秋山哲男の発言 (共生社会に関する調査会)

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○参考人(秋山哲男君) ただいま御紹介にあずかりました東京都立大学の秋山と申します。
 私の専門は、都市交通計画あるいは障害者、高齢者を中心とする都市基盤整備だとか交通システム全般を手掛けております。今日は、その観点から二つのことについてお話をさせていただきます。
 一つは、交通バリアフリー法の駅及びその周辺の整備をどうするかというお話、これが一点目です。二つ目がバス以下の交通、特に障害者、高齢者を専用で送迎するスペシャル・トランスポート・サービスと呼んでいますけれども、別名移送サービスと呼んでいますが、これをかなり頑張って日本ではやらなくちゃいけない時期であるというこの二つについてお話をしたいと思います。
 最初に、交通バリアフリー法についてお話をしたいと思います。
 このプリント、皆様方に二枚ほどのプリントが参っていると思いますが、二〇〇〇年、二〇〇三年と書くところを二〇〇〇年と書いてしまったんですが、二月十二日と書いてございますけれども、このプリントです。
 ここの「交通バリアフリー法について」、(1)計画についてということなんですが、私自身、今、東京を含め全国のおよそ十か所ぐらいの交通バリアフリー法の基本構想に携わっていて、かなり大きな問題があるなと感じている点を何点か申し上げたいと思いますが。
 一つは、計画が、基本構想を立てるんですけれども、その後すぐ実施計画をしなくちゃいけないという。一般的には、計画というのは基本計画、実施計画と、順番に構想、基本計画、実施計画という手順がございますが、基本構想からいきなり事業というのが交通バリアフリー法の実態でございます。そのために、まずいきなりそんなところに行けないだろうと、これが一つです。
 それから二つ目は、予算がないために計画が十分立てられない、これが二つ目の大きな問題です。
 その他細かい問題はたくさんございますけれども、住民参加でやらなくちゃいけないということで、住民参加の方法を分からなくて右往左往する自治体だとか、様々問題が出ております。
 二つ目の大きな問題ということで実態というふうに書いてございますが、計画の予算がなかなか地方自治体が組みにくかったり、組めたとしてもほんのわずかで、計画をちゃんと作れるような状況にないというのが、これが一つですね。
 それから二つ目が、実施の予算が交通バリアフリー法として取られていないために、既存の補助の枠を使うのみというふうになっています。したがって、計画を立ててもこれをいついつまで完成させるとか、そういった見通しを自治体がほとんど立てられないでいる、こういう現状がございます。
 対策として、財源を交通バリアフリー法の計画から実施にもっと向けるべきであるということが言えるわけです。財源措置として、交通バリアフリー法事業費として予算措置をやはり国として取るべきだろうと。確かに、道路局とか鉄道局とか個々にばらばらにあるんですが、既存の予算の枠なんですね。どれが交通バリアフリー法なのかは、かなりプロ的にやらないと分からないというのが現状でございます。それから、基本構想を立てた自治体に特区と同じように自由に使えるお金をもうちょっとちゃんと手当てしたらどうか。例えば、一か所につき五億とか十億とかそういうお金がないと、とてもでないけれども町は良くならない。これが財源にかかわることです。
 三つ目は、交通バリアフリー法に附帯決議というのがございます。STサービスとタクシーを二〇〇五年に、これから検討するということになりますが、これについては、やはりバス以下の交通というのは大混乱をこれからしますので、STサービスの基本構想を立てることを国は義務付けることが多分必要になるだろうというふうに読んでおります。
 これに関連して、次の二番目、STサービスと書いてございますが、高齢者、障害者の専用の交通手段について述べたいと思います。
 なぜSTサービスについて述べるかといいますと、交通バリアフリー法の多くは、鉄道がバリアフリーになったり、バスがバリアフリーになったりしているんですが、鉄道やバスが使えないような地方の都市とか郊外の地域は全く恩恵を受けられないんですね。したがって、人口低密度のところだとか地方都市だとか、そういったところの人たちが恩恵を被るように、STサービス、バス以下の交通をかなり強化しないといけない、これが二点目の議論です。
