井上喜一の発言 (憲法調査会統治機構のあり方に関する調査小委員会)

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○井上(喜)小委員 保守新党の井上喜一でございます。
 きょうは、国会と内閣との関係、国民主権と政治の基本機構のあり方全般についての問題の提起をしろということでございまして、いろいろなまとめ方があると思うのでありますけれども、私は、現行憲法あるいは関連の法律、そしてそれらの運用、こういうことにつきまして、私が日ごろ考えておりますことを取りまとめたということでございまして、いろいろな御意見があろうかと思いますので、また皆さん方の御意見もお伺いしたいと思います。
 まず最初に、制度の運用と改正についての検討の視点でありますけれども、日本の今の憲法制定後五十年以上がたっておりますので、この間、憲法が定着した面もありますし、問題が出てきたというような面も多々あると思います。
 言いかえてみれば、社会構造あるいは産業構造、非常に大きな変化が生まれてきておりますし、社会、経済ともにグローバル化の大きな波の中に現在あると言ってもいいかと思います。安全保障体制につきましても、米ソの対立が崩れて、今日のような状況になってきております。また、日本の国際社会の中での地位の向上、これも明らかにあったと思うのでありますけれども、それだけに国際社会に対して責任が出てきている、こんなふうに思います。国民の意識の変化も、個についての意識というのは非常に強くなってきていると思います。
 そういったことで、あらゆる分野におきまして、制度的な大改革を、時間を置かずに改革をしていく、迅速に実施をしていく、こういう状況だと思います。
 統治機構としては、私は、二院制のような、憲法上の問題もありますけれども、体系的には一応国民主権を基本にした制度ができ上がっていると考えておりまして、問題はむしろその制度の運用にある、こういうように認識しているものでございます。
 次に、議院内閣制であります。
 これは、内閣よりも本来は議会の、国会の方を議論に回すべきでありますけれども、一応、議院内閣制ということを言いますので、内閣を持ってまいりました。
 今は、内閣機能を強化しろ、こういう要請が非常に強いものがございますが、これは内政、外政ともにいろいろな問題が出てきておりまして、要するに、抜本的な、機動的な改革、対応が必要だということだと思いますし、まずもって、やはり責任の所在を明確化して、どの問題をどういうぐあいに変えていくのかということを明らかにしないといけないと思います。
 そういう意味では、官僚主導から政治主導へということが言われるのでありますが、まだ日本は完全にこの政治主導というところに来ていると思いませんけれども、しかし、この五十年の歴史を見ましても、いわゆる官僚が果たしてきた役割というのがだんだん小さくなってきて、政治が果たす役割が非常に大きくなってきていると思いますし、今そういった過程にあると考えてよろしいんじゃないかと私は思います。
 そういったことで、内閣総理大臣がより強いリーダーシップを発揮していくことが必要でございます。憲法上は大変強い権限ですね。これは前の旧憲法と比較してみますとはっきりするのでありますけれども、閣僚の任免権あるいは内閣各部に対する指揮監督権、非常に強いものがございます。
 ただ、問題は、我が国は、ややもすれば権力の二元化という傾向があるわけですね。これは、長く政権の座に着きました自由民主党に派閥があるというようなことも関係していると私は思うのであります。その派閥と総理大臣の関係あるいは全体等々の関係ということで、必ずしも権力が一元化しないんですね。今は政府・与党でありますから一元化しないといけないんだけれども、まだこれが二元化するような傾向、あるいは三元化するような、多元化するような傾向があるということで、これはこれから問題として解決していかないといけない課題だと思います。
 首相公選制の議論がありますけれども、私は、これは非常に問題が多いと思います。だれが選ばれるかわからない、あるいは立法府、国会との関係、大変調整が難しくなるんじゃないかと思いますので、これは時期尚早だと思います。
 それから次に、ポリティカルアポインティーですね。アメリカなんかの場合は、三千人ぐらいのポリティカルアポインティーがいると言われておりますが、日本もだんだんとこういう方に移行してくると思うんですね。
 今までこういう政府の中の人材というのは行政府が随分輩出してきたのでありますけれども、今や行政府だけではなしに、行政府以外でそういった適任者が出てきているということでありますので、今の内閣にも大学の先生が若干入るというようなことで、これはだんだんと多くしていかないといけないことだと思います。
