近藤駿介の発言 (経済産業委員会)
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○近藤参考人 おはようございます。近藤でございます。本日はお招きいただきましてありがとうございます。光栄に存じます。
私は、お手元の資料に従いまして、三点について意見を申し上げます。
第一は、御審議いただいている法案提出の原因となりました問題の発生要因についての私見でございます。
私は、この原因の第一は、原子炉設置者が、原子炉施設の安全確保活動の社内における管理と検証を行ういわゆる品質保証体制、これを整備、機能させることを怠っていたということ。そしてまた、一九九一年、美浜発電所の蒸気発生器細管破断事故が起きたわけですが、このときに通産省は、この品質保証体制を経営のトップに属するものとして整備することを全国の原子力発電所設置者に提言したわけでございますが、その後のフォローアップを怠っていたのではないかということを指摘したい。
それから第二は、規制当局が当時、保安検査制度を持たない、それから専門技術的な面で行政資源が不足していたこともあるのでしょうか、安全性を定量化する有力な手段として国際的評価を確立しております確率論的リスク評価、これを重視していなかったということもありまして、その重要な入力となる点検結果や補修活動のデータが持つ規制政策上の意義、これに対する認識が現在より希薄であった。したがって、発電所に運転管理専門官を常駐させていたのにもかかわらず、専門官を通じてこの種のデータを体系的に収集、活用するという活動を行っておらなかった。したがって、結果として、そうした設置者のこの種のレベルの保安活動についての不正を知り得なかったということなのかなということを思っております。
それから三番目。規制当局は、運転に支障を与えるおそれがある等のあいまいな表現を持つ報告基準を制定しておったり、また、先ほど来御指摘のように、周辺諸国も既に採用し国際常識になっています学術上の知見を踏まえたいわゆる維持基準、この制定を怠って、いわゆる使用前検査の基準を運用によってその維持基準として使うという、規制にかかわる技術的判断の基準というのは、最新の知見に基づき明確にすることというのが基本原則でございますが、この原則に対する忠実さを欠いていたということ。また、私ども関係学会におきましても、このような事態を改善することを求めるとか、あるいは積極的に基準の改正案を学会の規格として提案する、そういう努力を当時は少なくとも怠っていたということも反省として申し上げるべきと思います。
それから四番目。これは申告制度に関することでございますが、国会によって九九年に新設された安全情報申告制度について、その運用のあるべき姿を広く専門家を集めて検討して体制を整備し、これを的確に運用するという努力がいささか不十分であったということなのかなということが申し上げられると思います。
第二に申し上げたいことは、この問題の再発防止を図るときの基本的考え方でございます。
その第一は、規制当局には、原子炉が安全に運転されているということを運転者とは独立に保証する責任がある。それから第二として、運転者によい安全文化を期待するには、規制当局自身がよい振る舞いをしなくてはならない。これは、国際原子力機関等で決められています基本安全原則にもうたわれています国際通念というふうに私は思うわけですが、このことを基本原則として行動しなければならないということを申し上げたい。
そうすれば、当然のことながら、政府は規制当局に、このことを可能ならしめる適切な行政資源、特に調査、分析、検査等の専門的技術能力を整備するべきでありましょうし、一方、規制当局は、法の定める説明責任の観点から、規制すべき事項と規制しない事項の区別や、合理的かつ明確な安全基準を、最新の知見を踏まえてその妥当性を社会に説明しつつ制定して、以上をあわせて、効果的かつ効率的な行政活動を行うべくということが指摘できることになるわけです。
第二の基本原則は、設置者の実施する安全確保活動の最大の顧客、最近の品質保証活動では顧客満足ということが重視されますが、最大の顧客は発電所の存在する地域社会であるということを原則とすべしということです。そうしますと、当然のことながら、顧客満足等を目指す設置者の品質保証活動というものにおいては、点検結果とか、あるいは付随するさまざまな補修活動等の安全確保活動の内容を地域社会に対して公開し、丁寧に説明し、その意見をみずからの活動にフィードバックしていく、こういう地域社会におけるコミュニケーション活動を最も重視すべきということがおのずから導かれるからであります。
