朝日俊弘の発言 (本会議)
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○朝日俊弘君 私は、民主党・新緑風会を代表して、先日行われました小泉総理の施政方針演説に関連して、総理及び関係大臣に質問いたします。
冒頭、小泉総理に一つお願いがございます。
どうも元気がないのか、早口で原稿の棒読みの答弁が多くて、これを聞いている国民の皆さんは一体何を答えておられるのかよく聞き取りにくいと思います。是非、もう少し心を込めて、丁寧な答弁をお願いを申し上げたいと思います。
それでは、まず最初に、地方分権の具体的な推進状況と今後の課題について取り上げたいと思います。
御承知のとおり、地方分権推進のための一括法が施行段階に入って早くも三年が過ぎようとしています。しかし、残念ながら、分権の具体的な展開が私どもにはどうもはっきり見えてきません。総理は、これまでも、国から地方へとか、あるいは地方にできることは地方にゆだねるとか、例によって掛け声だけは繰り返し掛けておられますが、その割には地方分権は進展していないのではないか、むしろ分権一括法の成立当時よりも分権に取り組む政府の熱意も冷めてきているのではないかとさえ危惧します。
そこで、総理にお尋ねいたします。
総理は、今日の地方分権の推進状況についてどのように受け止めておられるのか。思ったように進んでいないとすれば、一体何が障害になっているのか。そして、今後更なる前進に向けて何が必要なのか。地方分権の推進にかかわる総理の基本的な考え方についてお示しください。
ところで、地方自治に関する今日的な課題は、合併特例法の期限を二年後に控えた市町村合併の問題であります。総理の演説の中では、たった一行、市町村合併を更に推進してまいりますと述べるにとどまっていますが、現実には多くの戸惑いの意見、反対の声、そして識者からの批判や問題点の指摘がなされていることを無視するわけにはいきません。
問題点の一つは、合併問題はあくまでも当該自治体の選択、住民の判断を中心に据えて進められるべきであります。しかし、実際には、一定基準以下の人口の自治体の権限を縮小し、県がその事務を代行する案が示されるなど、結局のところ、広域合併するしか選択肢がないような状況に追い込もうとする動きも出てきております。こうした事実上の強制的な合併が進められていくとすれば、一体何のための合併なのか、改めてその目的を問い直さなければなりません。
他方、合併によって行政単位が広域化すればするほど、住民自治、市民自治という観点からはますます遠ざかっていくのではないか。そうなることを危惧して、この期に改めて、基礎自治体の内部に住民の自主的な近隣組織、例えば英国のパリッシュやフランスのコミューン等を念頭に置いた新しい制度の必要性が提起されてきています。
今、私たちは、市町村合併を進めていくに当たって幾つかの留意点と今後の課題について今指摘をさせていただきましたが、こういう点について総理のお考えを伺っておきたいと思います。
その上で、地方分権の具体的な推進にとって言わば必要条件であります国と地方の税財源の配分の在り方の見直し問題について伺います。
この問題については、特に昨年六月以降、国庫補助負担金、地方交付税、そして財源移譲を含む税財源配分について三位一体の改革を進めると再三主張されてきました。今回の総理の施政方針の中でも同様のことが述べられています。
しかし、それにしても不可解なのは、演説の中で、総理は、国と地方の関係について平成十五年度予算において改革の芽を出したと述べている点であります。芽出しという言葉は私も初めて聞きますが、一体来年度予算案のどこを見て改革の芽出しと言っておられるのかお尋ねしたいものです。総理が本気で三位一体の改革を進めると考えておられるのであれば、まさしく今提案されている来年度予算案の中でもっと明確にだれにも分かる形で示していただきたいと思います。今後の改革の具体化に向けての考え方を含めて、総理の答弁を求めます。
次に、地球規模の環境破壊、とりわけ地球温暖化への対応についてお尋ねしたいと思います。
なるほど、総理もこの問題については一定の認識はお持ちのようですが、具体的にどうするかとなると全く不明確、専ら脱温暖化社会への構造改革を述べているにすぎません。何でもかんでも構造改革と言えばそれでよいのでしょうか。
私たちが今直面している重要課題の一つは、京都議定書で我が国が約束をした中身、すなわち温室効果ガスの一九九〇年水準と比較して六%の削減をどう具体的に実現していくのかということ、そのためには、政府は、炭素税あるいは環境税を導入し、エネルギー消費型産業からの脱却、転換を積極的に推進すること、同時に、その税収を基本に環境技術革新と関連領域における雇用の創出、確保を図ることであります。したがって、今回、言わば中途半端な形で提出されようとしている石炭課税なのではなくて、明確に環境税の導入に向けてその具体的なプログラムを明示すべきときに来ていると考えますが、環境大臣の御所見をお聞かせください。
