浜谷英博の発言 (武力攻撃事態への対処に関する特別委員会)
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○浜谷参考人 発言の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。時間も限られておりますので、早速本論に入らせていただきたいと思います。
一般に、独立国家と申しますのは、国の主権というもの、それから国民の安全確保ということを目指しまして平和的外交手段を駆使するわけでありますが、それと同時に、不測の事態に対しても対応可能なような体制を平素から備えておくということは、これは崇高な使命でもあります。その意味で、我が国も、自国を取り巻く安全保障環境というものに配慮しながら、法治国家としての万全の体制を整えておくということは必要であろうと思われます。
しかし、我が国のこれまでの安全保障政策というのは、特異な制定経過を持っている憲法の中に自衛権の規定がないであるとか、参議院の緊急集会条項を除けば緊急事態条項がないであるとか、そういうもろもろのことを理由にして、針の穴を通すような憲法解釈というものを積み重ねて現在まで来たということは、非常に憂うべきことだというふうに考えております。有事法制が喫緊の課題というふうに言われつつ未整備のまま今日まで放置されてきたということは、その一環であろうと思われます。
もとより、自衛権の規定のなさというものが自衛措置を一切行えないということにはつながらないわけであります。自衛権はまさに国家の属性なのでありますから、そういうことはあり得ない。いわゆる憲法の欠陥部分、まさしく憲法のいわゆる空白部分というものを補てんする意味で、国家安全保障政策についての原理原則というものを確立する、制定するということで、基本法を定めるという基本法構想というのはそれなりに意味があるものであるというふうに考えております。
そもそも、緊急事態対処法制というのは、国家や国民の安全に対して、いかなる法的根拠によっていかなる手段をとり得るか、またいかなる目的でいかなる方策をとるべきかということを平素から考慮して、その手続を策定しておくということにほかならないわけであります。
つまり、有事関連法一般というのは、国家の独立確保、それから国民の保護を目的とした安全保障政策上の手続法なわけでありまして、シビリアンコントロールのツールであります。いわゆる手段というか、工具というか、道具であります。これは、民主国家であり、また法治国家であるがゆえの法体制でありまして、もとより、一人の意思がすべてであるというような独裁国家などでは論議の対象にすらならないということであります。
その際、法案に盛り込むべき柱というのは二つあると思われます。
一方の目的は、いわゆる軍事的合理性の追求による不法な勢力の排除ということであります。つまり、自衛隊を初めとする国の組織それから機能、この総力を挙げて対処すべきことはもちろんでありますが、米軍との防衛協力体制を整え、さらに国と地方自治体の役割を分担、調整し、さらに国際法の原則を遵守するということがあわせてとられなければいけない方策であろうと思われます。この点は、国家の自衛権に基づく具体的な実力行使というものを伴うものであるだけに、その実効性を担保する上で、集団的自衛権の解釈と安全保障措置の原理原則というものもそろそろ再検討を行うべきときに来ているのではないかというふうに思われます。
いま一方の柱は、国民の保護法制であります。有事における国民の保護のために、国と地方自治体がおのおのの役割に基づいて相互に協力するということは不可欠な法案の内容であります。
具体的には、危険度に応じた警報の発令、地域住民の避難、被災者の救助や治療、さらには、消防活動を初めとして、施設や各種整備など社会的インフラの復旧、さらに保健衛生の確保とか治安の維持等々、国民生活一般や経済の安定化策に関するものまで含めて法的な整備が必要であろうと思われます。
これら国民保護の観点からは、二つの例外措置というのも必要であろうと思われます。
一つは、有事対処の権限行使に関する手続的例外というものであります。
緊急な時間的制約のもとでは、首相の緊急事態宣言によって通常の手続の省略、それから首相や地方自治体の首長さんへの一時的な権力集中など、いわゆる迅速な対応ということに配慮した被害の局限化というのが最優先の課題になるだろうと思われます。これら緊急権限の行使に対しては、国会など他の機関による強制的な終了措置、いわゆるチェック手段であるとか、緊急事態終了後の使われた権限に対する司法的な評価、要するに裁判所のチェックとか、さらには強制措置を伴う損害に対する正当な補償というものも当然不可欠な要素であります。
首相の緊急事態宣言については、現在有効であります災害対策基本法や警察法というものにも緊急事態の布告規定というものがありますし、それらの法律には、国会の議決によってその布告自体を強制的に廃止できるという規定も既に制定されております。
いま一つの例外措置というのは、憲法で保障された国民の権利に対する制約であります。
緊急事態対処措置の性質上、多数の国民の安全確保という観点からは、一部の国民の私有財産、それから行動の自由といったものが制限される場合が想定されるわけであります。これら平和と安定を回復するための犠牲というのは、そもそも必要最小限にとどめるべきであるということは当然でありますし、それから、過剰な制約に対する歯どめというものも規定しておくことは重要であろうと思われます。
