小林興起の発言 (国際問題に関する調査会)
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○副大臣(小林興起君) 小林でございます。それでは、着席のまま発言させていただきます。
今、お話ございました東アジアにおける通貨・金融危機の教訓と再発防止と題しまして、私の方から、お配りいたしました資料等を皆様に見ていただきながら御説明をさせていただきたいと存じます。
お手元にレジュメを配付もいたしておるかと思いますけれども、主な内容といたしまして、アジア通貨危機の原因、それから危機に見舞われた国の対応、我が国等による支援の概要、そして通貨・金融危機の再発防止のための方策、そして最後に円の国際化への取組、この五つの項目について説明させていただきたいと思います。先ほど申し上げましたとおり、図表は参考資料としてお配りしてございます。これを適宜参照しながら御説明させていただきます。
最初に、通貨・金融危機の原因でございます。まずこれから御説明いたします。
お手元に、この資料1を見ていただきたいと思うんですが、「アジア各国の実質GDP成長率の推移」、資料1でございます。お手元の資料は一九九七年以降のアジア各国のGDP成長率の推移を表したものです。
東アジアの奇跡とも言われた高い経済成長を維持していたアジア各国は、九七年七月のタイ・バーツの暴落を契機として相次いで通貨・金融危機に陥り、大幅なマイナス成長を記録いたしました。この図表のとおりでございます。
その次に、資料を二枚めくりますと、「アジア各国の為替レートの推移」、資料2がございます。資料2は為替レートの推移を表したものです。九七年四月一日の為替相場を基準に、その後の各国の為替相場の推移を表したものです。九七年七月以降、アジア各国の為替は相次いで急落している様子がこの表からお分かりいただけると思います。
この通貨・金融危機の原因を総括すると、資本勘定を通じた急激な流動性危機と国内の金融システム危機が複合した双子の危機であったと言えます。また、この通貨危機については、幾つか共通する要因を見出すことができます。
以下、五つの点について少し詳しく申し上げます。
第一の原因は、経済、特に金融取引がグローバル化する中で、大規模かつ急激な国際資本移動にさらされたことでございます。危機に見舞われたいずれの国においても、危機に至る数年間に膨大な短期資本が外国から国内の金融機関、企業部門に流入し、市場の見方が変わるとその資本が一挙に今度は流出し、国際流動性危機につながったというものです。さらに、資本流出に伴う通貨の下落により、現地通貨建てで換算した外貨建て債務が増大し、金融機関、企業部門のバランスシートを悪化させ、これが通貨・金融危機を一層深刻にしました。
次のこの資料3、「新興市場への純民間資本流入」。資料3は新興市場国・地域への民間資本流入の状況を示した表です。アジア五か国に対するネットベースでの民間資本流入額を枠で囲んでおります。これが、九六年にかけて著しく増大していたものが、危機が起こった九七年及び九八年はマイナス、すなわち資本流出が起こっていることがこの表からお分かりいただけると思います。
第二の原因は、金融・企業セクターの構造的な脆弱性、すなわち不動産部門への過剰投資、企業の高い債務・資本比率と低い資本収益性、金融機関の不良債権の増加等が金融システム不安を醸成したことです。海外からの短期資本の流入によりもたらされた国内の過剰流動性もこうした脆弱性を拡大いたしました。
第三は、ドルに実質的にペッグした為替制度です。東アジアの国々の輸出の伸びが九六年に急激に低下した要因として、九五年春以降のドル高推移の中で、ドルとペッグした各国通貨の為替レートが上昇したことが対外的な競争力を低下させたことも指摘されています。更に付言しますと、ドルペッグは最初に申し上げた短期資本の流入にも関係しています。アジア諸国の国内金利はドル金利よりもかなり高く、ドルペッグにより為替レートの変動リスクも軽視されたため、国内企業、銀行は外貨借入れを積極化し、海外投資家も利ざやをねらった投資を拡大いたしました。
第四は、東アジア域内における貿易、投資を通じた経済の相互依存関係の高さです。金融のグローバル化と相互依存関係の高まりから、各国市場間の連動が強まり、通貨危機を他国に伝染させるとともに、経済危機の深化の過程でスパイラル的に各国の経済活動を収縮させることとなりました。
そして五つ目の要因として、危機発生前に存在したアジア諸国に対する過度の楽観論が挙げられます。この楽観論が大規模な国際資本流入や金融セクターの脆弱性と相まって、タイ等においてバブルを発生させ、危機を一層深刻なものにしたと考えられています。
