島田洋一の発言 (憲法調査会)
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○島田洋一君 福井県立大学の島田です。また、北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会、略称救う会の副会長も務めております。
その関係で、ことしの三月上旬に拉致被害者家族会の方々とともにアメリカ・ワシントンを訪れて、アメリカ政府の高官たちあるいは連邦議会の議員たちといろいろ意見交換をし、また拉致問題の早期解決に向けた協力を訴えてきたところです。
その前に、二月にもいわば先遣隊という格好でワシントンに行って、同じく意見交換をしてきたのですけれども、きょう蓮池さんが身内の不幸で急遽欠席ということでもありますので、私が本来予定していたよりも拉致問題と憲法という点により比重を置いて、意見陳述をさせていただきたいと思っています。
アメリカの議員等々と話をしていると、例えば具体的には、今後、国連の安全保障理事会で北朝鮮の核兵器開発に絡んで制裁決議等が当然議論されることになるけれども、その際に、日本政府としては、日本人拉致を含む人権問題も制裁事由に含めるように大いに国際社会に訴えるべきだ、アメリカ政府もそれを最大限バックアップするし、アメリカの議員なんかは、自分たちもアメリカ政府に対してさまざまに影響力を行使するから、ぜひ日本政府は拉致問題を国連の制裁論議の場にはっきり持ち出すべきだといった意見を聞きました。
アメリカ側が日本人の拉致問題に関して大いに国連の場でバックアップしてやろうと言っているのに、日本政府が制裁等で北朝鮮を刺激したくないと及び腰になっているというのでは笑いものになりますから、そのあたり、日本政府においてもしっかり意識を持ってもらわないといけないと思います。
なお、昨年の秋にできましたイラクに対する国連安保理決議一四四一号では、大量破壊兵器の問題に加えて、イラクの人権抑圧というのもはっきりとイラクに対して厳しい対応の理由の一つとして挙げているわけですから、北朝鮮問題で同じく決議が安保理でなされる際、人権に触れないという方がむしろ不自然であると私は思います。
アメリカでは、拉致問題に関する話をしていると、これはもうとんでもない犯罪行為であって、子供を人質にとっているというような状況も許せない、海兵隊を送り込むべきだというような発言をした議員もいますけれども、センド・イン・マリンズ、英語ではそうなります。
別のアメリカ人から聞いた話をもう一つ紹介すれば、もし例えばキューバがフロリダからアメリカ人を拉致したとしたら、アメリカ大統領は即座に米軍に対して軍事的に奪還する計画を立てるように命令を下すだろうと。実際、軍事力を行使するかどうかは別にして、ほかのオプション、経済制裁等で解決するということができれば、それはそれでいいわけですから。ただし、軍事的に奪還するという作戦を直ちに立てろ、それを大統領が軍に対して命令しなければ、その人物は大統領にとどまることはできない、アメリカではそれが常識だという発言を聞きました。
無理やり力ずくで連れ出されてしまった自国民を、必要とあれば力ずくでも奪還するという姿勢、これが、やはり日本の場合、憲法上それはできない云々といった話に遮られてしまうという現状があると思うわけです。
まず第一に、自国民、私の国の国民を拉致したら力ずくでも奪還するぞという姿勢を持っている国に対しては、相手も安易に手を出せません。その意味では、力ずくで奪還するという姿勢を持つことが抑止力として働く、大変重要な第一のポイントであり、また、テロ勢力に対して交渉によって物事を解決するという場合にも、交渉に応じないんだったら力ずくで解決するぞという姿勢があって初めて交渉が成り立つという現実があります。そのあたりのことを例えば今の川口外務大臣あたりは全然わかっていないというか、わかろうともしていないようです。
参考のためにアメリカの事例を言えば、一九九四年、前回の核危機のときに、結局アメリカは、北朝鮮との交渉解決、いわゆる枠組み合意というものをつくりました。アメリカ側の交渉を担当した当時のガルーチ国務次官補が後に証言していますけれども、北朝鮮がこのまま核兵器開発を続けるんだったら、アメリカとしては軍事力行使というオプションも排除しないし、国連において経済制裁決議案を通すという作業を進める、そういう姿勢をアメリカ側が示したから、北朝鮮側も交渉解決に応じてきた、その後の交渉が大変やりやすくなったということを言っております。