それから第三に申し上げたいのは、政府に求められる具体的再発防止対策ですが、これは四つから成ります。
一つは、設置者が定めて、規制当局が原子力規制法等に従って災害の防止上十分な内容であることを条件に認可する保安規定に、設置者の安全確保活動に係る意思決定の基準とか実施体制、それから設備等の点検、ふぐあいの管理、点検結果の評価基準あるいは記録のあり方等々、さらに加えて品質保証体制、こうしたものをより詳細に規定するということが重要ではないかというふうに考えます。
第二は、規制当局は、そうして詳細に定められました保安規定に従って、当然のことながら設置者がなす安全確保活動あるいは品質保証活動、これが適切に行われることをみずから確信し国民に説明できる、それを確信するのに必要な限りにおいて、いつでも、どこでも、どこまでも検査する、あるいは監査する、そういう権限を有しているということを明確にした上で、具体的には、当然のことながら、統計的あるいは俗に言う抜き打ち的手法も含めまして、最も効果的にその検査、監査をするということが大事ではないかということを申し上げたい。
それから三番目は、規制当局というのは、規制判断に係る技術基準は、安全に関して権限を付託されているわけでございますから、そのリスクを低減する効果の大きさを物差しとして、あいまいさのないものにするということ。そして、その制定に当たっては、公正、公開、公平の原則を踏まえたプロセスで利害関係者の意見を十分参酌して積極的に新知見を取り入れて行うということ。そして、関係学会では、普通こういう基準というのは五年ごとに必ず見直すという見直し規定を持っておりますので、そういう意味では、最新の知見を踏まえて制定されているものが学会知見である、ですから、そうしたものを積極的に活用するということが大事ではないかというふうに考えるわけであります。
これは、先ほど維持基準のお話がありましたけれども、維持基準についても、そうした意味では、現在学会が既にそうした案を用意しているところでございますので、こうしたものを早急に活用して、国民の理解を得つつ制定していくべきと考えるところでございます。
それから四番目。保安院は、二〇〇一年一月の設立以来、国民の安全を守る「強い使命感」「科学的・合理的な判断」「業務執行の透明性」「中立性・公正性」を行動規範に据えまして、国民への説明責任を果たすべく、リレーショナルマネジメントを導入して信頼を得るべくの努力をしているというふうに評価をするわけでございます。
しかしどうも、やはりリスク情報の活用とか基準の整備等に迷いやらおくれがあるところは皆様の御指摘するところでありまして、これは結局のところ、専門的技術能力と申しましょうか、そういう行政資源が不足しているというふうに考えるべきではないか。
したがって、今後、皆様の期待にこたえた十分な規制活動をなすといたしますと、それが原子力発電所の計画的な運用を妨げるものであってはならないわけでありまして、そういう意味で十分な規制活動の配慮をお願いしたいというふうに考えるわけでございます。
終わりに当たりまして、原子力発電というのは、我が国の電力供給の三分の一を既に担っており、今後もエネルギー自給率の向上と、それから二酸化炭素の排出量の小さいエネルギー供給システムを我が国に構築していく上で大きな役割を果たすというふうに期待されているところでございます。
また、国際核不拡散体制の強化にコミットしている我が国におきまして、二国間協定やら国際条約の求める国際約束を踏まえて計画されたプルサーマル計画の着実な実施というのは、我が国の国際的信用にかかわる重大な責務でありまして、今回のことによってこれが大幅に遅延するということは、最近顕在化した北朝鮮の核開発問題に対応しなければならない我が国の国際的立場を弱めかねないなど、我が国の国際的信用にかかわる重大な課題というふうに考えるわけでございます。
したがって、今回の問題で失墜しました我が国の原子力安全確保体制に対する国民の信頼は早急に回復されるべきであると考えまして、その方策として、この政府提出の二つの法律案は最低限必要不可欠なものと考えておりますことを申し上げて、意見陳述を終わります。
御清聴ありがとうございました。(拍手)