赤松正雄の発言 (憲法調査会)

⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。 詳細は利用規約をご確認ください。

○赤松(正)委員 公明党の赤松正雄でございます。
 今、お二人の委員から、この国会における憲法調査会についての論議に対する感想を主軸にしたお話がありました。私の方からは、ちょっと角度を変えまして、この国会が終了されるに当たりまして、ここでの憲法論議に参画する委員は数が限られているわけですけれども、そうした憲法調査会以外の場面、つまり、私の党内の公明党におけるこの憲法をめぐる考え方についての現状を概括して述べさせていただきたいと思います。
 公明党は、御承知いただいているかと思いますが、平成十二年の党大会で、憲法九条は堅持し、国民主権主義、恒久平和主義、基本的人権の保障の三原則は不変のものと確認した上で、衆参両院での憲法調査会での五年をめどにした論議の結果を踏まえ、次の五年で第一段階としての結論を出すべきであるとの考え方を明らかにいたしました。
 それを踏まえて、昨年、平成十四年には、今申し上げたようなそういった形を踏まえた上で、憲法のあり方について議論することを避けない論憲の立場をとる。その上で、国会の憲法調査会を初めとして活発な憲法論議が行われていく中で、現行憲法の制定時には想定されなかった視点での権利や考え方、システムの必要性が生じている今日、憲法の三原則や九条は変えることなく、憲法の精神を発展、強化させながら、環境権やプライバシー権などを憲法に明記して補強する、あえて言えば加憲を検討する時期が来ているのではないかと考えます。現在国会で行われている憲法調査会の議論の行方を見詰めながら、党内の意見を集約したいと考えますとしました。
 つまり、この憲法調査会が改定の必要ありとの結論を出せば、各政党、各界の合意の得られやすいところから改定に取り組むべきであって、まずは新しい時代に対応すべきものをつけ加えていこうという考えだと集約できるかと思います。合意が得られないテーマについては後回しにし、とりあえず一致するものから改めていこうという点で党内は一致しておると言えると思います。そういう意味では、改定を前提にした論憲を現在行っている、そういった状況であろうかと思います。
 さきに述べましたように、公明党は、憲法九条につきましては、いわゆる明文改定をしないで、削減も追加もなく堅持すべきだとの方針を明らかにしております。もちろん、党内には、この条項について、今申し上げたように一切さわるべきではないという意見と、やはり、変化し行く現実に対応するべく自衛のための力を持つことについてなどは、きっちりとわかりやすく規定し直すべきだとの主張に至るまで、多様なものがあります。しかし、現時点では、最終的にそのままにしておくとの意見が支配的であります。
 その背景の一つには、憲法九条をめぐっては、国民世論そのものの分布に極めて大きな相違がある、相違があり過ぎるという認識がまず前提にあります。戦争放棄、戦力不保持という、言ってみれば理想と自衛隊の現実というものをどうとらえるかというのは、戦後日本の政治史そのものと言っていいぐらい極めて厳しい論争を呼んでまいりましたけれども、理想部分を取り下げるには極めて抵抗が強過ぎるという見方が支配的だと言えようかと思います。
 公明党自身も、かつては自衛隊を違憲の疑いある存在として位置づけてきました。しかし、今から二十年前の昭和五十六年の党大会で、自衛隊を合憲の存在と認めると方針を転換しました。そこには、九条が自衛権までをも否定するものではないとの明確な解釈に立つとともに、自衛隊の存在を、日本の領域保全に徹して、水際で敵を排除するための自衛の能力を持つものに限定するとの強い意思が裏づけとしてあったわけであります。今もその姿勢に変化はございません。
 もちろん、自衛力の保持そのものを認めていないとする解釈すら生み出しかねない規定であること、すなわち理想と現実の大きなギャップ自体が、日本のある種混乱の要因になっていることは否定できません。このため、せめて文章を整とんすべきだとの意見があるということは、先ほど述べたとおりであります。ただ、であるがゆえに、今これをさわることによって、日本が長年培ってきた専守防御の姿勢に変化がもたらされるのではないかといった、周辺諸国に余計な誤解を与えることになるとの懸念を持つ向きが極めて強いわけであります。
