関根千佳の発言 (共生社会に関する調査会)
⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。
詳細は利用規約をご確認ください。
○参考人(関根千佳君) 株式会社ユーディット、情報のユニバーサルデザイン研究所の関根と申します。よろしくお願いいたします。
パワーポイントを使って説明をさせていただきます。ちょっと暗くなって申し訳ございません。(スライド映写)
私どもの会社はどのような会社かと申しますと、IT機器やウエブサイト、ホームページですね、こういったものを高齢者や障害者に使いやすくするにはどうすればいいかということをコンサルティングする会社でございます。
私、日本IBMという会社で障害者、高齢者の使いやすいパソコンのハード、ソフトを開発しておりましたが、この仕事をほかの日本のメーカーさんとも一緒にやらなくては日本が滅びてしまうと思いましてこういった会社を自分で設立して、今、五年目に至っております。現在、社員が五名、そしてコントラクターと呼ばれる登録社員が百三十人ほどおりますが、このメンバーは全員家で仕事をする完全なSOHOカンパニーなんですね。社員はすべて、北海道、沖縄、フィンランド、ベトナムといった世界じゅうに広がっている状況です。このメンバーのうち、約半分が障害を持っていたり高齢者です。年齢も十七歳の高校生から八十歳の方まで非常に多岐にわたります。そして、年功序列ではなく成果に報酬を支払うという、いわゆる能力に報酬を支払うという、そういった仕事の仕方をしています。
社員をちょっと御紹介したいと思います。
この一人目は弊社の濱田と申しまして、「五体不満足」で有名になった乙武君よりももうちょっと障害は軽いんですけれども、いわゆる両手両足がないタイプなんですね。で、手の骨の部分でキーボードを打ったりマウスを使ったりしますけれども、彼は高齢者や障害者に使いやすいホームページを作るという意味では日本の第一人者です。で、今は、経済産業省のウエブアクセシビリティ委員会という国のITの根幹を決めていくような会があるんですけれども、そこで主査を務めさせていただいております。余り学歴の高くない、彼のような両手両足のないような重い障害の人がこのような会のリーダーを務めるというのは、多分日本の歴史始まって以来ではないかと思います。
次に、竹田ですけれども、彼もいわゆる神経難病を持っておりまして、このときは車いすに乗っておりましたが、翌日は松葉づえかもしれない、歩ける日もあるし、全く寝たきりになる日もあるというふうに、日によって状況が全く変わります。こういう状況ですので、在宅の勤務ということを選んでいるわけですね。ただ、彼はソフトウエアやいわゆるiモードとかiアプリ、ああいったパソコン及び携帯電話のアプリケーションを作る専門家でございまして、たくさん技術書も書いております。こういったメンバーがネットの中で仕事をしているわけです。
そしてこの次に、三人目に御紹介したいのが日高という社員ですけれども、彼は鹿児島の南九州病院に入院して、既に二十年以上ここで寝たきりの生活を送っております。人工呼吸器を付けておりまして、今体の中で動く部位というのは指先が二ミリだけという状況なんですね。ただ、この二ミリだけの指先で、ここに出しておりますように非常に美しいコンピューターグラフィックスで絵をかきます。今日、私、本をお持ちしましたが、実はこの表紙の絵が日高がかいたものなんですね。これをじかに見ていただきたくて今回これをお持ちいたしました。
一枚の絵をかくのに約一月掛かりますけれども、彼は様々なコンピューターグラフィックスのコンテストでグランプリを取ったりしております。もちろん、彼が障害者だからではなく、この絵が非常にすばらしいということで評価されているという、そういう人間です。
また、武者という人間もおりまして、彼は目が見えなくてかつ呼吸器に障害があるため、ふだん酸素ボンベをしょって歩いている。そして、骨形成不全のために身長が百二十センチしかありません。これ写真で、隣に座っている人は実は車いすなんですね。この人よりも背が低いということがお分かりいただけるかと思います。ただ、彼はバイリンガルのデータベースリサーチャーで、海外のウエブサイトからこういうデータを取ってきてくれないと頼むと、非常に的確なファイルを選んできてくれる人なんですね。そういった意味でもとても優秀です。
目が見えない人はパソコンを音で聞いて仕事をするんですけれども、この速度ももう我々見えるメンバーの四倍ぐらいの速度でだあっと聞いていくんですね。ですから、つくづくITがあれば障害者というものは全く違う形になっていくというそのサンプルではないかと思います。