次に、通貨・金融危機への各国の対応と我が国の支援について申し上げます。
まず、各国の対応です。
では、東アジアの各国はどのような経路で危機に陥り、そしてどのように対応したのかを個別、国ごとに見てまいります。
まず、一、タイ。タイから御説明いたします。
冒頭に述べましたように、九七年七月にタイ・バーツが切下げを余儀なくされたことが通貨・金融危機の発端でした。しかし、バーツに対する売り圧力は九六年の時点で既に強まっていました。その原因としては、バーツが事実上のドルとペッグしている状況で、ドル高円安局面で輸出競争力が低下して経常収支が悪化し、また短期外貨資本流入による不動産バブルとその崩壊が挙げられます。バーツ切下げ後も外国資本の引揚げが加速したため、タイ政府はIMFに支援を要請し、IMFプログラムの下で財政金融政策、金融機関への公的資本注入と不良債権の処理及びインフレターゲットの導入等の措置を取りました。
次にインドネシアです。
インドネシアでは、九七年七月のタイ・バーツの下落を受けてルピアが大幅に下落した結果、現地通貨建てで換算した民間の外貨建て債務が増大し、それが対外債務の返済能力に対する市場の不安を招き、ルピアの更なる下落をもたらしました。このため、インドネシア当局は、IMFに支援を要請し、IMFプログラムの下で緊縮的な財政・金融政策や金融セクター改革の推進等に取り組みました。
三番目は、韓国についてお話しします。
タイで起こった通貨危機は、九七年十月以降、韓国にも波及しましたが、韓国においてはその前から金融セクター及び産業構造に関する諸問題が顕在化していました。九七年一月以降、財閥の経営行き詰まりが表面化すると、これを資金面で支えていた金融機関の不良債権が増加し、このような状況が韓国経済の対外的信認を低下させ、外国資本が急速に流出するという事態に陥りました。
韓国当局は、為替市場への介入や金融セクターへの支援、更にウォンの対ドル為替変動幅を拡大する措置を取ったものの、資本逃避を食い止めることはできず、IMFとの間で融資プログラムを締結するに至りました。このIMFプログラムの下、韓国当局は、緊縮的な財政・金融政策を行う一方、不良債権処理等のための公的資金注入、ウォンの完全変動相場制移行、財閥の解体、再編等を進めました。
次に、IMFの政策の問題点についてお話しいたします。
なぜなら、これらの国はいずれもIMFとの間で合意された政策の下で危機への対応を図りましたが、極めて急激な経済の収縮が起こり、IMFが当初求めた緊縮的な財政・金融政策や危機時における構造改革措置が果たした危機への対応として適切だったのか、また資本自由化の進め方に問題はなかったのか、我が国としても問題点を指摘し、国際的にも大きな議論になりました。
その結果、IMFが融資する際の条件設定の在り方を見直すことや、IMF自身の透明性の向上を図る等、IMFの改革も進んでおります。また、IMFが主導していました資本自由化についても、金融面の受入れ体制が重要であることが広く認識されるようになっています。さらには、後に述べますような危機の予防と解決へ向けた取組もなされております。
さて、IMFに面倒を見てもらうことなく対処した国として、マレーシアについて御説明いたします。
危機の影響を受けながらもIMFに頼ることなく独自の政策で対応したのがマレーシアでした。マレーシアは、東アジアの国の中でも年率一〇%の高い成長率を維持しておりましたが、アジア危機の影響により、九八年にはマイナス成長となりました。しかし、マレーシア当局は、資本取引規制や固定相場制の導入、企業や銀行の不良資産の整理、金融機関の経営基盤の強化、資本市場の育成政策等を実施しました。マレーシア当局が取った資本規制については、固定相場制度と相まって、外部環境からの危機の伝播を制限し、経済回復のための時間を与えたと一定の評価を得ています。資本規制については、一般的には、長期的には資源配分をゆがめるおそれがあり、発達した金融資本市場を有する国においては実効性を確保することが困難なため常に適切な政策とは言えない面もありますが、マレーシアの経験は、政策手段としての資本規制の役割を再考させるきっかけになったと言えます。
以上の各国の対応の成果について申し上げます。
危機後の状況ですが、各国とも、政策面での対応と国際的な支援の結果、先ほどの資料1でも見られますように、比較的実は短期間で最悪期を脱しております。その後、二〇〇〇年から二〇〇一年にかけて米国の景気後退の影響を受け、落ち込んでいますが、特に韓国経済はほぼ完全に正常化し、力強い成長を見せております。ただし、インドネシアは、政治的な不安定さもあって、他国に比べその回復は遅れております。
