原徹の発言 (国会等の移転に関する特別委員会)
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○参考人(原徹君) 日本銀行の原でございます。
本日は、決済システムの防災対策につきましてお話しできる場を賜りまして、厚く御礼申し上げます。
本日、決済システムの話ということと、私、現在担当しております職務がコンピューターシステムということもありまして、技術的な用語を使います点、何とぞ御容赦のほどをお願いいたしますが、私としてはできる限り分かりやすくお話しさせていただこうと思います。
本日お話しする内容につきましては、お手元にございます資料「本日ご説明する事項」ということでお配りいたしました資料について、ございますように、まず「決済システムの中核としての日銀ネット」についてお話をさせていただきます。
一般的に決済システムと申しますと、様々なところでいろいろな意味で使われることがございますが、広い意味では個々の金融機関それぞれが提供する機能を意味するというような使い方もございますが、本日は、金融機関が集まりました全体としての決済システムということで、日本銀行の日銀ネット、日本銀行金融ネットワークシステムというのが、これが正式の名前でございますが、この日銀ネットが全体の決済システムの中では中核を成す位置付けということでございますので、この話をさせていただければと思っております。
次に、「日銀ネットにおける防災対策の現状」、その中で「基本的な考え方」と「具体的な防災対策」、そして最後に「今後の課題」ということでお話をさせていただければと思っております。
お手元の資料のページの二ページ目でございます資料一でございます。「決済システムにおける日本銀行の役割」というところを見ていただければと思います。
ここでは、決済システムにおきます日本銀行の役割を簡単に図式化しております。皆様方御存じのとおり、日本銀行は銀行の銀行という役割を行っておりまして、自ら決済手段であります日本銀行当座預金、これを金融機関に提供いたしまして、金融機関間の決済を行っております。ここにございますように、この日本銀行当座預金、日銀当預ということでございますが、これを電子的に振り替える仕組みが日銀ネットでございます。一日当たりの決済金額は現時点で約八十兆円の金額がこの仕組みによってお金が動いているということでございます。
なお、ここで日本銀行が提供する決済機能は、コンピューターの中で当座預金の帳簿に振替の金額を受け払いという形で書き込むという形でのコンピューターの中でのお金のやり取りでございます。
実際には、ここにも書いてございますように、現金、日本銀行は銀行券を発行しております。国民の皆様方が日常使う安全で便利な決済手段であるわけですが、災害時にはこの現金、銀行券を円滑に発行するということも極めて重要な役割でございます。阪神・淡路大震災の際は、日本銀行神戸支店におきまして、被災地への現金の供給につきまして全力で努力いたしましたし、今も全国にございます日本銀行三十二の支店はこうした現金供給につきまして万全の体制で臨んでおるということでございます。
次に、日銀ネットの具体的なネットワーク構成を見ていただきます。
お手元の資料、ページをめくっていただきまして、三ページ目でございます。資料二、「日銀ネットのネットワーク構成」ということでございます。
この日銀ネット、昭和六十三年から運行を開始しております。北は北海道から南は沖縄の金融機関までの間をオンラインで結びまして、当座預金の受渡し、それから国債の受渡しなどを行っております。現在、全国で四百四十七の金融機関等が利用先となっております。
利用先では日銀ネットの専用端末を利用する、これは端末接続という具合に呼んでおりますが、それから利用先が保有するコンピューターと日本銀行のコンピューターとを接続する、これはCPU接続と申しております。技術的な用語で恐縮でありますが、これらの方法でオンライン取引を行っております。また、この図にありますように、東京と大阪にセンターがございまして、両者の間を太い線で結んでおります。これは、山側、日本海側を通る緑のルートと、それから東海道側を通る赤いルート、二つのルートでつながっているということでございます。
以上のような日銀ネットの構成を前提に防災対策を考えてみますが、言うまでもないことでございますが、日本銀行としましては、災害が生じてもこの日銀ネットの運行を確保するということを最大の任務であるということで、そのように考えて防災対策にも抜かりのないように努力をしております。
お手元の資料の四ページ目でございます資料三でございます。「防災対策の基本的な考え方」でございます。
先ほど吉村先生の方からあったお話と共通するものでございますけれども、一つは、地震に対する対応力をまず高めておくということでございます。堅牢な建物とか、そういったものを用意しておくということでございます。それから、災害が発生した場合の影響を極力回避するという、そのようなための措置としまして、二つ目といたしまして機器や回線、通信回線でございます、そういったものを二重化、多重化する。それから三番目に、データ等の分散保管を図る。それから四番目に、大規模災害に備えましてバックアップセンターを整備するといった、このような考え方で臨んでおります。また、災害時におきまして、業務継続のための体制整備を行ったり、業務復旧の具体的な手続を定めておくこと、いわゆるコンティンジェンシープラン、緊急時対応計画ということでございますけれども、その計画の策定も欠かせないところでございます。
こうした基本的な考え方に基づきまして具体的にどのような対策を講じているかにつきまして、簡単に続けさせていただきます。
お手元の資料五ページ目、資料四「日銀ネットの防災対策」というところを見ていただければと思います。
まず、この右側の方に、東京にメーンセンターを設けております。これは東京都下府中市にございます。府中でございます。我々これをメーンセンターと呼んでおりますが、このメーンセンターが被災等により使用できなくなった場合に備えまして、この左側の方でございますが、大阪にバックアップセンターを造っております。東京の府中のセンターは平成五年に完成しております。
日本銀行の本店は、東京の中心、日本橋にございますが、この府中はここから離れておりまして、直線距離にしまして約三十キロの離れた場所に置いております。防災対策という観点から見た場合、ここは地盤の面から見て問題がなく、コンピューターセンターを建設するには適当な場所であるという、そのような事情で建設したということでございます。
