平野貞夫の発言 (本会議)

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○平野貞夫君 国会改革連絡会(自由党・無所属の会)を代表しまして、政府の施政方針をただしたいと思います。
 小泉総理は、就任以来、およそ七つのことを国民に公約しました。八月十五日の靖国神社参拝、国債発行三十兆円枠、二、三年での不良債権処理完結、一内閣一閣僚、特殊法人ゼロ、ペイオフ実施、二〇〇四年の景気回復の七つであります。
 総理は、衆議院で公約が実行されていないことを追及され、この程度の約束、大したことないと反論しました。国民に謝罪し取り消すようとの要求に対して、一回言ってしまって撤回してもしようがないと開き直りました。
 国会の発言は会議録が公式なものです。これを放置し、けじめを付けないことは、反省のない証拠でございます。約束をないがしろにしては議会政治は成り立ちません。議会民主政治を冒涜した態度に強く抗議しておきます。
 さて、今年はひつじ年です。羊という字ににんべんを付けますとイツワルと読みます。七つの公約はすべて偽りにならんとしています。また、先日の施政方針演説は羊頭を掲げ狗肉を売る内容で、小泉内閣の偽りを証明するものでした。
 しかし、羊の下に我という字を書きますと義、すなわち人間の行うべき正しい筋道という意味になります。偽りの小泉政治を続けるのか、小泉政治を退陣させ、正しく筋道のある政治に生まれ変わるのか、それを決めるのは有権者一人一人です。日本国憲法は国民主権が原理です。国民の皆さんの良識で政権を交代させることができるのであります。
 それでは、まず、小泉総理の議会政治に対する不見識さについて責任をただしておきます。
 昨年暮れ、慌ただしく野党第一党の民主党を離党し保守新党を結成、小泉政権の与党となった人たちの行動は議会民主政治を破壊させるものです。サッカーに例えるなら、野党チームのゴールキーパーをやっていた選手が試合中に与党チームに移り、コーチになったと同じことです。これでは議会政治は成り立ちません。
 しかも、与党に移るとき、それまで政敵としてののしってきた政権や政党や宗教団体に対して謝罪をしました。政治理念を謝罪することは自己を否定することであります。文明社会では政治家として存在することは許されません。これを容認する日本社会では、民主政治が行われているとは言えないと思います。
 総理、あなたは、この衆議院野党第一党の国対委員長であった人物を、医療費の値上げなどで内閣、与党の手先として利用し、快く政権に迎え入れました。このあなたの思想と行動こそ不見識であり、議会民主政治を否定するものにほかなりません。一連の事態で政治不信は増大しました。あなたはどう責任を感じているか、御所見を伺います。
 なお、国会改革連絡会では、現在の国会の諸制度と在り方が我が国停滞の根本原因であると考えています。少数者の意見表示権の保障など抜本改革案を改革協議会に提案しています。これらの実現について各会派の協力を要請しておきます。
 次に、小泉総理、現代の世界の混迷、殊に我が国の政治、経済、社会の荒廃、停滞状況の解決にあなたがどのような思想で臨もうとしているのか、お伺いします。
 今日の内外の混迷の根本原因を私は産業工業社会から情報技術社会への移動期に生じる混迷だと認識しております。歴史上、何回か人類が文明の移動期に体験した混迷と同質だと思います。現代は、資本主義や民主主義が解体するかもしれない激しい変化の時代でございます。同時に、物質的豊かさしか求めなくなった人間の在り方が問われている時代です。
 日本の混迷の原因に二つの側面があります。
 一つは、資本主義の変化に伴う混迷です。したがって、近代資本主義社会でつくられた景気循環論やインフレ・デフレ論といった経済学者の知識だけでは対応できない国家、社会の構造問題があります。もう一つは、この歴史的変化に伴い、当然に行うべき改革を怠り、政官業の癒着によってつくられた不公正な既得権にこだわり続けた自民党政治の失政、すなわち誤った政策判断であります。特に、今日の深刻な不況は小泉総理のつくった人災と言えます。
 十年前の平成五年、自民党幹事長を経験した小沢一郎氏が「日本改造計画」を提言しました。情報技術社会への移行と米ソ冷戦終結に伴う世界政治の変化に対応するため、国の仕組みと日本人の意識改革を行うべきであるというものでした。これを実現しようと政界再編が起こり、非自民政権がいったんはできましたが、歴史の流れにさおを差す抵抗勢力によって葬られました。