こういうアジア危機に対しまして、我が国の対応について御説明いたします。
まず国際機関を通じた支援策、次に危機に見舞われた国に対する国際機関と我が国との対応について概説します。
IMFについては既に述べましたが、世界銀行やアジア開発銀行、また危機の貧困層や社会的弱者への影響の緩和や、危機により打撃を受けた金融部門の再建等の分野を中心に迅速かつ大規模な支援を実施しました。我が国はこうした支援の策定に積極的に関与し、その実現に尽力いたしました。国際機関の支援というものは我が国の支援なくしては動かなかったということであります。
我が国独自の支援としましては、いわゆる新宮澤構想がございます。このような国際機関を通じた支援のほかに、我が国は通貨危機に見舞われたアジア諸国の経済困難の克服を支援し、国際金融資本市場の安定化を図るため、九八年十月にアジア通貨危機支援に関する新構想、いわゆる新宮澤構想を表明いたしました。この構想の概要について詳しくはこの資料4に添付してございますので、お読みいただきたいと思います。
この新宮澤構想は、資本流出により困難に直面しているアジア諸国の実体経済回復のための中長期の資金支援として百五十億ドル、これらの諸国が経済改革を推進していく過程で短期の資金需要が生じた場合の備えとして百五十億ドル、合わせて全体で三百億ドルの資金支援スキームを用意したものでございます。
具体的な支援方法としては、輸銀融資、円借款等を用いた直接的な資金協力とともに、アジア諸国のソブリン債への保証の付与等の資金調達の支援を用意しました。新宮澤構想においては、現在までに二百十億ドルの資金支援を表明し、着実に実施しております。
こうした大規模な資金支援を機動的に提供できたことはアジア諸国が危機を克服するのに大いに役立ったものと考えておりますし、これらの国々からのありがとうという感謝の言葉も届いております。
それでは次に、通貨・金融危機の再発防止のための方策について御説明いたします。
まず最初に、域内の取組。資料5をごらんいただきたいと思いますが、資料5に危機の再発防止に向けた域内の取組を時系列で整理をしております。一九九七年七月二日、タイ・バーツがフロート制に移行と、こういうところからずっと書いてございます。
まず、チェンマイ・イニシアチブの合意、これが重要であります。通貨危機以降、アジアでは地域の金融安定のための協調が重要であるとの認識が高まり、地域金融協力の強化に向けた取組が行われました。そして、二〇〇〇年五月にタイのチェンマイで開催されたASEANプラス3、この3というのは日本、中国、韓国ですね、三蔵相会議においてチェンマイ・イニシアチブとして結実しました。チェンマイ・イニシアチブは、ASEANプラス3各国の間で通貨危機に陥った際に資金支援を行うための仕組みとして二国間通貨スワップ取決めのネットワークを構築するものであります。
次に、この資料6にチェンマイ・イニシアチブの進捗状況を示してございます。
資料の中で、国名の、国の名前の間が太い実線で次に結ばれているのがその次の資料6の二枚目にあると思います、チェンマイ・イニシアチブに基づく通貨スワップ取決めの現状。資料の中で国名の間が太い実線で結ばれているのは、これまでに締結された今申し上げました二国間の取決めです。
我が国はこれまでに、韓国、タイ、フィリピン、マレーシア及び中国の五か国との間で二国間通貨スワップ取決めを締結したほか、現在インドネシアとの交渉が最終段階に入っております。これまでにチェンマイ・イニシアチブの下で締結されたスワップ合意の総額は、韓国、中国が締結したものも含め二百八十五億ドルにも上っています。
政策対話の開始。チェンマイ・イニシアチブに基づく二国間通貨スワップ取決めの実効的かつ円滑な運用を図るためには、各国が緊密な政策対話を通じて、日ごろから地域の経済情勢を的確に把握しておくことが必要であります。この観点から、政策対話に重点を置いたASEANプラス3の非公式代理会議を年二回開催することになり、本年四月のヤンゴンにおける第一回会合に続き、十一月には東京で第二回会合を開催しました。
我が国としては、今後とも引き続き通貨スワップ取決め締結に向けた努力を続けていくほか、政策対話の強化等、地域の通貨、金融の安定に向けた協力に一層積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
以上、アジア域内での危機対応について御説明いたしましたが、G7を中心に国際的にも通貨危機の予防と解決に関する議論が実は活発に行われております。東アジア諸国が通貨危機からまだ完全に立ち直らないうちに、御承知のとおり、ロシアやブラジルでも経済危機が相次いで起こりました。これらの現象は、経済のグローバル化によってこれまで以上に急激かつ大規模な国際資本移動が容易になり、流入資本の今度は急激な反転によってマクロ経済や国際金融システムの安定が攪乱されることを示すことになりました。こうした従来とは違う、言わば二十一世紀型の通貨危機に対応するため、危機の予防と解決について議論を行ってきております。