建物は、関東大震災規模の地震に耐え得る強固な構造としております。特にコンピューターを置いております場所は、地震の際にも揺れを吸収するいわゆる免震構造の床にしております。また、被災等に伴う停電に備えまして自家発電装置を備えております。約一週間分の自家発電用の燃料も確保しております。
この府中のメーンセンターと大阪にバックアップセンターを設けておりますが、この間は高速の専用線で結んでおります。この紙の下の方に金融機関、利用先でございますが、これらの利用先はこの二つのセンターとそれぞれ通信ネットワークでつながるという、そのような形になっております。
大阪のバックアップセンターにつきましては、これは平成八年に完成しております。バックアップセンターを大阪に置いておりますのは、関東の広域に及ぶような大きな災害が仮に起こったとしても距離的にまず同時被災ということはあり得ない、そのような場所であること、それから、関連機器のコンピューター等でございます、そういった機械を置くスペースや要員、人を確保しやすい、そのようなことを総合的に考えまして大阪にバックアップセンターを置いております。
なお、この大阪のバックアップセンターの建物につきましても、関東大震災規模の地震に耐え得るものとして置いております。
通常、この大阪のバックアップセンターに置いておりますコンピューターはどのような形で動いておるかということでございますが、メーンセンターからリアルタイムでデータを大阪に転送するというような、そのような仕組みになっております。メーンセンターにあるホストコンピューターが処理し、その処理済みのデータは速やかにバックアップセンターへ送られまして、バックアップセンターでもこれらの取引データを同時に保管するという、そのような仕組みになっております。ですから、データは東京と大阪の双方で保管されているという形でございます。この仕組みを我々はリモートロギングという具合に呼んでおります。技術的な用語で恐縮でございます。
メーンセンターが被災しまして稼働できなくなった場合は、通信を、それまでのメーンセンターにつながっておったものを切り離しまして、バックアップセンターと接続しましてバックアップセンターのコンピューターを稼働させて、それまでの間にバックアップセンター側でメーンセンターから送られてきたデータを使いましてシステム全体の運行を再開させることになります。バックアップセンターにおきまして日銀ネットのオンライン取引を再開させるまで、システムの切替え作業を開始してから二時間強の時間を要するという、そういう状況にございます。
なお、こうしたバックアップセンターを保有しているといたしましても、万一のときにやはりスムーズな切替えというものを確保するためには、日ごろの訓練が欠かせません。日本銀行では日ごろから内部での訓練を行っているだけではなく、利用先であります金融機関にも参加していただきまして、実際に近い形での大規模な訓練を例年九月ごろに実施しております。
このような形で大阪のバックアップセンターにシステムが移行していくというそういう対応、その対応力の強化に努めておるということでございます。
以上がバックアップセンターにつきましての概要でございますが、局所的な被災とかシステムの障害ということが発生することも想定されるため、そうした場合に備えた対応策も講じております。
例えば、ハードウエア、コンピューター等の機械でございますとかデータベース、これはデータでございますが、そういったものを多重化あるいは分散化することによりまして、被災時における比較的軽度な障害あるいは局所的な障害への対応力を強化しております。日銀ネットにつきましては、メーンセンター、バックアップセンターいずれにつきましても、ホストコンピューターや通信制御装置、データベースなどにつきましては二重化しております。
なお、これらのネットワークのかなめになります通信ネットワークでございますが、これはセンターがどのように立派な形で造られ、これが仮に生き残ったとしても、通信ネットワークがやられてしまいますとシステム全体が機能しなくなるという問題がございます。言わば頭脳は生きていても神経が切られてしまったという、そのような状態でございます。
そこの点についてどのように対応を取っておるかといいますと、日銀ネットの場合は、端末で接続する先につきましては、パケット交換回線、DDX—P回線網、このようにここに書いてございますが、これが網接続、モウといいますのは網でございます、網状になっております通信ネットワークということでございますが、通信網の中のどこかがやられても自動的に迂回路をたどって通信はつながるという、そのような仕組みでございます。これは網の中がメッシュ状の通信線になっているという、そういう特性によるものでございます。したがって、網の中でどこか局所的に切られてもどこか迂回してつながっていくという、そのような形でございます。
とはいっても、今度はこの網の出入口というところがございまして、そこがやられますと全体が停止するという形になってしまいます。過去、先ほど先生からお話もありました世田谷ケーブル火災のように、ネットワークの局所的な被災、これは電話局の近くが被災したというケースでございましたが、そういったケースに備える必要がございます。したがいまして、センターからネットワークへの出入口につきましては、二重化した上で複数の電話局と接続する、通信局と接続し、異なる経路で接続するということを行っております。
以上、概略お話ししたところが現状の防災対策でございます。
それで、今後の課題ということにつきましてお話しさせていただきますが、このように現状の防災対策は、私どもとして、日本銀行としましては極めて高いレベルの技術を使用して対策を講じているというところでございますが、現在の技術レベルの壁といったような制約から、バックアップ機能の強化という面で若干の課題を残しております。この点をお話しいたします。
先ほど申し上げましたとおり、東京・府中のメーンセンターが被災した場合、大阪のバックアップセンターを立ち上げて、立ち上げるという言葉は動かしてということでございますが、立ち上げて日銀ネットを稼働させるためには二時間強の時間が必要となります。切替えにそれだけ時間差があるということでございます。
日本銀行といたしましては、万一メーンセンターが被災した場合、極力早く日銀ネットの業務再開を行うために、この二時間強の時間をなるべく短縮したいという、そのように思っております。IT技術、通信技術のレベルが向上すれば、極力早くこれらを取り入れまして、大阪のバックアップセンターの立ち上げまでの時間の短縮を実現したいと考えております。
以上で私の御説明を終了いたします。
どうもありがとうございました。