 それから次に、議会機能の強化であります。まさにこれが一番大事なことでありまして、内閣の機能だけ強化をしておくということはやはりよくないので、対応して議会の機能も強化をしていかないといけないということで、この議会の方も、五十年来の傾向を見ますと、だんだん議会の機能が強化されてきている、こんなふうに思いますし、そういった傾向をさらに強めていかないといけないということであります。
 制度的には、内閣総理大臣は国会で選ばれますし、衆議院で内閣の不信任決議なんかもできるわけでありますし、内閣は国会に連帯して責任を負うということとか、あるいは議院が国政調査権を持つというようなことで、完全に内閣は国会のコントロール下にある、制度的には私はそうなっていると思います。
 人事院なんかの行政委員会があるんですが、これは内閣から一応独立しておりまして、内閣総理大臣の守備範囲に入っていないのでありますが、国会のコントロール下にはあるわけですよね。そういうようなことで、国会は非常に強い国政上の権限を持つということであります。
 ただ、内閣にも衆議院の解散権を持たせているわけですね。いわゆる七条解散というのがそうでありまして、これは多少歴史的なことと関係するかと思うのでありますが、行政府と立法府とのバランスをとらせているということであります。いろいろな議論があるかもしれませんけれども、これも一つの賢明なやり方じゃないかと私は思います。
 内閣は、連帯をして国会に責任を負うということでありますが、議会も、かつての議会と違ってまいりまして、与党、野党に分かれておりまして、与党の方は政府と一体ということで政府の政策を支持、推進する、野党はこれをチェックするような機能に変わってきていると思います。
 それから、議会の機能強化のために検討すべき事項が幾つかあります。
 私は、本会議で法案の趣旨説明とか質疑がありますが、これはやはり原則的に廃止をして、委員会審議を充実すべきじゃないかと思うんです。出席者を見ますと、そう大多数の人が出席しているように思わないし、また長い質問の場合は、大体質問が重なっているわけですよね。同じような質問をしているということでありまして、これを長時間本当にみんなが聞いているかといったら、この点についても若干の疑問があるということでありまして、私はそんなふうに考えます。
 それから、衆参両院の調査室、法制局、これは膨大な人がいるわけですよね。本当に多い。これを二つに分けるんじゃなしに、このスタッフを一体化してやった方がより効率的になると思います。もう事務量が両院で違ったりするわけでありますからね。本当にこれは国会議員のために活用すれば、もっともっとうまく効率化が図れるんじゃないか、こんなふうに思います。
 今よく審議拒否だとかそれに対する強行採決、これはまだあるのでありますけれども、これなんかも、やはり委員会審議を充実していけば、だんだんとこれは克服していくべき問題じゃないか、こんなふうに思います。
 審議での大臣答弁、これは昔と比べますと、確かに閣僚が答弁をするようになってきた。それだけ閣僚が自分の所管事項について勉強もする、理解も深まってくる、それで問題意識も出てきている、こんなふうに思いますけれども、副大臣、大臣政務官なんかはどうなんだろうかな、こんなふうに思います。
 クエスチョンタイムも、今は総理と野党党首でやっておりますけれども、本当にこういう形でいいのかどうか、もう少し検討の余地があるんじゃないかということであります。
 それから、議会機能の強化のためには、行政監視の中核的な役割を担っております決算行政監視委員会がありますが、あるいは予備的調査制度も、これは新設されたわけでありまして、こういった活用をしていく必要があると思います。
 それから、与党の法律案の事前審査制でありますが、これは私は、やはり政府・与党一体化の原則から、置いておいた方がよろしいんじゃないか、こんなふうに思います。
 三番目、政党であります。
 政党の存在は絶対必要でありますし、民意を政治に反映していく役割というものでありますから、大変重要で大きいわけであります。私は、憲法上にこの政党を位置づけるべきと思っております。やはり、政党に対する支援を考えていくべきだと思います。
 ただ、結社の自由の侵害の可能性もあるんじゃないかというような指摘もあるようでありますが、そういうことのないような形で、やはり政党とはいかなるものか、どういうことをすべきかというようなことを明確にして、必要な支援をしていくということがよろしいんじゃないかと思います。
 私は、日本はまだ政党のシンクタンクができていないと思うのでありますけれども、こういったものも置く必要があると思いますし、国としても当然考えていくべきことじゃないのかなというような感じがいたします。
 それから、二院制の問題であります。
 議院内閣制というのは、原則として衆議院の多数党の党首が内閣総理大臣に指名されるわけでありますから、その党の政策を実行していくということでありますから、衆議院の政党化は御案内のとおりであります。