ここで、我々の考えているバリアフリーとユニバーサルデザインについてちょっと簡単にお伝えしたいと思います。
バリアフリーは、健康な成人男子向けに作られてきた町や物に対して、女性や子どもやベビーカーや高齢者や障害者、その人たちが使いにくいというバリアを除去していくことであるというふうに私たちのところでは考えています。ユニバーサルデザインというのは、これに対しまして今申し上げたような人々が最初から使えるように町や物、情報やサービス、こういったものを作っていく考え方というふうに考えていただければよろしいかと思います。
バリアフリーも当然ながらこれまでできたものに対してはそれを適用することは必要です。ただ、我々がやっているようなIT産業のようにゼロから作っていくことができるものに関しては、又は建物でも新しく造る場合にはこのユニバーサルデザインという考え方を適用することが大事だと思っております。
次へ参ります。
このユニバーサルデザインという考え方はロン・メイスとおっしゃるノースカロライナ大学で、御自身もポリオにかかっていらしたために車いすをお使いであった大学教授が提唱された概念です。これにつきましては、私のこの本の中の百八ページにユニバーサルデザインの細かい定義とかも含めて出ておりますので、もしよろしかったらちょっとこれを後で読んでいただければと思います。細かい説明はちょっと割愛させていただきます。
なぜこのようなことが必要かというところなんですけれども、それは、我々日本という国が、今世界最高の高齢国家になっているという事実からでございます。二〇〇五年には成人人口の五〇%が五十代を超えます。有権者、納税者、消費者の約半分が五十代を超えるという世界の人類の歴史の中でも本当に初めてという事態に直面しているわけですね。
しかし、この層は必ずしもこれまで考えられていたように要介護、寝たきりの高齢者のイメージでは全くありません。最もお金と時間と向学心のある層です。ところが、日本の産業界はこの人たちを顧客として扱ってはきませんでした。そして、この層は実は軽度重複障害者です。少しずつ、目も耳も指先の巧緻性もちょっとずつ落ちていく。もちろん御本人はそんなことおっしゃいませんけれども、でも、こういう状況であることに変わりはない。ニーズは障害者と限りなく近くなっていきます。
しかし、物を作っているのは生活実感の少ない都会の若いデザイナーです。ですから、IT機器も家電製品もいろいろなものが残念ながら使い手と作り手のイメージ、考え方というものがどんどん乖離しているというのが今の日本の産業界の現状ではないかと思います。これを埋めるためにユニバーサルデザインの考え方が必要なんですね。
これは情報通信白書の十三年の二月なので少しデータが古いんですが、これを見ても、この年齢によるIT利用の差というのがはっきりとします。十代、二十代では大体インターネットを使うのがこの時期でさえ七割から八割でございました。しかし、六十代、七十代を見てみますと一〇%程度なんですね。これが日本の人口比率から考えるといかにいびつな状況であるかというのがお分かりいただけると思います。産業界としてもこの膨大なポテンシャル、潜在顧客層を全く見逃してきたと言うしかありません。
そしてまた、障害を持つ方への支援技術、これが実は我々の生活を様々な点で規定してきた、大きな産業革命を起こしてきたという点でたくさんございます。
電話はグラハム・ベルが聴覚障害者に音を届けるために開発したものでございます。タイプライターもある意味では全盲の方が字を書くための道具として非常に有効なものとして考え出されました。ライターは片手しかなくなってしまった兵士がたばこに火をつけるのにマッチでは不便ということででき上がったという経緯もございます。また、音声認識も世界最初に出されて製品化されたものは、ビアボイスという前に、実はボイスタイプという製品名だったんですね。これはIBMで出されたときに実は頸髄損傷の方のワープロ、声で入力するワープロとして考え出されたものなんです。それが一般の方にも使いやすいということで世の中に広まっていったんですね。
このように、加齢とか障害というのはアイデアの宝庫ですので、実は障害を持たれた方のニーズが様々な人にも使いやすいというケースはたくさんあるわけです。実際、企業は今いろんなところで、全く障害者然とはしないけれども、でも高齢者にも障害者にも使いやすいというものをだんだん製品化しようとしています。
これはIBMの例ですね。これは例えば全盲の方にも、それから口に棒をくわえてパソコンを使うような方にも使いやすいような工夫がたくさん埋め込まれております。