あわせて、私たち民主党は、地球環境を守り、環境への負荷を最小限に抑えた持続可能な社会の構築に向けて、私たち市民の意識改革とライフスタイルの転換を図る観点から、体系的な環境教育推進のための法整備が必要と考えています。政府としても同様の観点から必要な法制化の作業を具体的に進めるべきであると考えますが、環境大臣のお考えをお伺いいたします。
続いて、食の安全の問題について何点かお尋ねします。
つい最近、BSE、牛海綿状脳症の事例が、六頭目、七頭目と続けて発生が確認されました。このことは言わば全頭検査の体制が有効に機能していることの表れでもあり、したがって消費者サイドも今回は比較的落ち着いて受け止めているように思います。そして、皮肉なことに、事例が増えれば増えるほどBSEの伝播ルートに関する疫学調査はより精密になり、発生原因とその伝播ルートの解明に向けて一層の絞り込みが可能となります。したがって、この段階で明らかになってきた事実から、逆に的を絞った調査に踏み込むとともに、絞り込まれてきた二ないし三の発生原因とそのルートに対して具体的な対応策を取ることは可能であります。
念のため付言すれば、疫学調査によって一定の範囲内に問題点の絞り込みができれば、もちろん最終的な確定作業は引き続き続けるとしても、その結論を待たずとも、複数の可能性を含めて疑わしきところにはきちんと手を打つというのが疫学の鉄則であります。この段階で具体的にどこまで踏み込んで対応されるつもりなのか、それとも、ほぼ解明されてきているのに手をこまねいてこのまま見過ごすつもりなのか。この点は農林水産大臣に御答弁をお願いしたいと思います。
さて、昨年は、このBSE問題を始めとして食の安全を脅かす事件が相次ぎました。こうした経緯を踏まえて、今国会には食品安全基本法及び関連する幾つかの法律案の提出が予定されています。そこで、これらの法律案の提案理由及び全体の枠組み、スキームについて、この新しいスキームによって従来と比較してどこがどのように変わるのか、その概要について内閣官房の担当大臣に御説明をいただきたいと思います。
その上で、今回提出予定の食品安全基本法及び関連法の全体にかかわってお尋ねしておきたい点が二点ございます。
その一つは、リスク評価の基本指針を定める食品安全委員会は確かに従来の関係省庁から独立した形で内閣府に置くとされていますが、個別の食品のリスク管理、リスクマネジメントについては従来どおり農林水産省と厚生労働省の担当部局及び関連する審議会が担うこととされています。
しかし、具体的なリスク管理を担う関係省庁の仕組みが従来のままでは全体のスキームが果たして有効に機能するのかどうか、疑わしいと言わざるを得ません。今回の改正ではこの部分についてどのような検討がなされているのか。そして、今後示されるであろう基本指針の中身によっては、改めて食品行政の機能別分担の再検討や相互の政策調整システムの制度化を含めて、その在り方を見直す必要があると考えますが、いかがでしょうか。
もう一つ、BSE問題に関する調査検討委員会の報告では、消費者の参加の保証を内容とする消費者保護を基本とした包括的な食品の安全を確保するための法律の制定の必要性が明記されています。しかし、今回提案されようとしている法律案の中では消費者の参加の保証が十分に担保されているとは言い難いと思うのですが、いかがでしょうか。
この二点は重要なポイントですから、食品安全基本法を所掌される内閣官房及び農林水産、厚生労働、各担当大臣にそれぞれ答弁をお願いしたいと思います。
次に、社会保障に関連して、当面する幾つかの課題について質問いたします。
年金制度について、総理は施政方針の中で平成十六年度改正に向けての方向性と論点を取りまとめたことは述べられましたが、その中身と改革に向けた考え方等については一切触れておられません。これでは幾ら国民に開かれた議論を求めてもこたえようがないではありませんか。
しかも、平成十五年度予算案の中で、年金額の改定に関する特例法で、今年度の物価指数の下落幅、すなわち〇・九%年金額をマイナススライドさせる内容になっていることについては一言も触れられませんでした。また、制度は違いますが、最後のセーフティーネットである生活保護法に基づく生活保護の保護基準単価についても同様の幅で引き下げる予算案となっていますが、このことについても全く触れられませんでした。
この年金水準と生活保護基準の引下げは実は戦後初めてのことであります。こうしたことも、やはり総理にとってはいずれも大したことではないと言われるのでしょうか。
改めて総理にお尋ねいたします。
年金額の改定に関して、過去三年間は物価指数がマイナスであったにもかかわらず、その時々の経済状況等にかんがみ、スライドを凍結させてきました。今回は経済状況はなお一層悪化しているにもかかわらず、過去三年分はそのままとし、今年度の物価下落分のみをスライドさせるというこの提案は非常に分かりにくい、言わばちぐはぐな提案だと言わざるを得ません。
