保坂展人の発言 (本会議)
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○保坂展人君 社民党・市民連合の保坂展人です。
私は、内閣提出、個人情報保護関連五法案に反対、野党共同提案の四法案に賛成の討論を行います。(拍手)
戦後初めて報道の定義を法律に書き込んだのが、小泉内閣の提出した、民間を対象とした今回の法案です。戦前は、御存じのように、徹底した言論統制が行われ、当時の新聞紙法の定義は、題号をもって定期的に発行するものでありました。ところが、今回の法案の「不特定かつ多数の者に対して客観的事実を事実として知らせること」という定義は、著しく不明確で狭い。
政府は、たびたび、最高裁判決に照らして報道を定義したと説明してきましたが、私が特別委員会の審議でいつ何どきの判決なのか明らかにするよう求めたところ、昭和四十四年の最高裁判決として、労働組合の機関紙に掲載された記事が公選法違反に当たるのかどうかを争った事件の決定を答弁者は読み上げました。
驚くべきは、政府は、原則として公判を開き、公判廷で申し渡す判決と、書面審理のみで下される決定の違いすらも認識せずに、大胆にも報道を定義したのであります。我々が政府の意図を読み解こうと、幾ら報道の自由を争った最高裁判決を探しても探してもこの定義が出てこないのは、当然でありました。
しかも、政府が例示した最高裁決定には、「不特定かつ多数の」という文言は一つも出てこないのであります。わずか五百四十人の組合員に配付した労働組合の機関紙、これは特定多数であって、政府の報道の定義からもはみ出してしまいます。あえて政府が参考にしようとしているのであれば、労働組合の機関紙で報道だと主張しても最後は有罪ですよというように参考にしたとしか思えないのであります。
さらに、細田大臣は、これは単純な公選法違反事件で、表現の自由を憲法訴訟として争ったものではない、表現の自由はあくまでも傍論であり主論ではない、したがって、政府が報道の定義をこの事件でしたかに受け取られると間違いですと、全面撤回されました。何が政府の報道の定義なのか、ついに根拠を示すことはないまま、今日に至っております。
もともと政府案は、表現の自由、報道の自由をめぐって野党四党を初めとした世論からの激しい批判を受け、昨年末に廃案になったものであります。その最大の論点には慎重にして精緻な議論があってしかるべきですが、余りものお粗末さ、ずさんさ、でたらめさ、いいかげんな定義を撤回も修正もせず平気でいられる小泉内閣の神経、そしてまた、明らかに不十分な論点を整理することもなく、与党中心の数で押し切った議事運営にも強い怒りを感じます。
また、個人情報取扱事業者の定義をめぐる答弁も迷走いたしました。電話番号を打ち込んで個人宅の位置を検索するカーナビを使用する者は事業者に該当すると当初政府は答弁したものの、携帯電話のナビはどうなのか、インターネットで電話番号調べはどうなのか、このように問いただすと答弁は混乱し、米屋さんや本屋さんが配達をしたら取扱事業者というのは常識から考えてもおかしいと細田大臣は発言され、その後、宅配便業者がカーナビを使って配達したら事業者だろうと答弁して、さらに問うと、いや、事業者じゃないかもしれないと、二転三転、繰り返しました。
さらに、政府は、氏名、住所、電話番号を個人識別情報として定義し、大半のカーナビは住所、電話番号で氏名がないのだから問題ない、こうしたわけですけれども、それでは年賀状ソフトはどうなのか、電話帳ソフトはどうなのか、このように問うと再び混乱し、まあ常識的な使い方をした人は大丈夫ですよ、こういうずさんな議論に至りました。
最後には、内閣の見解は、カーナビやCD—ROM、電話帳ソフトなどは、単なるユーザーはオーケーだが、加工したらだめだと。皆さん、加工しない電子データベースなどあり得るでしょうか。年賀状ソフトや電話帳ソフトを加工しないで使っている人がいるのでしょうか。これでは、IT革命どころかIT萎縮、あるいはITの自粛をもたらす非常に大きな問題点を残していると言わざるを得ません。
あれはどうか、これはどうかと言われるときちんと答えられない部分がある、その辺はお互い良識を持ってやろうと小泉総理はおっしゃいました。半年以下の懲役、罰金三十万円、最悪は逮捕されることもある法案で、この態度は全く無責任だと思います。
このような混乱が生まれるのも、無理やり一般法、包括法に罰則までつけているからであり、厳密な個別法で対処すべきと考えます。
民間法制では、取扱事業者に対する主務大臣の監督権限がいまだ残されたまま、また、ジャーナリストは例外になっても出版社は明記されていない、センシティブ情報の取得の禁止がないなどの大きな問題を抱えています。
さらに、行政機関法制では、罰則の一部が手直しされただけで、自己情報コントロール権が不明確、あるいは情報の取得に対する禁止の歯どめが弱い、目的外利用に関する行政の裁量幅が大きくて役所内部での個人情報の使い回しを事実上許容している、センシティブ情報の収集禁止規定が盛り込まれていない、個人情報ファイルの事前通知、個人情報ファイル簿の作成、公表の例外が多過ぎる、データマッチングが禁止されていない、情報公開法にある裁判管轄の特例などがないなどの問題が残っています。
このような問題を、野党四党は、自己情報コントロール権、センシティブ情報の慎重な取り扱い、個人情報保護委員会の設置など、政府案の欠陥にできるだけメスを入れた提案をして議論してまいりました。
審議の中で、防衛庁による適齢者情報収集問題が明るみに出ました。現在の行政機関保護法制では、これらの問題に全く歯どめがかからないことも明らかになりました。情報取得と使用の実態、行政内部及び国、自治体における情報のやりとりによって歯どめがかかっていない問題や、センシティブ情報規制の必要性なども改めて明らかになりましたし、防衛庁のこの事態の報告が極めてずさんで、委員会に提出された報告が三十カ所近く、数字もすべて間違っている、このような事態であったことも許しがたいことだと思います。
基本的人権にかかわる重要法案でありながら、委員会審議において中央・地方公聴会を開催しないばかりか、担当大臣の答弁も、勉強します、検討させてくださいなど、極めてあいまい、かつ、いいかげんな答えが続きました。そもそも、規制の必要性や法案の優先度の異なる民間法制と行政機関法制を特別委員会でごちゃまぜに議論したところ、審議したところに大きな問題点があったと言えると思います。
この政府案の成立阻止に向けて、広範な市民との連携及び野党の共闘を強化し、全力で臨む決意であることを表明し、私の討論を終わります。(拍手)