春名直章の発言 (憲法調査会)
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○春名委員 イギリス、タイ、シンガポール、中国、韓国の海外調査に参加しましての私の感想を述べたいと思います。
イギリスは不文憲法の国ですし、タイは繰り返してのクーデターから九七年に初めて民主的手続で憲法が制定された国、それから韓国も八八年に軍事政権から民主政権に前進したことを契機に新しい憲法を打ち立てた国だ、それぞれの憲法の歴史が大きく異なっているわけです。
すなわち、憲法の歴史、国民の権利獲得の闘いの産物として憲法が成り立っている、そして、憲法問題を考えるときは、単に改正の回数とか明文規定のあるなしではなくて、国の政治と国民生活との関係で考えることが非常に大事だということを、今回訪問した国々の憲法事情からも強く感じた次第です。
この点で、二つについて述べたいと思います。
第一点は、近代憲法の大原則である国民主権と人権保障という普遍的な原則が、それぞれの国のあり方の中心に据えられて前進しているという姿が大変印象的でした。
憲法典を持たない国のイギリスでは、上院改革の第一弾として、今お話がありました、世襲制の貴族院を改革すること、また、官僚と政治家との癒着を断つこと、これにも大変な努力を傾注されておられました。これらは、国民主権、民主主義という原則を一層発展させる、そういう営みだと思います。
韓国は、軍事独裁政権から民主政権に移行した際に制定した新憲法、その最大の特徴は、民主主義と人権をいかに徹底させるかに力点が置かれていたと思います。憲法裁判所も、憲法理念をしっかり根づかせて、人権を保障する役割を担っているということで御説明がありました。つい最近つくられた国家人権委員会も、人権侵害の根絶、人権意識を啓蒙する役割を担いつつあるということが大変印象的でした。
タイ憲法は、九七年、初めて民主的手続によって制定されました。その中身は、国家汚職防止取締委員会、国会オンブズマン、選挙管理委員会などを設置して、政治腐敗防止への強力なシステムをつくり出しているということが大変印象的でした。
これらの国々も、その国における諸問題との関係で、さまざまな国民の模索と運動を経て、民主主義と人権保障を拡充させてきている、このことを肌で実感することができました。
第二は、アジア各国から、九条を初めとした我が国の憲法の平和主義への支持が表明され、積極的に評価するという発言があったと同時に、それが崩されることへの危惧も率直に語られたというのが特徴的だったと思います。
中国の全人代法制工作委員会の張副主任は、日本の平和憲法がアジアと世界、日本の発展に大きく貢献してきたこと、もし軍拡の主張を取り入れて軍事プレゼンスを拡大すれば九条に違反することになること、最近のテロ特措法や有事法制に対する危惧が民衆の中にも広がっているということなどを率直にお述べになりました。そして、その背景に日本と中国との歴史問題があることを発言されました。それから、韓国国会議長も、侵略をしないという日本の憲法、とりわけ九条への強い賛意を表明されました。
私は、中川議員と一緒に、シンガポールに行ったときに、日本軍占領時死難者慰霊碑、血債の塔というところに献花をさせていただきました。日本軍によって、シンガポールでは五万人から十万人の犠牲者が生まれたとも言われております。それから、朝鮮半島への植民地支配時代に、独立運動に参加した人々を逮捕、投獄し、虐殺したというソウルの西大門刑務所跡も葉梨議員とともに視察させていただきました。生々しい虐殺の再現に大変強い衝撃を受けました。日本の侵略戦争が朝鮮半島、アジアの国々に今も深い傷跡を残している、侵略戦争への反省なしにアジア各国との真の友好は築けないということを改めて実感させられました。
今、東アジアは、世界の中でも平和への大きな流れを形成している地域だと思います。ASEANは、九〇年代にベトナム、ラオス、カンボジアを迎えて、ベトナム戦争時代の対立を克服して、東南アジア十カ国すべてが参加する地域協力機構に発展しておりますし、九四年には東アジア全域の安全保障対話を目指すASEAN地域フォーラムを発足しております。九五年には、東南アジア非核地帯条約も調印されています。大使を招いてお聞きしたフィリピン、インドネシア、マレーシアを含めた東アジア各国で、非同盟、非核兵器、紛争の平和的解決という力強い潮流が前進していることを実感いたしました。
こうした各国の憲法状況を見るにつけて、日本の場合も、人権保障と民主主義、日本の平和と外交などをめぐってさまざまな歴史、国民の運動と模索があります。本調査会ではこのことを踏まえた憲法の運用実態をこそぜひしっかり調査すべきであるということを改めて感じましたので、発言とさせていただきたいと思います。
以上です。