その際、具体的な権利というものを明記するということについては、一面わかりやすい面もありますが、しかし、該当しない諸権利を逆に拡大させるということにもなりかねないという側面もありまして、ここは概括的規定による柔軟性の確保ということも配慮しておく必要があろうかというふうに思います。
最後に、提案されている諸法案に関連して、シビリアンコントロールの観点から国会関与という問題について主に取り上げまして、ほかに若干の点を指摘して議論の参考に供したいと思います。
まず、その国会関与でありますが、これは私のかねてからの持論でありますが、キーワードとしては、いわゆる有効期限つき国会承認制と、もう一つは国会拒否権というものであります。
国会承認に関しては、いつの国会も、聞いておりますと、事前か事後かの議論が非常に盛んでありますが、これは、私に言わせますと、ほとんど不毛な議論であります。すなわち、実態的には、これは、国会尊重の建前からは原則事前承認、緊急時には事後承認、この結論以外には初めからあり得ないわけであります。時々刻々と変化する事態の推移にあっては、不足しがちで、かつ錯綜する情報のもとで事前承認を与えるなどということは政府に対する白紙委任的効果さえ生んで、逆に危険でもあるというふうに思われます。
国会は、多数の情報に基づく議論によっていわゆる真実へのアクセスを可能にする、こういう場なのでありまして、即断を求められる政府判断とは意味も性質も異なるわけであります。したがって、事前、事後、いずれの国会承認であっても、それには有効期限を設ける。例えば、アメリカの戦争権限法などに倣いますと六十日間ですが、有効期限を設けて、承認効果の継続のためには有効期限の満了前に更新に対する手続をとる、すなわち更新に対する事前承認という制度を設ける方が、これは効果的であろうと思われます。国家の実力集団の行動には常に国民のシビリアンコントロールがかけられている、こういう事実が法治国家の基本的な要請でありますし、また民主制の基盤だからであります。
同時に、更新を求める政府に対し、できる限りの情報開示を求めることによって国会が情報空白から脱するということも可能になる、副次的に可能になると思われますし、事態が泥沼化したときに、国会決議によってその泥沼から転換するということにも方法としては使えるだろうというふうに考えております。
加えて、有効期限内にはいかなる時点でもその承認効果を取り消すことのできる国会拒否権条項というものを創設することも有効だろうと思われます。
議院内閣制のもとでの後の承認取り消しというのは、通常は賛成に回った与党議員の同意も必要だということだけに、よほどの事態の急展開や事実の誤認、さらには、もろもろの前提や条件の重大な変更というようなものがある場合にこれは限られるわけでありまして、乱用というのは考えられないというふうに思います。アメリカの制度については、私は、大統領制のもとではこの議会拒否権は違憲の主張に立っておりますが、日本の議院内閣制のもとではこれは有効に機能するというふうに考えております。
第二は、あとは簡単に申し上げますが、武力攻撃事態の定義に関してであります。
一般的に、法律における概念定義というのは、これは、私も法学者の端くれである以上、非常に重要だということは理解しております。しかし、緊急事態関連法制というのは、そもそも本来予測不能な事態への対処法なのでありまして、詳細に規定すればするほど対象外の例外を多くするというようなジレンマがあります。したがって、そのことによって準備対応のおくれを招きかねないということは十分配慮する必要がある。ここは厳格な中にも柔軟性を失ってはならないわけでありまして、法の硬直化を防ぐ意味でいろいろな配慮が必要だろうと思われます。
最後は、対処基本方針案の策定についてであります。
緊急事態発生という時間的制約の中では、その中で作成をするということは、これは事実上不可能であります。そうである以上は、平時から緊急事態の程度に多段階で対応させた方針案というものがあらかじめ策定されていなければ、これは対応が不可能であります。同時に、緊急事態時の閣議決定についても、平時から指名されている数名の特定閣僚の合意に代替させること等々が検討されていいのではないかと思われます。
そもそも、有事関連法の適用というのは、国家の存亡と国民の生死をかけた、いわば一度限りのものであります。そういう意味では失敗は許されないわけでありまして、実効性への疑義というのは完全に払拭されていなければならないというふうに考えます。
いずれにせよ、不法な実力による国家国民への侵害行為に対しては、国際法を遵守しながら、国内法を根拠とした毅然とした姿勢を対外的に表明する、このことと国家の安全と国民の保護という、いわば国益の追求と国際社会との協調というものを内外に示す上で、緊急事態法制の整備というのは急務かつ重要であると思われます。
与野党の合意に基づく法整備というものを強く求めたいというふうに思いますし、対案の提出ということでありますが、対案の提出というものが、いわゆる拒否することのハードルにだけ使われることのくれぐれもないようにお願いして、意見を終わりたいと思います。
ありがとうございました。(拍手)