富田三樹生の発言 (法務委員会厚生労働委員会連合審査会)
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○富田参考人 よくイギリスの例が出されますが、イギリスは今現在、精神保健法改正の動きがあります。これはどういうものかといいますと、精神病質という言葉は最近なくなったようですが、世の中で、あの人はおかしい、危ないというふうに、だれでもがだれも告発できます。そして、それによって、ある三段階の審査を経て、強制的な収容ないし地域管理をするということができるようなシステムになりました。これは、いわゆるリスク管理が徹底するとそうなるんですね。そういう形で、精神科医療に刑事政策的なものを医療的にやれというのが今イギリスで起こっている非常にすさまじい状況なんです。
日本の今のこの法案はこうなります。この法案は、いろいろおっしゃいますが、必ず再犯予測が不可欠なんです。それを抜きにこの法案はできるわけがないんです。そういうふうになります。そして、その再犯予測というものが、先ほど修正案の議論の中で、この法案によって立派なものをつくって、そこで何かいろいろなことができたことを一般の精神科医の水準の向上に充てるという趣旨のものがありましたが、これは全く逆であります。
ちょっと皆さん、考えてくださいよ。いいですか。これは、再犯させないための法律です。そして、だれかが外に出ます。つまり、フォールスネガティブの問題ですが、出て再犯を起こします。例えば殺人が起こったとします。殺人によって殺された人、被害者は訴えることが可能ですよね。訴えます。そうしたら、この法案によっては、これは再犯を防ぐための法律でしょう、ところが出したでしょう、出した判断はだれがしたんですかということになります。そうしたら、この法の目的に沿って裁判が行われます。これは明らかにミスだということになります。つまり、閉じ込める方向に必ず、一〇〇%なると私は思っております。そうしたら、判定をした医師、裁判官、いろいろな方々がそれに関与しています、だれが責任を負うんですか。だれが訴えられる当事者なんですか。漠然としています。そして、精神科医療全体がイギリスのようにリスク管理のようになって、重大な犯罪を犯さないのであっても、精神障害者が何かすれば問題、先ほど長野さんが言ったそういうものが起こります。
だから、この法案が通れば、ますます精神障害者に対してリスク管理という観点、それから再犯をさせないためにどうするか。一般の人は、再犯させないために監視する体制がこの国にありますか。ないですね。精神障害者に関してはつくっていく、なっていく。そして、精神科医療にそれを負わせていくということに必ずなります。
それからもう一つ。皆さん御存じかどうか、最近道路交通法が改正されました。道路交通法はどういうことかといいますと、欠格条項を、絶対的な欠格条項から相対的な欠格条項にする。つまり、精神障害、分裂病とか統合失調症とか、そういう者に関しては運転免許を与えないという今までのものを変えたんですね。よくなったかに思いました。
ところが、内容はこうなっていますよ。我々、本委員会でも非常に議論して、精神神経学会理事会でも厳しく批判してきましたが、精神科医にこの人は運転しても大丈夫だという診断書を書かせるんですよ。書かせた上で運転免許を与えることを可能にするんです。何で精神科医がこの人は運転できるかどうかなんて鑑定しなきゃいけないんですか。そういうふうに、何か資格を持った人が診断して大丈夫だということを言わせて、訴訟されたらどうなりますか。これは議論になりました。大丈夫だと診断書を書いたからあれしたんだ、こういうふうになっていきますよ。
我々精神科医は非常に危機感を持っています。さっき松下先生はいろいろおっしゃっていましたけれども、私は、松沢病院とか、いろいろ大変なところはあるということはよく知っていますし、そういうところの医師からとにかく大変なんだよという話を聞きます。大変なのは、この法案がないからでは全くありません。今の現状を大変にしているのは今の精神医療政策なんです。今の精神医療政策が大変にしているんですよ。それをちゃんと、何が問題なのかを明らかにしてきちっとしていくということが本来の我々がやるべきことです。この法案をつくっていいことなんか一切何もありません。