鵜飼信一の発言 (経済産業委員会)
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○参考人(鵜飼信一君) 早稲田大学の鵜飼です。よろしくお願いします。
今日、こういう機会を与えていただきまして、ありがとうございます。
まず今日は、最初に、私がこの中小企業の今の現況をどうとらえているかということと、それから下請法の意義と、それから今回の下請法改正案についての企業取引研究会に出席した立場としての意見を述べさせていただきたいと思います。
まず最初に、国内の製造業を中心とした中小企業を見てみますと、明らかに今、我が国の産業というのは国内生産の中では量産から多品種少量という方向に大きく動いていると思います。量産部門というのは中国を始めとする海外の方へどんどん行くという動きが、これは中小企業の側では止められない状況であります。
こういった中で生き残っていくためには、中小企業の側も今までの量産対応の組織体制を改めて、ここは大事なんですけれども、企業規模を今よりは少し小さくして、そして技術と技能、そしてノウハウを組み合わせて付加価値を生み出していくことが基本だと思います。
こうした行き方が基本であって、いわゆる世間的にみんなこっちへ行けと言われているような自社製品開発とかあるいはベンチャー企業という行き方は、そういった行き方のほんの一部だということを認識していただきたいと思います。多くの中小企業というのは、やはり依然、これまでもそしてこれからも、部品の加工とか製造といった下請的な仕事で生きていかざるを得ないという状況であります。
もう一つ重要なことは、先ほど多品種少量型になってきたと申し上げましたけれども、実は内実的には多品種少量というよりも多品種変量と言っても過言ではないと思います。この変量というのは受注がゼロになることも結構あるという意味であります。
これは、一番いい例が半導体製造装置を取って考えていただくと結構なんですけれども、半導体製造装置というのはいろんな種類がありますが、大体一つの生産工程には一台という形ですね。この半導体製造装置というのは、日本の強い分野であります。バブル崩壊以降の中小企業の多くは、こういった分野の部品の加工とかこういうことをやってかなり一息ついてきたということがございます。ところが、この半導体製造装置というのは半導体の生産量に影響されますから、この半導体の生産量が絶えず大きく変動するというとその製造装置の売上げも大きく変動する、そうすると、その部品を加工しているところも、去年はよかったけれども今年はもう仕事は全く来ないというような状態が特にこの数年続いております。
こういったところを乗り切っていくにはどうすればいいかというと、大体の企業はみんな規模を小さくして、ここからが日本の中小企業の非常に特徴的なところですが、経営者も家族も、あるいは老いも若きもみんな現場で働く、特に大都市圏の集積の中では職住一体あるいは職住近接で働く、こういったことで何とかしのいでいるわけであります。こういう状態で働けば、稼働率がどかっと落ちたときでも何とか乗り切れると。息子さんには給料をちょっと待ってもらうとかいうようなこともやっているわけですね。それから、残業になればもう経営者が率先して夜中も働くという状態がずっと続いているんだと思います。
私は、こういう企業を、言葉がいいかどうかは分かりませんが、生業、生きる業だと思っております。こういう生業的な形で企業形態をやっていくことで何とかこの稼働率の低い時期を乗り切っているというのが現状であります。
ただし、こういった小規模な企業に逆に勝機も結構ある部分があります。これは要するに、多品種少量生産においては個人の持つ技能とか技術とかノウハウというのが、非常にそれに依存する部分が大きいわけです。こういったものというのは小さな企業こそ十分に発揮できる、そしてその持ち主が、そういった技術とか技能とかノウハウの持ち主が経営者であることが非常に多いわけで、そうなると、思い切った企画とか方向転換も即時的にできるというメリットもあるわけで、そういったところを活用している企業というのが現時点で大きく活躍しているんじゃないかなと思います。これは製造業でもサービス業でも同じことが言えると思います。
