葉梨信行の発言 (憲法調査会)

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○葉梨委員 私は、中山会長並びに中川議員、春名議員と四名で、この第三年目に当たります海外調査に参加させていただきました。今会長から御報告がございましたので、感想を簡単に申し上げてみたいと思います。
 イギリス初め各国へ参りまして一番強く感じましたのは、各国が、新しい時代の流れの中で積極的に対応し、基本法たる憲法を改正する、イギリスでは成文憲法はございませんが、基本法である地方分権法等々を改革し、改正をしておるということに驚きの目を持って私はお話を聞き、学んできた次第でございます。
 イギリスでは、ブレア首相のリーダーシップによります地方分権、それから上院の改革が特に印象深うございました。地方分権につきましては、ブレア内閣と申しますか、首相の出身母体でございます労働党の保守党に対する政権戦略もある、そういう批判も聞きましたけれども、地方分権が着々と進んでいるという印象を受けたわけでございます。
 上院改革につきましては、上院の改革は大変難しいので、できることからやっていこうということで、世襲議員の廃止等を実現いたしました。できるところからやっていくというその態度には、なるほどイギリス的なものがあるなという印象を持った次第でございます。
 それから、びっくりしましたのは、上院議長の権能でございますけれども、日本では考えられないような権能があって、それを改革しようという動きがございますけれども、それを法律的に改革するということは憲法改正でございますが、そうではなくて、そういうことをしないようにしていこうというイギリス的な判断もあると聞きまして、これはなるほどとおもしろく感じた次第でございます。
 それから、イギリスで印象深いのは、さっきも会長からもお話がありましたが、公務員組合評議会事務局長のお話の中で、公務員の政治的中立性については、公務員は大臣に仕えるのであって、政党に仕えるのではないという発言がございまして、大変印象的に聞いた次第でございます。
 タイに参りましてからは、タイが累次のクーデター、そして憲法改正という中で、腐敗政治を打破して、それを乗り切って今日に至っているということ、その関係者の命をかけた大変な改革の努力に深い感銘を受けたわけでございます。
 憲法裁判所の機能も大変うまく発揮されて、汚職防止委員会などの活動実態についても伺いました。そして、憲法改正の問題については、改正しやすくというのが現行のタイ憲法の原則の一つであるということを承ったのでございます。
 それから、私ども日本も政治改革ということで比例代表小選挙区制を導入いたしましたが、タイでも日本の選挙制度を参考にしているというお話を、王立研究所事務局長のボウォンサック・ウワンノー教授から熱のこもった御説明をいただいたわけでございます。
 タイ憲法で憲法改正がしやすくなっている背景につきまして、これはこの憲法を通す際の妥協策の一つであった、そういう面もあったという御説明を聞きましたが、これだけ国民に定着し、人民の憲法と呼ばれている現行憲法が実際に改正しやすいかというと、そう簡単ではないだろうという感想も伺ったのでございます。
 そして最後に、元下院議長さんとお話をいたしましたが、これだけ民主的な憲法ができたのだから、クーデターの可能性はほとんどないというお話をお聞きいたしました。大変タイの政界が自信に満ちた対応をし、歩みを進めているという印象を受けたわけであります。
 シンガポールでは、マレーシア、インドネシア、フィリピン等々につきまして、先ほどお話がございましたように御説明を伺いましたが、シンガポール自身の憲法についてのお話も大変多岐多様にわたり、興味深いものがございました。
 その中で、アジア的価値観という言葉が出まして、アジア的価値観とは何かというようなことにつきまして、これは役所側からのお話ですが、国民が政府を信頼するかどうか、政府は基本的によいことをしてくれるものという性善説をとっているかどうかである、そのように理解していると、コンセンサス形成の重要性を主張しておられました。その背景には、中国系、マレー系、インド系というように、人種が混在するシンガポールにおける人種的融和の必要性がある、こういうことを強調していたのでございます。
 それで、もう一つアジア的価値観の例といたしまして、親の扶養義務の制度化の必要について質問をいたしましたが、お目にかかりましたジャヤクマール法務大臣は、これは法制化の際に議論があったが、自分としては、基本的には教育の問題であって、憲法や法律の果たす役割は限定的なものではないか、こういう御発言でございました。アジア的価値観と憲法による権力抑制の重要性の関係など、憲法学のみならず政治学的観点からも研究者サイドのお話も詳細に承った次第でございます。
 そしてもう一つ印象深いのは、中国が経済的に大変発展してきていることに対しまして、シンガポール初め東南アジアの国々が日本に大変大きく期待している、こういうことの強調があったことも申し上げておきたいと思います。
 それから、中国につきましては、今会長からお話がありましたとおりでございますが、一九五四年の中国初めての憲法以来の集大成として一九八二年憲法ができた、そして民主集中制のもと、人民代表制度によって民意が集約された憲法であるということが強調されましたが、民主集中制ということの実効、要するに我々の民主主義的な議論の仕方等についての疑問に対しまして、中国的な御説明がございました。
 社会主義市場経済とはどのようなものかとの質問もいたしましたけれども、社会主義にはいろいろ解釈があろうが、社会主義は貧困でないことという原則のもとで、中国の特殊性を前提に、改革・開放政策をとる中で市場経済の導入は必要であり必然の道である、そのための発展形態であるという説明を伺ったわけでございます。
 それから、天安門事件の評価につきまして、質問が中川議員からございましたけれども、これは中川議員からお話があるかと思いますけれども、あの措置は正しかった、最終的な評価は歴史が判断するであろうという答えを聞いたのでございます。
 それから、おもしろいことは、トウショウヘイの言った言葉、改革・開放につきまして、社会主義革命建設の中でわかったことは、何が社会主義なのか今になってもわからないということだ、こういうお話まで出てまいりました。
 そして、中国は世界最大の後進国であり、中国が日本にとって脅威になることはないと、中国脅威論につきまして否定的な発言がございました。
 それから、シンガポールでも出ましたお話でございますが、親子の扶養義務について、少子高齢化の中で問題になっている、これについても話題として出ましたけれども、中国も一人っ子政策の転換期に来ている、親子の関係をどのように規定するかは日中両国の伝統的美徳の問題であるけれども、中国でも若い者は親の言うことを聞かなくなっているといった発言もございました。
 中山団長から、国連の要請に基づく日本の協力につきまして、国連安保理事会の常任理事国としての中国の立場に関する発言がございましたが、これに対しまして、中国側からは、国連決議に基づく日本の平和維持活動の参加には全く問題はないということが言明されました。
 それから、最後に中山団長から、中国の軍事予算の拡大に関する懸念がございまして、中国と日本の両国で緊密な話し合いの必要性があるという御発言もあったのでございます。
 韓国につきましては、いろいろ今お話がありまして、つけ加えることはそうないと思いますが、中山団長から、北東アジアの地域安全保障に関する議員同士の意見交換の必要性に関する発言に対しまして、議長さんから、韓日米の三カ国連携の上で中ロと話し合っていくことが重要であるという御発言があった次第でございます。
 いろいろ申し上げたいことはございますが、大体感想は以上でございますが、私自身の感想といたしまして、自国の安全と利益に優先するような対外の友好関係というものはない。政策の方向性につきましての選択や判断は各党それぞれございましょうけれども、基本的に、日本国民同士としての信頼感を基本にして、憲法についてこれからの議論を進めていくことが重要ではないであろうかということを改めて痛感している次第でございます。
 以上です。

発言情報

speech_id: 115504184X00320021107_010

発言者: 葉梨信行

speaker_id: 14748

日付: 2002-11-07

院: 衆議院

会議名: 憲法調査会