 小泉総理、あなたは抵抗勢力の温床である自民党を壊すと叫んで国民の期待を集めました。しかし、結局は抵抗勢力に後方支援され、改革という名で五五年体制の政治がつくった不公正で無責任な既得権の再編と再配分を行っているのが実態です。その結果が今日の政策破綻の惨状であります。私たちの構造改革とは方向も手法も違います。思想と歴史観のない改革は物まねの幻想です。小泉改革は幻想にすぎません。いかがですか、小泉総理、御所見を伺います。
 次に、当面の経済再生と構造改革について申し上げます。
 平成十五年度には四兆円に近い負担増が国民にのし掛かります。医療費、介護保険料、雇用保険料等の値上げ、年金の減額、配偶者特別控除の廃止、発泡酒、たばこ等の大衆課税増です。経済の混迷を一層深刻化させます。やめるべきです。
 現在の日本経済を船に例えますと、一見豪華客船のようですが、船底に大穴が空いて海水が流れ込み、死者が続出という状態です。特等客室付近ではライオン髪の船長が大したことないと放言し、政権与党の政治家や官僚、企業の勝ち組によるパーティーが連夜開かれ、船長さんもオペラや歌舞伎を楽しんでいます。船底の悲鳴や異変に気が付いても、船長さんは、痛みをこらえればよいと言うだけです。この状況を放置すれば船は傾き、やがて沈みます。船底の人たちを救助し、排水して、救命具の確認、船の修理など、あらゆる準備が必要になっているのが今日の日本経済の状況です。
 小泉総理、あなたは施政方針演説でデフレ克服に政策を総動員して取り組むと言いながら、何一つ具体的方針を示していません。この私の例えにどのような感想をお持ちですか。また、日本経済の再生にどのような方針で臨むのか、伺います。
 日本経済の再生のため、不況、財政赤字、不良債権、これを解決しなければならないことはそのとおりです。小泉・竹中路線は、米国の不良債権ビジネスの手先のようになって、不良債権と財政赤字問題を優先させ、緊縮財政を続け、金融の処理により企業をつぶすことが改革だと勘違いしていることには大いに異論があります。
 日本丸の小泉船長は、竹中航海長に対策を丸投げし、悲鳴の聞こえる海水であふれた船底全体にふたをし、日本の経済再生に欠かせない中小企業の人たちを封じ込めようとしているのであります。
 不良債権によって身動きの取れない企業や個人が確かにいます。しかし、経済全体で見ると二割程度だと思います。残りの八割程度は身動きが取れ、経済再生に役立つ人たちなんです。この部分に政策が適切に働き掛ければ、二、三%の経済成長は可能なんです。それにより経済の体力ができます。体力が付いたところで病状を判断して、不良債権という患部を取り除くべきです。不況の回復こそ優先すべきだと思います。
 財政赤字は、日本再生への国家ビジョンを提示し、経済を回復させ、再建計画を策定し、実行に移し、日本国の信用を回復させることで十分対応できます。日本丸の船底で悲鳴を上げている人たちを救助し、船底の穴を修理して海水を取り除き、船全体の構造を見直すことが正しい手順ではないかと思います。竹中大臣の御所見を伺います。
 あわせて、平成八年の住専問題で紛糾した際、金融機関等の不良債権を処理しようという政治合意がありました。なぜできなかったのか、金融担当大臣として当時の事情をどのように認識されているか、伺います。
 次に、真の構造改革とは何かについて申し上げます。
 国のかたちを変えることです。そのためには、改革の目標と改革した後の国家ビジョンを国民と世界に示すことが必要です。小泉改革はそれができません。施政方針演説で他人の功績を長々と語る暇があれば、国家ビジョンを示すべきです。小泉政権でそれをつくろうとすれば、自民党は解体するでしょう。したがって、既存の制度に接ぎ木をしたり、道路公団問題は閣内不一致などのごまかしをやり、独立行政法人のような官僚の焼け太りを平気で許したり、産業再生機構など自民党の新しい利権の踊り場をつくったり、より悪い制度づくりを改革と称しているのです。無定見、無責任としか言えません。
 私たちの提案する真の構造改革とは、第一に、官と民の関係を変えることです。天下り制度を廃止し、地方に権限と財源を移し、住民自治に基づく地方分権、いや、地域主権を確立することです。そして、自治体の適切な統合により新しい地域コミュニティーをつくり、中小企業を育成し、農漁村を活性化させ、都市との調和を図り、食の安全を始め、幸せな暮らしを確保することです。