続きまして、下請法の役割という点に移らさせていただきますが、こういった今申し上げたようなことから考えますと、下請法の役割というのは非常にますます大きくなると思っております。要するに、規模を少し縮小していくということが中小企業の生き残りの方策であるとすれば、大企業との力の格差というのはますます開くわけであります。しかも、中小企業というのは、実は例えば株式会社という形態を取っていましても大企業の株式会社とは全く違うものであります。これは特に資金調達面から考えてみていただければ簡単に分かると思うんですが、株式会社という名を取っていても、株式市場で資金を調達できる中小企業というのはほんの一部であります。ほとんどは、わずかな自己資金と経営者の自己資産を担保とした間接金融で何とか賄っているというものであります。しかも、従業員構成は非常に高齢の方から経営者もみんな働くというような形態を取っているわけで、そういう意味では、中小企業株式会社というのは、正に先ほど申し上げました生業だというふうに考えられます。
要するに、株式会社というのは、中小企業の場合はある意味では株式会社の制度を適用するためのある種の擬制といいますか、擬というのはてへんに疑うというやつですね、擬制的な株式会社ではないかというふうに思っています。
そういった中小企業の多くというのは、必ずしも末はマザーズとかヘラクレス、この間まではナスダックでしたっけ、といった、そういう上場を目指しているようなわけではないわけですね。要するに、自分と家族と、それからわずかな従業員が過不足なく、できればより良く暮らしていきたいというふうに願っているだけでありまして、そういう意味では、私は日本というのは生業資本主義の国だと思っております。法人資本主義の国だとおっしゃる方もいらっしゃいますが、中小企業に焦点を合わせれば生業資本主義だと思っております。
この生業が実は産業や企業の基盤でありまして、産業や企業を政策によって作り出すことが実は非常に難しいわけで、ベンチャー創業支援といってもなかなか成果を上げていないのはお分かりになると思います。やはり将来の優秀な企業も今ある生業の中から生まれてくると考えるべきだと思っております。この生業を守るのが中小企業に係る法律制度の基本だと思っております。
先ほど申し上げましたように、規模を小さくして生業的な形態を取っていくことが重要な生き残り策の一つであるならば、この企業規模格差により生ずる取引の不公正から中小企業を守ることが国策としても重要な意義があると思っております。
今回の下請法改正案については、私も実は平成十一年に中小企業庁の下請中小企業政策研究会というのに出席もしておりましたので、非常に、昭和三十一年にできた法律がようやく改正されることになって非常にうれしく思っています。
特に評価をすべきところは、金型を入れたというところだと思います。金型というのは、部品と似たような側面と、それからソフトウエアとしての側面と両方持っているわけですね。ほかの製品に転用が全く利かないという点では専用部品とも似ていると思いますが、金型の場合は、設計図、これCADで作る場合が多いんですけれども、そこに物づくりのノウハウがびっしり書き込まれているわけですね。ですから、金型を受け取らないでも、このCADの図面さえ作らせちゃえば、それをもらってしまえば、よそに、もっと安いところで金型作ってくれということができるわけですね。実際にそういう事態が起きているわけです。この辺がほかの設備機器とか自工具の場合とはちょっと違うところだと思っております。しかも、この金型産業というのが、先ほど申し上げました多品種少量生産に向かう国内での物づくりのコアになるものだと思っています。その多くを中小企業が担っているという意味で、この金型を入れたという意義は非常に大きいと、これを私らはスタートラインと考えております。
それからもう一つは、サービス業の一部が入れられたということであります。
私も実は三十代にこういった業界におりましたけれども、一部における優越的地位の濫用というのは非常によく耳にいたしました。特に、こういったサービス業というのは労働集約的な産業ですので、こういった分野では非常にこういう優越的地位の濫用というのが起こりやすい要素があるのではないかと思っております。
このサービス業の拡大というのが我が国の産業全体にとっても、産業基盤的な意味でも、あるいは、例えば産業基盤的というのは、製品に組み込まれるいろんなソフトウエアがありますので、そういった意味です。それから、やはり成長分野も実はここに多くあると。映像制作とかいうのもその分野だと思いますが、そういう意味でもこれからの重要な産業だと思っております。ただし、こういった産業を支えるのは資金力という点では製造業以下の中小企業が非常に多いので、こういった企業を守る法律として、この下請法は重要な意義を持つと、こう思っております。
以上でございます。