 しかし、参議院が、これは衆議院に対して権限上は多少制約はあるのでありますけれども、予算あるいは条約、それから内閣総理大臣の指名等については衆議院優位になっておりますけれども、肝心の、根幹をなす法律については、これは参議院の同意なしには成立しないということでありまして、そういう意味では、参議院というのは非常に強い権限を持っていると思います。
 したがいまして、私は、こういった枠組みの中では、参議院におきましても衆議院と同じような政党化が進むことは必然だ、こんなふうに思っております。
 二院制をどうしてとっているのかということでありますが、二院制をとることによって国会の審議が慎重にできるんだというような説明がされておりますが、しかし、現実はどうなのかということです。私は、カーボンコピーなんということは言いませんが、どうもやはりそういう、審議を慎重にして参議院なりの成果が上がっているようなことは、それはあるでしょうけれども、比較的少ないのではないかと思います。しかも、政党化が非常に今進んでおりますね。選挙の制度も、私は衆参そんなに根本的な差異があるとも思いません。あるいは、外国の連邦制のように二院制をとる、そういう理由があるようにも思わない、こういうことであります。
 理論的に言いますと、一院制、二院制でそれぞれ理屈はあるんでしょうが、私は、現実に衆参の構成が違ったり、あるいは議決が違うというようなときには、やはりプラスよりもマイナスの方が大きい、つまり、無用の混乱が起こる可能性があるんじゃないかということでありまして、結論としては、衆議院の一院制の方がおおむねよいと言えるのではないかと思います。
 参議院をどうしても設置しないといけないというときには、成立した法律等の運用に当たっての意見を述べるというような諮問機関として置くのがいいんじゃないか、その場合は、例えば職能代表の人なんかを充てていくというのがよろしいんじゃないかなと思います。
 それから、選挙であります。
 選挙は民意を集約する機能と民意を鏡のように反映する機能をあわせ持つと言われているのです。ただ、今日のような大変動、大激動、大改革の時代にありましては、やはり政権交代が活発な、そういう政治制度の方が私はよろしいんじゃないか、必要じゃないかと思います。なかんずく、議院内閣制を活性化していくためには、選挙の結果、二つか三つの大政党が出てくるというような制度がいいんじゃないかと思います。
 現行の小選挙区制は所期の目的からいってどうなのかということは、まだ結論を出すのは早いんじゃないかと思うのでありますが、しかし、本来的には、制度がうまく機能すれば、二大政党化の方向を志向するのではないかと考えております。政権を競う政党が切磋琢磨をするというような単純小選挙区制度、こういったものを考えていった方がよろしいのではないかなと思います。
 それから、あわせて、やはり一票の格差、この是正は必要だと思います。
 それから、違憲立法審査権と国会であります。
 国会は国権の最高機関で唯一の立法機関だと言っているんですが、最高裁は一切の法律等についての違憲立法審査権を持つ、こういうことを言っております。私は、この前にも申し上げましたが、いわゆる統治行為については、最高裁の判断にまつのは必ずしも適切ではない場合がある、そういったことで、国内政治が国際関係に大きな関連を持つものもあります。いわゆる統治行為につきましては、国会に憲法裁判所を設置をして、この所管とするのがより適切じゃないかと考えるものであります。
 それから議決方法でありますけれども、衆議院と参議院では、特定事項において、単純多数決ではなしに三分の二等の特別の議決を要するということをしているわけですね。予算あるいは条約とか総理大臣の指名につきまして両院の決議の中身が違う、こういうような場合であります。私は、こういうのはやはり廃止をして、そういうような場合には、例えば両院が協議をして調整をするとして、これが調わないときはやはり再度の衆議院の多数決で決めるようにする方がよりスムーズじゃないのかと思います。
 憲法の改正手続につきましては、これは国民投票制度がありますから、発議は両院の、または衆議院の多数決によるものとすることなどを検討すべきじゃないのかな、こんなふうに思います。
 それから最後に、危機管理についてでありますけれども、これは内閣制度の運用で対応するというようなことに今はなっているのでありますけれども、私は、これはやはり憲法上、内閣に危機管理を所管する組織、権限等について、明確にした方がよろしいのではないか、こんなことを思っている次第であります。
 以上であります。(拍手)

発言情報

speech_id: 115604192X00520030710_007

発言者: 井上喜一

speaker_id: 2023

日付: 2003-07-10

院: 衆議院

会議名: 憲法調査会統治機構のあり方に関する調査小委員会