 そのために、ここの調査会のテーマである自立と社会参加という問題がございますけれども、そこで、ゼロ番目に、高齢者、障害者のモビリティーというのは、様々な活動、社会参加するための基礎の基礎ですね。ですから、外出ができなければ何も活動ができないわけですから、そういった意味で外出の基本を支えるということをまずやるべきだろうと思います。そして、そういう意味ではモビリティーを生存権ないしは生活権に近い形で考えるべきだろうと思います。確かに憲法二十五条では基本的人権が保障されていますけれども、あくまでも表明するにとどまっていて、それを、具体的にモビリティーを、例えばイギリスですと、一日バス四便はミニマムとしようということがイギリスでは言われているんですけれども、日本ではそういう言い方が具体的にされないんですね。そのことによってモビリティー、外出が失われているというのが現状でございます。したがって、モビリティーをもうちょっと明確に法的にうたったらどうか、これが(0)のところです。
 (1)に、STSについてということで、ほんのわずかですけれども、高齢者、障害者の外出支援が不足しているということについて英国とか米国の事例を少しお話ししたいと思います。
 英国、米国、カナダとも、運輸系と福祉・保健・医療系で別々のシステムが存在しております。日本はその体系がないということ。ボランティアや厚生労働あるいは文部科学、養護学校ですね、運輸系で福祉タクシーの認可が多少存在するけれども、英国のロンドンのあるシステムと比較すると恐らく十分の一から百分の一程度でしょうと。東京辺りは十分の一から百分の一の間かもしれませんが、地方都市は百分の一以下かもしれません。これはもうかなりの大きなゆゆしき問題と私は認識しております。
 それで、先進国の中で最も後れているバリアフリーの領域がこのSTSのところです。アメリカあるいはスウェーデン、イギリス、カナダ、とっても彼らの国から見たら日本に住むのが損したと思うくらい悲惨な状況だという認識をしておいていただけたらと思います。
 それから、次のページに、様々な施策を展開するということで、一つ目に事例を書きました。STSの財源確保、例えば百億円程度から、国からちょっと出してみたらどうかと。STSの人口というのは、全人口の一%が重度の障害者、高齢者に相当して、STSの市場だと私は考えております。つまり、日本の百万人が年二回外出できる、その費用がやっと百億円なんですね。東京都では今、ボランティアベースで二十万トリップ、外出ができるようになっています。これがちょうど年二回外出できる程度です。東京都で相当頑張ってやっていても、たった年に二回なんですね。まずは地方が東京都レベルまで追い付くことが必要でしょう。そういう意味で百億円は最低限必要でしょうということです。
 それから二つ目に、計画策定の義務化、バス以下のSTSを中心に交通計画を自治体に義務付けるということ。なぜこういうことを申し上げるかというと、バスの規制緩和がされているんですけれども、バスは、規制緩和をされるのは、大都市みたいなところではいいんですが、地方都市だと次々にやめていっちゃう。バスはもうかるものだと昔は考えられていたんですが、今はもうからないのでできるだけ撤退したいというのがバス会社の意向です。自治体が補助をしなければ動かないというのがバスです。したがって、バスは公共が責任を持つ時代であるにもかかわらず、日本は計画として責任をちゃんと持っていないのが現在です。先進国の中でこんなことをやっているのは日本ぐらいです。全くばかげた国かななんと思うぐらいバスについては悲惨です。
 それで、三つ目ですけれども、じゃ、調査に基づいた計画をやっぱりちゃんとやるべきじゃないかというのが提案の一つです。
 日本は、まずニーズをとらえていない。その中で、移動困難者というのは、人口の一%というのは重度なんですけれども、中軽度も含めると十年前に調査した結果では二五%います。EUでヒアリングに行ったら四〇%を超えておりました。こういうことを考えると、英国のNTSは、ナショナル・トラベル・サーベイです、日本の国勢調査みたいなものです、ここで障害を持つ人がどの程度存在するかをきちっととらえております。つまり、ニーズがないと思われている。ニーズをちゃんととらえろというのがまず第一点目です。
 二つ目に、地域条件に応じた計画を立てるということが必要です。多摩ニュータウンが、今、最近人口が日本で一番いなくなっているんですが、その理由の一つに、坂道なんですね。坂道があるかないかで全然人々は移動が違ってきます。こういうことを地域条件として考えましょうと。