また、これはNTTドコモさんの新しい携帯電話ですけれども、これも例えば、視覚障害の方に音声でメールを聞ける機能が入っていたり、またシニアの方に見やすいようにボタンも画面も分かりやすくなっております。
このような商品を出しますと、これ、前のバージョンでは実は百万台行くのに一年半近く掛かっているんですけれども、今のこの新しいものが出てきましてからは百万台行くのに一・五か月しか掛からなかったらしいんですね。いかにニーズというものが大きくて、そしてそれに対して対応ができていなかったかということの例ではないかと思います。
ただ、このようなユニバーサルデザインの商品を作ろうと幾ら企業が頑張ろうとしても、残念ながらこのユニバーサルデザインを理解している人材が日本には少な過ぎるという問題があります。
まあ法律としては、アメリカではリハビリテーション法の五〇四条ですとか、ADAというものがありますが、こういったものは日本にはございません。特に、高等教育や就労における障害者差別というものが残念ながら全くカバーされていないという状況に日本はございます。
リハビリテーション法五〇八条というのもございまして、これが日本の産業界にも実は大きな影響を与えております。これは、二〇〇一年の六月二十一日以降、アメリカの連邦政府が購入するIT機器、電話、コピー、ファクス、すべてなんですけれども、こういったもの、それとウエブサイト、これが障害者に使えるものでなければ買ってはいけないという法律なんです。
連邦政府は、御存じのとおり世界最大のIT調達機関でございます。この法律が出たために、アメリカの企業はこぞって、このアクセシブルなIT機器の作製、アクセシブルなウエブサイトの作り方というものに対して研究をいたしております。これは違反した場合に訴えられるという、提訴されるということもございますので、メーカーさんの側としてはもう必死で作っているという状況なんですね。
ところが、日本では同じような法律ございませんので、日本の企業はダブルスタンダードで進まなくてはならず、非常に苦しい状態に立たされております。まあ私に言わせると、これは見えざる非関税障壁だと思っております。
そしてまた、教育の点でも日本とアメリカではかなり差がございます。
これは普通の小学校の普通の状況なんですけれども、このように障害の重い子どもが電動車いすを使い、周りの子どもたちとIT機器を使いながらコミュニケーションをしているというのはかなり普通に見られる状況になってきております。大切なのは、この周りの子どもたちです。この周りの子どもたちは、この真ん中の坊やがもしかするとホーキング博士のように賢いかもしれないということを知って大きくなります。これが二十五年以上たって、今アメリカの政治や経済や産業界を動かしている原動力になってきているわけですね。七五年からこういった法律ができてきているわけです。
大学も同じです。これはスタンフォード大学でウエブマスターをしていたJ・B・ギャランという人で、頸髄損傷のために首から下が全く動かないんですね。この人は、この後バークレーでMBAを取って、今ではサピエントという世界的な会社で仕事をしています。
彼のように大学で高等教育を受けられる障害者の率なんですけれども、英米では大体七%なんですね。これを一〇%にしようという動きがございます。ところが、残念なことに日本ではこれがまだ〇・〇九なんですね。
アジアではどうなのかということになりますと、韓国で、これまで後れていたんですが、二年前にデジタルデバイド法というものができて、金大中さんの方がこのエリアを何とか必死で進めようということで動いています。新設の国立大学で統合教育が開始されまして、三百五十人の学生のうち半分が障害者という、非常に進んだ状況になってきているんですね。ここは学長も実は障害者自身です。片手がございませんでした。寮とか、もう全部アクセシブルになっておりまして、彼らが本当に問題なく高等教育を受けられる、そのような環境になっています。
この辺りに関しましては、済みません、度々申し訳ない、私の本の七十九ページから非常に細かいデータも含めて出ておりますので、もしよろしかったらこれも後から読んでいただければと思います。
日本も手をこまねいているわけではなくて、例えば東大などでは随分変わりつつあります。今、東京大学に盲聾の助教授が任官しています。彼は目が見えなくて耳も聞こえない、で、先生をしているんですね。このような人たちがどんどん教鞭を執る状況になることによって大学の中での感覚も変わってきつつあります。
ただ、ここにございますように、今、四年制大学における障害学生の割合は、何と五十九万人中五百三十人という、本当に〇・〇九という状況で、先ほどの七%に比べると百分の一であるということがお分かりいただけると思います。
