福島啓史郎の発言 (憲法調査会)
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○福島啓史郎君 私は、憲法で定めております基本的人権の保障につきましては、憲法レベルで明記すると同時に、法律レベルで制定する必要があると思うわけでございます。
憲法レベルでは、現在の日本国憲法上、第三章の「国民の権利及び義務」、この第十条から四十条にかけて定めております。新しい憲法上の権利として、これまでプライバシー権、あるいは児童保護、家族の尊重、障害者の人権等、憲法上の位置付けにつきまして検討されているわけでございますが、こうした検討と併せて、時間との関係でいえば、むしろ法律レベルでの実施が重要であるというふうに考えております。
この法律レベルでの実施につきましては、特に私は、人権擁護法案また監獄法の全面改正、それから司法アクセス拡充法制の整備、この三点を、特にこの三点の重要性を述べたいと思います。
まず、基本的人権の保障につきましての法律レベルの整備につきましては、現行法上、労働基準法あるいは雇用機会均等法、教育基本法、また障害者基本法、アイヌ文化振興法、男女共同参画社会基本法、これらに加えまして、最近ではストーカー行為等規制法、児童虐待防止法、配偶者暴力防止法等が定められております。
しかし、我が国には包括的な簡便な人権救済制度あるいは機関がなかったわけでございます。人権侵害という点でいえば、発展途上国では軍隊なり警察の権力の乱用が問題でございますけれども、先進国におきましてはマイノリティーあるいは弱者に対します社会的な差別が解消していないわけでございます。特に、国際化あるいは高齢化の進展に伴いまして、人権侵害の態様が多様化、深刻化しております。
それに対しまして、こうした人権侵害や差別の悪影響の救済といたしましては、専ら裁判所による救済、司法救済に頼っていたわけでございますが、これでは費用が掛かる、時間が掛かる、あるいは手続が煩雑ということで、裁判所の救済では不十分であるということが実態として指摘されるわけでございます。このため、簡易、迅速な人権救済を図る人権機関の設置が必要だというふうに考えるわけでございます。
この人権機関に関しましては、一九九三年十二月の国連総会におきまして、国内人権機関の地位に関する原則、いわゆるパリ原則が採択されております。このパリ原則では、権限、責務、この人権機関の権限、責務を幅広くするというようなこと、また構成並びに独立性及び多様性が保障されているということ、また活動の方法が構成メンバー又は申立人の申出のみならず、幅広く認められるということ、また準司法的権限を有する委員会の地位に関する補充的な原則が定められております。
我が国に対しましては、今まで、先ほど申しましたように簡便な人権救済制度がなかったわけでございますので、一九九八年、平成十年の十一月に国連人権規約委員会から、独立した人権救済機関の設置の勧告がありました。この勧告を受けまして、我が国は人権擁護推進審議会の審議を経て、政府といたしましては昨年の三月に人権擁護法案を国会に提出しております。
内容は、「人権侵害等の禁止」といたしまして、何人も人種等、これは幅を広くとらえておりまして、人種のほか、民族、信条、性別、社会的身分、門地、障害、疾病、性的指向を幅広くとらえておりますが、これを、人種等を理由とする不当な差別的取扱いの禁止や、あるいは差別的言動の禁止、また地位利用を伴う性的言動、施設等での虐待などの人権侵害の禁止など、幅広く定めているわけでございます。また、差別を助長する行為も禁止されております。いわゆる、初めて差別を一般的に禁止した法律案と言うことができると思うわけでございます。
こうした人権侵害等の禁止という原則を定め、新たな人権救済機関として人権委員会を設置すると。また、救済の手続といたしましては、人権委員会の人権相談を行うほか、一般的な救済手続と、それから特別の救済手続を定めているわけでございます。
この法案につきましては、さきに述べましたパリ原則で言う権限なり責任、また、構成、独立性、多様性、それから活動の方法、補充原則、いずれに照らしましてもパリ原則を踏まえたものとなっているわけでございます。
しかしながら、今議論になっている点が二点あるわけでございます。一つは、報道機関に対する特別救済の在り方でございます。
これは、報道機関の取材、特に過剰取材と言われるものの定義、あるいは報道機関への不服申立ての問題等につきまして議論になっているわけでございます。早急に与野党間で調整する必要がある事項でございます。与党からは、報道関係規定の凍結と施行後の全般的な見直しを提案しているわけでございまして、早急な与野党間での調整が望まれるわけでございます。
もう一点は、人権委員会の独立性が議論されております。
先ほど申しましたように、パリ原則に照らしましても問題はないわけでございます。また、この人権委員会が法務省の外局になっていることにつきましては、パリ原則に照らしましても問題はありません。また、各国の人権機関の在り方を見ましても、独立委員会とする国、また政府機構とする国、あるいは準司法機関とする国、あるいは特殊独立法人とする国、また自主規制機関とする国などいろいろあるわけでございます。法務省の外局でありましても、この法案の第七条で、「人権委員会の委員長及び委員は、独立してその職権を行う。」と、正に公正取引委員会と同じような規定があるわけでございます。
そうした七条の規定を定め、さらに人権救済の重要な手段といたしましては訴訟援助ということがあるわけでございますが、こういったものを考えれば、法律的な専門性を有する職員を擁しております法務省の外局とする考え方もやりやすい面があるというふうに考えられ、適当であるというふうに思うわけでございます。ただし、運用面におきまして、情報公開あるいは要員配置などにつきまして、透明性を高める努力は必要だというふうに考えるわけでございます。
このように、人権擁護法案につきましては、マスコミ規制の面ばかりが強調されておりまして、不当な差別あるいは虐待等に対する救済措置の意義が軽んじられていることを懸念をするわけでございます。
先ほど申しましたように、同法案は、不当な差別的取扱いの禁止規定を定めており、初めて差別を一般的に禁止した法律と言うことができるわけでございまして、正に人権救済に値するものだと、資するものであるというふうに考えるわけでございます。
二番目の、個別法としての二番目の問題といたしましては監獄法の改正でございます。
これにつきましては、昭和五十七年、昭和六十二年、平成三年と、三度法案が提出されておりますが、いずれも廃案になっております。提出された刑事施設法案によれば、一つは、国と被収容者との間の法律関係を明確化すると。また、従来は情願という形になっております、言わば法律効果を伴わないものでございますが、これをいわゆる行政争訟と同じような不服申立て制度を取り入れるということも含まれております。また、被収容者に対します適正な生活水準を保障するということ。また、受刑者の改善更生のための処遇を個別化していくということ。さらに、問題となりますいわゆる代用監獄につきましても、この法の適用の明確化を図るということなど、手当てがされているわけでございます。
これに加えまして、私が考えまするところによれば、この刑事施設におきます処遇等につきまして、第三者の目を入れることが必要だということ、また職員の、刑事施設の職員の人権意識を向上させる必要があるということ、また矯正医療を充実させていく必要があるというふうに考えます。現在、名古屋刑務所での不祥事発生を契機にいたしまして、行刑改革会議で議論されているわけでございますが、一日も早く成案の得られることを期待するわけでございます。
三番目といたしましては、司法アクセス拡充法制の整備が重要だと思います。
したがいまして、結論を言えば、憲法レベルの検討に併せつつ、時間的に見れば、人権保障につきましては個別法の保障が重要であるというふうに考えておりまして、特に人権擁護法案、監獄法の全面改正、司法アクセス拡充法案の整備が重要だということを指摘したいと思います。
以上でございます。