森本敏の発言 (憲法調査会安全保障及び国際協力等に関する調査小委員会)

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○森本参考人 御質問のうち三点について簡単に私の所見を申し述べたいと思います。
 その第一に、いわゆる国連決議に基づく我が国の貢献について基本的な仕組みをつくるべきであるという問題提起は全く同感でありますけれども、そのためにどうすればよいのかということについては、そもそも日本の法解釈は憲法と国際法について憲法優先という考え方に立っておりますので、国際約束に基づいて何らかの約束事あるいは条約もしくは協定を我が国が締結した、あるいは国連決議が仮にあったとしても、日本国憲法の枠の中でしかできない。裏返して言うと、日本国憲法というものがすべての行動規範の基準として優先されるという考え方に立って、今まで現実の行動もしくは政策ができてきたのではないかと考えます。
 他方、我が国の戦後の安全保障、外交防衛政策というのは、基本的に、我が国の国益を追求するためにいかなる行動をとり、いかなる政策を進めるべきかということよりも、憲法の枠の中で何ができるかという選択肢を単に取り上げるという方法で政策が進められ、議論してきたと思います。つまり、本来国としてどうあるべきかということをオプションとして挙げるのより、憲法の枠の中で何ができるかというオプションを挙げて、その中からどれかを選ぶという政策議論しかしていなかったんだろうと思います。
 その場合、政策を担保する国内法がない場合は、先生御指摘のように、場当たり式ということではありませんが、その都度国内法を整備してずっと対応してきたんだろうと思います。
 これは、英米のような実体法の国とは相当違って、ありていに言えば、英米は、政治決定者が国家の意思を決断して、そして国益を追求するためにあることを行い、それが法的にどういう立場に立つかについてはそれぞれの国の議会が法則面から審議をすればよいという話であって、まず決心が先にありきという考え方なんですが、我が国の法体系はあくまで法律上の根拠がないことはできない。したがって、何かをやるために法律上の根拠を新たにつくるためには法整備をするという、その都度その都度、事態が起こるたびに、法整備をどうすればよいのかということで政策の議論をしてきたんだろうと思います。
 その日本が実定法を持っておる英米と同盟関係を結んできたということも、これまた非常に歴史の皮肉だろうと思います。私は、そのことが同盟関係をしばしば難しくしてきたんだろうと思います。例えば、今まであった日米同盟の危機というのは、すべて日本が同盟関係を進めるために国内法を整備できるかできないかという瀬戸際に立ったときに必ず同盟が危機に瀕しているということで、これは国が持っておる法体系というものに深くかかわりがあるんだろうと思います。
 先生御指摘のように、したがって、国連決議があって、それを実行するために日本がどのような仕組みをつくるかということについては、最も望ましいのは、憲法の中に国として国際協力の面については国連決議に基づく国際協力を積極的に進めるという根拠条文が設けられて、それに基づいて個々の国際約束に基づく我が国の政策ができるというのであれば非常によいわけですが、そのような条文がないわけですから、あくまで憲法の枠の中で何ができるかというオプションが選択される、あるいは選択をするということでずっと政策が続いてきたんだろうと思います。
 つまりこの問題は、したがって、憲法上の規定がまずあるということが必要で、憲法の規定がもしないのであれば、先ほど私が申し上げたように、日本の憲法の枠の中であらゆる事態に対応する基本法というものを設け、その基本法の中に、例えば国連安保理決議に基づく具体的な国際協力については国連決議に基づいて、例えば国連事務総長の要請があれば日本国として憲法の枠の中で必要な協力を進めるという、基本法の中に一項設け、それに基づいて、有事の場合は有事法、緊急事態の場合は緊急事態法というものを、基本法に基づいて個々の対応を法律の中に決めて、その都度その都度、事態が起こるたびに新たな法律をつくらないで済むように対応するという方法しかないのではないかというふうに思います。
 第二の問題については、これは国民の権利義務、つまり国民のいわゆる権利、基本的人権などを保護するために緊急事態における法制とどのように調和を図るかということについては大変難しい問題なんですが、私は基本的に、有事法制を含む緊急事態、広い意味での非常事態法の中で、国民の自由とかあるいは権利を拘束する範囲とは、あくまで国民の安全を守るということに直接、間接的に寄与するという限りにおいて、国民の権利とかあるいは自由とかというものを抑制したり規制したりすることができるということだろうと思います。
 したがって、私は、有事法制において国民の権利を保護するのは、まさに国民の安全のために保護するのであって、国民を規制したり行動を抑制したりするのではなく、それがひいては国民の安全につながり、自由を守るということになるという限りにおいて、その事態に際して、やむを得ざる場合、ある限られた時間、ある限られた場所、ある限られた条件下において国民の権利あるいは自由が規制もしくは禁止されるということにとどめられるべきである、こういう説明にして法律が整備されるべきであると思います。
 最後の……

発言情報

speech_id: 115604185X00120030206_009

発言者: 森本敏

speaker_id: 34495

日付: 2003-02-06

院: 衆議院

会議名: 憲法調査会安全保障及び国際協力等に関する調査小委員会