といいましても、ここに肢体不自由の小児科の先生も出ていますし、残念ながら彼はアメリカで教育を受けたらしいんですけれども、こういう人たちがどんどん活躍できるような場を是非日本でも実現していただきたいというふうに強くお願いするところでございます。
そしてまた、このような高齢者、障害者がテクノロジーを使って社会参加するということに関しましては、例えばロサンゼルスで毎年会議が行われております。
この写真、ちょっと分かりにくいんですけれども、実は電動車いすだけが四台写っているんですね。この四千人近く集まる障害者とテクノロジー会議というものの中で、半数以上が障害者なんですけれども、特に重度障害者なんですけれども、盲導犬と電動車いすだらけです。そして、ここに来ている障害者たちはお客さんではありません。彼らは、会議で研究を発表したり製品をデモしたり、かつ商談をする、本当に自立したエンジニアとして動いていたりするんですね。大企業のエンジニアであったり、そしてベンチャー企業の社長であったり、さらに、時々は政府の高官、金色のワシのマークのエンボッサーの名刺をもらってびっくりします。おお、ホワイトハウスの人だわということが分かったりするんですね。ですから、こういう人たちが五〇八条の主役として、自分たちが使えるIT機器をどんどん作ってくれと言っていることが分かるわけです。
今後、そうですね、皆様たち、立法府の皆様に望みたいことがございます。
次については多分川内さんの方でお話しになると思うんですけれども、JDA、いわゆる人権法の、ヒューマン・ライツ・アクトに関する、この制定というものがまず必要ではないかと思われます。そして、先ほどのように、情報保障を受けることによってどんどん情報を得ることができる。視覚や聴覚障害の人たちに対して、例えば、著作物の点字と同じように音声テープを作ることを認めるといったような著作権法の改正が必要になってくると思われます。
また、日本には残念ながら存在しない統合教育を支援するための教育法の改正というものが必要ではないかと思われます。これによって我々はこの高齢化社会に対応する人材を育てることができるわけですね。
さらに、文部科学省の中に高等教育における障害学生受入れの担当というもの、そのものがございません。この環境を何とか私は変えていただきたいと思います。そうしないと、先ほどの五〇八条のようなことも含めて、日本の産業界自身が、アクセシビリティーを大切にしようとしているアメリカやヨーロッパの産業界と全く太刀打ちできない状態になっておりますし、日本の高齢者そのものも、これからITを使えないというとてもミゼラブルな環境になっていくのではないかというふうに思うからでございます。
また次に、公共調達におけるアクセシビリティーの徹底ということに関しましては、五〇八条と同じなんですね。まず隗から始めよということで、是非皆様のところから、お使いいただける調達機器、これを高齢者や障害者に使いやすいものしか買わないという徹底した態度を取っていただきたいと思っております。それによって、企業側としてもこの研究開発に対する一部分でもメリットが得られるというふうに考えることができると思います。
そして、これ自身、私はいろんな省庁の委員をさせていただいている関係から思うんですけれども、様々な省庁がこの高齢者、障害者のIT利用については幾らかの助成をしていただいております。この件は各部分同じだと思うんですけれども、それが余りにもばらばらになっているために、残念ながら有効に活用されているとはとても言い難い環境にございます。この辺りも海外では、この大学はここの部分の専攻、この部分はここの大学と研究機関でというふうに決めて非常に効率的に動いているんですね。是非この研究助成の一元化というところも考えていただければと思っております。
そして、このユニバーサルデザインという考え方、最初からバリアを作らない、できれば初めから様々な人のことを考えて物を、町、情報、サービスを作っていくという考え方、これを是非御理解いただきたいと思いますし、是非実践もお願いしたいと思います。
そして、このITを使うことによって高齢者や障害者が自分たちの意見をどんどん発言できるという意味でも、このITをもっとお使いいただくことを期待したいと思っております。
ということで、今回は、済みません、私の方でこの御本を出させていただきましたけれども、この五〇八条に関しましても百四十ページのところに状況を詳しく載せております。今回、ちょっとコピーするところが余りにも多岐になってしまうかと思いまして、本を一冊持ってまいりました。
どうも御清聴ありがとうございました。