 それから三つ目に、運行システムの設計、どんな運行システムが必要かということですが、今、日本にあるのは、バスがあって、コミュニティーバスはバスみたいなものですけれども、あとタクシーがあって、その間がないんです。バスとタクシーの間が壊滅的な状況が日本です。そこで、実験等をやって今新しいシステムを開発しているんですが、フレックスバスなんという、高齢者、障害者に特化して、多少は歩けるけれども自宅の近くまで迎えに行く、こういうバスの実験を鷹巣でやりましたけれども、好評を得ております。こういうものも新しいシステムとして参入できる可能性があります。
 それから四つ目が、供給システムの組織づくりがどうしても必要であろう。五つ目が評価です。例えばコミュニティーバスというのは、日本では自治体が先導してやった非常にいいシステムなんですが、残念ながら大きな赤字のところとそうでないところもあります。そういう意味で、評価をちゃんとして改善していくという、そういった仕組みも必要です。
 四点目ですけれども、技術的検討ですが、STSのコンピューター支援システムの構築ですが、これはアメリカ、カナダはもう二十年ぐらい前からこの辺りのシステムが少しずつ動き始めて、今ではもう行政の人はみんなこれを使ってやっております。英国もスウェーデンも、もちろんそうです。
 それから二つ目に、STSの組合せの検討。民間のボランティア団体がやっている部分だとかタクシー会社がやる部分だとか、いろいろございます。こういう組合せも必要です。
 とにかく、STサービスのお金が、普通ですとバスは一銭もお金を東京では出さない、自治体では出さない可能性がありますけれども、STSは八から九割のお金を支出する必要性があります。それから、バスとタクシーの間の中間モードと呼ばれているのは、乗り合いにしますから七割ぐらいお金を自治体が出すようなことになります。つまり、モビリティーにはお金が掛かるのでお金の掛かることを前提として作らないともう無理でしょうと。お金が掛かるからやめようと言うと、モビリティーの保障をやめようと言うのと同じになります。
 それから、(2)に新しい交通システムの検討で、DRT、需要応答型交通システムというのは、電話で予約をして、三十分後に行きますけれどもどこで待ったらいいですかと、そうすると目的地まで行けるシステムです。これはスウェーデンあるいはフィンランド、アメリカにも各地にあります。
 それから、フィージビリティースタディー、一回やってみないとどういう経験があるか分からないのでやりましょうと。財源、運行システムも、これからは税金からすべて出すんではなくて公私の協働体制を作るべきだろうと。公私のある意味での協働体制を作ることが二十一世紀としてはかなり重要な課題となっております。
 それ以降、(3)、今日は割愛しますけれども、人口低密度地域の居住者の外出支援、これは過疎地域のバス問題なんですが、詳しくは私が書いた本の中に「バスはよみがえる」という本がございますので、それをお読みいただくとかしていただければ分かると思います。
 それから、(4)、これは、都市を高齢者、障害者が動きやすい、生活しやすい町に変える。その一つで、都市そのものを自動車型でできるだけつくるのを避けるという、なぜ避けるかというと、環境負荷が大き過ぎるというのと、都市を自動車型にしますと隣の家に行くのに遠くなったり、様々なトリップが遠くなります。そうすると公共交通が成り立たなくなりますので、できるだけ集住して住むという形を取った方がよろしいでしょう。国の責任として、環境負荷の軽減とモビリティー確保の責任を持った都市を進めると。
 アメリカのある論文の中にはトランジットビレッジというのがありまして、トランジットビレッジというのは、トランジットというのは交通なんですが、例えばほんの小さなところで商店とかパーマ屋さんだとかいいレストランだとかが比較的歩いて行ける、あるいは自転車で行ける距離のところに土地、建物を配置すると自動車の利用が少なくなって、徒歩とそれから自転車の利用が多くなる。こういうようなことを図で表した人もいます。そういう都市をつくっていくということが今後重要でしょうということです。つまり、移動が少なくて済むコンパクトな都市づくり、これが追加的に高齢社会には必要なものだと思います。
 以上で御説明を終わりにいたします。

発言情報

speech_id: 115614046X00220030212_004

発言者: 秋山哲男

speaker_id: 19552

日付: 2003-02-12

院: 参議院

会議名: 共生社会に関する調査会