さらに、これまで凍結されてきた分と今回スライドが実施される分が次期財政再計算のときに、すなわち平成十六年度改正の時点でどのように清算されることになるのか、なぜ制度全体の改正の中でトータルに処理する方策が考えられなかったのか、こうした点について総理の答弁を求めます。
そのお答えを伺った上で、かねてより懸案の国庫負担率二分の一への引上げ問題を含めて、年金制度の平成十六年度改正に向けた検討内容のポイント及び今後の作業スケジュールについて、この点は厚生労働大臣から国民の皆さんにできるだけ分かりやすい形で御説明をいただきたいと思います。
ところで、先日の総理の演説を聞きながら、いささかあきれ果てた点がございます。医療制度については、国民皆保険を守り、将来にわたり良質で効率的な医療を国民が享受できるよう、先般、大幅な改正を行いましたというくだりであります。総理が言うところの大幅な改革とは、もしかして昨年の通常国会における健康保険法等の改正のことなのでしょうか。
実は、私は昨年の秋の臨時国会においてもこの問題について総理の認識を伺いました。そのときにも申し上げましたが、さきの健康保険法等の改正はどう考えてみても文字どおり改革なき負担増にすぎません。改革すべき課題はほとんど先送り、後回し。それが証拠に、改正案の附則には積み残し課題に関する検討規定がずらっと並んでいるではありませんか。
そこで、御提案申し上げたい。
この提案は、近々、野党四党の共同提案の形で衆議院に提出させていただく予定ですが、この際、今年四月から実施予定となっている健康保険本人の窓口三割負担を凍結すること、そして課題となっている抜本改革を一つ一つ実行に移し、しかる後に医療費の動向や健保財政の状況等を見定めた上で改めて判断をするという考え方はいかがでしょうか。総理の御所見をお伺いします。
その上で、厚生労働大臣に伺います。
宿題となっている課題の中で、保険者の統合再編を含む医療保険制度の体系の在り方、新しい高齢者医療制度の創設、診療報酬体系の見直し、以上三項目については平成十四年度中にその具体的な内容等を明らかにした基本方針を策定すると定められています。あと二か月ほどしかありません。
そして、厚生労働省は、昨年十二月にこれらの課題に関する省としての試みの案を取りまとめ、公表しました。この試みの案が基本方針の骨格となっていくのであろうと推察いたしますが、気になるのは、新たな高齢者医療制度の創設に関する部分、ここだけが言わば二つの案の両論併記になっているということであります。
その一つは、それぞれの保険者に高齢者も継続加入することとし、その上で年齢や所得に着目し制度間財政調整をする案、もう一つは、七十五歳以上の後期高齢者のみを対象として独立した医療保険制度を創設する案、この両案を今後どのように収れんさせていくのか。大変難しい作業になるのではないかと思いますが、大臣のお考えと今後の作業予定についてお聞きをしておきたいと思います。
最後に、どうしても気掛かりな問題について厚生労働大臣にお尋ねいたします。
それは、つい最近、新聞等でも大きく取り上げられました障害者ホームヘルプサービスに係る支援費制度の施行に当たって、厚生労働省側と障害者団体や自治体側と意見が対立する状況になってしまったことについてです。
改めて説明するまでもなく、この支援費制度の導入問題は、三年前、当時、五十年ぶりの抜本改正、社会福祉基礎構造改革とうたわれ、その中で、従来の措置制度から利用契約制度へ大きく法制度改正が行われ、それに合わせて措置費から支援費へと費用の性格そのものも変更されました。その施行が本年四月という段階を迎えていました。このときにこのような意見の対立が明らかになるという状況になってしまったことは極めて残念なことであります。
具体的な問題は既に相互の話合いによって一定の到達点にあるとのことですから、ここで私から改めて指摘することは避けますが、今回のことは、政府側の単なる説明不足とか相互の行き違いというだけではなくて、厚生労働省側の態度というか、基本的なスタンスに問題があったと言わざるを得ません。
とりわけ、私が気になっていますのは、二〇〇一年の中央省庁再編成以後、厚生、労働両省を統合するとともに、省内の組織変更が行われました。同時に、関連する審議会等の大幅な見直し、再編成が行われ、例えば、それまで曲がりなりにも障害者団体との接点となっていた中央障害者施策推進協議会が廃止されるなど、当事者との直接的なチャンネルが乏しくなってきていたこと、こうした事情も背景にあったのではないかと心配しています。もしそうであるとするなら、今後も様々なところでトラブルが生じてくるのではないか、きめ細かな障害者サービスの確保がますます困難となるのではないかと危惧します。
今回御苦労いただいた大臣の反省と今後の対応についてのお考えをお聞かせいただいて、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇、拍手〕