中山太郎の発言 (憲法調査会)

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○中山会長 次に、日本国憲法に関する件について調査を進めます。
 この際、英国及びアジア各国憲法調査議員団を代表いたしまして、御報告を申し上げます。
 去る九月二十三日から十月五日まで、私どもは、イギリス、タイ、シンガポール、中国及び韓国並びにフィリピン、マレーシア及びインドネシアの八カ国の憲法事情について調査をいたしました。
 この調査の正式な報告書は、議長に対して提出することになっておりまして、現在鋭意作成中でありますが、私ども調査議員団は本調査会のメンバーをもって構成されたものでありますので、この際、その調査の概要につきまして口頭で御報告をし、これからの調査の参考に供したいと存じます。
 憲法調査議員団は、私を団長に、葉梨信行君、中川正春君、春名直章君の四名をもって構成されました。なお、この議員団には、事務局及び法制局の職員、国立国会図書館職員のほか、二名の記者が同行いたしました。
 私ども一行は、最初の訪問地であるイギリスのロンドンにおいて、九月二十四日及び二十五日の両日、六つの会談を行いました。
 まず、二十四日の午前は、国会議員会館において、人権に関する両院合同委員会委員会クラークのポール・エバンス氏からイギリスの人権保障について、次いで、副首相府において、ニック・レインズフォールド閣外大臣及びイアン・スコッター地域議会部長からブレア労働党政権下の地方政策について、それぞれ説明を聴取した後、質疑応答をいたしました。
 それらの会談の中で、人権保障については、欧州人権条約の国内法制化の措置として一九九八年に人権法が制定されたこと、その際に、イギリスの伝統的な議会主権の原則との関係が問題となったこと、また、地方政策については、ブレア労働党政権は、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドに続いて、イングランドにおいても地方議会の設置を含めた地方分権を進めようとしていること、こうした動きは、政府の効率性だけではなく、政府への参加に関心を持つ国民の期待にこたえるものであること等の説明がなされました。
 同日の午後は、ロンドン大学の研究室を訪れ、ロバート・ヘーゼル教授との間で、上院改革及び政官関係を中心に、憲法全般にわたって質疑応答をいたしました。
 ヘーゼル教授からは、上院改革に関して、上院議長が、内閣の法務大臣、上院の議長及び大法院の長としての大法官という三権にわたる地位を兼ねていることが問題とされていること、また、政官関係に関しては、イギリスでは官僚組織の公正中立が伝統とされてきたが、最近では、そうした官僚組織の運用に不満も出ていること等の説明がなされました。
 翌二十五日は、在連合王国日本国大使館において、上院改革に関する両院合同委員会委員会クラークのデビッド・ビーミッシュ氏及び政府の上院改革チームから、それぞれ上院改革について、次いで、チャールズ・コクラン公務員組合評議会事務局長から政官関係全般について説明を聴取した後、質疑応答をいたしました。
 これらの会談の中で、上院改革につきましては、世襲貴族の削減を主とした第一段階の改革は終えており、現在は、長期的な第二段階の改革について検討を進めているが、ウェイカム報告書と呼ばれる王立委員会の報告書を踏まえ、議会内の両院合同委員会での議論に重点が移っていること、そこでは、上院に公選制を導入した場合の下院の地位低下のおそれについて議論がなされていること等の説明がなされました。
 また、政官関係については、イギリスの公務員は内閣の一員としての大臣に仕えるものであって、政治家個人に仕えるものではないとの考え方があること、政治的な面については政治任用の特別アドバイザーが補佐するものとされていること等の説明がなされました。
 会談終了後、直ちにタイのバンコクに向かい、九月二十七日、同地において三つの会談を行いました。
 まず、同日の午前は、憲法裁判所において、スチット判事からタイにおける憲法裁判所の活動について、また、ラマ七世を記念した王立研究所であるプラチャーティポック・インスティチュートにおいて、ボウォンサック・ウワンノー事務局長からタイの選挙制度等に関して、それぞれ説明を聴取した後、質疑応答をいたしました。
 スチット判事からは、タイの憲法裁判所は、設置以来二百件を超える法令の合憲性審査が行われていること、汚職防止の面でも、政治家の資産報告の虚偽審査を行っていること、また、ウワンノー事務局長からは、タイの選挙制度は日本の小選挙区比例代表並立制を参考にしたことのほか、タイにおける政治腐敗の実態について説明がなされました。
 同日の午後は、マルット・ブンナーク元下院議長の法律事務所において、同元議長から幾多のクーデターを重ねた同国の憲政史について説明を聴取した後、質疑応答を行いました。
 翌二十八日、シンガポールに向かい、到着後直ちに、大使公邸において、フィリピン、マレーシア及びインドネシアのアジア三カ国の憲法に関して、それぞれの大使館から招致した公使、参事官及び書記官から各国の憲法事情について説明を聴取した後、質疑応答をいたしました。
 それらの国々の憲法事情について主要な点を簡単に報告すれば、まず、フィリピン憲法について、マルコス独裁体制の経験から、行政権に対する抑止が強く働いていること、基本原則として、国民主権、平和主義、核兵器の廃絶等が掲げられているほか、外国軍隊の駐留及び外国軍基地の設置の原則的な禁止を決めた憲法上の規定があること、また、マレーシア憲法については、イスラム教を国教と定めてはいるが、憲法が最高法規とされていること、マレー系住民の特別な地位が憲法に明記されていること、マレー語の地位等に関する言論を規制する規定が憲法に置かれていること、そして、インドネシア憲法については、スハルト独裁体制の崩壊から、大統領の権限を制限する等の民主化に向けた憲法改正が、四年連続となる本年の改正で一応の完成を見たこと、しかし、国内の体制は、法の支配の確立等において依然として課題があること等といった説明を受けました。
