大出彰の発言 (憲法調査会)
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○大出委員 基本的人権の保障に関する調査小委員会における調査の経過及びその概要について御報告申し上げます。
本小委員会は、七月十日に会議を開き、参考人として、北海道大学長中村睦男君及び東京学芸大学教育学部助教授小塩隆士君をお呼びし、社会保障と憲法について御意見を聴取いたしました。
会議における参考人の意見陳述の詳細については小委員会の会議録を参照いただくこととし、その概要を簡潔に申し上げますと、
中村参考人からは、
まず、二十五条一項の生存権規定は、GHQの草案にはなく、衆議院の審議段階で設けられた日本側の創意であること、及び国民の意識の中に定着してきたと言えるのではないかとの見解が示されました。
その上で、学説上、生存権の法的性格については、プログラム規定説、抽象的権利説及び具体的権利説が主張されてきたが、朝日訴訟第一審判決等は抽象的権利説に立っていると考えられること、及び最高裁判決により立法不作為を含む立法行為の違憲性を国家賠償法上争うことが例外的場合に限定して認められているが、近時、生存権以外の事例について、下級審において最高裁の要件の弾力的解釈が試みられ、また生存権の事例でも立法不作為の違憲を争う余地があることが述べられました。
さらに、二十一世紀の社会保障制度の理念として社会連帯は重要であり、社会保障制度の設計に当たっては、当事者たる国民ないし市民の参加と自治、さらには当事者の応分の負担による社会保障と社会福祉の充実がなければならないとの見解が示されました。
小塩参考人からは、
公的年金制度は、老後の最低限度の生活の保障という点で、二十五条を具体化する重要な制度であるが、少子高齢化に伴う財政悪化と世代間格差の拡大という二つの問題を抱えているとの前提のもと、公的年金を基礎年金に限定し、報酬比例部分を廃止するなどして年金制度のスリム化を図る改革が必要ではないかとの提案がなされました。
その上で、この改革を実行するための課題及び解決策として、
一、基礎年金の給付水準については、現行の生活保護支給額や基礎年金給付額を目安とする
二、基礎年金の給付額については、所得水準とは無関係に給付額を一律とする
三、財源の調達については、世代内公平のためにも、保険料を所得と連動させることにより高所得者ほど多くの負担を課すべきであるが、そのための所得の捕捉が困難であれば、次善の策として消費税を充てるという三点が提示されました。
このような参考人の御意見を踏まえて、質疑及び委員間の自由討議が行われ、委員及び参考人の間で活発な意見の交換が行われました。
そこにおいて表明された意見を小委員長として総括するとすれば、
まず、社会保障制度改革の展望として、国民負担率が七〇%を超えるかわりに充実した福祉サービスを受けることができる北欧諸国の社会保障制度について議論が行われましたが、その評価をめぐっては、意見が分かれるところでありました。
また、国家が措置として国民に与える社会保障ではなく、社会連帯の観点から社会保障制度を再構築することの必要性を強調する意見がありました。
一方、社会保障における財政危機の原因の一つとも考えられる少子化問題に関しては、育児を社会全体で支援する仕組みや男女共同参画の推進といった対策によって解決すべきであるとの意見のほか、北欧型社会保障制度が、高負担ながらも制度への信頼を得て少子化問題の解決となっていることから、これを参考にすべきであるとの意見があったほか、家族や家庭の価値を改めて見直すことが必要であるとの意見も見られました。
社会保障制度は国民の生存権を具体化した重要な制度でありますが、少子高齢化の進展による年金財政の悪化や世代間の不公平の拡大が深刻になりつつある今日、国会の役割として、よりよい持続可能な社会保障制度の構築に向けて議論を深め、二十五条の実質的な保障を維持発展させていくことこそ求められております。
その際、二十五条が「健康で文化的な最低限度の生活」を保障している理念を踏まえ、人々が人間らしく生きがいと誇りを持って生きていくために、二十一世紀にふさわしいより高い次元の生存権の理念を議論していくべきであると考える次第であります。
以上、御報告申し上げます。