大塚淳子の発言 (法務委員会厚生労働委員会連合審査会)

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○大塚参考人 よろしくお願いいたします。きょうの機会をありがとうございました。
 私は、今、日本精神保健福祉士協会常任理事と、日本病院・地域精神医学会の理事をさせていただいておりますが、本日の発言は、民間の精神科病院に勤める個人の臨床現場の思いを申し上げたいというふうに思っております。
 また、私は、今の勤務先の以前に身体障害者の授産施設で働いておりました。そのときがちょうど国際障害者年の取り組みの真っただ中でありまして、国民の関心事になったことがいかに状況改善の一助になったか、いかに状況が変わっていったかということを目の当たりにいたしました。ぜひ精神障害者の領域の問題も広く国民のものにしていただきたいというふうに考えております。
 また、とても個人的な体験ではありますが、私が幼いときから本当に近しく交流しておりました同い年の精神科医が、十年前に、医療中断による妄想が激しくなった者の刃物で刺されるということがありまして、医療機関内でありましたので一命をぎりぎり取りとめました。今も精神科医を続けております。このとき私自身も、今の勤務先で、まさしく激しい幻覚妄想と混乱の中で殺人を犯してしまった方の担当となっておりました。事件の翌日一日、病院の中で勤務するのが大変難しかったことをとても大きな体験として今も思っております。
 また、既に六例のこうした当該精神障害者の入院治療や退院支援、通院医療、地域生活支援にかかわって実践をしております。そういった立場から発言をさせていただきます。
 少し具体的なお話をさせていただきたいと思います。
 私の病院で、昨年一年間の措置入院患者さんの実数を調査いたしましたところ、三十八件ありました。全国平均の中でどのような位置にあるかということは、資料等をつけていますので、また後でごらんください。この中で、重大犯罪を犯された方が三名ありました。残り三十五件は、広く自傷他害ということで上がってこられた方です。
 ここに大きな問題があるかと思っていますが、この措置時の状況ですが、他の機関で治療中の者が二名、治療中断をしている者が八名、薬物関連で逮捕や受刑歴のある者が四名、発病の兆候がありながらも長いこと未治療のままだったという方が三名。これは何を意味しているかということは、現行の精神医療の貧しさの問題を的確に示しているというふうに考えます。
 この貧しさ、「課題」のところですが、まず、地域の精神保健相談機関の情報等が本人や御家族に十分に行き届いていないということで、初犯の予防にも至らなかったという状況があるかと思います。
 また、治療中断例ですが、重大な犯罪行為をした障害者を含み、措置解除のあり方に非常に大きな問題があるというふうに私は考えます。
 先般、坂口大臣が措置解除は約半年ぐらいで行われて退院に至っているのではないかというふうにおっしゃいましたが、措置解除イコールすぐ退院ということではないというふうに考えています。措置解除の後、いかに地域の中に再定住をするところをしっかりと支援していくかということをしないまま、措置解除してすぐほうり出しているということが非常に多い現状があります。そういう方たちは、結果として頻回な措置回数として上がってきていて、ラベルがついていくという形になっています。
 もう一つは、事前の、入院措置の判定のところのシステムの不備の問題です。私の実感としては、二十五条や二十六条通報によって病院に来られる方たちの多くは、警察の配慮がなかったり、検察の配慮がなかったりするために、手錠を目の前でほかの患者さんたちに見られるという姿があります。こういうことで、同じ医療機関の中で、患者さん同士の中で情報が飛び交ってしまいます。これでいい医療が果たしてできるかという問題を感じております。
 もう一つの調査です。三年ほど前に、やはり同じく当院で、当該精神障害者の実態を調査してみました。当時、同僚と挙げてみた実例が十八名浮かびました。これは、すべてではありません。そのときに私どもPSWとして顔が浮かんでくる方たちの数字です。
 この中に、大きく二つに特徴が見られましたけれども、一つは、やはり病状に起因して犯罪を犯してしまったかなと思われる人たちで、的確な治療、温かいケアが必要で、そういうことをきちっと時間をかけてすれば十分地域に帰れるという方たちです。実際に、転帰は、十八名のうち十名がこういう方たちでしたが、十名のうち八名はきちっと退院をできて地域生活をしておりますが、残りの方のうち一例は再犯に至ってしまいました。この再犯は院内でありました。院内でありましたが、院内でこういうことが起きると、鑑定に逆送するというルートがございません。このあたりも、病院は刑務所ではないのですが、刑事司法領域がきちっと組み込んでくださいません。
 残りの一群は、人格に問題があって、司法手続の問題が大きくあったかなというふうに感じる問題です。
 それから、もう一つの調査の紹介です。昨年、私どものPSW協会における会員のアンケート調査をいたしました。これは、事件が起きる前の六月に始めましたが、実際に現場でかかわっている者たちがいかに困難を抱えているかということを調査いたしました。
 当時の会員二千四百名強のうち、回答があったのは四百八十名強でした。回答数は二〇%ということで回収率は低かったですが、回答してくださった方の七割が医療機関等でした。この回答者のうち、約四割がかかわりがある、六割はかかわりがないという実例でした。このかかわりがないという状況をまたどういうふうに考えるかということは、大きな課題だというふうに思っております。医師だけでかかわっている、PSWのところまでかかわりはおりてこないということも大きくあります。
