房村精一の発言 (法務委員会)

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○政府参考人(房村精一君) ただいまの御質問にもありましたように、この短期賃貸借、これは立法当初からその濫用による弊害が指摘されていたところでございます。
 元来、抵当権は、その抵当権が設定された時点での対象物の交換価値を把握するということになりますので、その後の賃借権の設定がありましても、これは対抗できないというのが原則でございます。ただ、民法は、ごく短期間のものであれば抵当権者に対する負担も小さい、あるいは競落人の負担も小さいということから、この三年以内の、建物についてでございますが、ごく短期間の賃貸借については対抗できるものと扱うという特例を設けたわけでございますが、もちろんこれによって保護される正当な賃貸借も多いことは間違いないと思いますが、しかし同時に、これを濫用いたしまして、悪化した段階で所有者と通謀して短期賃貸借を設定する、あるいは所有者がいなくなったすきに勝手に入り込んでそういったものを偽造、書類を偽造して主張すると、こういうような形で短期賃貸借を主張いたしまして、自己の占有権原を正当化し、そのことによりまして競売等の手続の円滑な執行を妨げる、こういうものが設定されますと当然その競売物件の価格が低下いたしますので、それを利用して安く競落することを目指す、あるいは占有権原を主張いたしまして立ち退き料を要求する、こういうような執行妨害の形態が非常に多く見られるわけでございます。
 警察等も現在この執行妨害対策には力を入れておりまして相当数を検挙していただいておりますが、警察の調べでは、その大半においてこの短期賃貸借制度がその手段として悪用されていると、こういう実態がございます。
 もちろん、裁判所の方も、この仮装の賃貸借を何とか適正な形で処理したいということで努力をされておりまして、非常に高額の敷金が設定されている、あるいは賃料全額が前払になっている、譲渡、賃貸の、転貸の特約がされていると、こういうような通常のものに比べて異常な条件が付いているようなものにつきましては、これは仮装である、あるいは執行妨害目的であるということを積極的に認定をして引受けしないものと扱うというような対応策も講じておりますが、そういう対応策が講じられますと、今度は濫用する方も、そのぎりぎりに裁判所が認定できないような範囲で敷金等を設定するとか、そういう、手口がどんどん巧妙になってきております。
 そういうことから、ある意味ではイタチごっこでありまして、一生懸命対策を講ずれば、またその裏をかいてこの短期賃貸借制度を悪用していくと、こういう形が見られるわけでございます。
 御指摘のように、もちろん正当な短期賃貸借というものもたくさんあるわけでございますが、一番の問題は、それと濫用されているものを完全にきちっと見分けられるのかと。これが見分けられれば、もちろん正当なものは保護し、異常なものを排除するということでいいわけですが、結局、その境というのは常にあいまいでありまして、どうしてもなかなか難しい問題が残ってしまう。そういうことから、従来からこの執行に関与する者の間では、何とかこの短期賃貸借の問題を解決してほしいと、これを解決しなくては執行妨害というのを減少させるのは難しいと、こういうことが言われていたわけでございます。
 それともう一つは、今度は、いわゆる賃借人の保護として現在の短期賃貸借制度が合理的なものかという問題もあるわけでございます。これは、先ほど申し上げましたように、元々、抵当権者に本来的に対抗できないものを、ごく短期間に限ってその保護を与えようと、こう考えたものですから、必ずしも長期間使うことは想定しておりませんので、例えば五年というような賃借権の設定を行いますと、これは全く保護されないということになります。それから、三年内の短期の賃貸借でございましても、この三年の期間の満了が競売の手続の途中である、要するに競売開始決定がされてから競落されるまでの間にその賃貸借の期間が満了してしまいますと、その段階で更新は認められませんので、全く保護を受けない、対抗できないことになってしまいます。そういう非常に偶然的な事情で保護が認められたり認められなかったりと、こういうことになりますので、現状で申し上げても、相当数がそのような期間満了によって保護の範囲外になってしまう。したがいまして、そういう人たちにとっては、競落をされますと直ちに明け渡さなければなりませんし、敷金についても従前の貸主に請求するしかないと、こういう形になっております。
 そのような非常に濫用されるという、されやすいということと、賃借人の保護にとっても必ずしも合理的な制度ではないという、この二点を考え合わせまして、今回、思い切って短期賃貸借は廃止すると。ただ、その代わり、保護すべきものは保護しなければなりませんので、明渡し猶予期間を一律に認める、あるいは、新たに抵当権設定後、その抵当権者の同意を得て賃貸借の登記をすれば抵当権者に対抗できると、こういう新たな制度を作ってその賃借権者の保護を図ると、こういう形を考えたわけでございます。

発言情報

speech_id: 115615206X02420030722_026

発言者: 房村精一

speaker_id: 32455

日付: 2003-07-22

院: 参議院

会議名: 法務委員会