平井卓也の発言 (憲法調査会)

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○平井委員 まず初めに、私は、天皇制は日本の国の文化であり、ナショナルアイデンティティーであって、我々がこれからも守っていかなければならないものだと考えております。この天皇制について規定する憲法第一章に関しては、これまでのいろいろな議論にかんがみれば、いずれの政党においても当面のところ基本的に改正する必要はないと考えていると思います。
 したがいまして、今回はそれを前提に、国事行為を中心とした天皇の行為について申し述べたいと思います。
 まず、天皇の国事行為についてであります。
 園部参考人からは、天皇は憲法の規定に基づいて主権者たる国民から国事行為を委任されていると理解すべきであるとの意見がございました。そのような見地に立ちますと、天皇の国事行為については、その運用の実態をすべて国民の前にオープンにしていく必要があるのではないか、また、そうすることが象徴天皇の地位を安泰ならしめるためにも有益なことではないかと考えます。
 例えば、これは前回の高橋参考人、そして園部参考人、お二人に同じことをお伺いしたのでありますが、現在の象徴天皇制のもとでは、天皇の国事行為とは、天皇みずからが決定して行うものではなく、すべて内閣の助言と承認に基づいて行われる、受動的かつ儀礼的なものであるわけであります。ところが、内閣総理大臣その他の国務大臣や人事官などの任命の認証の際の助言と承認に用いられる文面には、「右謹しんで裁可を仰ぎます。」というぐあいに裁可という文言が使われています。通常、裁可といえば、裁可の権限を行使する者に決定権があると考えられるわけですから、これではあたかも天皇が任命権者であるかのような誤解を与えるのではないでしょうか。
 この点について、両参考人とも、現在の天皇が任命を裁可しないということはあり得ないとしながらも、園部参考人からは、そういう言葉を使うこと自体が、何か戦前の言葉をそのまま使っているのではないかということであれば、これはある意味ではこの問題を議論する一つの大きな契機になるとの意見があったわけでございます。
 あるいは、外交関係の文書の認証に関しては、内閣総理大臣のほか外務大臣が副署することになっておりますが、これは、旧憲法下の、各国務大臣が個別に天皇の輔弼をし、また内閣総理大臣の地位も同輩中の首席にすぎなかった状況では意味があったと思いますが、現行憲法では、内閣総理大臣は内閣の首長であり、行政各部を指揮監督する権限を有することとなっているわけですから、もはや外交関係の文書の認証に外務大臣が副署する必要はないのではないかとも考えられるわけであります。
 次に、行為の分類論でありますが、通常は天皇の行為を国事行為、公的行為、私的行為に分ける三分説であり、これが政府見解でもあることはよく知られているところであります。これに対し、園部参考人は、これを費用負担の問題等に対応させる形での五分説を提唱されました。また、単に国事行為とそれ以外の行為に分ける二分説というのも存在するわけであります。
 私は、こうした行為分類論には一長一短があって、どれがすぐれているということは断言できないと思いますが、このような行為分類論が行われる背景には、天皇も一人の人間である以上は国事行為のほかにもさまざまな活動をされるのであって、しかも、そうした活動と天皇が我が国の象徴であるということが密接に関係していることがあると認識いたします。
 最後に、前回の総会でも議論がございました天皇を元首として憲法に明記すべきか否かの問題につきましては、私個人といたしましては、天皇陛下は、現行憲法下においても対外的に我が国を代表するとともに、日本国及び日本国民統合の象徴としての国家の尊厳を体現しているということを考えますと、やはり元首であるとした方がすっきりするのではないかと思います。
 しかしながら、園部参考人からは、天皇の元首的側面は否定しないものの、国内的には元首というよりはもう少し広いお仕事をなさっておられるのではないかという認識が示された上で、むしろ象徴という基本的なお立場の中で外国に対する代表として、あるいは国内に対するヘッド・オブ・ステートとして活動されるものがあるという理解が必要であって、象徴をやめて元首にしてしまうことにはちょっと抵抗を感じるとの意見がございました。
 以上、天皇の行為について私の見解あるいは小委員会における議論を通じての感想を述べさせていただきましたが、天皇の行為につきましては、具体的な事例を公開の場で議論していくことによって行為の輪郭や実態を明らかにしていくことが必要であり、そうすることによって、象徴天皇にふさわしい行為のあり方、内閣による助言と承認のあり方、皇室経済など天皇制を支える制度のあり方などが定まっていくのではないでしょうか。また、こうした議論をしていく中で、憲法に天皇を元首として明記すべきか否かという問題に対してもおのずと結論が導き出されてくるのではないかと考える次第です。
 以上。

発言情報

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発言者: 平井卓也

speaker_id: 33385

日付: 2003-03-27

院: 衆議院

会議名: 憲法調査会