲得できたものと考えます。引き続き、実績を一つ一つ積み重ねながら、信頼性の更なる向上を最優先に、ロケット開発を着実に進めてまいります。また、国際宇宙ステーション計画など種々のプロジェクトを推進するとともに、宇宙開発事業団等いわゆる宇宙三機関の統合により、宇宙の研究開発を一段と効率よく効果的に行う体制を構築してまいります。
 原子力については、大強度陽子加速器等の大型加速器の先端的な研究開発を引き続き精力的に推進してまいります。高速増殖炉及びそのサイクル技術の研究開発についても、安全確保を大前提に、国民の皆様の理解と協力を得つつ進めてまいります。ITER計画については、核融合エネルギーの実現に向け、密接な国際連携の下、引き続き積極的に取り組んでまいります。
 また、自然災害に強い社会を目指すため、地震・火山噴火等の防災対策に関する研究開発の充実・強化を図るとともに、海洋・地球・環境に関する研究開発を推進し、多様な資源・空間の更なる活用や、気候変動のメカニズムの解明を図ってまいります。
 我が国が世界の平和と安定の確保のため積極的な役割を果たし、日本人の心の見える国際協力を推進する等の観点から、国際教育協力懇談会の提言を踏まえた開発途上国への教育協力、日韓、日中を始めとする国際文化交流の推進、留学生交流の拡大、科学技術の国際協力活動の展開、アフガニスタン復興支援など各分野の国際協力や国際交流を推進します。
 以上のほかにも、特殊法人等改革、公益法人改革、規制改革等の行政改革や地方分権の推進など重要な課題が山積しております。国民の強い期待を真摯に受け止め、文部科学行政全般にわたり誠心誠意取り組んでまいる決意ですので、委員各位におかれましても、特段の御理解、御協力を賜りますよう心よりお願い申し上げます。

発言情報

speech_id: 115415104X00120020314_010

発言者: 遠山敦子

speaker_id: 31456

日付: 2002-03-14

院: 参議院

会議名: 文教科学委員会