神原文子の発言 (厚生労働委員会)

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○参考人(神原文子君) 神戸学院大学人文学部神原です。
 私自身も十三年前に夫が亡くなりまして母子家庭をしてきました。私は、一応大学の教員として働きながら、家事も子育ても全部一人でやってきました。そういう思いもありまして、単に収入だけの問題ではなくて、もう本当に体もがたがたです。そういう立場で、九八年から大阪府や大阪市の母子家庭自立支援検討会議という、そういう会議にかかわりを持たせていただきまして、様々な調査等も行ってきました。
 今回の法案改正につきまして、母子及び寡婦福祉法改正案の例えば第五条ですね、扶養義務の履行について挙げられているんですけれども、この扶養義務の履行というのは、こういった母子寡婦福祉法に掲載するということよりも、もっと実際には、例えば民法で、子供の父親と母親は子供が成人するまで扶養の義務を負う、子供の父親と母親はたとえ離婚しても子供の扶養義務は履行しなければならない、親が子供の扶養義務を履行しない場合は遺棄とみなすといった、そういう扶養規定を明記することがまず必要なんではないかと考えます。その上で、離別した親から養育費を徴収する制度を整備すべきではないかと考えます。
 次に、就労支援策につきましては、今日事前にお手元に九八年に大阪府で行いました母子家庭自立支援検討会議のためのアンケート調査の抜粋を用意しておりますので、ごらんいただきたいと思います。これは大阪府の母子福祉連合会や大阪府下の同和地区の母子父子連合組合等の協力を得て行ったものです。
 この中では、とりわけ母子家庭の生活実態をできるだけ詳細に把握すること、そして経済的自立を中心とした自立の意味を考察し、その可能性と課題を明らかにすることを目的として調査をいたしました。分析はすべて私が行いました。
 そんな中で、例えば経済的自立ということに関していいますと、まず最初にお手元の資料の六ページを見ていただきたいと思います。
 そもそも自立をどう考えるかということだと思うんですけれども、母子家庭のお母さん方が考えている自立というのは、やはり普通の当たり前の生活をするためには一か月二十万円程度は欲しいと実際には考えています。まあ二十七万円というのは、例えば預貯金も入れてということかもしれませんけれども、でも、それでも例えば経済的自立を就労によって母子の生活費を稼ぐこととみなすならば、一か月最低二十五万円程度の収入が必要なんです。年収三百万。年収三百万で母親と子供一人、二人で生活するということはぜいたくでしょうか。私は決してぜいたくだと思いません。就労支援というならば、これぐらいの金額を目標とした政策を打ち出すべきではないかと考えます。
 そして、お手元の資料に戻っていただきたいと思いますが、二ページの表の五をごらんください。母親の就業実態なんですが、母子家庭になる前に常勤で就労している母親は一二・五%、臨時・パートの母親二六%、無職だった母親四九%です。現在は八五%が就労しています。しかし、就業しているうちの常勤は五割、臨時・パートは五割。常勤だった人の七割は常勤で働いていますが、臨時・パートの人は四割程度しか常勤には就けていません。無職だった人は三割しか常勤には就けていません。
 そして、平均月収、どのくらいかといいますと、三ページの表の六、表の七をごらんいただきたいと思います。自営業で十九万六千円、常勤で十九万三千円、パートでは十万六千円です。常勤の場合は勤続十年以上でようやく月収が二十万円以上になります。しかし、臨時・パートの場合は、どれだけ長く働いても月収は十一万程度にしかなりません。月収二十万円以上を得ることのできる仕事の条件というのは、何よりもまず常勤であることです。そして、一般事務やホームヘルパーや調理員でも、常勤であれば勤続五年ぐらいで二十万円ぐらいの収入になります。そして、月収二十五万円ということになりますと、常勤の専門・技術 職ということになります。でも、専門・技術職、例えば保母ですとか栄養士ですとか調理師ですとかホームヘルパーの資格を取っているとかの場合でも、パートや臨時であれば月収二十万円にはとてもなりません。
 なぜこういう安定就労を困難にしているのかといいますと、何も母親たちが働く意欲がないからではありません。必死に働きたいと思っています。でも、離婚した当時、資格や技能がない、あるいは就職口がない。特に四十歳以上になりますと、ほとんど常勤には就けていません。それから、乳幼児がいるために仕事を断られる、そういうのが現実です。しかも、日本は性別役割分業で、そして三歳までは母親の手で育てやということで、母親が家事、育児に専念することが奨励されてきました。そのために、離婚するときに半数の母親たちが無職の状態です。そして、無職であった人は有職の人よりもはるかに就労困難です。