 九月三十日には、シンガポール憲法に関して三つの会談を行いました。
 まず、同日の午前、シンガポールの司法長官庁において、ジェフェリー・チャン司法長官庁民事局長からシンガポールの憲法制度全般について説明を聴取した後、質疑応答をいたしました。
 チャン民事局長からは、シンガポールでは、中国系以外の少数民族に配慮し、少数民族が必ず国会に議席を持てるように配慮した、グループ選挙制度という独特の選挙制度を採用していること等の説明が行われました。
 次いで、同日の午後には、外務省において、ジャヤクマール法務大臣兼外務大臣と懇談し、国民の兵役義務を定めたシンガポールの国防制度等について意見を交換した後、在シンガポール日本国大使館において、シンガポール国立大学のティオ・リーアン助教授との間で質疑応答を行い、グループ選挙制度について、与党の人民行動党に有利な選挙制度であって、同助教授の私見としては単純小選挙区制が望ましいと考えていること等の説明を受けました。
 その後、シンガポールから中国の北京に向かい、十月二日及び三日の両日、三つの会談を行いました。
 まず、二日の午前には、中国人民大学法学院において曾憲義院長から、また、同日の午後には、ホテル内において中国共産党中央党校の劉俊傑教授から、それぞれ中国の憲法制度全般にわたって説明を聴取した後、質疑応答をいたしました。
 その中で、現在の一九八二年憲法に至る中国憲法の歴史を踏まえて、まず、社会主義市場経済の概念が議論になりましたが、これについては、中国が改革・開放政策を進める中で市場主義経済の導入は必要かつ必然であって、社会主義市場経済はそのための発展形態であること等の説明がなされました。また、中国でも、科学技術立国の立場から、知的所有権の保護が重要な課題として取り組まれていること、憲法改正に関する理論的な問題として、私有財産の保護をいかに図っていくかが議論されていること等の説明も行われました。
 翌三日には、人民大会堂において、張春生全人代常務委員会法制工作委員会副主任との間で、現行憲法の制定の経緯について説明を聴取した後、意見交換を行いました。
 張春生副主任からは、我が国の平和憲法が北東アジア及び世界の平和に多大の貢献をしてきたことを評価していること、我が国が国連決議に基づく平和維持活動に参加することは全く問題がない旨の発言がなされました。
 同日、北京から韓国のソウルに向かい、翌四日、四つの懇談及び会談を行いました。
 四日午前には、まず、国会議事堂において、朴寛用国会議長を表敬訪問し、憲法をめぐる諸情勢について意見交換を行いました。その中で、朴議長は、韓国では、大統領の任期を国会議員と同じ四年とすべきではないかといった憲法改正論議があること、日本が平和憲法を中心とした経済大国に見合った国際貢献を行うことは高く評価できるが、アジアの諸国として日本国憲法九条に賛意を表していること等の意見が述べられました。
 次いで、同じく国会議事堂内において、金錘斗国会法制室長ら法制室職員の方々と面談し、韓国における議員立法の状況、立案過程における法制室の役割等について説明を聴取いたしました後、質疑をいたしました。
 同日の午後は、憲法裁判所において朴容相事務処長から、また、国家人権委員会において金昌國委員長からの説明を聴取した後、質疑応答をいたしました。
 それらの会談の中で、憲法裁判所に関しては、韓国の憲法裁判所は、国民の強い支持のもと、軍事政権下で制定された多くの立法について違憲の判断を下していること、また、一般市民が直接憲法裁判所に提訴することができる憲法訴願制度が活発に利用される等の積極的な活動を行っており、内外から高い評価を受けていること、また、国家人権委員会に関しては、同委員会は、軍事政権下の権威主義において人権が侵害された経験にかんがみ、昨年、政府から独立した機関として設置されたばかりの機関ではありますが、積極的な活動が期待されている等の説明がなされました。
 以上のような極めて多忙な日程を消化し、私ども議員団は、去る十月五日、帰国いたしました。
 ごく短期間の調査でありますし、また、各訪問国における調査事項が極めて多岐な問題に及びましたので、ここで結論めいたことを申し上げるのは到底不可能なことでありますが、しかし、一言だけ個人的な所感を申し上げるとすれば、上院改革、地方分権の推進等の憲法改革を続けるイギリス、改革・開放の推進に当たり必要な憲法改正を行った中国、国民的な運動を受けて民主的な憲法が制定されたタイ、フィリピン、インドネシア、韓国等の経験にかんがみるとき、各国において、社会情勢が急激に変遷していく中で、それらの諸情勢に応じて、随時、憲法のあり方に関する国民的論議がなされ、それを踏まえて憲法改正がなされてきているということであります。
 この調査の詳細をまとめた調査報告書は、議長に提出し次第、委員各位のお手元に配付する所存でございますので、本調査会の今後の議論の参考に供していただければ結構かと存じております。
 最後に、今回の調査に当たり、種々御協力をいただきました各位に心から感謝を申し上げますとともに、充実した調査日程を消化することができましたことを心からお礼を申し上げたいと思います。まことにありがとうございました。
 以上、簡単でありますが、このたびの海外調査の概要を御報告させていただきました。
 引き続きまして、派遣議員から海外派遣報告に関連しての発言を認めます。葉梨信行君。

発言情報

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発言者: 中山太郎

speaker_id: 15557

日付: 2002-11-07

院: 衆議院

会議名: 憲法調査会