金子哲夫の発言 (憲法調査会)

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○金子(哲)委員 社会民主党・市民連合の金子です。
 憲法から見た今日の国際情勢について意見を述べたいと思います。
 最初に、イラク問題について申し上げたいと思います。
 今、我が国がとるべき態度は、米国が主張する武力による問題解決には反対し、日本国憲法の精神に沿って国際社会に働きかけることであります。既に米国による軍事攻撃を想定して、その場合、我が国は米国の行動を支持すべきであるとする発言が一部に行われていることは極めて問題だと言えます。
 そもそも憲法は、前文において、「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。」とし、我が国のみならず、全世界の人々が平和のうちに生存する権利を持っていることを確認しています。さらに、「日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。」と決意しています。
 この憲法の前文は極めて重要です。今日のイラク問題を考えるときにも、日本政府がこの憲法のうたう理念に沿って行動しているかといえば、残念ながらそうではありません。
 最近、特に国連中心主義ということが言われております。確かにこれは重要であります。しかし、国連といえども、私たちと切り離されたところに存在するものではありません。国連は加盟国によって構成されているのであり、したがって、国連がどのような行動をとるのかは、結局のところ、加盟国の態度によって決定されることになります。
 日本にとってもこの点は極めて重要です。すなわち、国連中心主義に名をかりて、国連任せになるようなことがあってはなりません。さきに引用しましたように、国家の名誉にかけて、全力を挙げて崇高な理想と目的を達成するという憲法前文に示された決意をどのように実行し、そして平和的な国際社会をつくり上げるのか、まさにそのための主体的な努力を尽くすことが重要であります。国連中心主義といえども、このような憲法の理念や決意としっかり結びついたものでなければならないことは当然のことであります。
 この点に関しては、現状では日本政府が最大限の努力を行っているとは言いがたく、これは憲法上からいっても極めて問題であります。一たび軍事攻撃が開始されれば、多くのとうとい命が、しかも無辜の市民の命が奪われることは明らかであります。例えば、さきの湾岸戦争においても、米軍が使用した劣化ウラン弾による被害は今なお深刻な状況を市民に与え続けております。また、今続いておりますアフガニスタンへの軍事攻撃によっても地上で何が起きているかを直視すべきであります。
 憲法第九条によって、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇または武力の行使は、国際紛争の解決の手段としては永久にこれを放棄した我が国が国際紛争においてとるべき道は、戦争回避のために最大限の努力をすることであり、万が一、米国による軍事攻撃が行われる事態に至ったときには、速やかに軍事攻撃を中止させるために、その先頭に立つことであります。これこそが、憲法の理念を実現する道であります。
 さて、イラク問題や朝鮮民主主義人民共和国、北朝鮮の問題、いずれも大量破壊兵器にかかわる問題で指摘をされております。特に核兵器開発問題が主要な問題になっておりますので、次に、この点について触れてみたいと思います。
 私たち社民党の態度は、たとえいかなる理由であれ、そしていかなる国であれ、核兵器を開発し保有することは絶対に認めないということであります。私たちは、世界のすべての核兵器を速やかに廃絶すべきであると主張しております。
 核兵器が非人道的な大量殺りく兵器であることは、五十七年前の広島、長崎の悲惨な体験が証明しています。世界で最初の核戦争の体験を持つ我が国は、その意味で大きな役割を果たさなければなりません。したがって、北朝鮮がNPT体制からの離脱を表明したことは、それが核兵器開発、保有へと発展する危険な行為であり、これを許さないために、国際社会と協力して、平和的手段によって解決するために全力を挙げて取り組むべきであります。
 我が党は既に、朝鮮半島を含む北東アジア非核地帯構想を発表していますが、その実現こそが今日の問題を解決するための大きな役割を果たすことになると考え、そのため、全力で取り組む決意であります。
 北朝鮮は、平壌宣言にもうたわれた、すべての国際合意を遵守し、核兵器開発につながるこのような行為は直ちに中止すべきであることを改めて強く申したいと思います。
 さて、昨年、安倍内閣官房副長官や福田内閣官房長官などの憲法と核兵器保有についての発言が相次ぎました。その趣旨は、自衛のための必要最小限を超えない範囲にとどまる限り核兵器保有は憲法九条第二項に違反しないという、全く許されざる発言であります。
 被爆国である我が国は、憲法九条を持ち出すまでもなく、核兵器が非人道兵器であり、憲法違反であるとするのは当然のことであります。核兵器の非人道性は、一九九六年の国際司法裁判所の勧告的意見でも示されており、我が国憲法で保有できないことは当然であります。核兵器に対して不使用と廃絶という明確な態度を持たない限り、我が国が核兵器廃絶のための真の役割を果たすことは到底できません。
 今問題になっている核兵器の不拡散に関する条約、NPT体制は、五カ国のみ核保有、核兵器保有を認めるなど、幾つかの問題を持っています。二〇〇〇年四月のNPT再検討会議では、保有核兵器の完全廃棄を達成するという核保有国による明確な約束を含む最終文書が全会一致で採択されましたが、残念ながら、世界はその方向に向かって進んでいません。被爆国日本政府の果たすべき役割が厳しく問われていると言えます。
 NPT条約では、アメリカなど五カ国の核保有を認めていますが、残念ながら、このほかにも、イスラエル、インド、パキスタンが新たな核保有国となっており、この三カ国はNPTへの加盟を拒否しています。
 特にここで指摘しておかなければならないことは、インド、パキスタンの核兵器保有です。我が国は、一九九八年に両国が行った核実験に対して、核兵器保有を許さないとする立場から経済制裁を行ってきましたが、ところが、一昨年、米国によるアフガニスタンへの軍事行動を支援する形で両国への経済制裁を解除してしまいました。事実上、我が国も両国の核保有を容認することになったわけです。
 しかも、我が国政府が昨年国連総会に提出した核兵器廃絶決議でも、二〇〇〇年の再検討会議で採択された、完全廃棄を達成する明確な約束を実行させるという重要な課題について、明確な姿勢を示しておりません。
 世界の最大の核兵器保有国はアメリカです。アメリカ政府は、一九九六年九月の国連総会で採択された決定的な、画期的な包括的核実験禁止条約、CTBTをいまだなお批准しておりません。それどころか、核爆発実験の再開をも示唆し、懸念が広がっております。また、CTBTでは禁止されていないとして、未臨界実験を繰り返しています。
 しかも、アメリカは、さきに述べました我が国政府の国連決議に対しても、一昨年、昨年と反対をしました。しかし、こうしたアメリカの核政策に対して日本政府は全く批判できず、対米追随の核政策となっています。いかなる理由であれ、どの国であれ、すべての核兵器保有が違法であるという立場に立って、アメリカの核政策に対しても厳しい姿勢を示すことが今極めて重要であります。
 世界最初の被爆体験を持つ日本が、こうしたあいまいな核政策であってはなりません。身をもって核兵器の非人道性を体験した我が国こそが、核兵器廃絶、禁止に向けてのイニシアチブを発揮すべきであります。そのためにも、非人道兵器である核兵器が憲法に違反していることを改めて再確認し、非核三原則を法制化することによって、憲法の平和主義の理念をより明確にすべきであることを申し上げて、私の意見とします。

発言情報

speech_id: 115604184X00120030130_021

発言者: 金子哲夫

speaker_id: 14880

日付: 2003-01-30

院: 衆議院

会議名: 憲法調査会