日本国憲法の平和主義と言われるもの、またその一般的解釈においては、国際的規模で発生した不正行為を解決するために日本という国が力を用いることが悪であるという発想、強制力によって不正を終わらすのは悪であるという発想があるようですが、これは大変論理的な一貫性も欠きますし、正義という理念と相入れないと思うわけです。
まず第一に、もし日本国内でギャング、やくざがだれかを拉致して、人質にして閉じこもった、それを警察力によって解放するのは、だれが考えても正義、正しいことであるわけですが、その同じような状態が、一歩国境線を越えて、国境線の外へ連れていかれた途端、一切力の行使は考えてはいけない。これはいわば国境線というものに対するカルト信仰と言わざるを得ない。
もう一つ例を挙げれば、例えば、アウシュビッツに閉じ込められているユダヤ人、ただ殺されるのを待っているだけのユダヤ人を、国際的な救出部隊を派遣して武力で解放しようという場合に、いや、日本は平和憲法の国ですから参加できない。これが一体、世界から尊敬される態度かどうか、自明のことだと思います。
さて、拉致というのは、他国の領土に工作員を送り込んでその国の住民を連れ去るというのは明らかに戦争行為であり、さらに言えば、戦時中においても民間人の拉致というのは許されませんから、戦争犯罪行為であります。当然、最低限経済制裁等を打ち出して、厳しく相手に解決を迫る、これは当然のことだと思うわけです。
北朝鮮がいわゆるNPTから脱退した、あるいは平壌宣言を含むさまざまな核に関する国際合意を露骨に破っているという状態に対しても、唯一の被爆国云々ということを世界に対して訴えてきた日本政府としては、やはり経済的な制裁等も含め厳しく対応し、強い意志を示すべきだと思います。
最終的には軍事的オプションもあるぞという姿勢を示すことが交渉解決に当たっても重要だということを言いましたけれども、ブッシュ政権などもそういう姿勢で対応してくる、まずは経済的締めつけでということになると思いますけれども、拉致被害者家族会あるいは支援団体である我々救う会においても、もちろん軍事力行使というのは最後のオプションであると考えております。それは当たり前のことであって、もし軍事力行使ということになれば、民間人にも被害が及ぶ。その一般人の中には拉致被害者だって含まれるかもしれないわけですから。
したがって、よく家族会のことを、特に蓮池透氏などの発言をとらえて、戦争待望論者だというような非難をする左翼系のメディアなんかもありますけれども、とんでもない話であります。家族会の方々としては、もちろん戦争など避けたいわけですけれども、とにかく、北朝鮮が制裁は宣戦布告とみなすと恫喝をかけてくる中で、そこでびびってしまえばもう交渉にならない。やはりむちを用意しない粘り強い交渉などは先送りにすぎないということを経験上思い知らされていますから、したがって、強い態度に出るべきだという主張をしているということであります。
憲法との絡みで言えば、やはり日本としては、例えば北朝鮮が、日本による経済的締めつけに対して、それでは東京を火の海にするぞなどと言って、日本に向けたミサイルに燃料を注入する、そういう事態が起これば、その段階で、撃たれるのを待っているのじゃなくて、敵の、相手方の基地を先制攻撃する。これは自衛の範囲内だということを防衛庁長官も言っているわけですから、政治家がそこまで言った以上、トマホークの購入等々、きちんと実際それができる能力を備えるべきである。
最後に、集団的自衛権は日本もあるけれども行使できない云々といった解釈、これも極めて非常識なものですから、即座に集団的自衛権を行使するという格好にすべきだと思います。
今の状況だと、例えば、戦闘行為の中で、アメリカ兵が飛行機を撃ち落とされて海上に浮いている、それを日本側が助けに行った場合、そこに北朝鮮の飛行機が一機飛んできて、そこが戦闘区域だということになれば、戦闘区域では協力体制が組めないということになっていますから、救出を中断して引き揚げないといけない。こういう解釈が成り立つ憲法というのはいわば敵前逃亡憲法とも言うべきであって、およそ世界から尊敬されるものではないと思います。
憲法九条及び前文、前文の空疎性については山本さんからお話がありましたけれども、九条及び前文は削除するというのが正しい方向ではないか。警察力に関しても個別法規で規制をきちんと規定しているわけですから、安全保障問題についても個別法規で規定して、憲法上どうこうというようなスコラ談義に時間を空費するのはやめるべきである、そのように思っております。
とりあえず以上です。