春名直章の発言 (憲法調査会)
⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。
詳細は利用規約をご確認ください。
○春名委員 日本共産党の春名直章でございます。
一昨日、ブッシュ大統領が最後通告の演説を行って、この調査会が開かれている間にも攻撃開始があり得るという大変緊迫した状況であります。しかし、アメリカのイラク戦争には一片の道理も大義もありません。直ちに中止を強く求めたいと思います。
第一に、査察強化で平和的解決という道が開かれているにもかかわらず、それをあえて断ち切り、戦争に訴えているという問題です。
三月七日のブリクス査察団委員長の報告は、イラクの協力が積極的、自発的になってきたことを歓迎し、あと数カ月の査察継続が必要といたしました。そして、安保理決議一二八四に基づき、二十九項目の武装解除のための未解決の問題を明らかにし、今後の課題と作業計画を三月十七日に報告しています。これは、平和的解決のための査察の有効性、査察の継続、強化の必要性を裏づけたもので、それが本格的軌道に乗りつつあった瞬間と言えます。査察を強化、継続すれば、平和解決への道が大きく開かれていたのであります。国連がみずから決めたこの査察強化で平和的解決を目指す道を、アメリカが一方的に、独断で断ち切ることは許されることではありません。
第二に、この戦争が国連の平和の枠組みを根底から突き崩すものだということであります。
三つの角度から述べます。
一つは、国連憲章はこうした戦争を決して認めていません。国連憲章は、言うまでもなく、戦争を違法として、国際紛争をあくまで平和的手段で解決することを大原則とし、その例外として、一、武力攻撃に対する自衛権の行使で、安保理が措置をとるまでの間に限ること、二、平和に対する脅威などに対する集団的措置として、安保理が決定する行動に限る、この二つを明確に定めております。アメリカが計画するイラク戦争がこのいずれにも当たらない無法な行為であることは、だれの目にも明らかでありましょう。
二つは、アメリカが戦争の根拠と挙げている六七八、六八七、一四四一という三つの国連決議の中には、イラク戦争を正当化するような文言は一つもありません。例えば、一四四一決議は、武装解除の義務を遵守する最後の機会と述べるとともに、強化された査察体制を構築し、実施すること、重大な違反があった場合に安保理会合を即座に開催するということを決めています。武力行使の自動性を排除しているのであります。だからこそ、アメリカは新しい決議を準備したのであり、それが受け入れられず撤回した事実を見れば、明らかであります。
三つは、この戦争の目的が政権の打倒に置かれていることの重大性です。アメリカは、イラクが大量破壊兵器を保有していること、フセイン政権のもとではその廃棄が不可能であると断定し、戦争に訴えてフセイン政権の打倒を目指すとしています。しかし、これは国連憲章が禁止している内政干渉そのものではないでしょうか。国連安保理の支持もなく、国連憲章と国際法に根拠を持たないイラク戦争を強行することは、戦後国際社会が積み上げてきた平和のルールを根底から覆すことになり、力による支配ではなく、法による支配を強化して国際の平和と安全を確保するという世界の流れに大きく逆行するものと言わなければなりません。
第三に、この戦争が及ぼす重大な被害、悲劇、犠牲という角度からも、断じて許されないということです。
国連の内部報告でも、イラク戦争で、死傷者五十万人、新たな難民三百万人、子供と妊娠中、授乳中の女性の被害が五百二十万人という驚くべき数字が示されています。大量破壊兵器の放棄と政権転覆を目的にしたこの戦争がこうした凄惨な事態を招くことは避けられないと考えます。アフガニスタンへの報復戦争の比ではない人命が失われることになります。世界じゅうで反戦デモが起こっているのは、この理不尽さへの怒りからでもあります。こんな無法を許していいのか、今このことが鋭く問われていると思います。
次に、直ちにこの戦争計画を支持した日本政府の対応の重大性について述べたいと思います。
第一に、この戦争計画を支持する根拠を、小泉内閣自身、説明できないという問題です。
首相は、フセイン政権に武装解除の意思がないことが断定された以上、アメリカの武力行使を支持すると、ブッシュ大統領が演説で述べたことをオウム返しに追認をいたしました。しかし、昨日の党首討論でも明らかになったように、武装解除する意思がないことを一体、いつ、だれが断定したのでしょうか。首相自身、答弁することができませんでした。断定したのはブッシュ政権であり、国連安保理が断定した事実はないのであります。攻撃容認の根拠に一四四一決議を持ち出していますが、当の首相自身、武力行使を自動的に容認しているとは言えないと、一月二十七日衆議院予算委員会での答弁、こういうふうに国会でも答弁しているではありませんか。
第二に、小泉首相は、国民への説明として、日米関係の信頼性を損なうことは日本の国益に反すると述べています。だから、アメリカがどんな無法を行うとも、日本はそれにつき従うしかないという姿勢ですが、これほど危険な外交姿勢はありません。
日米関係、日本の国益との関係では、今、北朝鮮問題が引き合いに出されることがありますが、それこそ、アメリカがイラクに対して行っていることを北朝鮮に対してももし行えば、どんな恐ろしい事態を招くか、想像にかたくありません。政府が言うように日米関係を本当に大切にするというのであれば、アメリカが国際の平和秩序に反する行動をとろうとしたときに、その誤りを正すことこそ必要なのではないでしょうか。そうしてこそ、日米関係が信頼あるものになり、国益にも合致すると言えるのではないでしょうか。首相の説明は、国民の理解を得られるものではなく、逆に、平和解決を求める国民世論にも真っ向から反対するものだと言わなければなりません。
最後に、日本には、国際ルールを先頭に立って守り抜き、戦争によらない平和解決を追求する特別の責務があるということを強調したいと思います。
言うまでもなく、侵略戦争への反省に立って制定された日本国憲法のもと、戦争を放棄し、国際紛争を解決する手段としての武力行使を永久に放棄するとともに、軍事力を持たないことを世界に宣言した国、それが我が日本であります。しかも、日本は、イラクとの関係は比較的良好であります。中東諸国で戦火に手を染めたことのない国でもあります。ひたすらアメリカにつき従うだけの小泉内閣の外交は、この日本が果たすべき、また果たせる役割を一切発揮せず、逆に日本の国際的地位を地におとしめるものであることを厳しく指摘せざるを得ません。
今、日本がとるべき行動は、アメリカ追随の恥ずべき姿勢を直ちに撤回し、イラク戦争を中止するようアメリカに強く働きかけることであります。そのことを強く主張いたしまして、私の発言といたします。