危機の予防に関しては、IMFが行う加盟国の政策の評価、監視の一層の充実、特に為替制度の選択と債務管理等における各国の適切な政策が重要という点については、G7で合意が見られ、具体策につき種々議論が行われています。その際には、IMFのアジア通貨危機等における対応後の反省も踏まえた見直しが行われております。
また、危機の解決策としては、IMF等による適正かつ有効な公的融資、IMFの融資に際して設定する条件のほか、民間セクターの関与、すなわち、IMF等の公的融資による解決のみではなく、民間債権者にも危機の解決について必要に応じて一定の負担を求めることが重要と考えております。
最後に、今後の円の国際化への取組について申し上げます。
このまず経緯からでございますが、最後に円の国際化についての取組について説明します。
円の国際化は、一九八〇年代の金融自由化の流れの中でも議論されてきましたが、アジア通貨危機や欧州でのユーロ導入等を契機に再びクローズアップされております。アジア通貨危機では、アジア各国の通貨が過度にドルに依存していた弊害が強く認識されました。
資料7というのが付けておりますけれども、「円及びアジア通貨(対ドル)の為替変動比較」ですね。
資料7は、円及びアジア通貨の為替変動の比較を表したものです。通貨危機以前は、円を除きドルと各通貨との相関関係が強い状況でした。しかし、九八年以降は各通貨のドルに対する変動幅が広がるとともに、円の変動と形状が似通ってきています。
このように、円と各通貨の相関が高まる局面も出てきており、円の国際通貨としての役割強化がアジアにおける為替市場の安定、ひいてはアジア諸国の経済安定に資するものであると考えられております。さらに、国際的な取引における決済通貨としての円の使用が高まれば、アジア域内でのクロスボーダーの為替取引の決済において、決済時間のずれから生じるリスクの低減にも資することになります。
このような観点から、財務省では円の利便性を高めるためのインフラの整備を行ってきました。具体的には、非居住者にとっての円での資金運用、調達の利便性を高めるための国債市場の整備として、非居住者、外国法人が受け取る一括登録国債の利子に対する非課税措置等の実施や、金融資本市場のインフラとしての重要な決済システムの改善を図るため、CP、社債、国債等についての統一的な決済法制の整備や振替決済システムの創設等を行いました。
こういう経緯の下で、これからの今後の円の国際化への取組について申し上げます。
資料8を付け加えてございますが、資料8、「我が国の貿易取引における円建て比率の推移」です。
資料8は我が国の貿易取引における円建て比率の推移を示したものです。我が国の円建て輸出の比率は、三五%前後で推移する一方、円建て輸入の比率は緩やかな上昇傾向にあるものの、二五%足らずにとどまっております。
円が国際通貨として広く受け入れられていくためには、まず何よりもその前提条件として日本の経済金融システムを再生させ、内外の信認の回復及び向上を図ることや、貿易資本取引における円利用のニーズを増大させることが重要で、このためには構造改革、規制緩和等を通じて内需の拡大を図り、円建て輸出入を増やし、対内直接投資の活性化を図る必要があります。さらに、金融資本市場や決済システムの整備を引き続き着実に進めていくことも重要と考えております。
また、こうした環境の整備に加えて、国債取引についての通貨建て選定の慣行を見直していくことも必要であると考えます。一方、企業の現場においては、円の国際化の必要性やそれがもたらす中長期的なメリットに対する理解が必ずしも広がっておらず、現場での判断はデファクトスタンダードとしてのドル建て化に向かう傾向があるとの指摘も聞いています。
したがって、今後円の国際化を一層推進するためには、企業の現場において経営方針として内外の環境変化を踏まえ、建値通貨に伴うリスクとコストを再評価し、これまでの貿易取引における通貨建ての見直し、個々の取引の円建て化を進めることが期待されます。これまで政府、産業界、金融界も含めた全体的な形で円の国際化を図るということがなかった感があり、財務省としては円の国際化の必要性やこれまでの議論を踏まえ、引き続き円の国際化を推進するため、九月から円の国際化推進研究会を立ち上げ、更に検討を進めているところでございます。
財務省としての私からの報告は以上のとおりでございます。