 しかも、一生懸命働いて、そしてようやく安定した仕事に就くころ、八ページの表の二十六、九ページの表三十を見ていただきたいんですが、母親の健康問題です。疲労が蓄積し、そして体のあちこちが故障を来し、四十歳以上で健康だという人が二割程度しかおりません。しかも、たとえ職場で定期検診などがあっても、時間がなかったりして定期検診も受けることができません。しかも、病気になれば医療費がかさみます。そういう状況では、ようやく子供が大きくなったころに、もう自分の体ががたがたになっています。是非、総合的な自立支援というんであれば、健康問題も入れていただきたいと思います。
 就労支援の課題は、就労支援策というなら、繰り返しのようになりますけれども、常勤の仕事に就けるような、そういう保障をしていただきたいと思います。さらに、そういった仕事に就くための職業訓練、資格取得というならば、就職率が良くて良い収入になるような、そういった資格、技能の取得をサポートしていただきたいと思います。
 やはり、母親が努力しても安定就労が困難だという認識の下で、児童扶養手当の問題、それから養育費徴収の意義をきちっと押さえていただきたいというふうに考えます。
 次に、それともう一つ付け加えますと、母子家庭の総合的な自立支援策というのは、仕事、保育所あるいは公営住宅と、ばらばらに施策がされても役に立ちません。そういったものが全部セットでないと実際には自立支援にはつながりません。そこのところも押さえていただきたいと思います。
 それから次に、児童扶養手当の改正案についてですが、やはり児童扶養手当というのは、母子家庭の子供の健全育成を支えるということが本来の目的だったはずです。離婚が増えることを理由に削減される筋合いのものではありません。先ほどもおっしゃいましたけれども、児童扶養手当の削減によって子供の健康の面とか、あるいは進路変更を余儀なくさせるというのは、これはそういう事態をやっぱり招いてはいけないと考えます。
 さらに、細かいことかもしれませんけれども、第二条に、自ら進んでその自立を図りという、そういう一文が入っています。母親たちは自立しようとしていないようなニュアンスで書かれています。多くの母親たちは生活を支えるために必死で頑張っています。あえてこんな一文を入れる必要はないんじゃないでしょうか。
 それから、改正案にあるような、手当の受給開始後五年を経過した後にその一部を支給しないという文言です。先ほどもデータでお示ししましたように、どんなに一生懸命働き通しても収入が増えない母親たちが少なくありません。そんな母親たちに、五年たったからといって児童扶養手当を削減するんでしょうか。
 さらに、第十四条の四項に、受給資格者が正当な理由がなくて求職活動その他厚生労働省令で定める自立を図るための活動をしなかったときにも削減するという、そういう文言が書かれています。やっぱりこの辺りも母親たちの、母子家庭の母親のスティグマを助長しかねません。総合的な母子家庭の自立支援策について言えることは、やっぱりまず保育所が確保される、安定就労確保がされる、それから養育費の徴収が確保される、その後で児童扶養手当などの経済的支援策の見直しがなされてこそ福祉的な改正と言えるんではないんでしょうか。今回の改正は、まず児童扶養手当を切ってから就労支援をしましょうというのは本末転倒だと考えます。
 さらに、文言の中で、母子家庭の母親がすべて母子福祉団体等に対して情報提供するとか、あるいは委託費を支給するという、そういう箇所が何か所もあるんですけれども、母子家庭の母親がすべて母子福祉団体に加入しているわけではありません。しかも、加入が義務付けられているわけではありません。そういう場合、やはりたとえ母子福祉団体に加入していなくとも母子家庭の母親が不利益を被らないような、サービスが十分受けられるような情報提供やあるいは支援をしていただきたいと思います。と同時に、NPO法人等、母子福祉団体と認定されていない、そういう母子団体も支援をお願いしたいと思います。
 いろいろお願いしたいことがあるんですけれども、母子家庭に対するやはり様々な差別や人権侵害が人権擁護法の中にも盛り込まれていません。現状を把握するとともに、そういった対策が是非必要だと考えます。
 それから、法案改正に関しまして、一応基礎データとして平成十年度の全国母子世帯等の実態調査が参考資料になっているようですけれども、この資料が、平成十年度に調査されながら実際の概要版が十三年三月に出ただけです。最終的な報告書も出されていません。しかも、お読みになられた方も少なくないかと思いますが、非常に、言葉は悪いですけれども、ずさんな調査分析しかされていません。このような調査結果だけで果たしてどれだけ母子家庭の生活実態をつかんだと言えるんでしょうか。自立の課題が見えてきたと言えるんでしょうか。やはり法案作成に当たって、財政難を切り抜ける、急いだそういう法案作成じゃなくて、母子家庭の生活実態を詳細に調査、分析した上で、実態に即した施策を作っていただきたいというふうに考えます。
 私が申し上げたいこと、以上です。
 ありがとうございました。

発言情報

speech_id: 115514260X00720021121_015

発言者: 神原文子

speaker_id: 3955

日付: 2002-11-21

院: 参議院

会議名: 厚生労働委員会