 一方、国連の集団安全保障への取り組みをどうするかという課題や、あの九・一一以降の国際テロに対する対応をめぐる問題も、一段と重要なテーマとなってきております。
 PKO、国連平和維持活動については、積極的に参加すべしとの国民合意は十分に得られていると私たちはとらえております。さらに、国連安保理の何らかの決議の上に立っての紛争後の該当地域の後方支援にも、非軍事部門に限ってなら自衛隊が出動されるべきであるとの考えをとっております。これを専守防衛、防御の領域を踏み出すものととらえるのは間違っていると考えます。あくまで、国際協力のための海外での自衛隊の非軍事部門の活動は合憲であり、武力行使につながるという見方はとるべきではないと考えております。
 ともあれ、国連軍が現実性を帯びていない状況では、多国籍軍の結成が常態となっており、それへの参加はあくまで非軍事的手段によるべしとの姿勢を崩してはならないとの立場であります。
 そういった意味では、みずからを守る力としての自衛力及び国際社会における秩序維持をもたらす力の二つともに、現状の規定を改める必要性は積極的には認められないというのが、現時点における公明党の考え方であります。
 なお、私個人といたしましては、いささかこういった考えとは違うところを持っております。
 例えば、いわゆる自衛隊の役割を考えた場合に、実力部隊としての自衛隊という部分はあくまで専守防御ということでありますが、いわゆる人道支援という観点から、これは内における人道支援、災害救助、日本国内における人道支援と、外における人道支援を分けてとらえる必要性があろうかと思います。
 そういった場合に、日本国内における災害救助という名のもとにおける人道支援はともかくとして、外、海外における人道支援活動については、極めて、今、こういった活動をすること自体に専守防御、防衛の領域を超えているという批判があるということにかんがみて、何らかの明文化をする必要があるのではないか、そういったこと。先ほど来申し上げておりますような、さまざまな武力行使とのつながりといったことで危険性を指摘する向きがあるについて、しっかりと規定をする必要があるのではないかと考えております。
 現状、先ほど申し上げましたような、憲法の九条の堅持をしていくという観点に立つならば、せめて安全保障基本法というふうな形で、いわゆる憲法を下支えしていく、憲法を展開していく場面における国民合意を得るためにも、そうした安全保障基本法的なるものをつくる必要があるのではないかというふうに個人的には考えております。
 九条を堅持した上で、時代の間尺に合わないものは、合意が得られるなら改正しようという姿勢からすると、象徴天皇制の部分を除いて、あらゆるものが議論の対象となってまいります。公明党におきましても今その議論の真っ最中であるという前提で、時間のある限り、その方向性について若干触れておきたいと思います。
 まず、現行憲法が制定された時点では十分に予測されていなかったのが、環境権、知る権利、プライバシー権といった新しい権利と言われるものであります。これらは、現在、すべて十三条の幸福追求権の中に入れてとらえられておりますが、やはりそれには限界があるのではないかとの見方が一般的であります。
 ただ、環境権についても、盛り込むに当たっては、種々意見が分かれてくるものと見られます。人間の住環境を侵すものとしてのかつての公害から、今では、地球に生きとし生けるものを脅かす地球破壊へと、環境をめぐる問題も変化してまいっております。そこでは、人間中心の環境保護か、生態系中心の環境保護かといった議論があります。また、このテーマでは、請求権が生じる権利として扱うべきではなく、理念規定に位置づけることでよいとの意見も出されております。
 基本的人権をめぐる条項については、世界的な兆候として、極めて多様化の傾向にあることは周知のとおりであります。外国人の権利保護から始まって、心身障害者の保護などに至るまで、積極的に憲法に書き込むべきだとの意見が我が党にもあるということを指摘しておきたいと思います。
 とりあえず、以上でございます。

発言情報

speech_id: 115604184X00920030724_015

発言者: 赤松正雄

speaker_id: 4375

日付: 2003-07-24

院: 衆議院

会議名: 憲法調査会