 第二に、民間の事業活動の規制を取り除き、公正なルールの下で競争を促し、活力を引き出すことです。また、特殊法人と独立行政法人をいったん廃止し、全面的に見直すべきです。
 第三に、財政資金の公正、適切な配分です。例えば、補助金を一括交付金にすることで陳情政治が廃止できます。公共投資の問題は、抵抗勢力がねらいとする利権の温床となってはいけません。丸投げ、口利き、今年も相変わらず自民党長崎県連などが問題になっています。徹底的な究明が必要です。自民党政治を維持するため、日本列島全体にわたって公共投資などからピンはね、還流させる資金は、裏と表で十数兆円に上ると推測されます。最近の国会は税金を裏金にする機能になり果てたのです。これらの不正を排除し、根本的な仕組み替えを断行すれば、十五兆円以上の無駄遣いの節約が可能で、財源ができます。
 第四に、その財源を活用して歳入構造を改革し、官が国民所得をコントロールして配分する仕組みを変え、所得税、住民税を半減させるなど、民間の取り分を増やし、新しい技術や産業を活性化させ、雇用を増やし、自由な企業活動やNPO活動ができるシステムをつくることです。
 第五に、さらに基礎年金、介護、高齢者医療などの基礎的社会保障は、保険料をやめ、国の責任で整備し、その上で公正なルールの下で自由に競争できる社会をつくることです。少子高齢化に対応する社会保障の整備は単なる福祉政策であってはなりません。社会政策、経済政策と位置付けることで安心した社会ができるのであります。これらにより創造的自由主義社会をつくることができます。
 この創造的自由主義国家は、地球環境保全という普遍的原理の下で健全な市場経済を機能させ、人間が生きていくために一定の結果平等を保障し、自立した国家として官僚の政治主導を排し、国民を代表する立法府優位を確立し、国連を中心に人類と地球のため自覚と責任を持って貢献することを理念とします。このような国家社会目標に基づいて真の構造改革に着手してこそ、不況、財政赤字、不良債権が解決できるのです。総理、この考え方について御所見を伺いたい。
 次に、教育の在り方について申し上げます。
 最近、教育基本法の改正について議論が活発になっていますが、総合的で根本的議論が必要であり、短絡な結論は避けるべきであります。
 現行教育基本法は人類の福祉と個人の価値が力説されております。大切なことだと思います。しかし、私としては、人類の類と個人の個をつなぐ種の役割が欠落していると思います。種とは、人間が社会的動物であるがため欠かせない家庭や郷土や社会共同体であります。これらは青少年にしつけを通じて人間形成を学ばせる欠かせない場です。この部分の補完が必要だと思います。
 特に必要なのは義務教育です。私たちの考え方は、基礎学力を重視し、日本人の伝統的な資質をはぐくみ、人間の尊厳を守り、次の時代を担い得る善き日本人を育てることであります。そのために、官僚支配の教育行政を改革し、柔軟で民主的運営を図るため、地域に教育オンブズマン制度を設け、義務教育に要する経費はすべて国が責任を持つべきであります。また、教師は次の時代の日本人を育てる崇高な職務であり、その地位と名誉を国が保障すべきであります。総理の御所見を伺います。
   〔議長退席、副議長着席〕
 次に、安全保障について申し上げます。
 総理、あなたは、最近自衛隊員の自殺が増加し、特に小泉政権となってから急増している事実を知っていますか。
 長期不況の中、退職年限の早い隊員の再就職が極めて困難になっていることなどが原因の一つと言われていますが、根本の問題は、自衛隊の憲法上の地位をあいまいにしているからであります。テロ特措法、有事法制論議を通じて、自衛隊が専守防衛から日米安保条約を超え、憲法を無視し、米軍支援のため中東周辺までなし崩しに国際活動を行う方向に移りつつあることに対する不安があるからだと思います。
 混迷する国際情勢であるからこそ、安全保障、とりわけ自衛隊の活動と役割を憲法上明確に位置付け、自衛官が自信と誇りを持って職務を遂行できる体制をつくることが国家の責任だと思います。総理の御所見を伺います。
 緊迫するイラク情勢や北朝鮮問題についてお尋ねします。
 総理、あなたの親友であり、キリスト教原理主義者のブッシュ大統領に、イラクを先制攻撃すべきでない、性急な攻撃は結果においてテロとの戦いにとって得策でないと進言する気はありませんか。アメリカの良識を復元すべきだ、歴史に汚点を残すなと忠告すべきです。いかがですか。