 そのかかわりがあるという回答を寄せてくださった方の五割の百十名から、具体的な事例が百三十挙がってきました。読み込むのが大変でしたが、この者たちの多く、七五%以上が非常に大きな困難を抱えて現場で苦しんでいるという実態が上がりました。
 何が大変かというと、こういう方たちはやはり入院が長期化しております。なぜ入院が長期化しているかというと、入院に至る前の司法の手続の不備の中から、過重な期待、責任が病院にかかり、医療機関にかかり、退院に慎重にならざるを得ないという状況です。
 入院が長期化した四十三事例のうち、二十例はもう退院ができる状況でした。重大な犯罪行為を犯していても十分退院ができる状況にまで医療の中ではなっているにもかかわらず退院ができないということがあります。今の法案で考えられていることを考えたときに、どういうふうにお考えになるでしょうか。
 それから、病状が改善し退院した事例が二十七事例ぐらいあります。実際にはもっと数多いと思いますが、事例として書いてくださったのは二十七だけでした。これはやはり、PSW、精神保健福祉士たちが地域のソーシャルサポートネットワークの形成に深く深く絡んでいるという事例でした。
 しかし、六割のワーカーたちが、かなり大変だ、それから、かかわれない不全感を感じているという内容が上がってきています。この多くは、業務内容や病院の中のPSWの位置づけによるものです。PSW、精神保健福祉士が雇われていない病院や、事務所に机を置いて患者さんと向き合うことをさせてもらえていない病院も全国の中ではかなり数多くあります。
 チームを組む、連携を組む、地域の中で生活支援をするという形で社会復帰調整官というのが挙がっておりますが、連携を組もうにも、私たちの職域が何をする人間かということがほかの領域の方たちにわかってもらえません。この状態で、連携が組めるということは考えられません。非現実的な話だと思います。社会復帰調整官ということでありましたら、なぜ保護観察所に置かないといけないのかということもわかりません。
 私の事例、二つですが、家族の中で当事者が両親を殺害してしまったという事例があります。御兄弟は行方をくらましました。なかなか連絡はとれませんでした。帰ってきてくださったときには、やはり退院を受け入れたくない。退院を受け入れたくないから、私どもに会わない日曜日に面会に来られて、医療では無理だと思うので、一生懸命宗教への勧誘をしておりました。こういう現実があります。こういう方たちを支援するのに何年かかるか御存じでしょうか。
 もう一つ、家族と縁が切れている方が多いです。こういう方たちの住居を探すときの苦労は並大抵ではありません。お一人の方に、保証人がいない方の住居探しをするときに何軒の不動産屋さんを歩くか御存じでしょうか。
 不動産屋さんが求めるのは、たまに二万円ぐらいで保証人の名を売ってくださる機関がありますけれども、こういう保証人ではなく、何かがあったときに実際に駆けつけて支援してくれるという実質の保証人です。
 こういう保証人の制度は、今、精神障害者に関してはつくられておりません。公的なところでつくられているというふうに私が知っているのは、川崎市の事例だけです。あとは、「もやい」という、ホームレスの方たちの支援の政策の中で有志団体がつくっているぐらいかというふうに考えております。
 こういうものがない中で、今回語られている社会復帰というのは、全くイメージができません。恐らく、精神保健福祉法に言う精神障害者の社会復帰とは異質なものだろうというふうに思います。精神障害者福祉法に言う社会復帰が今できていないこの現状の中で、より大変な、深刻な状況を抱えた方たちが社会復帰できるというふうにうたわれるのだとしたら、それは社会復帰の質が全く違うものだというふうに考えます。社会復帰という言葉の内容を、ぜひもう一度精神保健福祉法にうたったときのことを確認していただいて、もう一度考え直していただきたいというふうに思います。
 こういう多くの限界や困難は、現行の精神保健福祉法の改善の中で十分解決に向かうことはあるというふうに考えています。ぜひそこを、富田先生もおっしゃいましたが、事例的な検証を十分にした上で進めていただきたいというふうに思います。
 それから、国の政策は市町村の方向に動いておりますけれども、国の政策がいい方向に動いていても、自治体が必ずしもそういうふうに動くとは限りません。既に、国立の療養所がある自治体におきまして、市町村になったからということで、保健所のデイケアが廃止されております。もう既に行き場のなくなった地域の障害者たちがたくさんおります。また、ショートステイ等の予算もつけていない自治体が、東京都では、一区以外すべてのところが、二十三区はつけておりません。こういうことをどういうふうにお考えになるか。ぜひとも検討していただきたいと思います。
 こういう改善は、御本人たちや家族の苦しみに寄り添って、しっかりと時間をかけて、丁寧に継続的なかかわりをすることで、御本人が安心して、安全に暮らせる地域の状況、そういう環境をつくる中でしか解決しないというふうに考えています。今回の法案のような、管理的、予防拘禁的な取り組みは、まさしく逆行するというふうに考えております。
 そして、何よりも、今の社会的入院の現状をつくっている、そういう中でのスティグマを助長するというこの一点のみによっても、国の政策による人権侵害を拡大させる有害な法律案だというふうに考えます。よろしく御検討ください。
 ありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 大塚淳子

speaker_id: 13992

日付: 2002-12-03

院: 衆議院

会議名: 法務委員会厚生労働委員会連合審査会