首藤信彦の発言 (憲法調査会)
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○首藤委員 民主党の首藤信彦です。
私は、憲法と現実世界で起こっている安全保障システムにおける課題について問題を提起したいと思います。
特に最近、イラクへの自衛隊の派遣が論議を呼んでいるわけですが、私個人も、先週、六月二日から六日までイラクに入り、ナジャフ、カルバラの激戦地を見てまいりました。そうした体験から、現実世界で日本の安全保障システムをどのように対応させなければいけないかということに関してコメントさせていただきます。
まず、イラクの現状でありますが、さまざまな援助が必要だと言われているんですが、イラクにとって最大の援助は何かというと、経済制裁の解除であります。
経済制裁の解除が決められた途端に、国境地帯にはもう三千台近い車が集中しまして、地平線までトラックが並んでいるということで、大規模な民需、供給の流れができておりまして、もう既に、必要な物資は大量にイラクの中に入っているということであります。
それからまた、イラクは通常国家でございまして、つい一月二月前、戦争の前までは、通常のまともな社会主義国家でありました。したがって、カンボジアやルワンダや東ティモールのように、もう何もかもが破壊されている、また破綻国家として定義されるような国とは本質的にその体制は違っているということでございます。また、アフガニスタンのように、内戦が長期化し、全面的長期戦争が行われた地域と違いまして、非常に短期で小規模な戦争破壊が現実だということであります。
そこで、やはり重要なことは、今国際社会が言われているような緊急援助ではございませんで、むしろ、経済制裁がもたらした長期疲弊あるいは貧富の地域格差の是正、こうした長期的な取り組みが必要だということであります。
このような状況において、自衛隊であろうがなかろうが、武装集団の唯一のニーズというものは、セキュリティーの確保、その地域の治安維持でございますが、これがまた大変でございまして、日中でももう銃声が絶えることがない、夜においても銃声が絶えることがなく、車の渋滞のときにクラクションのかわりにピストルを撃つ、それをとめるために米兵がまた威嚇射撃をするというような状況の中で、武装した集団の唯一のニーズは治安維持にあるということであります。
さて、自衛隊派遣に関してはいろいろな問題がございます。簡単に「十の疑義」と書かせていただきましたが、まず、憲法的にそんなことがあり得るのか。憲法には自衛隊という言葉は出てこないわけですが、当然のことながら、自然権的な自衛権に基づいてそういう存在があるということは私たちもよく理解しております。
しかし、それが、ここはお国を何千里、何千キロ離れたところで、果たしてどういう根拠に基づいて自衛権が行使できるのか。それ以外の状況であれば、国連が国際の平和のために要求するということがございますが、今回の場合は、御存じのとおり、国連がそれを求めているわけでもございません。
そしてまた、専守防衛の国是、国連中心主義、あるいは今回の戦争の根拠となる国連決議が欠如していること、そうした問題が指摘されなければいけません。
また、現在アメリカが行っているアメリカ単独の行動、連合国との行動でありますが、それも当初のORHA、復興人道中心の小規模な組織から、CPA、すなわち連合国暫定当局と言われるように、明らかに占領行政、直接統治ということが明らかになってきたときに、果たして占領行政に日本がどれだけ加担するのかというのは大きな問題となると思っております。
また、国連の決議が一応出ているわけですが、それは制裁の解除やあるいはその復興への貢献ということを指示しているわけでありまして、今までのPKO派遣にあるように、PKOの部隊を派遣しなさいというようなことを言っている決議ではないということを指摘させていただきます。
そうなりますと、自衛隊をイラクに対して派遣する根拠はほとんどない。
さらに、受け入れ国の要請、承諾もなく、また先ほど言いましたような治安状況の中では、現実的な交戦規定を持たなければ、すなわち、今までのように正当防衛を前提とする交戦規定だけではなく、本当に威嚇のような行動も場合によっては必要となるということで、我が国の自衛隊の行動に関しても、根本的に対応を考えていかなきゃいけないという大きな課題があると思います。
そうした状況において、自衛隊の派遣というものが全く根拠のないもの、非現実的なものであるということを指摘させていただきます。
そして最後に、一番求められることは、やはりイラクにおいて、イラク人によるイラクの立ち上げということであります。
そうした暫定政権をみずからの手でつくり出していこう、あるいは多様性のあるイラクの存在において、宗教や地域的な、民族的な問題を解決するために連邦制をつくっていこうというイラク人の主張というものが、現在のアメリカのブレマーを中心とする暫定政権、暫定当局によって否定されているわけですが、そうした状況をかんがみても、やはり早期にイラク人によるイラクの立ち上げ、そして、そこでどのように自分たちを統治できるのかというところにこそ我が国の貢献は求められるべきものである、そういうふうに考えております。
以上です。