 そこで、確認しておきますが、米国がイラクを先制攻撃した際、テロ特措法を適用しますか。アルカイダがイラクにいることが証明されたとき適用すべきだと言う与党首脳がいますが、いかがですか。また、米国はイラク攻撃の戦費の捻出や復興支援について何を要請してきているのですか。それにどう対応するのか、国民の前に明らかにしていただきたい。総理の答弁を求めます。
 ところで、北朝鮮問題ですが、総理、あなたは昨年の経過からすれば世界の政治家の中で最も貴重なポジションにあります。ブッシュ大統領とは親友で、金正日総書記とは友好を誓い合ったばかりの仲でしょう。三人で会談しようと呼び掛けてみたらどうですか。やれないでしょう。なぜか。日朝平壌宣言が付け焼き刃でまやかしであり、宣言が事実上ほごにされているからです。
 今日の北朝鮮問題混迷の原因は、小泉総理が、落ち込んだ世論調査の支持率を上げるため、拉致問題と経済援助を政治的に利用したことにあります。靖国神社参拝を自民党総裁選挙対策として利用したことと同じ手法であります。
 あらゆる事態に対して真剣に対応を考えておかなければなりません。総理、朝鮮半島で混乱が起これば、それだけで日本列島内部に波及する問題は深刻です。既に日本に潜行している工作員がいかなる行動を取るか、武装難民が押し寄せてくればどう対応するのか、これらについて状況をどうとらえ、いかなる方針で臨むかを明らかにしていただきたい。
 次に、エネルギーの安全保障についてお尋ねします。
 日本の長期不況の心理的要因の一つに、将来の資源確保についての不安があります。経済産業大臣に伺いますが、これから二十年間の我が国のエネルギー資源の確保はどのような方針で行うのか、お聞かせください。
 あわせて、最近、日本近海の南海トラフ周辺でメタンハイドレートの埋蔵が確認されました。環境に優しいエネルギー資源として、また燃料電池自動車用の水素として活用が期待されています。どのような計画で開発していくのか、計画が実現したとき日本のエネルギー資源はどのような状況になるのか、見通しをお伺いしたい。
 次に、医療問題について伺います。
 医療の基本は未病を治するということです。これは東洋医学の理念です。政府が見捨てている東洋医学の知恵と効用を社会的にも制度的にも積極的に取り入れることで医療費の抑制にも役立つと思いますが、厚生労働大臣の所見を伺います。
 また、昨年、強行採決で成立させた医療費等の値上げが国民生活を直撃し、不況が深刻化しています。凍結すべきだと思いますが、いかがですか。
 最後に申し上げたいことは、小泉改革の欺瞞性についてであります。
 かつて我が国を支配していたのは、政官業と言われる三角形の癒着構造でした。小泉自公保政治に新しい五角形癒着構造ができ上がっていることを国民の皆さんに知っていただきたい。それは、再編、変質した政官業にプラスすること、とにかく政府権力に弱い御用学者と御用メディアの五角形です。この人たちは日本を変えたくないんです。これが小泉政治の偽りの改革を国民に本物のように錯覚させる正体です。
 総理、あなたはナマズのほっかぶりという山梨県のことわざを知っていますか。大きな口しか見えないことです。大言、放言、口先、そして口利きという意味です。あなたと自民党の政治そっくりです。改革を断行するというのは口先だけで、口利きで生きる抵抗勢力と与野党ごっこをしながら、改革と称して五五年政治体制既得権の再編をやることをやめていただきたい。このままだと日本丸を沈没させるだけです。
 日本は決して希望のない国ではありません。古来から世界の様々な文化を取り入れ融合し、独自の文化をつくり上げてきました。勤勉な人たちも多く、世界をリードする先端技術にも優れたものがあります。将来、メタンハイドレートという新しい資源の開発も期待されます。これらの技術や資源を国民の幸せに生かすためには、健全な市場経済と国民が主人公の公正な国家、そして私欲を超えて助け合う社会を是非ともつくらなければなりません。
 今、何よりも大事なことは、日本国停滞の根本原因である自民党の五五年体制政治文化を解体することであります。そのため、一日も早い小泉総理の退陣を求め、終わります。(拍手)
   〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇、拍手〕

発言情報

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発言者: 平野貞夫

speaker_id: 22130

日付: 2003-02-05

院: 参議院

会議名: 本会議